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日本スポーツ産業学会 第26回学会大会シンポジウム スポーツ産業とスポーツコミッション

日本スポーツ産業学会 第26回学会大会シンポジウム
スポーツ産業とスポーツコミッション
柴山昌彦│株式会社丸富社長
松田裕雄│株式会社 Waisports ジャパン代表取締役
梶谷俊介│おかやまスポーツプロモーション研究会代表 岡山トヨタ自動車株式会社代表取締役社長
モデレーター 松橋崇史│拓殖大学商学部准教授

松橋 今日、スポーツコミッションの設置は政府、自治体主導で推進され広まっています。この動きをより発展的に進め、経済的な波及効果を高めて産業化していくためには、民の力、企業やNPO、市民の力をどう活用するのかについて考えていく必要があると考えています。民の発掘と育成、官民の連携や推進が重要です。このシンポジウムでは、スポーツコミッションの設立と運営における官民協働のポイントを 3名のシンポジストと共に考えていきたいと思っております。 一人目は、新潟県三条市の株式会社丸富社長、柴山昌彦さんです。
丸富社は、大手農機具販売を本業とした、昭和10年創業の老舗企業です。公共スポーツ施設、指定管理の業務委託を合わせると、トータル60以上の施設に関与しながら、さまざまな独自事業を地元で展開しております。今日は、その中でも象徴的な、三条市民球場で実施しているプロ野球ファーム戦について、実施の背景や自治体との連携について、ご紹介いただきます。
二人目が、株式会社Waisportsジャパン代表取締役の松田裕雄社長です。
筑波大学の体育系の教員として12年間勤務された後に、筑波大学発のベンチャーとして、2年前に会社を創設されました。会社でも研究テーマであった、スポーツを通じた不動産価値向上を果たすために、具体的にスポーツを通じた人づくり、場づくり、まちづくりを実践しておられます。今日は取り組みの一部をご紹介いただきます。3人目は、おかやまスポーツプロモーション研究会の梶谷俊介代表です。梶谷さんが代表を務めてられているおかやまスポーツプロモーション研究会には産業界やメディア、金融、研究機関、自治体の有志などが、トータル90名ほどが参加して、その研究会がプラットフォームとなって、いろいろな活動を生み出したり、担い手となる「個」を発掘するような取り組みを行っています。
それでは早速、三者三様の取り組みをご紹介いただきましょう。
柴山 私どもの会社がこの三条市でスポーツ振興にかかわる契機となったのは、2004年の7.13水害で、どうすれば人のためになれるかを真剣に考えたことでした。水害以前より、三条パール金属スタジアム(三条市民球場)の芝生管理などに携わっていたことから、復興の意味を込めて、阪神タイガースOBによる子供野球教室を開くといった経緯を経て、2008年に、野球場を核としたまちづくり「ボールパーク構想」の提案が評価され、球場を含めた三条市総合運動公園の指定管理者となりました。1万4, 800人入るメインの野球場を核にして、人が集い、そこから何かが生まれる。人づくりを一番大事な根本とした、まちづくり、賑わえる装置ができたらと考えました。
指定管理は1社で、市からのお金は6,000万円ほどです。
事業概要は、野球場とtotoの補助金で芝生化した2つのサッカー場、芝生広場、ソフトボール場として使用できる運動広場、そしてトリムの森というアスレチックなどが配備された森林スペース。あとは指定管理を受けてから、未整備地区にドッグランエリアをつくりました。「非スポーツ」の観点も重要で、運動する人、野球をする人だけではなく、市民が集える、そういう場所になっています。
2011年7. 29水害の復興支援として、元サッカー日本代表の森島寛晃さんを招いたサッカー教室や、20 08年には欽ちゃん球団、2009年からプロ野球のファーム戦を開催しました。プロ野球の誘致と地域の支援については「子ども夢チケット」ということで、三条と近隣で1万1,000人ぐらいの子供たちに無料招待券をプレゼントして地域貢献に賛同してくれた三条の企業に応援してもらっています。また、冬場は利用できないと思われがちな野球場で、毎年2月に球場の感謝祭を開催し、賑わいを創っています。
2013年から始まった2巡目の提案書には、育てる、人をつくろうということを明確に打ち出し、多様性を受け入れ、ふるさとを愛せる人をつくりたいという思いを書きました。その冒頭には「金銭至上主義からの脱却」という言葉も入れて、本当に人を育てることにお金を使って良いんじゃないかという、逆提案をしました。また、2015年には大学野球のサマーリーグを仕掛けました。最初は慶應と明治だけだったのですが、3年目となる今年は6校が参加し、会場も三条、長岡、見附と3か所に増えました。
来年2018年からは3巡目に入るのですが、今度はB-town三条3. 0ということで、「スポーツまちづくり」、をテーマに、する人、観る人、支える人、育てる人、さらに、創る人を展開していこうと考えています。
現在、スポーツ関連でいえば、私が代表を務めるNPOで、地域おこし協力隊を受け入れてハンドリングしています。地域活性化のために単なるスポーツ合宿だけじゃなくて、スポーツ×地元にある文化とか、スポーツ×自然体験など、三条下田でしか体験できないモノ、コトを提供できたらと思います。今後は、トップアスリートと企業を連携させて、新しいサービス、スポーツ関連の事業を創ろうと思います。今は、ちなみにBMXで2020年の東京オリンピックを目指す菊池雄選手と、元Jリーガーの永井篤志さんの2名に、地域おこし協力隊として、競技活動をしながら、まちおこしにも取り組んでもらっっています。
最後に、これは農業分野ですが、五輪峠という芋焼酎をつくりました。「五輪峠」は実際に下田(しただ)にある峠の名前ですが、今年は1,300本が完売で、来年は2,000本に挑戦しようと取り組んでいます。売り上げの一部は2020年の東京パラリンピックを目指すスポーツに寄付する予定で、経済的な価値と社会的な価値の両立を目指すつもりです。松田 Waisportsジャパンは、筑波大学発のベンチャーで、大学の価値を社会還元すること、コミュニティーの価値を高めること、そしてスポーツの価値を高めること、この3つがミッションです。スポーツを通じた人・場・まちづくりの計画的一体型開発マネジメント、最終的には街の不動産価値を上げるというところが目標になります。そして、スポーツを通して生産された人材が、新しいビジネスをつくり、それに対して投資する機能を持つこと。1億円出資していただける方を募集中ですので、よろしくお願いします。
最初に紹介したいのは企業や官公庁向けの人材プログラムです。一言で言うと、女子高生チームの監督をやってみることで、自分の専門外の領域、自分より技術を持った人材を部下に持ったときに、どうマネジメントするのかということを学習するプログラムです。
2つ目は場づくりで、バレーボールの社会人活性化プロジェクトです。3つのレベル別大会で、国内外から230チームが参加しています。戦績よりも、多くの人たちが交流して、新しい文化を生み出していくことを重視していますので、とにかく交流の場をつくる。例えば、合魂パーティー、魂を合わせるパーティーということで、ビール会社に協賛をしていただいて行っております。国内の郷土品とか観光地との提携もして、日本の良さを知ってもらうことも目的としています。 そして最後は、今はやりのエリアマネジメントで、茨城で、 日本ハムファイターズという民間企業が前面に出て、市場開発と一体型の地方創生ということで活動しています。ファイターズがこの話に乗ったのは、根差す理念と目指すイメージの一致以外に,関東圏では茨城にプロ野球のフランチャイズがないということ、、また日本ハムの関東最大の工場が、常総市、筑西市にあるといったつながりもありました。このプロジェクトを始めるときに、周辺の首長さん全員を東京ドームに集めて、試合観戦をしながら、説明させていただきました。スポーツ振興を目的としたスポーツマネジメントではなく、確実に地域を活性化することを目的とした地方創生のスポーツマネジメントですというお話をして、担当窓口もスポーツ振興課ではなく、地方創生の担当か、秘書課か、市長公室にするよう訴えました。
最終的なアウトプットは、やはり制度設計の変革です。茨城でしかできない制度をどうつくるか。いわゆるスポーツ運用に関する特区化です。半分冗談ですけど、4年に1回、市民運動会をやって、勝ったところにファームが移動しても良いのではという話もしました。
最後に、このようなスポーツを通じた大規模な地域開発や活性を推進していく上で一番重要な、資金調達についてです。その手法は今、地方創生という形で国からということがひとつあるんですが、できればそういうのではなくて、アメリカで街の開発のためによく使われているTI F(Tax Increment Financing) やBID(Business Improvement District) のような民間からの資金調達で行いたい。日本では難しいとは思うのですが、助成金とか協賛金に頼らず、身銭を切って夢を描いて、一緒にやるような取り組みにしていかないと。このファイターズとのプロジェクトは、できればそういう形にしていきたいという話をしています。
梶谷 おかやまスポーツプロモーション研究会は、月に一度、経済人から学生までいろんな方が集まって、さまざまなテーマについて楽しく議論する会で、研究会の後は必ず懇親会をやって、わいわいと酒を飲みながら、いろんな話をしています。
この研究会ができたきっかけは、ちょうど四国アイランドリーグがスタートした頃、岡山にも独立した野球のプロチームが欲しいよね、というところが始まりでした。そういった活動をしていく中で、実は岡山には、ファジアーノ岡山というサッカーチームや、岡山シーガルズというバレーのVリーグに参加しているチームもあることに気づきました。まだ財政基盤も弱くて、今あるチームを、市民がみんなでサポートできるような地域になってからでないと、野球をやると共倒れになるということで、まずはこの2 チームを我々で応援できることはないかというところからスタートしました。また、大学も地域とつながらなければということで、岡山大学地域総合研究センターができて、一緒にやろうということになり、2014年の10月にこの研究会を立ち上げました。
この研究会は会則もなければ、会費もないということで、
最初は9の組織、23名が寄りました。スポーツ関係ではシーガルズ、産では岡山商工会議所の青年部とスポーツ支援委員会、まちづくり委員会、私が委員長をやっていた岡山経済同友会の地域振興委員会、それからマスコミの発信力が要るということで、地元の新聞社と放送局に声をかけました。現在では、組織で言うと40を超え、総勢90名ぐらいの方がかかわるようになりました。設立当時は官は入っていませんでしたが、今では岡山市の方にも積極的に参画いただいておりますし、岡山駅西口にアリーナやスタジアムがあり、そこの地元の商店街の組合の方にも入っていただき、地域とスポーツをいかに結びつけるかというようなことも始めています。そして今年の3 月から、おかやまスポーツコミッション設立検討委員会を立ち上げました。それまで「研究会」という形でスポーツコミッションやスマート・ベニューについて勉強してきたのですが、改めて岡山県、岡山市の方も巻き込みながら、正式な形でスポーツコミッションを設立する検討を進めています。今は外部を呼ぶというより、まずは多くの大会に、スポーツ関係者だけではなく、地域の人がかかわって、交流を生めないかなと考えています。それから地方創生アリーナ構想。これは岡山シーガルズというバレーのチームに専用練習場もないということで、何とかアリーナをつくれないかということです。
スマート・ベニューの視点も入れながら、どのようなアリーナをつくっていくのか、どうやってお金を集めるのかということを、商工会議所や経済同友会、また、岡山県の経済6団体、大学等に声をかけながら、具体化に向けて検討を始めようとしています。そのためにまず、基幹となるチームそのものの経営課題についてもしっかりやっていこうということも動き出しています。
その他、スポーツ庁の補助事業としてスタートした地域で部活動を支えるプロジェクトやプロスポーツ試合時の渋滞緩和プロジェクト、そして、障害者スポーツを地域で活性化していくための活動を始めたり、オリ・パラに向けた代表チームの合宿誘致支援、いろいろなことが生まれてきています。
スポーツプロモーション研究会は、まちとスポーツの“自分ごと化”です。まちに誇りが持てて、スポーツまちづくり、スポーツというものを使いながら地域のことを知る。逆に、地域に誇りを持つことによって、スポーツコンベンション等のデザイン、外部への発信力を生み出していくと、こういったサイクルを回していこうとしています。
2年半やってきてよかったなと思うのは、最初から、組織づくりではなくて、面白そう、やってみようというところからスタートして、それが、人が人を呼んで、いろんな可能性が生まれてきている。ここへ行くと何かあるんだという、それがスポーツプロモーション研究会の魅力ではないでしょうか。 松橋 さて、ご紹介いただいた3つの事例を少し整理をしたいと思います。
柴山さんは指定管理を務める野球場をより魅力的にしてまちづくりにつながるように、多くの方の支援を受けながら、様々な独自事業を展開しているという事例です。松田さんは、大学との連携を端緒として大きな提案力とバイタリティーで周りを巻き込みながら進み、その取り組みが単一の地域にとどまるのではなくて、いろいろな地域に広がっている事例です。梶谷さんが率いるおかやまスポーツプロモーション研究会は、スポーツでまちづくりを推進するためのプラットフォームを作る中で、様々な活動の担い手が生まれて、本シンポジウムのテーマでもあるスポーツコミッションについてもその担い手が出てきた、という事例で、大変興味深い事例です。一方で、他の地域で、誰がプラットフォームをつくるのかということは大きな課題で、そのための方法論がないと、担い手としての「個」の発掘や連携に進んでいかないだろうと思います。
それでは、フロアから質問をいただきたいと思います。
質問 松田さんは、スポーツ振興のためのマネジメントじゃないというお言葉でしたが、梶谷さんはスポーツ振興と、スポーツによる地域振興という2つのミッションを出しておられました。スポーツコミッションとは、スポーツ振興ではなく、地域振興のためのスポーツの活用という考え方なのでしょうか。
松田 そうですね。過激な発言をしたのは、自治体の首長さんたちにわかりやすくするためなのですが、実際の目的はスポーツ振興ではなくて、手段がスポーツ振興で、スポーツをする人をふやすというよりは、スポーツを通して、例えば自分の体のことについて勉強していただいて、それがQOL の向上や医療費の削減につながり、もっと別の楽しいことにお金を使っていただくということにつながっていくことが重要です。スポーツ振興が目的になってしまうと、ファンにしか響かないんですよね。もちろん、スポーツ振興をないがしろにするということでは全くありません。
梶谷 私も一緒です。スポーツを使っていかに地域を元気にするか。地域を元気にするためには、スポーツも元気にならなければいけないということです。スポーツだけ元気になってもだめで、スポーツの持つ発信力や求心力を使って、地域の魅力をどう高めていくか、そのことに地域の人が自ら関わることによって、地域が変わるのだと思っています。質問 私はプロ野球の2軍リーグとか3軍リーグが地方展開をすると、Jリーグが埋められない日本の地域が埋まっていくんじゃないかと思っています。年間を通したリーグじゃなくても、アメリカには短期リーグみたいな仕掛けがあって。鎌ケ谷、茨城のお話だけではなく岡山や三条でも、プロ野球の2軍、3軍を誘致すると、恒常的スポーツコミッションになってくるのかなと思うのですが、その辺りについてお考えをいただければ。
柴山 ある球団とご縁があったので、実は3軍をぜひつくってくれないかという提案をしました。地域おこし協力隊のスキームを使って。球団側がOKと言えば話が進んだのですが、成就しなかったですね。
本当に野球でもサッカーでも女子バスケでも、チームを1 つ預けてもらったら、そこそこやれるかなという気持ちはありますね。
松田 高校野球という文化と抱き合わせながら、地域の高校生にフォーカスを当てるようなことを2軍、3軍と一緒にやれるといいのではないかと思います。
梶谷 我々も野球はまだ諦めていなくて、毎年12月に野球教室をやっています。子供たちにはサッカーのほうが流行っていますが、色々なスポーツが地域で根づく。やっぱり身近にそういったアスリートがいて、スポーツだけではなしに、1 つの生き方のモデルみたいなものを示してもらえると、非常に良いのではないかと思います。

▶本稿は、2017年7月16日(日)立教大学池袋キャンパスで開催された第26回学会大会シンポジウムの講演内容をまとめたものである。

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