スポーツ産業を測る 日本と英国のスポーツ産業構造の比較
スポーツ産業を測る
日本と英国のスポーツ産業構造の比較
庄子博人│同志社大学スポーツ健康科学部准教授
英国ではスポーツサテライトアカウントを作成し、経年的に国際比較可能な指標を開発しています1)。わが国においては、スポーツ庁・経済産業省の監修のもと日本政策投資銀行により日本版スポーツサテライトアカウントが開発され2018年3月に公開されました2)。
表には、2011年の日本と英国のスポーツ産業のGVA (粗付加価値)を比較しました。粗付加価値GVAはGross Value Addedの略であり、付加価値を表します。日本と英国を別にそれぞれ大きい順に並べ、全体の付加価値を100%とした時の割合を示しました。英国の数値は、2011年平均127.934円/ポンドで円換算したものです。
その結果、全体を見ると、日本のスポーツ産業は6兆6,416億円、英国4兆6,278億円となり、日本の方が金額では大きい結果となりました。ただし、両国の産業全体の大きさを考慮すると、日本は1.39%、英国は2.60%となり、日本のスポーツ産業は、英国のスポーツ産業の半分程度の割合であることがわかります。
また、産業部門ごとに見ると、最も大きい部門は日英ともに「スポーツ活動」であり、スポーツ興行団やスポーツ施設など、スポーツ活動そのものが含まれる部門となっています。次には、日本では、「教育」「小売」「卸売」「その他サービス」「ホテル・レストラン」「情報通信」と続き、ここまでで全体の83.3%を占めます。一方、英国は、「情報通信」「教育」「広告、ビジネス活動」「小売」「ボート/航空機」「金融仲介」と続き、ここまでで全体の83.6%を占めます。日本と英国の比較で言えば、日本は、「小売」「卸」の流通関係が大きく、英国は、「情報通信」「広告、ビジネス活動」「金融仲介」などサービス関係が大きいと言えます。英国の「情報通信」「金融仲介」などは、従来はスポーツには馴染みがなかった部門であり、これらの産業は2012年のロンドンオリパラに向けて大きく成長した分野であると報告されています1)。
東京2020オリパラに向けて、わが国のスポーツ産業もこれまでにない新しい部門が成長することが期待されます。
▶ 1)Department for Culture Media and Sport, UK Sport Satellite Account, 2011 and 2012, 2015
▶ 2)日本政策投資銀行, 同志社大学, わが国スポーツ産業の経済規模推計~日本版スポーツサテライトアカウント~, 2018