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スポーツビジネスジャパン2026 Day2 開催レポート ―スタジアム・アリーナを基点としたスポーツ産業の再設計―

スポーツビジネスジャパン2026 Day2 開催レポート
—スタジアム・アリーナを基点としたスポーツ産業の再設計—

びわこ成蹊スポーツ大学 学長補佐/准教授
吉倉秀和

2026年1月23日、コングレスクエア日本橋にて「スポーツビジネスジャパン コンファレンス2026」Day2が開催された。Day1では、「ヒト」「コミュニティ」「街づくり」を軸に、スポーツビジネスのレガシーがいかに未来の価値創造へ接続されるかが議論された。Day2では、これらの価値が具体的に集積し、可視化され、事業化される装置としての「スタジアム・アリーナ」に焦点が当てられ、プログラムはスポーツ施設をめぐる政策・金融・設計・都市経営・リーグビジネスが段階的に論じられる一日となった。

サマライズセッションを担当した筆者

スタジアム・アリーナのミライ

(SBJセッション1)
SBJセッション1「スタジアム・アリーナのミライ」では、早川琢雄氏、古賀亮氏、井上滋道氏が登壇し、国内外のスタジアム・アリーナをめぐる変遷と今後の展望が議論された。時系列整理として、2000年以降の各年代を「スポーツビジネス萌芽期」、「スタジアム・アリーナ改革」、「スタジアム・アリーナを通じた地方創生」の時代として提示し、国内のスタジアム・アリーナが、競技開催の場から地域創生や都市経営の核へと段階的に高度化してきたことを示した。
論点の一つとしては、スタジアム・アリーナの価値を経済的価値のみで評価することの限界が挙げられ、VFMや経済波及効果分析に加え、健康増進、地域愛着、コミュニティ形成、交流人口拡大といった社会的アウトカムを可視化する評価モデルの必要性が論じられた。また、スタジアム・アリーナは施設単体では収益化が難しい場合も多く、行政支援や民間投資を正当化するためには、経済的価値と社会的価値を統合的に評価する枠組みが不可欠である。
また、井上氏からは、米国におけるスタジアム・アリーナと都市開発・地域社会の接続事例として、スタジアム・アリーナが単独施設としてではなく、周辺開発、商業、居住、コミュニティプログラムと一体化し、都市の価値を高める拠点として機能していることが提示された。 この点は、「施設単体」から「エリア全体」への発想転換が進みつつある現在、スタジアム・アリーナのミライを考えるうえで不可欠な論点である。

音楽特化型『Kアリーナ横浜』から探る──未来のスポーツアリーナ設計
(セッション4)

続くセッション4では、ヤマハサウンドシステム株式会社の富士本優氏が進行を務め、Kアリーナマネジメント、ソニーマーケティング、ヤマハサウンドシステムの関係者が登壇した。
ヤマハサウンドシステム株式会社からは、音響機器を販売するだけではなく、構想・計画、システム構築、施工、音響測定・調整、保守・メンテナンス、改修までを一貫して担う企業であることが説明された。アリーナ設計において重要なのは、施設全体のビジョンに基づいて音響、映像、座席、動線、飲食、ホスピタリティを統合する設計思想である。Kアリーナ横浜の事例は、「選ばれるアリーナ」とは何かを考えるうえで象徴的であり、音楽に特化した形状、座席へのこだわり、ハイクオリティな特殊設備の常設等の滞在体験の設計は、スポーツ施設にも応用可能な視点である。未来のスポーツアリーナに求められるのは、競技開催日の観戦環境だけではなく、来場前後の動線、滞在中の快適性、演出による高揚感、試合後の余韻を含めた一連の体験設計である。この意味で、アリーナ設計はハードウェアの設計であると同時に、感情価値、体験価値、滞在価値の設計でもある。

GLION ARENA KOBEとTOTTEIの街づくり〜アリーナを軸としたスマートシティモデルの挑戦〜(セッション5)
セッション5では、One Bright KOBE、大林組から担当者が登壇し、神戸ウォーターフロントにおける新たなアリーナ・エリアマネジメントの構想が紹介された。GLION ARENA KOBEは、2025年4月開業、約10,000人収容の民設民営アリーナであり、B.LEAGUE神戸ストークスの公式戦に加え、音楽ライブ、MICE、国内外の大型コンベンション等を想定している。年間160日超の事業展開、100万人以上の集客を目指し、365日稼働するまちづくりが提示された。
この事例の意義は、貸館中心のアリーナ運営から、主催・共催興行を含む能動的なコンテンツ創出へと踏み込んでいる点にある。また、神戸ストークスとの一体運営により、ハードとソフトの連携、チームと施設の相互価値向上、日常利用と興行利用の接続が目指されており、加えて、アプリやペイメント、データ活用を通じたスマートシティ構想は、アリーナが都市データを集積し、回遊性や消費行動を高めるプラットフォームとなる可能性が示された。

プロスポーツリーグのレガシーとミライ(SBJセッション2)
Day2最後のセッションでは、EYストラテジー・アンド・コンサルティングの岡田明氏、B.LEAGUEの菅原瑠美氏、SVリーグの實吉冬貴氏が登壇し、プロスポーツリーグの構造変化と将来展望が議論された。本セッションは、施設論を中心に展開されたDay2の議論を、リーグ経営や競技団体の事業構造へと接続する位置づけを持っていた。
近年、B.LEAGUEやSVリーグは、アリーナ要件、クラブライセンス、観客動員、放映・配信、スポンサーシップ、地域連携などを通じて、プロスポーツリーグの経営高度化を推進しており、プロスポーツリーグのレガシーとは、競技運営やリーグ制度の蓄積であると同時に、地域に根づいたクラブ文化、ファンコミュニティ、観戦体験の蓄積でもある。これをミライへ接続するには、リーグが単なる試合運営主体にとどまらず、アリーナ、地域、メディア、パートナー企業を結びつけるプラットフォームとして機能することが求められる。

日本スポーツ産業学会・中村好男副理事長によるオープニング

総括:スポーツビジネスのミライを再設計する——レガシーから新たな社会価値創造へ

各セッションを通じて、スポーツビジネスが今後どのように社会と接続し、新たな価値を創出し得るのかが多角的に議論された。
筆者がサマライズセッションで示したように、Day2の論点は、「社会を豊かにする接点」「選ばれるアリーナになるために」「スマートシティモデルの挑戦」「プロスポーツビジネスの模索と更なる発展」という四つの視点に集約できる。これらはいずれも、スポーツビジネスを競技や観戦の枠内に閉じるのではなく、都市、文化、エンターテインメント、コミュニティ、テクノロジーと結びつける試みであった。
特に印象的であったのは、スポーツビジネスの「レガシー」と「ミライ」の関係性が、単なる過去と未来の対比ではなく、価値創造のプロセスとして整理された点である。「レガシー」とは、競技、観戦、消費を中心に蓄積されてきたスポーツ産業の「価値の土台」であり、「ミライ」とは、その土台をテクノロジー、社会環境、観戦行動の変化に応じて再設計し、都市・文化・エンターテインメントを統合する基盤産業へと拡張していく営みである。
また、価値の創造と獲得、トレードオフ、ポジショニング、模倣困難性、長期的視点等といった経営戦略の原理原則は、スタジアム・アリーナ事業やリーグビジネスにも不可欠であるが、単に新しい施設を整備するだけではなく、どのような価値を誰に提供し、どのような独自性を持続的に築くのかという戦略的思考が各スタジアム・アリーナの事業者には今後さらに求められる。
本コンファレンスの意義は、スポーツビジネスの価値を再確認するとともに、参加し、聞き、語ることを通じて、新しい挑戦や協業が生まれる契機を提供した点にある。今後問われるべきは、スポーツビジネスが「新しい社会」を創造できるのか、スポーツ産業が「明るい夢や未来」を描けるのか、そしてアカデミック領域がその実践にどのような役割を果たせるのかである。Day2の議論は、スポーツ産業の拡張と新展開に向けた期待を、理論、論理、そして熱意の交点から実感させるものであった。

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