sports scene

Arcs Break」の配信を行う選手たち

深刻な事態となった。
前号の「sports scene」の執筆時、日本が、世界が、これほどまでの被害を受けるとは思ってもいなかった。当たり前の日常の脆さを痛感している。この状況で大きな煽りを受けているスポーツ界。各リーグや大会が中止や延期を余儀なくされる中、様々な選手・団体がそれぞれにできることを模索している。
今回取り上げるのはラグビートップリーグに所属するNTTコミュニケーションズ・シャイニングアークスだ。日本代表アマナキ・レレィ・マフィや南アフリカ代表マルコム・マークスなど昨年のW杯参加メンバーを擁しファンからの注目度が高まっているこのチームは、スポーツを通じた社会貢献を積極的に行っていることでも知られる。試合における勝利(「Victory」)とともに、スポーツを通じて社会に何らかの価値(「Value」)を提供する「2つのV」をチームのミッションとして掲げて活動する彼らは、コロナウイルスによる外出自粛を受けある取り組みを始めた。
その名も「Arcs Break」といい、全社的に在宅ワークを要請された自社社員に対し、ラジオ体操やストレッチなどの動画を企画。運動不足を解消してもらおうと毎日15時に生配信した。動画に対するコメントには選手がリアルタイムで返信し、内容も要望を取り入れながらブラシュアップするなど、双方向のコミュニケーションを心がけた。全プログラムがオンラインで行われていた新入社員研修でも「Arcs Break」を用いたラジオ体操が日々実施され、会社への帰属意識醸成にも一役買ったようだ。のちに公式YouTubeチャンネルで一般のファンに向けても公開を開始すると反応は上々で、最終回後には続編を望む声も聞かれた。
シャイニングアークスも含め、今年の日本ラグビー界は昨年のW杯の余韻をそのままに盛り上がりを継続していくことを重要なテーマに取り組んできた。不測の事態によりその努力が水泡に帰しそうになっても、彼らは別の角度からスポーツチームならではの価値を社会に提供した。その姿勢は、ラグビー界のみならず自粛中の私達にとってこそ意味を持つOne for Allの精神の体現と言えるだろう。
一人ひとりが今やるべき事に集中し、適切な感染防止策に努めれば、いつか必ず夜は明ける。これが刊行されるころ、状況が再び悪くなっていないことを願う。祈りを込めて、今回は筆を置きたい。

▶︎伊勢采萌子│NTTコミュニケーションズ

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