スポーツ産業のイノベーション 創造力の高め方─②

スポーツ産業のイノベーション
創造力の高め方─②
植田真司│大阪成蹊大学マネジメント学部 教授

前回に続き、今回は思考法・発想法について考えてみます。
「ロジカルシンキング」と「ラテラルシンキング」の二つの思考法があります。前者を「論理的思考」「垂直思考」、後者を「直感的思考」「水平思考」とも言います。
「ロジカルシンキング」は、数学の方程式を解いたり、ものを組み立てたりするように、常識の枠内で、経験に当てはめ、論理的に推論し、一つの最適な答えを導く思考法です。ありきたりの答えしか出ませんが、結果の個人差が少なく、早く確実に成果に繋がります。
一方「ラテラルシンキング」は、なぞなぞを解いたり、なぞかけを作ったりするように、常識の枠を超え、自由奔放に、独創的に物事を関連づけ、大量の答えを導きだす思考法です。奇想天外な答えも生まれますが、結果の個人差が大きく、成果に繋がらないこともあります。(表1)

代表的な事例として、13個のみかんを3人で仲良く分ける問題があります。「ロジカルシンキング」では、「4個と1個を3等分して分ける」「はかりを使って同じ重さで分ける」など常識的な答えになります。しかし、「ラテラルシンキング」では、「ジュースにして3等分する」「1個を捨て12個にして分ける」「抽選で誰か1人が13個全てもらう」「種を植えて、みかんを育て増やしてから分ける」など常識的外の奇想天外な答えになります。
(写真)それ故に、「ラテラルシンキング」は、「ずるい思考法」とも言われています。


イノベーションを興すために、今の我々に欠けているのは、とにかく多くのアイデアを出すこと。そして、常識の枠を超えた斬 新で奇想天外なアイデアを出すことではないでしょうか? そのためには「ラテラルシンキング」の様な思考プロセスと、意識下 では思いつかない新しいアイデアの気づきや閃めきが必要になります。そこで発想法について少し触れておきます。(具体的な進め方などは、ネットで検索してください)
アイデアが出ないときに使える発想法が「チェックリスト法」です。事前に用意されたチェックリストをヒントに連想することで、次々とアイデアが出ます。有名なのは「オズボーンのチェックリスト法」です。抱えているテーマや課題を9つのチェックリストに照らし合わせて考えていく技法です。(表2)
さらに大量のしかも奇想天外なアイデアを出したいときに使 えるのが「エクスカーション法」です。例えば、30分以内に新しいランニングシューズのアイデアを100個出しなさいと言われたら書けるでしょうか? こんなときに、この技法を使えば簡単に100個書くことが出来ます。まず、特定の動物を思い浮かべ、その動物から連想する特徴を10個以上書きだします。例えば、「ゾウ」なら、「鼻が長い」「牙がある」「目が小さい」「足が丸く太い」・・・。次に、テーマである「ランニングシューズ」に、今「連想して書き出した特徴」を強引に結び付け、新しいアイデアにします。例えば「鼻が長い」から「シューズの紐を長くしてみたら」や「牙がある」から「シューズのソールに、牙の様なものでグリップ性能を上げる」など 、。「ゾウ」が終われば、別の動物を使ってアイデア出しを繰り返します。実際、学生が何度か取り組んでいますが、比較的簡単にアイデアがでる発想法です。この技法を実践することで、創造力・発想力のトレーニングにもなるでしょう。
アイデアが出る人と出ない人、何が違うのか?私は、アイデアの出る人は、頭に中に基準となるチェクリストを持っており、常に課題と照らし合わせ、上手に結びつけていると考えています。思考力や発想力は、スポーツと同じで、誰でも練習すれ上達し、アイデアが出る人になると考えています。
また、発想法で出てくるアイデアは「非常識で使えないアイデアばかり、、、」と考える人もいますが、イノベーションを興す には、この非常識で奇抜なアイデアが必要なのです。イノベー ションに繋がる大切なアイデアの芽を摘んでいるのは我々の常識かもしれません。

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