野人プロジェクトについて
野人プロジェクトについて
岡野雅行│株式会社SC鳥取 代表取締役GM
1.ガイナーレ鳥取とは
ガイナーレ鳥取は1983年に米子市で創設された「鳥取教員団サッカー部」が前進で、2001年に日本フットボールリーグ、2011年にJ2リーグへ昇格しました。その後2014年にJ3リーグへ降格、2023年現在J3リーグで活動をしています。2014年度から023年度までの経営成績及び平均観客数、そしてJ3における順位は表1の通りです。
2.GMとして関わったガイナーレ鳥取
私はJ3リーグに所属しているガイナーレ鳥取の代表取締役GMとして、2014年より10年間ガイナーレ鳥取の経営に携わっております。GMの仕事といいましてもチーム事情によって役割が違います。普通はチーム強化の責任者として務める事が多いですが、ガイナーレ鳥取では強化だけでなく営業、接待、広告、イベント、設営と何でも屋として動かなければいけません。また、鳥取県の人口は日本一少なく年間の工業出荷額(表2)が示すとおり大きな企業も僅かなのでスポンサー営業がとても難しく、運営、遠征、強化等のチーム維持費確保にとても苦労しています。
初めてGMとして迎えた2014年のシーズンは、開幕後なかなか勝利出来ず、特に大きな課題はストライカーの不在から来る得点不足でした。それまで選手としては浦和レッズ、ヴィッセル神戸など強化費が潤沢にあるチームに所属してきましたので、お金を掛けてチームを強くし、勝利をファン、サポーターへプレゼントする事が一番だと思っておりました。しかし、ガイナーレ鳥取はチームを経営してくことで精一杯なクラブです。当然、新たなストライカーを獲得する予算などありません。
3.野人プロジェクトのきっかけ
そんな状況に直面しながら少しでも選手獲得のための強化費を獲得するために鳥取県内を隈なく営業する毎日を過ごしていましたが、ある日、境港という大きな漁港を訪れました。鳥取県出身ではない私としては初めての訪問でした。
漁港で営業をしていると、とある漁師さんから、
「金銭的な支援は出来ないけど蟹や魚は山ほどあるから、ガイナーレが宣伝して売れば資金になるんじゃないか?」
というヒントを頂き、それと同様に全国に向けて蟹を販売しその資金を強化費にするという企画を思いつきました。当時からふるさと納税が流行っておりそこからの着想です。
プロジェクト名を「野人プロジェクト」と命名しました。
(第一期:〜2017年)
ガイナーレ鳥取は、お金はありませんが行動力だけは持っており、早速ストライカーを獲得するプロジェクトは始まります。
私が旗振り役となり漁師の格好で宣伝をしました。現役引退したばかりでしたので皆様勘違いされ、「あの野人サッカーやめて漁師になった」とヤフートップにもなりました。
結果として、初回2014年夏申し込み5296口、合計金額2698万円(1口5000円)、2か月間でこれだけのお申込みを頂きました。凄い反響で全国のテレビでも取り上げて頂き境港の皆様にも大変喜んで頂きました。サッカーの理念でもある地域密着に符合し、そして地域の方々と協力してチームを強くするという活動となり、ご協力頂いた皆様へとても感謝しております。
このプロジェクトにて協力して頂いた資金で、ブラジル人のフェルナンジーニョと契約しましたがその活躍は凄まじく、6試合で7得点とチームを上位に引き上げる原動力になりました。
蟹を買ってくださった方々も自分が関わった選手が活躍し大喜びで、一時は登録名を蟹にしようとそんな声もあったくらいでした。
5.野人プロジェクトの実践と結果
(第二期:2017年〜)
成功例はフェルナンジーニョだけでなく、2017年冬のプロジェクトでは私自ら2泊4日でブラジルに行き、レオナルドという選手を獲得しました。そのレオナルドがJ3得点王になりチームに貢献してくれました。レオナルドはファンサポーターにも愛され、地元の方々も大変喜んでおりました。その後レオナルドはJ2新潟へ移籍後もJ2得点王、翌年には浦和レッズへ移籍しました。
毎年夏と冬に、野人プロジェクトは続けています。
初回は凄い反響でしたが毎年そうは上手くいきません。事務発送作業もガイナーレのチームスタッフだけでやるのでとても大変です。
6.野人プロジェクトの展望と課題
一番の課題は一定数の受注数の確保です。告知したりホームページで出したりしてはいますがなかなか数が伸びないのか現状です。どうやって全国に広げて行くのが試行錯誤している現状です。
ただ、地域密着のとても良いプロジェクトである事は間違いありません。鳥取には良い物良い所がたくさんあります。このプロジェクトによりもっともっとたくさんの方に鳥取を知ってもらい来て頂きたいです。そしてガイナーレ鳥取が強くなり地元の皆様が誇りに思ってもらえるチームになりたいです。
課題はまだまだありますが今後も色々なプロジェクトを立ち上げ地域の皆様と一緒に地元を盛りあげることで、ガイナーレ鳥取を強くし、地方クラブの新たな経営のありたかを創造していきたいと思っております。