SPORTS SCENE

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早稲田大学文化構想学部 高田彩乃

タブルスを楽しむ参加者と指導者の小出洋平さん(右から2番目)

キャンセル待ちが出るほど人気のスポーツがあると聞いて、体験に出かけた。パドルと呼ばれるラケットで、プラスチック製のボールを打ち合う、ピックルボールだ。テニスに似ているが、コートはおよそ3分の1の面積しかない。ボールには複数の穴が空いているため、球速も落ちる。運動量の少なさから「年齢を問わずに楽しめる生涯スポーツ」として人気が高い。発祥の地アメリカでは、成人の5人に1人が経験者だという。

日本でもファンは密かに増えている。テニススクール「GODAI 亀戸」(江東区)は、都内初の常設ピックルボールクラスを始めた 。週に1回集まり練習を行う。各回10人の4クラスは大盛況だ。

参加者に勧められ、ルールも何も知らないままコートに立った。ネットを挟んでおよそ2メートルの近距離では、テニスをイメージすると、5回ほどラリーが続けることができた。「カーン」と昔遊びの「羽子つき」にも似た心地よい音が響く。

狭いコートで軽いボールを扱うには、力加減が求められる。テニスコーチ歴 12 年の指導者、小出さんは「簡単だからこそ、ショットを段階的に指導して上達させるのが難しい」と苦労する。30分間の打ち合いを終えた参加者は、額から汗を流し、膝に手をついて息を整えていた。可愛らしい名前に油断したが、意外に頭と体力を使うスポーツだ。

中学3年生の息子と参加した50代の母親は、「テニスと違いアンダーサーブが基本なのでひじへの負担が少ないし、背が低くても不利にならない」と続ける理由を語った。競技を始めてすぐに出場した大会で向上心に火が付き、今後は体育館を借りて自主練習を行う予定だという。誰でもできそうなのに、意外と難しい。飴と鞭を兼ね備えたピックルボールは、私たちの心を掴んで離さない。

 

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