日本スポーツ産業学会 第9回冬季学術集会リサーチカンファレンス 研究発表(B1-B5)

サッカーワールドカップ日本代表の経歴調査
東洋大学 社会学部 4年 吉田龍真

【背景】
J リーグクラブはアカデミーと呼ばれる育成組織を持ち、アカデミーから J リーグプレイヤーを 輩出し、日本サッカーの強化につながるよう活動を推進している。兼清・平田(2012)は J リーグ のユース出身選手のトップチームでの活躍状況を明らかにし能智ら(2020)は、Jリーグのホーム グロウン制度導入に際するJクラブユースと高校および大学の育成環境の違いから、輩出人数と 活躍状況を明らかにしている。しかし、先行研究の調査対象がユースに限定されておりジュニア ユースまでは調査対象になっていないこと。また、活躍状況についても J リーグクラブのトップ チームの対象に留まり、日本代表への輩出状況までは調査されていない状況であった。
【目的】
サッカーワールドカップ日本代表登録メンバーの中学以降の所属を調査することで、J リーグク ラブの下部組織における日本代表選手の輩出状況や傾向に関する示唆を得ることを目的とする。
【方法】
サッカーワールドカップ 2002 年日韓大会から 2018 年ロシア大会までの 5 大会に選出された日本 代表選手延べ 124 名を対象に、JFA 公式 HP 等の文献調査から中学以降の所属歴の調査を行った。 分析方法は、中学部活、高校部活、大学部活、ジュニアユース、ユース、街クラブの 5 つの所属 歴を組み合わせ、1中学→高校、2中学→高校→大学、3中学→ユース(以下、Y)、4ジュニア ユース(以下、JY)→高校、5ジュニアユース(JY)・ユース(Y)、6ジュニアユース(JY)→ユース (Y)→大学の6つに分類を行った。
【結果】

2002 年日韓大会では「中学・高校」出身選手の割合が 73%と最も割合を占めていたが、徐々に 減少し、2018 年ロシア大会では 35%まで減少していた。大学出身も含めて、J リーグアカデミー に一度も所属せずに日本代表になった選手の割合は 02 日韓大会が 81%から 18 年ロシア大会で 39%まで減少していた。02 年日韓大会から 18 年ロシア大会まで増加が顕著なのが「中学→Y」で02 年日韓大会が 5%に対して、18 年ロシア大会では 35%であり「中→高」と並び最も多い結果と なっていた。18 年ロシア大会と、14 年ブラジル大会以前の傾向の違いとして、「JY→高校」「JY→Y→ 大学」のアカデミーから部活動に所属を変更した割合が 14 年大会 13%から 18 年ロシア大会で 22%に増加していた。また「JY→Y」の選手は、10 年南ア大会、18 年ロシア大会のみでいずれも 4%であった。
【考察】
1.部活動出身選手の減少
02 年日韓大会から 18 年ロシア大会までの傾向として、部活動のみを経験し日本代表選手にな っている選手の割合が減少している点である。つまり、日本代表選手のキャリアにおいて何かし らの形で J リーグクラブのアカデミーに所属した経験があるということを示しており、J リーグ アカデミーのひとつの成果であるとも言える。 2.アカデミー・部活動ハイブリッドブリッドの増加
一方で、日本代表選手のキャリアの中で主流となっているのが、部活動とアカデミーのいずれ もを経験している選手が多い点である。つまり、ジュアユースからユース、ユースからトップチ ームに昇格できなかった選手が、高校や大学の部活動を経験して、J リーグプレイヤー、日本代表 選手になるということを意味しており、必ずしもアカデミーの中で選ばれなかったとしても日本 代表になれるという可能性が示されている。
3.アカデミー出身選手の課題
アカデミーのみを経験して日本代表選手になった選手の割合が低いことがアカデミーの課題と
して挙げられる。本来であれば、アカデミーから日本代表選手を多く輩出することが想定される が、先行研究からもトップチームの選手をアカデミーが輩出はできているものの、日本代表クラ スの選手を輩出できていないことが課題として挙げられる。
4.研究の限界
本研究では、日本代表選手の経歴を調査することで、部活動とアカデミーの日本代表選手の輩 出状況を明らかにすることはできたが、その何故各キャリアの割合に変化ももたらしているのか、 という点については本研究では明らかにすることはできず、今後の課題とする。
【結論】
本研究はサッカーワールドカップの 2002 年日韓大会から 2018 年ロシア大会までの日本代表選 手経歴を調査した結果、部活動のみを経験する選手の割外が減少傾向にある一方でアカデミーと 部活動それぞれを経験した選手の割外が増加傾向にあることが明らかとなり、育成年代の選手の キャリアが多様化していることが示唆された。
【参考文献】
・日本サッカー協会公式 HP、http://www.jfa.jp/、(2022 年 2 月 11 日閲覧) ・兼清文彦、平田竹男、Jリーグクラブにおけるユース出身選手に関する調査、スポーツ産業学 研究、22(1), 91-96, 2012 ・能智大介他、Jリーグのホームグロウン制度導入に際するJクラブユースと高校および大学の 育成環境の違う選手の人数と活躍の実態、スポーツ産業学研究、30(1). 1-11,2020

香川県プロスポーツチームに対する県民の認識-地域愛着の視点からクラスター分析による分類-
東海大学 体育学部 スポーツ・レジャーマネジメント学科

【本文】 1.背景(RQ・目的・研究の意義含む)
香川県には 4 つのプロスポーツチーム(そのうち 1 つは社会人実業団チーム)があり、香川県に居住していた経験から、香川県のスポーツについて感じたことが多くあった。具体的には、香川県在住者や香川県にゆかりのある人(居住経験のある人)はそもそも香川県にある 4 つの地域密着型のスポーツチームの存在を知っているのか、スポーツ観戦と地域へ の愛着または幸福感に関係性があるのかといった点が挙げられる。本研究の目的は、香川 県在住者および香川県にゆかりのある人を対象として、香川県にある「4 つのプロスポー ツチーム」の認知度や観戦頻度および地域愛着や幸福感との関連性を考察し、その特徴を 明らかにすることである。分類されたクラスターごとの特徴を明らかにすることによっ て、県民にとってのスポーツの価値を明らかにすることに繋がるとともに、今後の有効な マーケティング資料となることが期待される。
2. 先行研究のレビュー 先行研究では、特定のスポーツやチーム、スポーツ以外の産業と地域愛着との関連性が
研究されていた (二宮, 2011; 鈴木ら, 2008)が、試合を観戦しに来た人を対象とした研究が 多く、観戦に訪れていない人の特徴も明らかにした研究は少ないことがわかった。したが って、本研究ではスポーツ観戦を普段行っていない人たちも研究対象に含めつつ、香川県 という特定の地域を対象として、スポーツの観戦頻度や認知度および地域愛着や幸福感の 視点から調査を行った。
3. 方法
2021 年 10 月 28 日~11 月 17 日までの 21 日間で、Google フォームを使用したインタ
ーネット調査(n=244)を以下の通り行った。対象者は香川在住者に加え香川県にゆかり のある人(居住経験のある人)とした。有効回答数は 244(有効回答率 100%)であっ た。3 つの地域愛着の尺度(鈴木ら,2008)を用いて、階層的クラスター分析による対象者 の分類を行った。クラスター分析で分けられた 4 つのクラスターごとに、性別、年齢、職 業、現在の居住地、認知度、観戦頻度、そして幸福度とのクロス集計を行った。回答全体 の割合とクラスターごととの割合を比較し、それぞれに対しカイ二乗検定で有意差がある かを調べた。
4. 結果
性別は男性が 44.3%、女性が 54.9%で、職業は社会人 52.0%、学生 46.7%であった。
認知度について、香川県の野球、サッカー、バスケットボールのチームでそれぞれ「知っ ている」と回答した人が最も多く(25%以上)、それらに対しホッケーのチームでは「まったく知らない」という回答が最も多い結果となった(67.2%)。観戦頻度では「観戦した ことがない」という回答が最も多く約 50%であった。クラスター分析の結果、4 つのクラ スターが抽出され、クロス集計を行った結果として、性別、年齢、職業、認知度、観戦頻 度、幸福度において、カイ二乗検定の結果有意差が確認された。クラスター1 では、中程 度の地域愛着があり、観戦頻度において香川県以外のチームのテレビなどリモートでの観 戦の割合が全体に比べ高いことが分かった。クラスター2 は、地域愛着の高いグループで あり、認知度において、全競技よく知っている傾向がみられた。また、幸福度では約 7 割 が幸せを感じており、一番幸福度を感じているクラスターであると分かった。クラスター 3 は、最も地域愛着の低いグループであり、認知度において、全競技よく知らないという 傾向であった。幸福度では、全体に比べ「どちらでもない」という回答が多いことが分か った。クラスター4 は、中程度の地域愛着があり、ホッケーのチーム以外について知って いることが分かった。また、ほとんど試合を観戦したことがないことも分かった。
5. 考察 すべての回答から、香川県民はスポーツに対する関心が低い傾向が見られた。また、地
域愛着を指標としたクラスター分析により分けられた 4 つのクラスターからは、地域愛着 が高いグループは香川県のスポーツに対する関心が高く、幸福感も高い傾向が見られた。 この結果から、地域愛着が高いグループは今後の新規ファンになる可能性が高いグループ なのではないかと考えられ、地域への愛着度が高いグループへのアプローチが最も有効で あると考えられる。また、幸福度が高いという結果から県民に対し、スポーツへの関与が 幸福感を高める傾向が示唆された。
6. まとめ(研究の限界と今後の展望含む) 本研究では、クラスター分析を用いて、香川県に対する地域愛着と香川県内のスポーツ
チームの認知度、観戦頻度との観戦頻度、および幸福度などに関連性があるのかなど特徴 について調査を行った。調査の結果、「観戦しない」「ほとんど観戦しない」と回答した人 が多く、香川県のプロスポーツの厳しい現状を明らかにすることができたのではないかと 考える。また、インターネットによる調査がほとんどで、現在住んでいる若い世代の特徴 を明らかとするための中高生の回答を多く得ることができなかった。今後の発展のために も若者世代の特徴を明らかにすることは必要であることから、今後の研究課題としたい。
7. 参考文献 ・前田和範・富山浩三・吉倉秀和(2013)新規参入プロスポーツチームの観戦者特性―
Push-Pull 要因の視点から―, 生涯スポーツ学研究, vol.9, No1・2
・二宮 浩彰(2011)プロスポーツ観戦者行動におけるチームに対する愛着とホームタウ
ンへの愛着, 同志社スポーツ健康科学, 3 号, 14-21 ページ
・鈴木 春菜・藤井 聡(2008)「消費行動」が「地域愛着」に及ぼす影響に関する研究,
土木学会論文集 D, Vol.64 No.2, 190-200

学生部活動指導員が抱える悩みや葛藤に関する研究
大阪成蹊大学 スポーツマネジメント学科 4年 福田柊哉

【本文】
1. 緒言
学生部活動指導員が抱える悩みや葛藤に関する研究
大阪成蹊大学 スポーツマネジメント学科 4年 福田柊哉
部活動指導員制度は平成 29 年より始まった、教員の負担軽減及び長時間勤務の解消、部 活動の指導体制の充実を図ることを目的としており、部活動において部活動指導員が指導 に従事するという仕組である。一方、現状として、学生を任用する自治体は少なく、都市部 に偏っていたり、報酬に地域差があり、大半が 2000 円未満となっているため人材確保が課 題といった課題が生じている。教員を目指す学生にとってはいい経験になり、今後の部活動 を支える人材になりうるため、学生の採用にも取り組んでいる。しかしながら、学生を活用 することによって、例えば社会を経験していないため、人間関係がうまくいかないことや学 業との両立ができるのかどうかなどといった問題が生じ得るリスクが考えられる。そこで、 学生部活動指導員の実態を明らかにしていく必要があると考え、部活動指導員制度におけ る学生部活動指導員が抱えている悩みや葛藤について明らかにしていくことを目的とした。
2. 方法
A 市教育委員会の協力のもと A 市の現場に実際に配置されている学生部活動指導員 4 名を 対象に半構造化インタビュー調査を実施した。調査内容は、現在部活動指導員として活動し ている中でどんな活動をしているのか、部活動指導員の立場や役割をどのように認知して いるのか、そのような立場からどのように考えて組織の運営を行っているのかについて、尋 ねた。
3. 結果・考察



このような結果が得られたのは、顧問の多忙化や指導力不足が問題視されており、部活動指 導員制度を導入しても改善されておらず、教員の多忙化などの問題が学生部活動指導員に も影響を及ぼし、それが部活動の運営にも影響していると考えられる。
4. 結論 本研究の目的は、部活動指導員制度に着目し、学生部活動指導員の悩みや葛藤を明らかにす ることであった。調査の結果、悩みや葛藤には様々なものがあり、「担当教諭との共有がう まくいかず、多忙なため、話しかけずらい。」、「担当教諭が最終的に決断するため、決定権 はない。」「学生部活動指導員として部活動の運営に携わらなければいけないが、実際に経験 したことがない環境下であるため自信がない。経験不足なのが不安。」、「生徒について相談 することはできるが、直接生徒に指導することができず、不安にもつながっている。」とい うことがわかった。これらの学生部活動指導員の悩みの原因としては部活動指導員の役割 や立場についての認知が低いことや認知していても学校側が求めている人材とは違ったり するためだと考えられる。このように得られる効果は大きいため、より密接な関係を築いて いくことができると良いと思われる。
主要引用参考文献
・岡田拓真(2018) 「部活動指導員」の制度化に関する研究-学校における顧問教員との連携 に焦点を当てて 『修士論文抄録:びわこ成蹊スポーツ大学大学院修士課程 2018 年度』 ・北神正行(2018) 教員の労働環境と働き方改革をめぐる教育政策論的検討」『学校経営研究』 ・古川拓也(2016) 中学校運動部活動顧問教師のストレッサーに関する研究 運動部活動顧 問教師用ストレッサー尺度の作成及び属性間による比較検討」『スポーツ産業学研究』

B リーグのスポーツスポンサーシップ目的 -都市型、地方型チームの特色-
大阪成蹊大学 経営学部 スポーツマネジメント学科 4年生 伊藤 千敬

【本文】 1. はじめに
B リーグのスポーツスポンサーシップ目的 -都市型、地方型チームの特色-
大阪成蹊大学 経営学部 スポーツマネジメント学科 4年生 伊藤 千敬
B リーグの収入構造においてスポンサー収入の割合は B1 で約 56%、B2 で約 60%とな っており、スポンサー収入は集客と同様かそれ以上に重要度は高いといえる。そんなスポ ンサー収入を確保するためにはチームとスポンサー企業のスポーツスポンサーシップ目的 を明確にすることが必要である。そこで、都市型チームと地方型チームのスポーツスポン サーシップの特色を明らかにする。
2. スポーツスポンサーシップについて スポーツスポンサーシップとは、「スポーツイベントやクラブ、チームを経営するスポ
ーツ組織と、それらに資金や資源を投資または支援する企業との相互交換関係」と定義さ れている。この相互交換とは、スポーツ組織であれば資金の獲得等、企業であればブラン ドイメージ向上や地域貢献等といったそれぞれが持っている目的を達成するためにお互い が有する価値を交換することを言う。
3. 調査方法 調査方法は、大阪エヴェッサ(都市型)・バンビシャス奈良(地方型)のチーム関係者
に自由回答型アンケートを、各チームのスポンサー企業に対して選択式と自由回答式のア ンケートを行い、バンビシャス奈良の代表取締役である加藤氏にヒアリング調査を行っ た。
今回のスポンサー企業対象のアンケート調査では、大阪エヴェッサから合計 4 社、バン ビシャス奈良からは合計 7 社、計 11 社のアンケート調査の回答を得た。
4. 調査結果


調査結果として、表 1、図 1 より以下のことがわかった。都市型チームのスポンサー企 業には、表 1 で地方型チームのスポンサー企業と比べた時に、スポンサー目的の重要度が 高いことから「スポンサー企業のスポーツスポンサーシップ目的が多い」と言うこと。次 に図 1 から「スポンサーグレードが高くなるほどスポーツ組織に求める価値提供の量が多 くなる」と言うこと。
次に、地方型チームのスポンサー企業には、表1より「多くのスポーツスポンサーシッ プ目的を持っているわけではない」と言うこと。他には、「全てのスポンサーグレードで 地域貢献・社会貢献活動を特に重要視している」という特色があると言うこと。
さらに、表1から都市型、地方型チームどちらのスポンサー企業もスポーツスポンサー 目的において「地域貢献・社会貢献活動」が最も重要度が高いという結果となった。
5. さいごに この結果から、都市型チームはスポンサー企業に対して提供する価値の種類を増やし、
スポーツスポンサーシップ目的を達成するためスポンサーグレードごとに求める価値を提 供することが必要となり、地方型チームはスポンサー企業に対して地域貢献・社会貢献活 動のスポンサー目的を達成するための価値を多く作り出し提供することが必要といえる。
そうすることで、B リーグのチームはスポンサー企業の新規獲得、既存スポンサー企業 のスポンサー料増資へ繋げることができ、B リーグ全体がスポーツスポンサーシップによ り収益を伸ばすことができると考える。

公式 Twitter のツイート内容と利用者の反応の関係性 -日本野球機構と日本女子ソフトボールリーグの公式 Twitter に着目して-
大阪成蹊大学 経営学部 スポーツマネジメント学科 4年 桂木希実

【本文】 1. 背景
現在、SNS は Twitter や Instagram、LINE、Facebook など様々な特徴を持つサービス が登場し、多くの人のコミュニケーションツールとして活用されている。中でも Twitter は リアルタイム性が強みであり、スポーツと親和性が高く、特にスポーツファンに好んで利用 されている。
スポーツと SNS に関する研究では、横浜 DeNA ベイスターズの公式 Twitter に注目した 研究(市川,2020)、メジャーリーグの Twitter の利用状況に関する研究(Watanabe ら,2015)、 J クラブの Twitter の利用傾向の研究(吉見, 2016)などがあるが、日本のスポーツリーグ の公式 Twitter における投稿内容とユーザーの反応の関係性に関する研究はまだ緒に就い たばかりである。
2. 研究目的
日本女子ソフトボールリーグ(JSL)の公式 Twitter より発信される内容とそれに対する ユーザーの反応(RT、いいね)の関係性を明らかにするとともに、日本野球機構(NPB) でも同様の反応を調査し、その違いを比較検証することを目的とする。
3. 研究方法
JSL と NPB の公式 Twitter を対象とし、2020 年 1 月 1 日~12 月 31 日につぶやかれた 合計 6,668 件(JSL は 3,954 件、NPB は 2,714 件)のツイートを収集した。対象期間内に 投稿されたツイートの日付や時間帯、静止画や動画の有無、文面、RT 数、いいね数を抽出 した後、投稿内容をキーワードや文面から種類別に分類した。
JSL では、試合情報や試合結果等試合に関する「試合要因」、監督やコーチ、選手に関す る「選手要因」、チームに関する「チーム要因」、メディア出演等に関する「メディア要因」、 日本代表に関する「日本代表要因」、「その他要因」の計 6 要因 31 項目に分けることができ た。一方、NPB では、「試合」、「選手」、「メディア」、「その他」の各要因のほか、ドラフト 会議などに関する「イベント要因」の計 5 要因 13 項目に分類できた。
ツイートの投稿月、曜日、時間帯、動画と静止画の有無、ツイート内容をダミー変数を用 いて独立変数とし、RT 数といいね数を従属変数として、IBM SPSS Statistics 27 を使用し て重回帰分析を行った。
4. 研究結果
JSL の RT 数に関する分析結果を表 1 に、NPB の RT 数に関する分析結果を表 2 に示し た。JSL では 58 変数のうち 28 変数が、NPB では 40 変数のうち 14 変数が RT 数に影響を 与えていた。また、いいね数に関しては、JSL では 58 変数のうち 27 変数が、NPB では 40 変数のうち 15 変数がいいね数に影響を与えていた。

5. 結論および考察
JSL の Twitter では、動画や静止画の使用、勝利者インタビュー、誕生日などの要因が
RT 数に正の有意な影響を示し、主にチーム要因が負の有意な影響を示した。これはチーム 要因に分類された投稿がすべて、各チームが SNS で情報発信したものをリーグが再投稿し た形で新たな情報は何もないためだったと考えられる。「日本代表要因」と「その他要因」 は有意な結果を示さなかった。一方の NPB は、試合告知・情報、選手・監督公示、表彰な どの要因が RT 数に正の有意な影響を示し、試合結果や e スポーツといった項目が負の有意 な影響を示した。「イベント要因」は有意な結果を示さなかった。
両リーグとも共通して、シーズン前半の 4~5 月の時期や、選手に関わる投稿が RT を呼 びやすいことが分かった。逆に両リーグで大きな違いが見られたのは、JSL 特有の投稿で ある各チームの情報(チーム要因)と、試合への意気込みや勝利者インタビューなどの試合 要因である。ソフトボールはメディアで取り上げられることが少ないマイナースポーツで あり、試合告知やリーグ順位など試合に関する情報を積極的に発信することが重要であろ う。さらに、試合情報と並行して、選手の姿がもっと見えるような動画を発信していくこと が効果的であると考えられた。
本研究は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた 2020 年の投稿を対象とした。その ため、新型コロナウイルス流行前のような期間での調査も今後、必要であると考えられる。

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