sports scene

▶左:皇居外周を走る人々。この日は小雨だったが、ランナーたちの足音が途絶えることはなかった。 ▶右:千鳥ヶ淵公園の桜と半蔵濠。1965年までは玉川上水の清流がこの濠に流れ込んでいたため水質が保たれていた。 ▶1)パレスサイクリングはコロナウイルスの蔓延防止のため、現在休止中。

春になると桜と菜の花で鮮やかに彩られる皇居周辺。近年は、市民が気軽にスポーツを楽しめる場としても注目度が高い。
皇居とスポーツといえば、有名なのは皇居の外周を走る「皇居ラン」だ。一周約5㎞というタイム計測しやすい距離と適度なアップダウン、信号がなくノンストップで走れるところがランナーからの人気を集めている。2007年に東京マラソンが初開催されてから人気が高まり、現在では一日数千人が走っているという。周辺では手荷物用のロッカーやシャワーを提供するランナーズステーションや、ランナー向けプランを提供するホテルが増加し、誰でも気軽にランニングに挑戦できる環境が整っている。
ランナーと並走するサイクリストもしばしば目にする。より長い距離を走るための練習でしっかりした装備で走るサイクリストが多いが、親子連れでも特別なコースなら安心して楽しめる。「パレスサイクリング」といい、毎週日曜日は祝田橋から平川門の往復約3km区間が自転車専用道路となるのだ。1)地域としてもより多くの人に皇居周辺でのスポーツを楽しんでもらおうという意図が感じられる。
このように城郭周辺の広い空間を活かしたスポーツ振興例として興味深いのは「大阪城トライアスロン」だ。その名の通り大阪城をフル活用して競技が行われ、なんとお濠でスイミングが可能なのだという。下水処理場の高度処理水を引き込むことで泳げるまでに水質を改善したといい、競技の参加者からは臭いは気にならなかったなどの好意的な意見が出ている。
皇居で同じことができれば東京マラソンに並ぶ注目のスポーツイベントとなりそうだ。 内濠の水質は水源が絶たれてしまったこともあり悪化しがちだが、下水道からの越流防止や浄化施設の設置など様々な方策が講じられたことで、徐々に改善されてきた。もし3度目の東京五輪が開かれることがあるなら、日本の歴史と自然をフル活用した「皇居トライアスロン」をぜひ目にしたい。
▶文・写真│伊勢采萌子

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