SPORTS SCENE
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高田彩乃 早稲田大学文化構想学部
けん玉に触れるのは、何年ぶりだろう。今年7月、都内で行われた日本けん玉協会主催のイベントを訪ねた。まずは力試しに、場内の認定会へ。小皿や大皿、中皿などの各技に10回まで挑戦ができ、うち3回の成功を目指す。技の難易度に応じて1から10の級位が与えられる。
熱心に練習を見てくれた男性検定員の視線に緊張しながら、いざ挑戦。屈伸を10回ほど繰り返したせいか、3つ目の技を始める頃には膝上の筋肉が張っていた。技が簡単には成功しないのは、緻密な計算のもとで作られたけん玉本体に秘密があるそうだ。わずかな揺れで皿の上から玉が落ちると、無性に悔しい。「あと1回だけ」。中高時代の部活動以来、負けず嫌いな性格が顔を出した。
最後には、人生で一度も成功したことのない「とめけん」(けん先に玉を入れる技)に成功。「初心者にしては上出来」の6級を取得した。技の成功を、一緒に喜んでくれる仲間がいるのも嬉しい。周囲は小学生から親世代までさまざま。もちろん初対面だ。しかし、30分後にはハイタッチをするまでに打ち解けた。
会話は脳の活性化を促すという。病院や高齢者施設ではペアで行う技を取り入れ、「健康けん玉」として活用している。発祥の地、広島県廿日市市では毎年「けん玉ワールドカップ」が開催され、世界中の選手が集う。娯楽から、生涯スポーツへ。いまや、けん玉は世代、国境を超えて愛されている。
気がかりなのは指導員不足だ。級位の上の段位は、協会の支部所属の指導員に認定してもらう必要がある。支部は首都圏に集中する。来年から地方で働く私は、検定を近場で受けることができないかもしれない。競技化から間もなく半世紀。スポーツとしてのけん玉を、次世代につなぐことができるか。懐かしの玩具は、岐路に立っている。