スポーツ産業を測る 英国のスポーツ産業
スポーツ産業を測る
英国のスポーツ産業
庄子博人│同志社大学スポーツ健康科学部・助教
英国のスポーツ産業規模
英国およびEUではスポーツサテライトアカウントを作成し、経年的に国際比較可能な指標を開発しています。スポーツ産業の捉え方は先行研究において様々な議論がされていますが、英国でのスポーツ産業の基本的な概念として、スポーツ産業は、一般の産業の中に横断的に存在する産業である、という考えがあります。この考え方のもと、一般の産業連関表からスポーツ産業を切り分けてスポーツサテライトアカウントを作成し、スポーツ産業の規模を計測しています。
表1には、2004年と2012年時点での英国のスポーツ産業規模を示しました。英国のスポーツ産業は、経年的にGVA(粗付加価値)、消費支出、雇用の3面から計測されており、表1にはGVA(粗付加価値)を示しました。2012年のスポーツ産業の合計は、388億9,100万ポンドとなり、全産業に占めるスポーツ産業の割合は2.6%となりました。経年的な数値を見てみると、2004年時点で248億7,900万ポンド(全産業に占める割合2. 2%)でしたので、8年間でスポーツ産業が急成長したことが読み取れます。これは2012年のロンドンオリンピック開催が影響している可能性が考えられます。また、産業別に見ると「スポーツ活動」が56.4%ともっとも大きい割合を占め、情報通信(8.2%)、教育(4.4%)、広告(4.1%)、小売(3.9%)、行政(3.8%)など幅広い分野に存在することがわかります。
英国のスポーツ産業統計の意義
英国のようにスポーツ産業を把握することは、スポーツに関わる産業構造を明らかにすることにつながり、スポーツ産業振興政策に不可欠な情報となります。英国の場合は、文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media & Sport: DCMS )が実施主体となり、実際の計測はシェフィールドハラム大学スポーツ産業リサーチセンター(Sheffield Hallam University, Sport Industry Research Centre)が計測しています。経年的に客観的な産業データを計測し続けることで、スポーツ産業振興を国家的に進めていくエビデンスにしていると考えられます。