• HOME
  • ブログ
  • SYMPOSIUM
  • 「トップが語るアビスパ福岡のホームタウン戦略とそれを支える地元企業・行政の取り組み」

「トップが語るアビスパ福岡のホームタウン戦略とそれを支える地元企業・行政の取り組み」

●7月11日(日)13:00-15:00 実行委員会企画②
「トップが語るアビスパ福岡のホームタウン戦略とそれを支える地元企業・行政の取り組み」

登壇者:
アビスパ福岡株式会社 代表取締役社長 川森敬史
株式会社ふくや 代表取締役社長 川原武浩 (AGA常務理事)
福岡地域戦略推進協議会 事務局長  石丸修平
司会:磯貝 浩久(九州産業大学 教授)

【概要】
アビスパ福岡は、1995 年に福岡市をホームタウンとするクラブチームとして誕生。福岡市をはじめとする福岡県の各地域、企業、サポーターに支えられながら、地域に根ざしたクラブとして発展してきた。
ホームタウン活動は福岡市だけでなく、2017 年にホームスタジアム近郊の宇美町との間でフレンドリータウン協定を締結したことを皮切りに、現在まで数十の市町村と協定締結。「地域活性化とスポーツ文化の振興」「地域に根ざしたスポーツクラブ」および「地域に生活する人々とともにスポーツを通じて子どもたちに夢と感動を、地域に誇りと活力を与える」ことを中心に据えてホームタウン活動を展開している。
2015 年に社長に就任した川森氏は、経営再建と効率化に向けた様々な改革を実施。スポンサー数が数倍に増大し、観客動員も順調に増加している。そのアビスパ福岡を古から支えてきた代表企業であるふくや社長の川原氏は、アビスパグローバルアソシエイツの常務理事の立場からも支援を続けてきた。また、福岡市の福岡地域戦略推進協議会(FDC)も石丸事務局長を中心に長年に渡りアビスパ福岡を支援している。
本シンポジウムでは、川森社長からホームタウン戦略についてお話しいただき、川原社長から地元企業の支援のあり方、石丸事務局長からは福岡市の支援のあり方を語っていただき、クラブ、地元企業、行政の3者の思いを含めた地方の事例から、真に有効なホ ームタウン戦略について検証した。

アビスパ福岡のホームタウン戦略

川森 アビスパ福岡は、「地域の皆様と発展していこう、スポーツを通じて地域に貢献していこう」と言う理念を持って活動しているクラブです。クラブ名の由来はラテン語AVIS(飛び立つもの)から派生したスペイン語AVISPA(蜂)で、「熊ん蜂」をモチーフにしたマスコット「アビーくん」と「ビビーちゃん」は、市民の公募で選ばれたキャラクターです。2003年にはアビーくんとビビーちゃんは結婚したんですけれども、まだ子どもはおりません。人口も減って来ておりますので、そろそろ子どもが出来てもいいのかなと最近感じております。
私共は、チーム、クラブスタッフ、そして市民の皆様へ、名実ともに市民クラブであるということを発信させていただき運営をしております。
例えば、2015年から来場者の皆様に選手がピッチから一礼をして感謝を表現しています。昨日の横浜F・マリノス戦、三ツ沢のニッパツスタジアムは、スタンドとピッチの距離が非常に近いスタジアムですけども、いつも通り私共の選手がピッチへ出て四方向にお辞儀をしたら温かい拍手をマリノスのサポーターさんからいただきました。昨日は残念ながら3-0の敗戦でございましたが、ピッチを去る際にも選手たちがメインスタンドに向かって一礼「ありがとうございました」と言って、ロッカールームに入ってきました。その時にも何人かのマリノスサポーターの方が写真にそれを収めて、「すごく爽やかで、スポーツマンシップっていいね」というツイートを出されているようです。市民クラブとして感謝の気持ちをもって、常にフェアプレイとリスペクトの精神をもって活動していこうという思いを表現させて頂いております。
さらに、地域との共生という意味で、近隣市町村、そして福岡市の都市圏各地へ、首長の皆様とお会いをさせていただき、アビスパ福岡とのフレンドリータウン協定書の締結を推進しております。直近では、久山町とスタジアムで調印式を行いました。

支援組織AGA(AVISPA GLOBAL ASSOCIATES)には、名誉顧問会議が設置され、髙島市長をはじめ、福岡市、そしていわゆる七社会の皆様にメンバーになっていただきまして、ある時は朝7時半から、皆様に経営に対してのアドバイスを色々いただいています。AGA常任理事会は、川原社長もメンバー(常務理事)としてサポートをいただいております。AGA理事会には、九産大・磯貝教授にもいつもご参加いただいておりますし、近隣自治体の皆様にも支えていただいています。その他サポーターの皆様、スポンサーの皆様、そしてアカデミーの保護者の皆様、スクールの保護者の皆様、本当に皆様にお支えをいただきながら、運営をさせていただいているクラブでございます。
よくご質問をいただきますが、AGAがどんな組織なのかというと、スポンサーの獲得をはじめ、行政や地元経済界との関係強化など、地域の発展や青少年の育成に貢献するという大義のもとに、AGAの皆様にもご活動いただき、Sponsored企業をご紹介いただいています。2014年の12月に発足を致しまして、会員数も増えて組織も拡大しております。
FCバルセロナのソシオと呼ばれる会員制度に倣いまして、スタートしたのですが、現在では個人会員37,752名という、全国の皆様に会員になっていただきながら、常任理事、理事企業の皆様と毎月会議をさせていただき、アビスパの活動報告、そしてアドバイスをいただいているところでございます。
AGAの皆様がどのような経済的貢献をアビスパにしていただいたのか。「なぜAGAでアビスパを支援しようと思いましたか」と言うアンケートの結果、アビスパ福岡の理念に賛同しているというのが44%。その他、サッカーが好きですとか、地元に貢献したいとか、そういった理由でAGAに手弁当で皆様参加をいただいているということでございます。そして、広告料収入とAGAの拠出割合を見ていただきますと、5割を超える割合でAGAの皆様に広告料のご支援をいただいている。自らAGA企業の皆様がスポンサードいただいているということもございますし、そういう企業をご紹介いただいているというケースもございます。直近2020年ですと、7億5,600万円の広告料収入に対して2億6,800万円の拠出を頂いています。

アビスパの財務経営状況

今シーズン私共は、「5年周期(4年目にJ1に上がり、翌年J2に降格するという5年の周期)を終わらせる」、「ジンクスを打ち破る」という表現を合言葉として活動させていただいております。
今年はコロナ禍の変則レギュレーションで、J1で4チームが降格するというのは、歴史上始まって以来のことでございまして、実際に戦っているクラブからすると、本当に戦々恐々と言うところで、各クラブさん、この夏にものすごく補強してきておりますし、やっぱりJ1チームで御座いますので、前半でどんどん修正して、チームを仕上げてきておりますので、簡単にはいかないと思っています。

去年のJリーグクラブ決算をみると、単年黒字が19クラブのみで、53クラブのうち64%にあたるクラブが赤字ということでございます。そして債務超過クラブ数は、J1で3,J2で3、J3で4ということで、資産超過(いわゆる健全)が43クラブでございます。私共このJ2の3クラブのうちの1クラブとして、実は債務超過に入っておりました。今はすでに解消しております。その要因に関しては、この後ご説明を致しますが、私共はファイナンスとして、新株予約権無償割当てで債務超過を回避しております。ふくやさんにも本当にご協力を頂いて、今この2021シーズンを戦っていると言うところでございます。

表に挙げた費目についてですが、前回2015年のJ1昇格時とJ1実績の数字、そして去年の昇格時の数字と、今年の昇格時の目標数字で並べ替えさせて頂くと、いろんなものが見えて参ります。
広告、入場料、グッズは、前回の昇格時は、ほぼ手を打ててないなというのが数字から見て取れます。2015年に私自身も代表になりまして、あれよあれよという間に一年で昇格を果たし、気づいたら一年でまたJ2に戻っておりました。今回の昇格は、昇格が決まった段階で、お祭り騒ぎではなく、いかに準備をしてJ1を戦うべきか、というような勉強をさせていただきました。2021年の目標数字と2016年のJ1実績を見ていただきますと、広告は二倍でございます。やはりそれぐらい気合を入れて、しっかり売上を高めていかないとJ1は戦えない。勢いだけでは残れないリーグだというのは身に染みて感じております。
入場料もそうでございます。コロナ前は、例えばサガン鳥栖さんも10年J1で頑張っていると入場料は年間8億円くらいとなっています。やはり入場料でしっかりPLに計上して行かないと1年戦い切れないリーグだということ。他のクラブと比べたときに、入場料が1億4,600万円ってまだまだ伸びしろがある。で、コロナ禍ですが4億1,000万円へとストレッチしましたが、それでも平時の鳥栖さんの半分。やはりまだまだ学ばなければいけないことがたくさんあるな。と言うようなことも含めての並び替えの数字でございます。
グッズもそうでございます。1億6,700万円。前回の昇格時は特に手も打つことなく、なんとなくJ1に行ったので売れたのかなっていう1億1,200万でしたが、今回は去年の9,100万円の売上に対してストレッチして、いろんな工夫をしながら1億6,700万円やっていかなければいけない。でも、先日対戦したエスパルスさんは従来でも3億~4億円販売している。やっぱり僕たちもそこまで行けるぐらい、ファン・サポーター皆さんに喜んでもらえる商品やサービス、アイディアなど、さらに販売戦略を練って行かないといけないんだということを感じております。
配分金は、前回の昇格時はDAZNさんがなかったんですね。DAZNマネーと言われておりますが、例えば2015年は1億500万円だったのが昨年は1億6,400万円。今年はJ1で約4億です。でも前回2016年は、DAZNマネーがございませんでした。2億1,900万円と言うことで、こういうところにも違いが出ております。
スクール、アカデミーはそんなに違いがございません。右側「その他」。2015年の5億6,900万円。ここの数字は、ある外国籍選手の移籍金がその年にありまして、クラブとして大きな収益になりました。その他、アカデミーで数字が数千万円上がっています。これは皆さんご存知の東京オリンピック2020代表の冨安選手が、元所属選手として貢献していただいている、ソリダリティインセンティブが入っております。トップチームよりもアカデミーにいた年数が長いものですから、アカデミーのPLに計上されると言うところでございます。ちなみに移籍があった場合は移籍金なので、その他になります。

続きまして、なぜ予算をストレッチしているのか、と言うことですが、2019年のJ1チームのチーム人件費は、神戸の69億円超から大分の8億6千万円まで様々ですが、私共2020年(J1昇格年)は9億6,800万円。下から数えて2番目でございます。今年アビスパを20位と順位予想した評論家の皆さんは、前年のチーム人件費を見て20位に置いているというのも、ひとつの根拠としてあると思います。9億6,800万円で今年戦っても最下位と言うことではございませんが、2016年の経験を踏まえてここはストレッチしてチーム人件費をしっかり予算(17億円)として持って戦わないと、と言うところで頑張っております。

入場料についてですが、ファン・サポーターの皆様にはご負担をいただいて恐縮しております。私共今年シーズン前に一度値上げをさせていただきました。そして想定よりも緊急事態宣言が長引くこともあり、シーズン中に2回目の値上げをさせて頂きました。かつその2回目の値上げをさせて頂いたうえで、ダイナミックプライシングを導入させていただいております。本当に皆様、それでもスタジアムに来ていただけることに大変感謝をしております。去年コロナ禍で前売り当日チケット単価は2,124円が平均でございましたが、現時点で3,578円です。直近の神戸戦は5,115円という最高単価を示しました。これは、ニッパツスタジアムで神戸とマリノスさんがやった時の最高単価とほぼ一緒ということで、今のところ5,000円を超えた単価というのは、現時点では1番高い単価のようでございます。
またそのようなことから、来場者数がかなり減っているのではないですか、と苦言をいただくこともございますが、同し試合数で比較しますと、2020年の平均来場数は2,223名でございましたが、現状4,882名でございます。ガイドラインでアウエーの皆様にほぼご来場いただけない試合が多い中で、アビスパのファン・サポーターの皆様にご来場いただいております。心より感謝を申し上げたいと思います。幸い、福岡はまん延防止等重点措置も解除されております(注:2021年7月11日時点)ので、今度のガンバ大阪戦も1万人収容でビジター席を設けて、スタジアムで開催できます。これからもしっかりガイドラインをみんなで守って、大勢の皆さんに応援に来ていただきたいと思っております。先ほどちょっとサイトを覗きましたら、1万人収容になって、チケットを再販しましたところ、チケットの販売数がかなり伸びて、もう残りがあまりないようなことになっておりましたので、こういうところでも、本当にファン・サポーターの皆さん、スポンサーの皆様に支えていただいていることに感謝を申し上げたいと思います。

グッズも去年の9,100万円の実績に対して1億6,700万円の目標にストレッチしましたが、今年の数字を達成するためにいろんな工夫をしております。5月1日の浦和戦からグッズ売り場を「インショップ」に変更しました。これは、コンビニでレジの近くに行って、棚にちょっと食べたいものがあると、かごに入れちゃうという心理があります。カウンター型ですと「あれください、これください」と言って、往々にして購入する意思がある商品しか購入しませんが、インショップにいたしますと、皆さん楽しみながらいろんなグッズを見て手に取ってかごに入れてカウンターに持ってきていただきます。浦和戦の時は、ARPU比較で40%上がっております。グッズ収入という意味でも、本当に皆様にお支えをいただいております。

EC販売も非常に伸びております。収容制限でスタジアムに来られない方、また遠方から毎回今まではわざわざ飛行機に乗って応援に来ていただいた方も、今は自粛している方もいらっしゃいます。そのような方がECでグッズを購入いただいている。そういう中で、コロナ禍の2019年もEC販売が増加しましたけれども、今年も非常に高い目標を持っておりますが、現在のところ順調に行っています。
ホットマーケットという表現がありますけれども、勝利記念グッズ販売です。スタートした時点で、過密日程でチームが連勝をし始めたので、グッズの企画が追いつかなくなりました。12連勝だったでしょうか、去年。グッズ販売業者も、デザインや企画も追いつかない中で、毎回毎回販売をしたものですから、何枚同じようなデサインのTシャツを買えばいいんだよ!と、苦言を頂いたこともございました。
今年もこの企画は継続しておりまして、チームがJ1で6連勝いたしまして、今年は去年よりもデザインを工夫できるようになり、アイテム数も増やしています。去年は8月から販売を開始いたしまして、ちょうど連勝が9月からだったのですが、半期でも600万円ほどの売り上げになっております。商品単価は3,000円とか、もっと安いものは1,500円の積み重ねでの売り上げでございますが、こちらも財政的なクラブの力になっております。今年も現時点で約400万円の売上になっておりますので、だいたい去年と同じような推移でございます。ただこれは勝利記念グッズで御座いますので、勝ち数にも比例するというところです。

次に、ご来場いただけない皆様、特に雁の巣レクリエーションセンターでの練習を見に来ることができませんので、私共は去年からテスト的にアビスパTVということで、練習風景を動画配信し試行錯誤しておりました。今回ご出資を頂いたDMM.COMさんがオンラインサロンでビジネスを展開されていらっしゃいますが、DMMさんと打ち合わせている時に、オンラインサロンでアビスパTVをサブスクモデルで展開できるのではないか、というアイディアになりまして、急遽スタート致しました。スタートして大体1ヶ月ですけれども、現在350名程度の会員の皆様に月額980円(税込)でご加入をいただきまして、Twitterとはまた違う練習映像やメッセージのやりとりを会員の皆さんに配信させて頂いております。これからはオンラインイベントで実際に選手と話したりする企画も進めていきたいと考えております。

メモリアルオークションでは、プラスチックの応援しゃもじ(浦和戦で配ったしゃもじ)が、61,600円で落札されました。79名の方に入札いただきましたが、もう大変ありがたく。しゃもじに選手がサインを入れてお渡しをして、皆さんに喜んでいただき、かつ財政的にもクラブの力となっております。また、倉庫に眠っておりました公式球ホルダーを出してきてオークションに出品させて頂きました。122,100円で落札をいただきびっくりしているところですが、まだまだ倉庫にいっぱいございますので、これからもタイミングを見てオークションをさせていただきたいなと思っております。サインボールは111,100円。3点出品で294,800円ということで。こういうようなグッズ販売の方法もございます。

クラウドファンディングも実施させていただきました。クラブの「プレミアム・パートナー)でもあります、ふくや様、そして西日本シティ銀行様によって展開いただき、1,001名の方にご支援をいただきました。この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。

そして、ふくや様には冠マッチをしていただいた際に、アビスパの応援商品としてご寄付を毎年継続していただいております。今年も大変大きい額をいただきました。本当にありがとうございます。

また支援募金の窓口を設置させていただきまして、皆様が500円だったり1,000円だったり数万単位のお金だったりと、寄付をお考えのタイミングでご支援をいただきまして、その積み上げが現在340万円超の金額になっております。ありがとうございます。

地元企業のユニフォームスポンサーでもあります日本パークさんとタイアップして、コインパーキングに停めると、アビスパの支援になるというようなサポートパーキングを運営しております。右側キリンビバレッジさんの応援自販機でジュースを買うと、その一部がアビスパの応援資金になる。そして、電気、ガス、水道、アビスパと言えるぐらい生活インフラに密着した応援プランを、近々地元企業の方と皆さんにご紹介できるような、今もほぼ話がまとまりつつあります。
そのような中で、地域企業の皆様、そして、それをご利用される皆様にお支えいただきクラブ運営を継続しています。このコロナ禍、5年周期を終わらせるためにいろいろ工夫をさせていただいているところでございます。

アビスパの将来展望

J1上位・ACL出場に向けたプロジェクトということで、「現在11位のチームが何を言ってるんだよ」と突っ込まれるかもしれませんが、フロントとしては26億円の今期の売上目標、そして倍の50億円。やはり強化費25億円程度を捻出して行かないと、昨日のF・マリノス戦でも感じた方、多くいらっしゃると思います。もっともっとチームを強くする。そしてチームに資金を投下して。それは選手だけではございません、設備面もそうでございます。いろんなところで強化して行かないと本当の意味でトップには行けないですし、ACLに行って、世界に出て行くことは難しいと思っております。その中で私共、今年からはアクセンチュアJapanさんにアドバイスをいただきながら、この売上50億円、25億円の強化費のロードマップ案を検討しております。
まずは市民クラブとして、アビスパはすごく大事にしていかなきゃいけないものがある。先ほどご説明をさせて頂いた通り、Citizenshipとしてしっかりこれは今後も継続していこうと思っております。ですが、ゆくゆくはグローバルな事業展開をしたい。福岡は、アジアのリーダー都市として、これからも伸びていく都市の一つだと思います。そこのプロチームとして、グローバルな展開を僕たちはアビスパとしてやっていきたいという夢がございます。そこで、じゃあ僕たちに何ができるのか。ということで、アビスパのアセットを活用して共にイノベーションを起こすパートナー企業の皆様と、一緒にパートナーシップを組んで行こうよと言うことで、Technology & Innovationというキャッチフレーズで、いわゆる権益ビジネスに入っていこうと考えております。
Sports Technology, Digital Markething, DMP, Team Operation, Academy School, Stadium Experience, Contents & Video, DX, SDGsの9つの分野で、各々の権益を共同開発し、かつ外販する権利を、ご縁をいただいたパートナー企業の皆様とこれから取り組んでいこうということでございます。
日本のクラブの中でもこれだけオープンにするクラブはまだまだ少ないと思います。私共はここに踏み込んでいき、ストレッチした広告費、その他の収入も含めて、これから26億、50億円と成長したいと思います。そして100億円クラブを目指すということが、経営計画書に書いてあります。年商50億円から先は、また新たなアプローチがあると思っております。

磯貝 非常に具体的な数字をたくさん示して頂きまして、ありがとうございます。基本的にはホームタウン戦略ということでしたが、ファイナンスに関する内容も積極的に情報提供していただきました。参加者からたくさんチャットで質問いただいてますので、ここで質問にお答えいただければと思います。
「福岡にはソフトバンクホークスという強烈なスポーツプロダクトが存在していますが、ホークスとは、普及と資金獲得においては競合チームになるかと思います。この競合と普及または資金獲得の現状はどうなっているのかということが一点。一方で、このソフトバンクホークスは共同チームでもあります。地域においての共同チームとしての側面を持っているといったときに、そのときの普及と資金獲得の方向性というのがあれば教えてください」という質問でございます。

川森 ご質問ありがとうございます。よくソフトバンクさんのご質問をいただきます。ソフトバンクさんをサポートする企業は福岡には多いです。金額も高額なスポンサードをしているケースも多いです。これは、スポーツを支援する素地が福岡にあり、普及の観点からもポジティブに捉えております。なぜかと言いますと、スポーツへの支援やスポンサードをしたことのない地域では、スポーツを支援するという高いハードルがまずございます。しかし、福岡ではそのハードルが比較的低いと感じています。
資金獲得の競合という観点ではそのような側面は確かにあると思います。バスケもあるサッカーもある野球もある。相撲も見に行く。ラグビーもありますね。そのようなスポーツがいっぱいある中で、どういう配分をスポンサー企業の皆様が決定するかは、私たちのアプローチ次第となります。しかし、繰り返しになりますが、ソフトバンクさんの存在というのはポジティブに捉えております。20年前、10年前、本当にご苦労された時代もありましたし、実は責任企業であるAPAMAN社としても、ソフトバンクホークスさんにはSponsoredさせていただいておりますので、そういう苦しい時期のお話も担当役員の方とも情報交換しながら、今でも交流がありますので恵まれた環境という風に捉えております。
では、福岡の地でホークスさんと、もっと普及の観点からいろんなことができるのではないのか、というのは、ホークスさんもそう思って頂いておりますし、私どももそう思っておりますが、一緒にイベントを展開することにはビジネスとしてお金がかかるのも事実です。今は身の丈に合ったお金がかからないことを情報交換をさせていただき、地道にさせていただいております。直近では去年のソフトバンクホークスさんのクライマックスシリーズの時に、アビーくんが応援にグランドに入って、アビスパとして参加をさせていただき、それをスタジアムに来た皆様にご紹介をいただいたということがございます。これは費用を支払っておりません。しかしながら、ネット上もメディアさんもとりあげていただき、ソフトバンクさんとアビスパとの関係というのが、福岡のスポーツという結びつきの中で展開できました。今後もホークスさんと一緒に、普及の観点から福岡の街を盛り上げて行きたいと思いますので、まずはJ1に定着したいと思っています。

磯貝 ありがとうございます。それでは川原社長の方からお話を頂きたいと思います。

川原 ふくやという会社は、明太子の製造販売と、業務用の食料品卸(飲食店さんに食品をお届けする)を事業にしている会社で、ただいたい年商150億円ぐらい。昨年はコロナの影響があって、110億円ぐらいになってしまったんですけれども、地方の中小企業・オーナー企業で、非上場の会社と言うところだけ覚えていただければよろしいかと思います。
変わった部分としては、創業者がさきの第二次世界大戦で生き残って帰ってきたということで、「これからは世の中の役に立つ生き方をする」との想いで創業した会社でございます。ですので、もちろん事業をやって利益を出すという部分は当たり前ですけども、その利益を社会貢献や地域貢献に使っていこうという企業姿勢を持った会社というふうに言われております。

アビスパ福岡と地元の企業の関係

アビスパ福岡は、元々は藤枝の中央防犯というチームを誘致してスタートいたしました。初めから福岡で、例えば実業団のチームが育っていって、Jリーグに参入したというわけではないんですね。福岡の青年会議所のみなさんが中心になって、たくさんの署名を集めて、福岡ブルックスという名前でJFLに参入したというのが、アビスパの始まりです。この1番はじめの部分で、おそらくボタンの掛け違いがあったのだろうと思います。当初チームを誘致した側としては市民クラブとしてやっていくイメージだったと思うんですが、やはり当初は責任企業が多く出資をして、広告も出してチームを支えていくという形でしか存在ができなかったということもあると思います。当初、ユニフォームスポンサーで行くと、コカコーラ。当時は北九州コカコーラボトリングという会社でした。そして、その関連会社のリコー、そしてまた三洋信販、そしてそこに福岡市が利用料の減免であったり、観戦事業であったり、そういった部分で支えるというような時期が2001年ぐらいまで続いていきます。
そして、2002年に初めてJ2に降格をいたします。この頃からもちろん、上場企業の会社もたくさんありますので、例えばユニフォームで露出をするというような理由ではなかなか広告を出しづらくなって参ります。悪気はないけれども、スポンサーが徐々に縮小していたという経緯がありました。さらに悪いことには、この後三洋信販さんがプロミスさんに買収され会社自体がなくなってしまいましたし、北九州コカコーラさんはM&Aをすすめてコカコーラウエストジャパンになり、事業範囲がどんどん広くなってしまった。当初は、福岡のチームだから福岡の会社で応援するというロジックが通ったんですが、その当時の時点で既に関西以西ほとんどフランチャイズにするような会社になっていましたので、アビスパだけに応援が出来ないと。当然他のJリーグチームもたくさん出てきていましたので、そういったところも含めて、だんだんと当初の枠組みでの支援が難しくなってきたと言う時代が御座います。
そして次の段階に移ってまいります。ここ当初からのユニフォームスポンサーがほとんどなくなってしまったと言うことで、経営的にもかなりの苦境を迎えてまいります。そこで、地場の企業を中心でsponsoredしていこうと言うことで、胸のスポンサー西鉄さんになったり。ここで、我々のふくやも袖のスポンサー。西日本新聞社さんが背中ですかね。そういった形でかかわり始めたという時代でございます。そしてその後、2014年の末から2015年。このあたりがAGAという団体を通じた市民クラブとしての支援体制に移り変わってきた。といったところが、ざっと振り返った歴史でございます。

ふくやとアビスパとの関わり

当初は1998年に商工会議所の求めで出資して株主になりました。この時も実は経営危機を迎えていましてお金がないと言うことで、福岡市、それから北九州コカコーラボトラーズジャパン、それと商工会議所の加盟している会社が増資をして、8億ぐらい増資したと思います。その中の一部として、ふくやもちょっと出したと言うところがスタートです。
次はかなり個人の話ですが、私はもともとサッカーを小さい頃からやっていて好きではあったんですが、当時アビスパに対して思っていたイメージは、有名な選手の弟かお兄さんがいるチームだなと。マラドーナの弟がいたり、三浦カズのお兄さんがいたりと言うようなところで、時々見に行く程度でありました。ところが、2001年いよいよシーズン終わりで降格しそうになって、それまでは落ちそうで落ちないというチームで有名でしたが、ついに落ちそうになりました。で、いよいよ最終戦、ガンバ大阪との試合を万博競技場に見に行きまして、その場で降格を経験するという大変辛い経験を致しました。当時はまだJリーグのクラブがJ2に落ちるというリアリティがあんまり無い時代だったので、相手側の応援団の皆さんも、「バイバイ福岡」みたいな言葉で囃し立ててくるんですね。ここで急に悔しさを覚えたんです。なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだ、いつかガンバ落としてやるぞということで、J1に居るから応援するんじゃなくて、J2に落ちてしまったからこそ応援しなきゃいけないと思ったのが、サポーター化した個人的な理由の1つであります。
その後も色々ありました。先ほどの責任企業がだんだんと移り変わっていったというところにもつながってくるんですが、地場から経営者も出すと言うことになりまして、その時に、電通九州さん、それから西日本新聞社さん、そしてアビスパのプロパーの3人の方々取締役をされると。ただ、その中で経営経験のある方がいらっしゃらず財務諸表を含めて読む方がいなかったので、「お前入れ」とある方から言われたのが、社外取締役になったきっかけでございます。お前、サッカー好きだろう。そして財務諸表読めるだろうと、この理由2つだけで入った。結果、今2021年になりましたので、社外取締役の中でも1番長いキャリアになってしまっております。
さて、ふくやがトップチーム袖スポンサーになったのは2011年です。この年はアビスパが地元で支える体制になった翌年で、1年でたまたま昇格できたんですね。このJ1の時ですすら胸スポンサーはついていたけれども、他はほとんど空いているという状況でした。袖スポンサーになろうと決意した段階でのアビスパの成績が12敗1分けです。J1で1勝もしてないチームのユニフォームスポンサーになるというわけのわからない決断をしたわけです。残念ながら、2011年は力足らずJ2に降格をしてしまいます。そしてその後、次の2013年10月ですね。

2013年の経営危機

皆さんもご存知かもしれません。アビスパ福岡の経営危機が起こってしまいました。
この時、アビスパ福岡を救うためには5000万円の資金が必要だという報道がございました。まずアビスパさん自身でも募金を集めて3000万円近くを集められたと思います。それとサポーターの皆さんも活動をして。まあ、とにかくお金を集めると言うような動きをしておりました。が、どうもそれだけでは届かないと雰囲気が濃厚になってまいりました。もちろん、これまで福岡の財界を含めて大変な応援をして来たので、これ以上はもう無理だという雰囲気が正直出ておりましたし、私もおそらくもうこれ以上は無理だろうと言うような考えではありました。ただ、このまま放っておくとクラブはなくなってしまいますし、福岡という場所は以前にも西鉄ライオンズをなくしてしまったというトラウマを抱える町でもございます。そういった部分が当時の社長(私の叔父)世代にも通じたというのもあったんです。社内でプレゼンをいたしまして、商品の販売額すべてをアビスパさんの方に寄付をすると言うようなことを考えて実行に移したということです。
ここでなぜ商品の全額だったのかということを聞かれるんですけど、これは実は先に支援活動を始めていたサポーターの皆さんが、利益全部を寄付すると言うことをされていらっしゃったんですね。でその後、企業がやるのに利益だけというわけにはいかないと。サポーターの思いを超えるだけのことをするのであれば、もう売上全部やるしかないよねという特段ビジネス上のメリットが特にない形で、思いだけで突っ走ったような企画でございました。
おかげさまで、最終的には1778万円という額が集まりまして、無事なんとかアビスパが一山乗り越えて存続できることができたというようなことでございます。
ここからのわれわれは、地域貢献についてもう一度考え直してみました。そもそも、なんで我々は地域貢献をやってるんだろうと。特にビジネスメリットはそんなに大きくない中でもやるというのは、やはり我々は福岡という名前のおかげで商売をさせていただいているんだと。つまり福岡のイメージが良いから観光の方も来るし、いろんな産業も広がっていく。ふくやは博多中州がブランドロゴにも入ってますので、福岡のためにお金を使うのは当たり前なんだと。地域ブランドにはなぜかいわゆるロイヤリティを払わなくていいというルールがあります。もちろん、いろんなキャラクター商品を使えば、それなりのロイヤリティを払うというのが当たり前のルールなんですが、なぜか地域ブランドには払わなくていいという事になっているんですね。ただ、やはりここをタダで使い続けていくと、地域ブランド当然荒れていきますし、ただ乗りをする人たちも出てくる。だから地域ブランドでも正しく使って。地域の力を落とさないと言う意味で、われわれはこの地域貢献、社会貢献をやっていくんだというところを、まあ、この、アビスパの支援を通じて再確認をしたということでございます。
少し言い漏れましたが、そういったことを思った理由のひとつに、支援をしていただいた方の顔ぶれというのがあったんですね。通常、福岡のチームを救うのだからきっとサポーターのこととか、福岡の方が買ってくれるんだろうと思っていたんですが、実はふたを開けると、日本の全都道府県から購入者が出て、特にその中でも印象的だったのは「横浜フリューゲルスのサポーターでした」という方。クラブが消滅した経験があった方であったり、九州ダービーの相手であるサガン鳥栖のサポーター、あとは浦和レッズ出身の選手がいたということもあるのでしょうけれど、レッズのサポーターの方も多かった。とにかくJリーグのサポーターというみなさんは、もちろんクラブは応援してるんだけれども、やはりJリーグ全体、そういったクラブの文化というものも、やはり応援をしているんだと。これすごく大切なものだし、野球だったり、他のスポーツではない側面なんだというところを思ったというところが、大きかった。こういう風に感じております。
それからもいろんな商品の販売を通じて、ずっと応援をしております。卓球の早田ひな選手とか、富安選手とかですね、いろいろ出ておりますけれど、こういった購買を通じて、お客様が自分たちの購買行動が本当に世界につながっていくんだと、小さな事でも実感ができるというのは、すごく大きなことだと思います。このみんなで福岡のアスリートやクラブを応援しようという商品販売の企画で、すでに早田ひな選手(卓球選手)、冨安選手もそうでしょうし、ウォン・ドゥジェ選手も韓国代表になってますので、本当にここから世界に羽ばたいている選手がすでにいる。そしてまたここからきっとさらにどんどん増えていくという意味では、クラブとのつながりの間のブリッジ、インターフェースとして我々の動ける部分があるのかなというふうに思っております。
こういった「売上の中の何パーセントか」というものをすでにアビスパさんのほうに贈呈をして行くと言うことでやっておりまして、実は率は8%でございます。通常の利益の何パーセントとか売上の1%みたいな設定が多いんですが、我々としては別にこれで利益を取ろうということではなくて、買っていただいた方の想いをどうやって伝えるかということですので、かなり高率な設定にしているというところです。

最後に、かわはらすぱいす食堂。我々が手がけているカレー屋さんですけれども、ここは、地域の皆さんにもアビスパの勝敗に興味を持っていただきたいと言うことで、アビスパの試合の得失点差×10%が割り引かれると言うようなサービスをしております。これがダービーになると2倍になります。先日3点差で鳥栖に勝ってしまいましたので、60%引きというすごい時期がございました。我々としては、100%引きをめざしてチームには頑張っていただきたいなという風に思っております。
われわれの袖に出しているロゴの中にwith all supportersというものを一緒に入れさせて頂いております。これは先ほどの購買を通じて、いろんなサポートの方の力を我々が代表して出しているというだけである。企業としてじゃなくて、企業とそこに連なるお客様と一緒にアビスパを応援しているんだよという姿勢のために、このロゴを使わせていただいているということでございます。

AGAについて

AGAは、「子供たちに夢と感動を」そして「地域に誇りと活力を」ということで、福岡の政・官・民・学が結集している市民球団の成り立ちの1つでございます。子供達に夢と感動、地域に誇りと活力というのは、どんな地域に行っても、どんな地域で暮らしていたとしても、きっと同じ胸に抱けるミッションだと思いますし、それを今、この福岡の中でやっているということでございます。
これが出来て何が変わったのかということなんですが、やはり情報のコミュニケーションが1番変わったんだと思っています。それまでアビスパと企業の間でのコミュニケーションというのは、まず試合の結果ですね。当然、弱いので負けるということです。それから、お金を貸してくださいとか出資をしてくださいというお金の話と負けた話しか、基本的にはコミュニケーションがなかったわけですね。当然、そんなクラブを応援しようと気になりませんが、AGAという場ができたことで、参加企業とは毎月もしくは隔月で必ず情報共有されるようになった。それもトップチームの成績だけではなくて、その他の地域のアカデミーの活動であったり、スクールの活動であったり。ホームタウンの活動であったりと、これまでなかなか目に見えていなかった部分。それこそ子供達に夢と感動、そして地域の誇りと活力のためにこういう活動をしているんだということが、定期的にちゃんとコミュニケーションされるようになったということが1番大きな部分だったと思っています。
そしてAGAっていうところが福岡に進出する企業にとっても、コネクション構築の場としておそらく魅力的にうつるのではないかなと思っています。なにせ、プチ財界のような世界、学校法人もありますし、神頼みもできる太宰府天満宮様まで入ってますので、いろんなところに回るよりは、まずは、このAGAに顔を出してみて関係を持つことがおそらく福岡で市場に飛び込んでいくための玄関にもなっていくんだろう。そして最後に、これからのローカルスポンサー、我々のような地場の、小さなスポンサーの役割というのは、おそらく変化をして行くんだろうと思っております。アビスパ、これから、J1の上位、そして、世界をめざしていくと言うことですので、その中でなかなか我々のような売上高100億円規模の企業が、その中心のスポンサーにい続けることは、やはり正直難しいだろうと思っています。ただ、その中でも、商品やサービス提供を通じて、福岡と言う地域のサポーターの皆さんとの接点として残り続けることはおそらくできるでしょうし、そこを強化していくことが次にわれわれ地元のスポンサーに課せられた役割なんだろうというふうに思っております。
結局、すべては福岡という地域に対しての未来の投資であると言うふうに考えています。アビスパがグローバル化している中で、福岡という街が知られること。これがおそらく1番大事なことだと思っています。
余談ですが、私、イギリスにしばらく居たことがありまして、その時は日本人だと言うと、どこから来たの?東京?って聞かれるんですね。で福岡だと答えると「ふーん」という感じの表現です。当たり前かもしれませんが、知らないんですね、福岡のことを。こっちはやはりカチンときます。どうして福岡知られてないんだと。ただ一方では僕らは、例えばイギリスではマンチェスターという街をみんな知っているわけですね。マンチェスターは実は人口55万人ぐらいしかありません。圏域をもうちょっと広くとっても200万人ぐらいしかいない。福岡県より、小さな町なんです。ただ、そこに世界的に有名なサッカークラブというだけであるというだけで、イギリス人が来て、「どこから?」、「マンチェスターだって、ふーん」ということはないんですね。実際のマンチェスターは産業的にも厳しいですし、結構大変な街です。そんな街でもやはりワールドスポーツであるサッカーを通じて世界に知られることはできる。オリンピックをやらなくても町にスポーツが、サッカークラブがあるというだけで、実はそれは世界に繋がっているんだということ。そこに、もしかするとみんな夢を乗せられるということが1番大事なことなのかなというふうに思っております。

磯貝 AGAの理事会についてなんですけれども、クラブ側からのお願いが多いのか、もしくはAGA側から経営の注文が多いのか、どちらが主な役割になっているのかという質問がきています。

川原 これはどちらもありますね。基本的にはクラブ側からの報告という形をとりますが、その後、各理事から厳しい質問だったりとかですね。いろんなことがありますので、とにかく調子がいいときのAGAの理事会や常任理事会はすごく明るい雰囲気なんですが、次はちょっと心配ではあります。ちょっと負けが込んできていますので。それは相互に厳しい役割を果たしていると思いますし、割とここまで聞くのか?みたいな。厳しい質問が理事から出ることも多いと思っています。

磯貝 筑波大学の高橋先生から、東京からふくやの会員になりましたというホットな情報がチャットで入りました。私もふくやのファンです。「油漬け」がほんと美味しいですね。あれを毎日食べれたら幸せだなと思っています。情報ありがとうございます。

川原 アビスパに支援金が落ちるタイプの商品が御座いますので、是非、ゴールとまらんらんという商品を買っていただけると助かります。

磯貝 了解いたしました。インターネットでも購入できますので、皆様ご購入ください。
では、3番目になります。石丸様、よろしくお願いします。

石丸 わたくしからは、「福岡都市圏におけるクラブチームの役割と可能性」についてお話しさせていただきます。
FDCの事務局長ということでご紹介いただきました。FDCは、産学官の事業創出プラットフォームとして2011年4月に発足いたしました。福岡市を中心に北は宗像、西は糸島、南は筑紫野、太宰府、那珂川といったようないわゆる17の市町、いわゆる福岡都市圏、人口では約250万人の経済圏を起点として、政策立案的な要素だけではなく、学のナレッジや市民の方々の参画によって事業を創出し、地域の成長や社会課題の解決を行ってきました。今は約220企業団体のメンバーシップで運営をしている協議会であります。
このFDCには4つ特徴があります。一つ目はシンク&ドゥタンクということで、戦略の策定から実施まで行う機能を持っていること。それから産学官民が一体となった組織であるということ。そして都市圏を単位として九州、アジアという視点を持っているということ。四つ目が事業創出ということを特に重視して運営している、という点であります。
シンク&ドゥタンクというのは、福岡都市圏単位での成長戦略というものを掲げて、実際にそれを実行している、ということです。
従来の成長戦略に加えて昨年度、2020年から30年までの10年を見据えて生活の質や1人ひとりの幸せとか暮らしやすさなどを担保して行くことをベースにした第2次FDC地域戦略を策定いたしました。
この戦略に基づきスマートシティを起点に住みやすさをさらに成長させていくような歴史、自然、文化などを生かした街づくりや都市開発を現在進めているところです。
またFDCメンバーの半分以上を域外の企業が占める中、中小企業の方、スタートアップの方々とこれら域外企業の方を結び付け、福岡をフィールドとして新しい社会課題の解決ですとか新しい事業創出にチャレンジして行く取り組みなど、地域の経済力強化に向けた新たな事業を数多く生み出している組織であります。

福岡市とアビスパの関わり

アビスパは、市民球団として多くの方々の署名も踏まえて、市議会でも招致決議などもあり、そういった形で誘致をされたクラブなので、トップチームによる活躍だけでなく、子供達とか、あるいは、親子、それから指導者の講習、シニアの健康教室など、地域に根ざした各種ホームタウン活動にも積極的に取り組んでいらっしゃる。それから青少年の健全育成、市民スポーツ振興に寄与している、など都市の魅力を大きく高めており、本市にとって不可欠なクラブであるということが言えると思います。
川森社長からもございましたけれども、委託事業であるアビースクールを実施するなど、本来は行政が行っていくような取り組みを受け持っていただいており、アビスパ福岡は地域政策の担い手として機能しているのだという風に私は捉えています。そのため引き続きしっかりと官民でサポートしていくことが重要でありで、民だけでなく行政とも話をしているところでございます。
一方で、都市戦略として捉え直してみると『MICEの充実と誘致』というキーワードが浮かび上がります。
MICEとは、Meeting、Incentive、Convention、Event からなる造語ですが、都市力の向上を目指して、福岡市、福岡都市圏は、MICEの充実と誘致に大変力を入れてきたところがございます。
コロナでトレンドが変わるなど現時点では逆風もあるのですが、しっかりと福岡に人を呼び込んで、経済を動かして行く。それから福岡のブランドを上げていくということで、従来そういったMICEの開催と誘致に力を入れてきたわけです。
そしてここ数年、中長期の戦略的に様々な領域のMICEを呼びこんでビジネスを繋げてきた中で、特に『スポーツ』という切り口で大変力を入れてきているところでございます。
やはり人と人との関係性。それから、先ほど話題になっているような、さまざまな政策領域の波及要素というもの、そして地域を代表する、アイデンティティのようなものを含めスポーツの価値というものは重要であるだけでなく、MICEの領域におけるコンテンツとしての魅力が大変高まっており、ここに力を入れている状況でございます。
実際にここ数年の福岡が代表するMICEと言われるのは、ラグビーを始めとしてアメリカズカップのようなものがありましたし、来年は世界水泳がございます。
サッカーに関しても中長期的にちゃんとMICEとして誘致をしていくためのstudyをしつつ、環境を整えていきましょうという話しをしてきている状況でございます。
もう1つ、この福岡で、スポーツに関連して大変重要だと思ってるのは社会課題の解決につなげることができるということです。新規事業の創出ニーズというものがここ数年急速に高まってきています。これまでが企業の開発部門が自社の閉ざれた環境のもと商品開発をして、それを社会に出していくということをやってきたわけですけれども、ニーズの多様化とかあるいはその人の価値観の変質のようなものを受けて、自社のリソースだけでは本当に社会が求めているものは生み出していけない状況になっています。
また一方で社会にたくさんある課題をビジネスで解決していくという動きがあります。
FDCでもこれらの取り組みの推進に向けた環境整備のための実証実験の実施や規制緩和の働きかけなどを進めておりますが、これらの流れにスポーツが関与していく可能性があるということです。
もう1つは、健康づくり。健康寿命の延伸ということを進めていくための人生100年時代のシステム作りというような領域においてもスポーツの果たす役割は極めて大きいと考えます。
福岡市で言いますと、特に女性の健康寿命が大変良くなくて、20政令都市の中でも19位の悪さです。1人暮らしの世帯の増加なんかも含めて、要はこれから10年ぐらいで、大きな街の構造変化が起きていくということになります。この変化にどう対応していくのか、スポーツも含めた課題解決が求められると思います。
そういった中で、スポーツ庁が2018年に「イノベーションを通じてスポーツ市場の拡大をして行きましょう」ということを言い始めました。スポーツというものが、ヘルスケア領域でも、新しいビジネスの創出領域でも地域に資する、あるいは交流人口の増加など様々な所で役割を果たしうる。スポーツ価値の高度化、スポーツによる産業の価値高度化などを通じて社会課題の解決に是非つなげていこうということを目指すこの考えは、私共FDCの目指す方向にまさに合致すると言うことでございます。
その中で、先ほどtechnology and innovationという話がありました。様々な社会実験とか含めて、非接触の文脈や、顧客サービスの文脈、最近はスポンサー様と一緒に企業のDXなんかも取り組まれていますけれども、そういったところをより加速化させていくということが必要だということで、都市力の向上を目指し連携を強固にして行きたいということです。
もう1つ、これは先程の認知度の裏返しになるんですけど、シティセールス、シティプロモーションの高度化というのが必要だと考えています。例えば、マンチェスターはすぐにクラブの名前が出てくるわけです。実は世界のその他の都市を見ていても、シティセールス、プロモーションに必ずそういうコンテンツがセットになっている。例えばボルドーだと、必ずジロンダン・ボルドーが出てくるし、バルセロナなんかもバルセロナ市のプロモーション戦略としてバルセロナFCが出てくる。そういった形で、我々が地域で思ってる以上に、その地域にあるクラブの価値というものを、海外の都市の住民たちの方が認識をしている。我々も海外を訪れた際に「クラブがある」と言うと、どんなクラブなんだと必ず聞き返されます。そのため都市としてのプロモーション戦略の中にしっかりとクラブというもの、コンテンツを入れて行くというところが重要なのです。
先ほどソフトバンクの話もありましたように、福岡都市圏としてはさまざまなスポーツを応援しているというのは変わりませんけれども、やっぱりフットボールはグローバルであり、裾野の広さは一線を画すものがあるわけです。そういった意味で、サッカークラブを地域が持っているということの価値というのは、海外連携を含めた所、グローバル目線で言った時には大変、大きなものがありまして、地域としてそのような視点でもってクラブを育てていくということが必要じゃないかというふうに思ってございます。

価値観の転換が必要

コロナで、大きくトレンドの変化があるのはご存知の通りです。従来のように、例えば東京の一極集中のところで、トレンドが変わってきている、officeのニーズが変わってきている、人々の価値観変わってきてる中で、ウェルビーイングということは大変言われるわけですね。その幸せとか暮らしやすさとか、人生を豊かに過ごして行くみたいな文脈が大きな意味を持ち始めていて、そこにスポーツが寄与するということもあるんだろうというふうに思います。特にクラブチームを語る上で、アイデンティティの源泉になっているというようなことも含めて、そういった象徴的なところに関わり続けられる人生とか、あるいは、スポーツを通じて、健康で精神的に豊かな環境を享受すると。そこにその福岡市が元々強みに持っていたQOL、食とか自然との近接性とか、都市の利便性みたいなものを併せ持っていることで、福岡都市圏の魅力というのは飛躍的に伸びていく可能性があるんじゃないかということを思っているわけです。

実際に世界にもスマートシティということが言われて、テクノロジーの活用みたいなことが、先行的に言われるわけですけれども、本質はやはりその人、人間中心human centricとかperson-centeredということが言われますけれども、そういった人とかコミュニティ起点の街づくりというものが求められている。スマートシティが実装につながっていけば、逆に人々の幸福度みたいなものを評価していることもまた、できてくるわけですね。実際、そういった動きも出てきている中で、実はこういったものを進んでいくとですね、裏返しになりますけれども、スポーツクラブの価値というものが可視化できる。価値を可視化できる時代がいよいよくるんじゃないかというようなことを思っています。先程のプロモーション戦略の文脈でもそうです。人の幸せに、例えばアビスパがこれだけ寄与してるみたいなことも、Data drivenで評価できる時代も来るんだという風に思っていて、そういったところを、ぜひ福岡都市圏、FDC含めてできればいいなと考えているところでございます。
アビスパ福岡が福岡にあってくれて本当に良かったと。ということをつくづく政策サイドからも思うわけでございまして、地域に寄与するクラブ、クラブの成長に寄与する地域といったことの取り組みを私どもとしても是非考えていきたいと強く思います。

自前のスタジアムを持つという戦略

磯貝 チャットからの質問です。スマートシティのことにも関連するかと思いますけれど、アビスパ福岡が自前のスタジアムを持つというような戦略を進めていく考えおありでしょうか。具体的な構想とかを進めるにあたって、スポンサー企業であるとか、福岡市との協力体制を整えなければいけないということに関する質問です。
今の質問を念頭にディスカッションに入りたいと思います。Jリーグ発足当時から100年構想がありまして、ホームタウンを非常に重視していく流れがありました。その中でアビスパがたくさんの活動をされてます。その活動のハブというのでしょうか、AGAが企業側の受け皿になって、今大きく成長しています。先ほどのお話ですと、AGA関連のスポンサードは5割ぐらいでしょうか、かなり負担していただいてるということがあります。それから行政の立場で、石丸さんの方から、健康の価値とか都市の価値というところで、アビスパの存在が非常に大事になるのではないかということがあったかと思います。
また川森社長からは、 technology and innovationパートナーシップというアビスパ側からの提案もあったと思いますが、福岡市のopen innovationという構想とどういうふうにリンクしていくのか、どんな風に企業を含めてコラボしていけばいいのかというような、将来に向けた議論をして行きたいと思います。まずは、スタジアムについていかがでしょう。

自前のスタジアムを持つということ

川森 シンプルにスタジアム欲しいですか?って聞かれましたら、欲しいですっていうのが回答です。Jリーグクラブでも自前のスタジアムを所有しているのは、片手にも余るぐらいのクラブだと思います。そこには色んな理由があると思います。公式試合が月に2回しかないので、そこでどう収益性を担保するのか、スタジアムは天然芝ですが、空いている時にコンサートなどを実施した場合に、天然芝が傷んでしまい、その後張り替えないといけないなど、いろいろな課題がある中で情報収集をしておりますけれども。クラブとしては欲しいですか?って言われたら欲しいです。まずはシンプルな回答でいいでしょうか。

川原 サポーターとしては当然欲しいですよね。ただ、段階が必要であって。まずはホームスタジアムが満席になれば当然行政としても新しいのをつくらなきゃダメだねっていうことになると思うんですが、そういうステップを除いて話をするんであれば、例えばこうルールとかテクノロジーの問題ですよね。例えば、街の魅力を増すために、国際Aマッチができるようなスタジアムとなると、4万人以上入れるものを作んなきゃいけない。ただ、やはりさっき川森社長、おっしゃったように芝である以上、稼働が落ちてしまう。まあ、埼玉スタジアムにしても、横浜国際にしても使ってない時、ガラガラですよね。これはあくまで個人的な見解なんですけども、将来的に人工芝でもサッカー国際試合がオーケーと言うことになれば、可能性はかなり広がるのかなと思ってますし、そもそもスタジアムって空中の部分の容積率が余りますので、福岡の飛行場の問題とかですね。高さ制限の問題が片付いて行くんであれば、それを周辺開発に使った複合型スタジアム建設などをより現実的に議論できるような方向に行くんじゃないかなというふうに思っています。ただ一にも二にも観客動員を増やして行くことが、まずファーストステップだと思います。

石丸 都市としても、そういったものがしっかりと定義されるということが大変重要なことかなというふうに思います。クラブの経営の観点から、自前で運営できるということで、収益機会の向上につながると思いますし、スタジアム経営は意思をもってやることが重要で様々な可能性があるわけです。そのスポーツのイベントをやるだけではなく、例えば海外では、ビジネスマッチングのような機会の場がちゃんと用意されていたりとか、VIP向けのサービスホテルがあったり、いろんな可能性あります。そういったことになりますと、もっと、もっと地域として、このコンテンツの場をどうやって使っていくのかという議論は、しっかりして行く必要がある。逆にそのあたりでちゃんと必要性が認識されて行けば、先ほど挙げたいくつかの課題について、その先にどう進めていくかという議論になると思いますので、それで私も大賛成で、丁寧なステップというものが必要になるんだろうなと思います。

磯貝 基本的には、作りたいっていうことですよね。まだでもステップがあるっていうのが現実的なところかなと思います。

都市のシンボルとしてのクラブ

磯貝 今後に向けてですが、わかりやすいのは、川原社長のお話にあった、マンチェスターみたいな都市になることだと思います。アビスパがあるので福岡市が有名になるために、どうしていけばいいかについてお話を聞かせてください。

川森 7シーズン、アビスパに関わっている中で、市民クラブとして理念をしっかり持ち、それを表現し、選手に理解をしてもらう。そういった運営は、まずベースとして非常に重要だとものすごく感じております。しかしそれだけでは、シティセールスにフットボールでアビスパ福岡があるよと言っても、どの都市のどのクラブもそのような理念は大事にしているところだと思いますので、まだ足りないものがあると思います。
プロであればやっぱり強くないとダメだなということです。勝利をもって地域に誇りと活力をもたらし、子どもたちに夢と感動を与えるという両面を、しっかりプロチームとして備えていかなければいけないと、ものすごく強く感じております。では逆算で、強くなるためにはどうすればいいのか?一生懸命毎日練習すれば強くなれるのでしたら、一生懸命練習するのですが、それだけではないプロの世界がありますので、そこにやっぱり財政的な強さというものも合わせて強化して行かないと、世界に誇れる強いクラブになれないのではないかなと思っています。ファイナンスもそうですし、年度ごとのPLとキャッシュをどのように拡大して行くのかというものが、都市が誇れるクラブを創っていく上で、ものすごく重要になってくると感じております。

川原 そうですね。やはり1番は観客を含めて、ステークホルダーを福岡の中でどれだけ広げていけるのか、やはり1番の基本になるんだろうと思います。そこをベースにしてしか、そのビジネスの広がりとか、広告露出の広がりもありませんので、そこを無視して絵面だけ書くと、やはりちょっとつまずくのかなというところですね。もう一点は、1つはアビスパの強みでもある育成の部分でしょうね。選手を育てていく、それがプロの選手になることもあれば、社会人になっていることもあるんでしょうけれど、そこが福岡の育て方のメソッドみたいなものがあって、それがいろんな場所で普遍的に使えるものであれば、例えばバルサが福岡でサッカースクールをやってるっていうのも、ある意味変な話ですよね。スペインのチームのかんむりがやっている。ただ、やはりそれに見合うだけのブランド力があるから、そういうことができる。で、それがサッカーのみならず、例えば青少年教育みたいなレベルまで普遍化ができるのであれば、もっと裾野が広がっていくんじゃないかなというふうに思っています。いずれにしても人をどう育てるかというところが、大きいのかなと。

石丸 私も教育のところかなというふうに思っています。我が国の中でも、若い人の割合が大変高い地域にあって、おそらくここから、先ほど富安選手の話もありましたけれども、そういうポテンシャルが、すごく国地域においても、きっとあるんだろうと。そういったものをどうやってその俎上に上げて育てていくのかを考えていかなければならない。それだけやっていけるのかって話と、もう1つはですね、じゃあセカンドキャリアの話が大変重要なんじゃないかというふうに思っておりまして、クラブに関わった方々、選手として関わった方々が、その地域にどうやって社会に関わっていくのかということのスパイラルをうまく形成できていけるかというところもまた、裾野の拡大のみならず、そのスポーツクラブの本来の役割みたいなところに繋がり、認知度にもしっかりとつながってくるとこだと思います。そういうものがしっかりとまわっていく社会づくりができていけるかというのは、その都市の1つのあり方として、示していけるひとつの大きな要素になるのかなという風に思います。

アビスパの可能性

磯貝 ありがとうございます。教育、あるいはセカンドキャリアというお話がありました。Jリーグはかなりセカンドキャリアの教育もしてるかと思うんですけど、アビスパの取り組はどうでしょうか。

川森 Jリーグとしても取り組んでおりますけれども、今、スポーツ庁さんですとか、経産省さんで。放課後クラブにプロ球団のOB人材を指導者として出向く、アビスパでいいますといわゆるアビースクールのようなモデルを、全国に普及していこうというお話も聞いておりますので、クラブのOB、また現役の選手、スクールコーチも含めて、こういった取り組みに貢献できるのも、地域との共生と言いますか、クラブとして大事な取り組みと思っています。アビスパでは、早稲田大学の平田先生がおっしゃっている逆台形モデル。これをしっかり展開していこうと考えておりまして、「するスポーツ」と「みるスポーツ」それぞれに関わった人たちや、そのピラミッドに関われなかった人たちもしっかり一緒になって、地域で関わりをもっていければ、クラブの成長もあり、都市の成長にもつながっていくと思っております。選手のキャリア形成には積極的に取り組んでいきたいと思います。

川原 そうですね。言い漏れた中でいくと、スポーツが何かの今の社会課題を解決できるとか置き換えるという部分があると、いいのかなと思ってまして。もちろん今日学会聞いていらっしゃる方ってプロだと思いますけれど、医療とか健康の部分っていうのをスポーツと置き換えられるのが、大きいのかなと。まあ、国の課題でもあり、医療費の増大というところを、スポーツ振興させることによって、その地域の医療費を落としている。結果、トータルでのコストが下がっていくという立派なビジョンだと思ってますし、私の仕事の食の部分も同じですね。やはり日々の生活に密接に関わっている部分を、いわゆるサッカー、もしくは、スポーツクラブとして解決できるかというところが、存在感を示す中では、大きな要素だなと思います。

磯貝 DMMさんとの連携によって様々できないかという質問がきています。彼らの所有するベルギーのクラブと連動した欧州移籍など世界戦略を描けないでしょうかということと、あとは彼らの持つ語学教室であるとか、保険証券なども手がけているので、さまざまなコラボレーションの可能性があると思うんですけど、これについてはどうお考えでしょうか?

川森 はい。DMMさんとその話を進めているところでございます。アビスパはシント=トロイデンVVと、もう2年前に事業提携をしておりまして。STVVの立石社長は、アビスパ福岡のエグゼクティブ・アドバイザーでもあり、去年までは経営顧問ということで、強化面と事業面でサポートいただいております。今はZoomがありますからミーティングもマメにしておりますし、実はAGAの理事会や常任理事会にもZoomで参加いただきます。ベルギーの現地ですと朝の4時ぐらいでしょうか。ものすごい早朝から参加をしていただいて、色々AGAの皆様にも直接報告をしていただいているところでございます。
ご質問で言うと、DMMさんとはシント=トロイデンVV含めて欧州移籍や日本代表クラスの排出など、ドリームビジョンとして取り組んでいければと思っております。あと、DMM英会話というプラットフォームを活用してオンラインでスペイン語や英語教室、選手と学ぶサッカー語学など、いろいろ計画中でございます。アカデミーの子どもたちも、実はもう今、スペイン語や英語を学びたいんだという声も耳に入ってまいります。近々ご案内できるりではないかなと思っております。

磯貝 ファイナンスの問題は、スポーツ産業学会のメンバーは気になるところでもありますので、そういう質問はまだまだあるかなと思いますが時間になりました。地元に根差すクラブということで今日お話しいただきましたが、やっぱり地元に愛されるということが大事で、それが福岡市の教育とか、福岡市のブランディングにも役立つ。あるいは地元企業が応援したくなるということが大事で、基本はそこにあるんだろうなと思いますので、いろんな連携を深めていただきながら、発展させて頂きたいと思っております。
最後に一言ずつ今後に向けたお言葉をいただければと思います。

石丸 私、先ほど申し上げたように、アビスパというクラブが地域に大変資する存在であるんだということを思っています。かつてはアドバイザーボードなんかも少しかかわらせていただいた中で「これだけ、いろんなことをやってんだアビスパ」ということを本当に感じたんですよね。私、九大でも教員やってるんですけど、地域政策が専門なので、本当の地域政策の担い手として、本来行政がやるべき事をアビスパが一生懸命やってると。これはちゃんと再評価しなきゃいけないよねということを当時思ったのをすごく覚えてまして、そこからそういった観点でずっと私は見させていただいてるんですね。そういった意味では、この2014年以降、もう6年ぐらい本当に、外から見させていただくと、こんなに素晴らしいクラブになって。J1でこれだけ戦われてということで、本当に敬意を表しますし、これを逆戻りしないといいますか、より地域がしっかりと支えていくということを、我々の立場で応援をしっかりしながら、かつ行政ももっと、もっとちゃんと見ろと言うことで、私なりの立場で、もっと、もっといつも支えていけるような役割を果たしたいなという風に思います。

川原 企業経営者としてはアビスパが世界市場を目指すのであれば、一緒に成長して胸のスポンサーになれればいいんですが、それには1兆円企業を目指さないといけませんので、ステップ的にはなかなかちょっと無理があると言うところがございます。お話したように、ローカルスポンサーの役割というところ、おそらく今後また変わってくると思っていますので。その変化をしっかり受け止めながら、露出をするとかというところではなくて、本当に福岡の地場との関係性をよりどうやって強くしているのか?それからサポーターの方を含めた、みなさんの日々の生活の中にどれだけアビスパというものが入っていけるのかと。まあ、その中の1つでもお手伝いできればなと。おもに食の方面でしっかりとお手伝いできればなという風に思います。

川森 まず2時間もアビスパのためにこのように、お時間を学会でいただきましたこと、本当に感謝しております。ありがとうございます。僕たちはチームの目標として今年掲げております「10位以内で勝ち点50」。これは5年周期を終わらせるという意味でも。福岡の地にそれこそ誇りと活力をもたらすためにも、しっかり達成して、年末にご報告したい。と思っております。また本日改めて川原社長、石丸さんのお話を聞いて、福岡市をはじめ地域にもスポンサーの皆様にも支えていただいていることを、ものすごく実感いたしました。このようなスポーツを切り口に、学会が30回も開催されていて、そこから私共もいろんな教えを頂いて、経営に役立たせていただいていることも改めて実感いたしました。いろんな方からのアドバイス、そして地域からのご要望、スポンサーの思い。そういうものを、僕たちフロントはピッチに立つ選手にもしっかり伝えることが地域と一体になるところの、ものすごく大事な役割であり仕事ではないかと強く感じております。
ですから、選手はただボールを蹴ってゴールを決めて、勝つことだけが目標とか。一年契約だったら一年しかいない福岡なんだということではなく、アビスパ福岡とプロ契約をした選手には、アビスパ福岡や福岡という街をしっかり理解してもらって、そのために一年契約だったら一年間でもいいですし、その期間しっかりアビスパ福岡の選手として全力でプレーしてもらうための役目があるなと改めて思いました。
シーズン中いいことも悪いこともものすごくいっぱいありますけれども、いろいろな形でそれを選手と共有しながらAGAの皆様や、スポンサーの皆様、自治体の皆様にもお伝えして、本当の意味でピッチの上の選手と一体感を持って行くと、ものすごい力になるのではないかと思っております。今回の学会でこのようなお時間を頂いたことによってなお一層その思いを強く致しましたので、しっかりタイミングを見て、今日のこの話の内容も、選手たち、そして首脳陣にも伝えて、さらに後半に向けて力を発揮できるようにして行きたいと思いました。本日は本当にありがとうございます。

本稿は、2021年7月11日(日)に開催された、第30回日本スポーツ産業学会大会の同名シンポジウムの内容をまとめたものである。

関連記事一覧