sports scene

北海道帯広市にある明治北海道十勝オーバルの外観

東京五輪の競技会場計画をめぐり「アスリート・ファースト」という言葉を最近は新聞でもよく見かける。競技会場はまず選手の都合を考えて作るべきだという意味でマスコミは用いているようだ。北海道の帯広市にある明治北海道十勝オーバルは、スピードスケートのナショナル・トレーニングセンターに指定されているだけあって、フルサイズの 素晴らしい競技場である。氷の質は、オリンピックが開催された長野市のエムウェーブに匹敵し、まさにアスリート・ファーストを具現化したものだと言ってよい。
しかし建築面積18 , 000 平方メートルのこの立派な施設には常設の観客席がないのだ。2 017年2月には冬季アジア大会のスピードスケートがここで行われる予定だが、普段は折りたたまれている臨時用座席とパイプ椅子を総動員しても1, 500人ほどしか座れない。特にリンクのカーブしている部分では壁面が迫っており、観客は立って見るのがやっとだ。
哲学者の多木浩二氏が言う通り、「もともとスポーツという概念は、発生の時から観客を含めた社会(社交)のなかで成立してきた」のである。このようなスポーツの本質を心に留めて、アスリート・ファーストを実現していく時代に我々はいるのだろう。▶藤原庸介

リンクがカーブしている部分は写真のように壁面が迫っている

関連記事一覧