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スポーツビジネスの現場から 良き指導者こそが商品 国内最大のスポーツスクール「リーフラス」の挑戦

スポーツビジネスの現場から
良き指導者こそが商品 国内最大のスポーツスクール「リーフラス」の挑戦
片野裕之│早稲田大学国際教養学部卒

サッカースクールの練習前、挨拶をするために背筋を伸ばす子どもたち(11月29日 新宿区・北新宿公園)

全国に約2,900か所のスポーツスクールを持ち、会員数は44,000人を超える――子ども向けのスポーツスクール事業を展開する国内最大規模の会社、リーフラス(LEIFRAS)は今年8月、創業16年目を迎えた。長年、学校の部活動や父兄などのボランティアによる少年団が主流だった育成期のスポーツ指導という分野を、リーフラスはビジネスとして構築し、現在の規模にまで成長させた。その要因は何か。その軌跡を追った。
リーフラスは2001年、福岡で設立。創業者の伊藤清隆社長は、当時、スポーツ現場での体罰問題を目の当たりにして、「なぜ楽しむべきスポーツが体罰の温床とならなければいけないのか」と感じていた。
「一番を目指すだけではないスポーツの楽しさを子どもたちに伝える環境を作りたい」
その想いがスポーツの指導をビジネスとするきっかけになったという。同様の事業を行う会社はそれ以前からあった。サッカーの技術指導に主眼を置くクーバー・コーチング・ジャパンやユアササッカークラブを全国展開するクリップコーポレーションは1990年代前半の創業だ。しかし、リーフラスでサポート本部副本部長を務める宮本大輔氏(写真上)は、「起業時に他社の取り組みを意識したことはまったくないです。創業当初からの一貫したコンセプトは、礼儀やマナーを守ること、思いやりを持つことであり、スポーツを通して子どもたちの『人間力』を高めることにあります」と言う。
「スポーツの競技人口はレべルで分けるとピラミッド型になります。その裾野にいてスポーツを支えているのは、週に1回でもいいからスポーツをしたいという子どもたちや、スポーツの高度な技術よりも子どもを楽しく運動させて、礼儀やマナーを教えてもらいたいという親御さんたちです。ここに、大きなマーケットがあります。世の中のニーズとリーフラスの提供するサービスがマッチして、15年でこれだけ事業が拡大したと思います」約650人の正社員を雇用する会社に成長し、2016年4月期の売上高は47億円を超えた。しかし、15年前からスポーツスクールの全国展開や現在の事業規模を目指していたのではない。宮本氏は、「伊藤社長は会社を福岡から広げる気はなかったんです。でも、新たに入社する社員が『自分たちの地元でスポーツビジネスを展開したい』と考え、東京や大阪、そして全国へと事業が広がった」と話す。その背景には、社員誰もがビジネスの発案者となって会社の事業を動かすことのできる社風がある。創業時に始めたスクールはサッカーのみだったが、野球やバスケットボール、剣道など、社員の「やりたい」という意志で他の競技のスクールが増えていった。今年5月には、社員の発案から新たにバレーボールスクールを開設、現在は8競技9種目のスクールを運営するまでになった。

ーフラス・サポート本部副本部長の宮本大輔さん

近年、東京を中心に子ども向けのスポーツスクールは大幅に増えている。有名アスリートや海外スポーツクラブチームが運営するスクールも多く、子どもたちからの人気も高い。こうした競合企業が増える状況を、宮本氏はどう見ているのか。
「リーフラスの会員は約4万人。現在、小学生は全国に660万人ほど。まだ、私たちの手はそこまで届いていません。なので、競合が増えていることを理由に我々のスタンスを変えるということはありません」
今後もリーフラスのスポーツ指導を受ける子どもは増えていくのだろうか。宮本氏は、社員採用の成否がますます重要になるだろうと言う。「リーフラスにとって、良い指導者こそが商品。人材の採用が事業の拡大に直結します。採用がうまくいけば、これからも事業は拡大していくと考えています」

▶かたの・ひろゆき25歳2016年9月、早稲田大学国際教養学部卒。在学中、オークランド大学(ニューじーランど)に1年間留学。6年にわたり子どものサッカー指導に携わる。来年4月に新聞社入社予定。

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