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日本におけるeスポーツの未来 テレビゲームからスポーツへ その3─日本におけるeスポーツの展望─

日本におけるeスポーツの未来
テレビゲームからスポーツへ その3─日本におけるeスポーツの展望─
中村鮎葉│Twitch社

日本の状況

日本は遅れているとか、日本はだめだみたいな言い方がありますが、弊社の中で世界中でいろいろな情報をシェアすると、日本は結構すごいです。アメリカは3億人もいる大地ですし、カナダと合わせると4億人くらいになって、メキシコや南米も陸続きです。1億人しか使っていない言語で、1つの陸続きでもない国として取り組んでいる日本が、4〜5億人いる場所でやっているアメリカや、1つのまとまりとしてたくさん人口がいるEUと比べたりして落ち込む必要は全然ないと思います。
eスポーツのイベントは日本にもいろいろあります。ニコニコさんの闘会議はすごく大きいイベントだと思います。あちらは6万人くらい人がいらっしゃるのですよね。 「リーグ・オブ・レジェンド」の日本の決勝が幕張メッセで行われました。これは純粋に観戦のみの対戦なのですが、4千枚のチケットが30分くらいで売り切れました。観客のみ、体験も一切なし。ただ、大会を見るだけのチケットが4千席ありましたが、一瞬で売り切れたのです。このくらい日本でもポテンシャルがあるのですね。もっとチケットが開放されて、もっと広い場所でやっていたらもっと観客が来たかもしれない。
個人主催のイベントが、アメリカ、ヨーロッパはすごく多い。個人主催で大会を開く。または大学が場所を貸してくれるから学生がイベントを開いて何千人集まる。そうしたものがアメリカやヨーロッパにはたくさんあるのですが、日本でももっと出て来てほしいと思っています。
Twitchを使っていただいている日本のユーザーは月平均滞在時間が700分もありまして、すごく長い、世界一です。成長スピードでいうと、国としての視聴者の成長スピードでもトップ3に入っていまして、ユーザーの滞在時間、ユーザーのエクスペリエンスとしての世界でトップ10に入っています。日本は、eスポーツに関しても、ゲーム実況全体に関してもすごく大きい国だという実感が僕にはあります。

ゲーム先進国としての日本

日本ではeスポーツという言葉を聞くようになったのは最近かと思いますが、ゲーム実況の歴史はかなり長くて、日本は先進国です。競技というのではなく1人でゲームを楽しくやるとか、複数人でゲームを楽しくやっているところを動画として投稿する。それが競技的であれ、競技的でなくてもみんなでゲームをやっている動画を投稿したりとか、生でライブ配信、ライブストリームでゲームをやっているところを見せるというのはすごく日本は発達している文化が既に10年以上の歴史があります。すごく洗練されています。先ほど、eスポーツのファン層の8割が男性と申しましたが、ゲーム実況になると、タイトルによって違いますけれど女性ファン層がすごく厚くなってきます。
魅力の伝え方、魅力を広める方法については色々行われています。例えば2013年にアマゾンのキンドルで一番売れた本はプロゲーマーの書いていた本でした。梅原大吾さんというプレイヤーが書いた「勝ち続ける意志力」という作品。強いゲーマーが何を考えて生きているのか。この本がキンドルで2013年に一番売れました。こうした事例があって、その方のマンガが数種類ありまして、この人の出している本も複数あったり、最近はWOWOWさんがつくった映画で「リビング ザ ゲーム」とか、そうしたドキュメンタリー作品があったり、梅原大吾さんは仕事のプロフェッショナルとかに取り上げられていただいたりしています。一番理想的なのはアニメとか、ジャンプだとか、そういったところで、私が「アイシールド21」を読んでアメフトのルールを覚えたように、「ヒカルの碁」を読んで囲碁のルールを覚えたように、そういった方向で広まるのが一番早いなと思っています。

会場からの質問に応えて────────────
eスポーツの賛否

eスポーツタイトルと言われているのはゲーム全員がプロを目指しているわけではありません。ゲームの中にいろいろな楽しみ方をする人が1人でやる人もいれば、友達とやる人もいて、上を目指す人もいる。その1つにあるのがeスポーツなのです。Twitchの中でeスポーツ視聴時間、ユーザーの滞在時間をみると、大会を見ている人、競技を見ている人は全体の15%くらいなのです。ゲームの映像に興味がある人、他人がゲームをやっていることに興味がある人の85%は競技じゃない部分を見ています。むしろそっちが主流で、楽しいからゲームを見ているのであって、そっちの層がじゃあ今追いやられているのかというとそういうわけではありません。特に今人気のあるバトルロワイヤルという形式のゲーム、「PUPG」、「荒野行動」、「フォートナイト」とかは、実力が出るゲームじゃなくて、パーティ性が高いというか、めちゃくちゃなところがおもしろい。そのめちゃくちゃなところを友達と共有しておもしろがるところが楽しいゲームでありまして、むしろ方向としては実はPUPGも、フォートナイトも、eスポーツとしてリーグもやってはいますが、割合的には実は楽しんでいる人がたくさんいまして、楽しんでいる人がいるからこそ競技が際立つというか、競技があってこのゲームはしっかりしているゲームなんだなというブランディングがあるからこそエンジョイで楽しむことができたりとか、多角的・多面的な部分があります。
「ゲームなんて」という風潮に関しては僕は結構楽観的です。今、恐らくゲームをやったことのない一般層という方が20代だったらほぼいないのです。30代になってもかなりそこは少ない層で、家庭用のゲーム機が出始めたあたりから、皆さんすごくゲームに触れていらっしゃる方が多い時代になってきましたし、やはり30代、20代の人にとっては学校でゲームがうまいやつとか、ほかの人にできないことができる人っていうのはヒーローとして扱われていたわけですが、それを拍車にかけるように「ポケモンGO」という作品が出まして、40代、50代の方がゲームをする機会が出てきました。日常的にする機会が出てきて、単純にいってもあと20年とか、そういったスパンで完全に世代交代が起きて、つまり日本の世論のメイン層を占める50代、60代の方が日本は若い人がすごく弱いんでね。世論としてすごく「ゲームなんて」と言っている世代の方が20年くらいたつと、ゲームをやっていた人がその年齢になるわけですね。そういうところでジェネレーションが交代して、世論はすごくよくなると思っています。
「ゲーム障害」という言葉がありますが、目はどうしようもないです。今のところ視力は謎が多いのです。もし目の機構がわかっていたら、人間の目はメガネをかける必要はなくて、薬で治るはずなのです。でも、それがわかっていないから、コンタクトやメガネをする必要がでてくる人がいる。ですから視力が落ちてしまったらどうしようもないのですが、勉強をしてもゲームをしても、同等に視力が落ちるのです。
脳に関する障害については、ゲームで脳を使うと脳を使わない部分が出てくるというゲーム脳に関する論文が2003年くらいから出てきたのですが、あの論文はどのゲームタイトルで遊んだのか、どのように遊んだのかがわからないのですね。例えば競技性のあるゲームを他人とやったりする場合ですと、お互いにコミュニケーションをとらなければいけなかったりとか、昨日の自分、さっきの自分よりも上達しなければいけなくて、すごく頭を使うことになります。ですが、1人でゲームを遊んだりする場合はあまり頭を使わなくてすむケースがあります。パチンコとかの中毒がなぜ起きるかというと、射幸性とかもいわれるのですが、脳を使わないことにあるのですね。ずっと同じことをやり続けるために脳を使っていない状態に陥る。そこが快感があるからというふうに言われていまして、確かにゲームはただ遊ぶため、ただ娯楽としてやるんだったら、脳を使わないことによって障害が出たりすると思うのですが、頭を使って上達するためにやる場合にはすごく効果があると考えられています。ハーバードとかの論文でも暴力的なゲームをする人のほうが社交性が高いとかいったものも出ていますので、やりたいと思った時からゲームをやってしまって僕は大丈夫だと思います。

オリンピック種目化について

オリンピックに対して良い印象がない人というのはもちろんございます。ただ、これは2つの方法で存在しまして、1つは例えばスノボーとかと同じパターンですね。ゲームは特に例えばXゲームズにあるようなエクストリームスポーツの人とかもそうなのですが、もともとアングラでやっていたのに、それがスポーツになることによって、ちゃんとしたスポーツになることによって、礼儀を求められるのが嫌だとか、例えばアメリカでいったら。そうしたスポーツは州によっては大麻とか、そうしたものに文化がつながっていくわけじゃないですか。それがだめになるのはちょっと面倒くさい。そういう意味でゲームももともと好き勝手にやっていたのが礼儀とかを求められるのは嫌だなと思う、そういう若者はもちろんいます。
もう1つの方向としてはスポーツが嫌いという人です。屋内型の人というか、学校でスポーツすること嫌いな人がいっぱいいます。その人たちが大切にしているゲームが、自分が嫌だったスポーツと同じ場所に行くというのは人種的に文化的にあまり受け付けないなという人もいます。後者は少数派ではありますが、その2方向があるのです。 でも、それは驚くようなことではないし、eスポーツがオリンピックに入ったとしても、それによって暴動が起きて大変なことになるというわけでもないと思います。

▶︎本稿は、2018年7月23日(月)に、早稲田大学で開催された第46回スポーツ産業学セミナー「テレビゲームからスポーツへ!日本におけるeスポーツの未来とは」 ~無限の可能性を秘めるeスポーツのこれから~」の中村鮎葉氏の講演内容および質疑の一部をまとめたものであり、今号まで3回に分けて連載しました。

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