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大阪、関西に根ざして株式会社PACkageが取り組むeスポーツと地域コミュニティビジネス

大阪、関西に根ざして株式会社PACkageが取り組むeスポーツと地域コミュニティビジネス
山口 勇│株式会社PACkage代表取締役 大阪府eスポーツ連合理事

サッカー、野球、バスケットボール、ありとあらゆるスポーツは地域からの支援やコミュニティの関係を育み成長している。しかし、eスポーツはデジタルとオンラインの文化で世界が一瞬で繋がり、地域単位というコミュニティが育ちにくい分野だと考えられる。
PACkageは大阪を拠点にプロのeスポーツチームの運営、イベントの主催、勉強会などの活動を通じて地域との関係を作り、eスポーツをビジネスとして育てている。PACkageが行ってきた地域、ローカルでのeスポーツ活動の取り組みや成果の事例を中心に、地域スポーツとしての成長過程と今後の展望、eスポーツならではのローカルからグローバル、グローバルからローカルの流れを作るビジネス展開をご紹介いただく。

eスポーツを利用した地域コミュニティや地域スポーツ分野とのコラボレーション

当社は2018年に法人成りをして、五期目を迎えております。事業のメインはイベントの企画運営事業で、地域コミュニティや地域スポーツ分野とのコラボレーションをはじめとしたイベント企画やタレント運営をしております。 eスポーツ専門学校や、塾も増えており、講師向けのセミナーや、弊社タレントから講師派遣もしております。また、サッカーや野球でいうproチームとそのユースチームを持っております。その他に、プラットフォームの運営事業や、販売代理店事業などもやっております。
日本eスポーツ連合は、日本唯一の国が認める団体として活動し、最終的に、オリンピックに選手を派遣することを目的として活動している団体です。会長にはセガグループの取締役会長を含め、様々なゲーム業界の関係者、政治家の皆様とも関係を持ってしっかりと進めているところです。

老人ホームでのeスポーツ活用事例

弊社では、有料老人ホームや、福祉介護施設などでeスポーツゲームを導入し、バイタルセンサーなど取りながら、フレイル予防に使ったり、認知症予防に使ったりしております。
老人ホーム同士で対戦したり、ご家族の方々と施設に入られたご高齢の方々を繋いでオンラインで対戦するなどといった取り組みをしております。家族との面会機会の減少や、地域コミュニティーイベントで集まりなどが中止されたコロナ禍ですが、高齢者の健康低下の一つの解決策として、私たちPACkageが所有しているeスポーツのノウハウとNTT西日本様の保有するインフラICTとを活用し神戸市様協力のもとeスポーツを利用していただき、日々対戦したり、プレーを通じてコミュニケーションをとることによって、様々なitリテラシーの向上や健康増進に寄与するという活動しております。
今年の3月にレジェンドカップというeスポーツの大会が行われました。参加者が60歳以上の方々でeスポーツの大会を開催し、インベーダーゲームと太鼓の達人という2つのゲームをしましたが、施設の方々が、手を振ったり、声援を出したり、選手の方は、真剣に画面を見ていたり、プロジェクターとスクリーンで他の人たちの様子を見ながら応援したり、地元、施設の代表選手を応援する、そういった文化ができています。
eスポーツとかデジタルというものは、難しくて高齢者はできないのではと言われることがよくあります。でもぷよぷよとかテトリスとかそういうゲームであれば、高齢者の方々でもやって楽しむことができ、それを見て楽しむこともできます。

観光業との事例

有馬温泉観光協会様との取り組みでは毎年7月、8月に夏まつりを開催しております。屋台の一角に机と椅子を並べてパソコンを置いてゲームをする場を作りました。メイン通りの歩行者天国の中で、盆踊りを踊っている人たちのすぐ近くで子供たちがゲームを楽しんでいたり、その様子を保護者の方々が見られたり、また、ユニフォームを着た弊社のタレント選手が実況解説をしたり、エキシビジョンマッチをしたり、交流イベントをさせていただきました。このようにeスポーツは大人と子ども、それから高齢者、たくさんの方々が交流することができます。ゲームタイトルをしっかりと選ぶことが出来れば、本当にいろんな世代の方々が対戦し、それを見ることができるという一つのエンターテイメント空間を作ることができると確信しております。

箱物でのイベント事例

ボートレース尼崎という公営競技場での体験会ではぷよぷよeスポーツとサムライスピリッツ、キングオブファイターズというゲームを採用しました。eスポーツという言葉は知らなくても、例えばぷよぷよは好きだったり、サムライスピリッツやキングオブファイターズというゲームをしていた方々が実際に触れる機会として、とても有用なところになったと思っております。近年、ボートレース場や競馬場、ショッピングモールなどでのイベント開催が増えているところです。
FIFAというサッカーゲームを使ったガンバ大阪の事例では、パナソニックスタジアム吹田でイベント開催しました。eスポーツを使う理由として、雨の日でも遊べること。子供達に対してサッカーのパスを教えるとか、そういったことを今までやってきましたが、雨の日はできなかったり、怪我をしたり、何か障がいを持っていたり、そういう方々に対して何かコンテンツを提供できないかと始まりました。コンコースの中にモニターとゲーム機を置き、eスポーツ対戦会体験会を実施しました。ファンの顧客体験を向上させようといった目標でやっております。eスポーツの選手と一緒にプレイして、パスの仕方やゲームの中での動き方のアドバイスをもらうなど、体験コンテンツとして提供させていただきました。
現在パナソニックスタジアム様、京都サンガスタジアム、豊田スタジアム様など全国的に色々なスタジアムでサッカーの試合、野球の試合、バスケットボールの試合の中でeスポーツイベントが開かれております。

eスポーツ日本一を決めるPAC-CUPの事例

大阪でパックカップという、弊社かんむりの大会を開催しております。こちらは多種多様なスポンサー様に入っていただき、eスポーツの日本一を決める大会です。
予選は250チーム2000名が参加しました。ひとつの特徴としては、決勝戦はオフラインでステージを作って開催しました。eスポーツの一番の特徴は予選から決勝まですべてオンラインできるというところがあります。同時にオンラインだけでは、興行としては成り立ちにくい側面もあります。逆に2000名が入るような箱を用意しなくても良いというのも大きな特徴です。
決勝ではチケット2000円で、130名以上が会場に詰めかけました。視聴者の累計は116,286人となりました。
このパックカップ、2019年は「スパワールド世界の大温泉」様で開催しました。その後、スパワールド世界の大温泉様の一つのイベントとして夏祭りイベントが開催されました。座敷のフロアを完全にゲームコーナーにして、ぷよぷよや、ウイニングイレブン、パワフルpro野球などいろんなゲームタイトルを採用させていただきました。1日あたり200名から300名程度ご来場いただき、6日間で1800名が参加するイベントになりました。

タイトル選択の課題

いろんなイベント、ゲームがある中で、どのゲームを選べばいいのかが皆さんの一番の課題になると思っております。サッカーのイベントではFIFAを採用しましょうとか、野球をやっているので、パワフルpro野球を採用しましょうという流れが2018年から2019年は強かったです。けれども最近は、いろんなタイトルを採用する傾向にあります。5月に豊田スタジアムさんで行われたイベントでは、ロケットリーグという車でサッカーをするようなアクションゲームが採用されました。最初はeスポーツで人気のあるタイトルを使おうとされますが、その場所、その施設、そのターゲット層にあったゲームタイトル選ぶことが、一番大事な地域コミュニティビジネスの作り方だと考えております。

コロナ以降のeスポーツ活用

コロナになってから、大きく二つの分野でのeスポーツの使いかたが増えてきております。
一つ目が有馬~六甲 Virtual Ride Race。六甲山をゲームの中で登るイベントです。2020年以降、定期的に開催しています。実際にスクリーンを目の前にしながら、フィットネススタジオの自転車のような機械を漕いで、山を登って行く画面が目の前に流れる、そんなイメージです。ROUVYというゲームを使って、世界中の山や道を走れる。そういうコーナーが有馬温泉の施設の中にあります。
また、昨年11月28日、大阪の岸和田市で開かれた岸和田デジタルフェアというイベントなど、最近は教育やデジタルを広げるようなイベントが大変多いです。こちらは岸和田商工会議所様が主催されて開催しました。ドローンを使ってお菓子をつり上げる最新技術体験や、ゲーム大会のなかで、ゲームの作り方というような教育コンテンツを併設したり、などが最近増えております。
海外とのコラボレーション事例では、6月に有馬温泉も含めてイベントを開催しました。マリオットグループと協力して、フランスからゲーマーたちを呼んで日本中を観光しながら、日本の人たちとゲームをしたり、フランスの人たちに対して日本の文化や、施設環境を紹介して、ぜひ日本に観光においでよというイベントです。東京、大阪、名古屋、兵庫を転々としながら日本観光し、その様子を常にライブ配信しました。有馬温泉で浴衣を着て写真を撮ったりしてアップしたことで、有馬温泉観光協会のリンクは数十万アクセスという接続数を記録しました。本当に多くのフランスの方々に興味関心をいただいたと思っており、こういった取り組みが増えていくと思います。
先ほどの有馬温泉の自転車を漕ぐ施設などをフランスから来たタレントさんが、観光の一つとして、実際に漕いで楽しんでもらいながら体験してもらいました。例えば六甲山の山頂まで自転車で登っていくコースも収録されており、フランスの皆さんも家からでも体験できます。フランスから日本を体験してみてください。コースを登ってみてください。そんなコンテンツ提供となっています。これも大変人気があり、同時接続数のライブ配信視聴者が約7000人程度いて、とても反響がよかったです。晩ご飯を食べている様子もずっと生配信しました。ゲーマーの配信者は普段はずっとゲームの配信をしていますが、有馬温泉の施設でご飯を食べている姿を配信しながら、これはこういう料理らしいよ、と、一つ一つ解説しながら生配信しました。
皆さんが想像されるような、いわゆる普通のeスポーツ興行も、埼玉スーパーアリーナが満員になるような規模でも開催されていますが、ローカルに関してはeスポーツのコンテンツを使って、ありとあらゆるものとコラボレーションさせながら、シナジー効果を出してイベントをしているところが特徴としてあります。

eスポーツ活用の5つの要点

私たちがこの5年間、さまざまな企業様とeスポーツのイベントをさせていただく中で得たことを皆さんに共有すると、五つが上げられます。
1つ目が、eスポーツと聞くと、屋内で、インターネット回線がないとできないんじゃないかと思われる方が多いです。もちろん、インターネット回線があった方が生配信ができたり、ゲームタイトルの採用幅が広がったりはします。しかし、ゲームというコンテンツは、電源さえあればできると思っていただければ結構です。雨が降った場合もテントを広げて行うなど、意外とどこでも出来ます。
2つ目が、ご高齢者からお子様まで多種多様な世代の方々が楽しむことができます。その世代間の交流を生み出すことのできるイベントが最近増えてきています。
3つ目が、ありとあらゆるものがシナジーとして生み出せる。これも一つの特徴でございます。例えばストラックアウト(一番から九番までパネルが並んでいてそこにボールを投げて当てるゲーム)をリアルとゲームを使いながら対戦して、それをみんなで見て楽しむなど、色々と発想できると思います。
4つ目にスポーツビジネスの皆様は、スポンサーを獲得して収益事業を成り立たせている方々が多いと存じます。eスポーツもその内の一つですが、近年のb to c事業は注目をして頂きたい分野です。PAC-CUPという大会の事例がありましたが、チケット2000円をお支払いいただいて、130人150人の人を集めるイベントがあります。また、昨年末のイベントでは、入場料5000円で100名集めてイベントをやりました。数百人単位のイベントはもちろんですけが、pro大会では1~2万人が6000円~1万円払って見る大会もあります。eスポーツを使ったコンテンツを皆様の普段やっている事業にプラスアルファで考えていただければと存じます。
最後に、国籍も言葉も飛び越えて、ありとあらゆる人たちが一緒に楽しめます。ぷよぷよというゲームは海外でも人気がありますが、言葉が通じなくても2人で対戦することができます。その中で、片言の英語とか日本語で話ができたり、交流を深めて一緒に楽しむことができる。更に、オンラインのネットワークを使えば、遠方の人たち同士でも一緒に遊んで対戦することができる。そしてその様子を配信することができる。これがeスポーツ、デジタルの一番の強みだと考えております。

eスポーツの今後

今後eスポーツやゲーム自体が利用されるシーンは増えていくと考えております。数年前では、サッカースタジアムやラグビー場でゲームのイベントだけを開くことはなかったと思います。でも、ここ数年は、オフシーズンのスタジアムを使ったり、オフシーズンの選手を使って配信ビジネスを繋げていくなどの機会が増えてきております。
ショッピングモールとスタジアムを繋いでショッピングモールさんがスポンサーしているチームと一緒に、選手の顔と画面を映し出して、一緒にゲームをして交流できるイベントもやっていたりしています。
また10代未満の方々から70代、80代の方々が交流をして行くような世の中になっていくのではと想像しております。インベーダーゲームを70代の方々が13、14面までクリアされます。おじいちゃん凄いみたいなものがツイッター上とかで拡散されたり、そのツイッターを見た海外の方が、日本のおじいちゃん凄いというような。SNSも含めて、どんどんどんどん拡散して行く。これがすごくデジタルの良いところだと思います。
また、アーバンスポーツがどんどんどんどんデジタルの中にゲームとして増えていくと確信しております。自転車競技や、スケートボードやダンスがどんどんゲームになっていくと思います。
地域や日本という一つの国の中でスポーツビジネスをされている方は、eスポーツというツールを使って、b to bももちろん、b to cに対してどういう顧客体験を与えていけるのか、自身のブランドや所属するタレント選手との交流を深めていくか、さらにファンを獲得してPRにして行くのか?このウェビナーを一例として実施していただければと思っております。

Q.パッケージという会社として年間開催されているeスポーツ関係のイベント数はどのぐらいですか?

A.数十人程度の交流会以上という規模で行きますと、だいたい200ぐらいです。eスポーツ連合の仕事を含めて、ご高齢者の方々に、eスポーツを体験していただくレッスンや勉強会みたいなものを含めると、プラスで百ぐらいの件数になっています。

Q.通常、地域や温泉地でやるなどのイベントに、いろんな企業さんがスポンサーとして入られていると思いますが、ゲーム会社やソフト会社の他に、一般企業の数は増えて来ていますか?

A.2018年から増加傾向になっております。大手だと、日清さんやグリコさんのような食料品会社や、2020年後半からはアパレルメーカーさんが増えてきています。eスポーツチームとのタイアップや、例えば、有馬温泉のイベントでは浴衣姿のキャラクターTシャツを限定販売するなど、イベントにコンテンツをコラボさせ、実売も重ねていくという、形が最近特に増えております。

Q.今後どのようなコンテンツが増えるとお考えでしょうか?

A.eスポーツの競技シーンで主流となっているシューティングが続いていくと思います。競技、大会以外だと体を動かしたい、や、体感できるというコンテンツが伸びていくと想像します。最近フランスで流行っている、ランニングマシンを走りながらゲームをして、敵を倒せばランニングマシンがだんだん速くなるというものがあります。ゲームのプレースキルは勿論ですが、自分の体力を試されるというのがとても面白いと思います。スポーツゲームの枠を超えて、体感できるようなものが増えていくと思っています。

Q.3つぐらい柱があると思います。eスポーツを活用したイベント興行という意味で、広告代理店のようなチケット販売も含めてノウハウを提供するという柱。2つめにクライアントと一緒にイベント自体を興業としてビジネスを成立させるという柱。最後に、日本というコンテンツをプロモーションするという柱がありますよね。
クライアント側のニーズに答えるっていう意味では、こういう3つの柱があるという理解でよろしいでしょうか?

A.その柱で間違いないです。スパワールドは入場料がメインで稼がれているので、入場してくれないと意味がないといったところもありますし、有馬温泉の観光協会だと、もちろん有馬温泉に来てくれたら一番良いけど、ECなど、地場産業の売り上げが上がれば嬉しいという観点でも、配信で色々なプロモーションをしています。例えば有名な山椒や石鹸があったり、そういったものをPRしてオンライン上で売れたら、一つのメリットという部分があります。
eスポーツの活用には売り上げとブランディングの大きく2つありますが、リクルートの一環としての側面もあります。ある運送会社さんではeスポーツ部という部活を作って、金曜日夕方から、社内のeスポーツ環境で部活動ができます。アフターシックスリーグという社会人リーグに出ています。

Q.なるほど。オンサイトでスパワールドに来て、そこでゲームを楽しむという、その集客が目標の一つですが、同時にオンラインで参加しても良いっていうことですよね。もちろんそのユーチューブ配信を見てくれるのでもいいと。eスポーツを活用したビジネスには、マイクロなビジネスモデル、収益構造があって、クライアントの要望に応じて仕掛けを色々提案できるという。実績を積んで大きくなる可能性が期待できる仕組みだなと感心させられました。そういういろんなノウハウが御社の中で培って確立していると思いますがそういう会社は日本に他にあるのでしょうか?

A.地方それぞれにあると考えています。北海道にもeイースポーツのイベント会社さんがあります。

※本稿は、2022年7月12日(火)に開催されたスポーツ産業アカデミー(ウエビナー)の内容をまとめたものである。

 

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