スポーツ産業を測る スポーツサテライトアカウント2020

スポーツ産業を測る
スポーツサテライトアカウント2020
庄子博人│同志社大学スポーツ健康科学部准教授

1.スポーツサテライトアカウント2020

2021年8月に株式会社日本政策投資銀行は、スポーツ庁と経済産業省の監修のもと、スポーツサテライトアカウント2020(SSA2020)を発表しました。スポーツサテライトアカウントは、2017年から毎年作成され、今年公表されたSSA2020で4回目の作成となります。
スポーツサテライトアカウントでメインとしている指標は、スポーツGDPです。GDPは、国内の事業所が生み出したモノやサービスの付加価値額のことであり、生産・消費・所得の3面から捉えることができます。SSAでは、生産面のGDPを利用して、スポーツに関わる財やサービスの品目を積み上げる、あるいは、財やサービスにスポーツに関わるシェアを掛けて積み上げる、という作業をしてスポーツGDPを計算しています。

2. 2011〜2018年のスポーツGDPの経年変化

SSA2020で推計した2011〜2018のスポーツGDPを図に示しました。2011年は、6.9兆円であり、2012年7.0兆円、2013年7.3兆円、2014年7.6兆円、2015年7.9兆円、2016年8.0兆円、2017年8.4兆円、2018年8.7兆円となり、およそ2010年代のスポーツGDPは直線的な増加傾向であることが明らかになりました。加えて、GDPと比較すると、2011年が1.4%だったところが、2018年には1.57%となり、全産業に占めるスポーツ産業の割合が大きくなっていることがわかります。また、スポーツGDPは、スポーツ部門、投入部門、流通部門で構成されますが、スポーツ部門はスポーツの財やサービスを生み出す部門、投入部門は、スポーツ部門を作るために使われた原材料などの部門であり、流通部門は、スポーツの財やサービスを消費者に届けるための流通に関する部門となります。2011年にスポーツGDPに占めるスポーツ部門の割合は、70.8%であり、2018年は67.1%と減少傾向であり、一方、投入部門と流通部門の割合は、増加傾向にあります。金額としては3部門ともに増加していますが、スポーツGDPの成長の要因を考えると、スポーツの財やサービスを生み出す部門以上に、投入や流通に関係する部門の成長が大きく貢献していると言えます。
なお、これまで、このコラムで何度もスポーツGDPを紹介していますが、その数値と若干ですが異なっている年があると思います。これは、新しいSSAを作成する度に、過去分にも遡って推計しているためです。内閣府のGDPも確定値になるまでに、基準年によって3回改訂された後に確報値として扱われますが、スポーツGDPも今後ずっと過去分をアップデートし続けるわけには行かないので、確報をいつか決める必要があると考えられます。
また、SSAはデータの制約により、推計できる最新年は2年前ですが、今回、コロナの影響を見るために、品目を限定した簡易推計という形で2020年までの推計も行っています。その結果、分野によっては対前年比で70%程度まで落ち込む品目もあることが明らかとなりました。一方で、品目によっては対前年比でほぼ変化なし、のようなこともあり、コロナによって、どのようにスポーツ産業が影響を受けるのか、今後、慎重に推計していく必要があります。2020年までの簡易推計の詳細はレポートをご覧ください。

▶株式会社日本政策投資銀行地域調査部,わが国スポーツ産業の経済規模推計〜日本版スポーツサテライトアカウント2020〜2011〜2018年推計,新型コロナ影響度調査,2021.

 

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