日本テニス界について


伊達公子

KimikoDate
テニスプレーヤー

――日本テニス界について
錦織選手や大坂選手の大活躍で日本のテニスのレベルが上がってきたと期待が高まっていますが、両選手はアメリカを生活拠点として成長してきたということを忘れてはいけません。育成・強化期の練習環境はプレーヤーの成績に大きく影響するのですが、日本のコートは世界基準とかけ離れています。海外ではハードとレッドクレー(赤土)が主流ですが、日本で広まっている砂入り人工芝のコートでは、ボールが失速し、弾まないので、強い球や高く弾む球に対応するという基本がおろそかになります。日本にしかない砂入り人工芝での勝ち方を成長期に覚えてしまうと、その後、海外に出たときにテニスを変えるのが難しくなるのです。

――大学院修士課程での研究について
世界トッププレーヤーを目指す国内選手が練習するサーフェスの実態と、それに対する選手やコーチの認識を明らかにしようと調査を行いました。砂入り人工芝が国際大会のサーフェスと違うことを認識していた選手はわずか6%でした。プロを目指す選手の6割は砂入り人工芝で練習していましたし、国内コーチの8割は、“砂入り人工芝での指導が適している”と認識していました。世界のトップコーチの8割近くは、砂入り人工芝での練習を“適していない”と認識していて、日本の練習環境が世界基準と大きく異なることが明らかになりました。

――日本スポーツ産業学会に対する期待
正直言って、私にとって論文の執筆はとても過酷で、ストレスに負けそうになったこともありましたが、最優秀論文賞を頂くことができたことも含めて、充実した成果を残せたと感じています。私自身がどのように研究を続けていけるかは未定ですが、研鑽を深める場としても、また日本テニス界の発展のためにも、日本スポーツ産業学会には大きく期待しています。

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