スポーツ庁ビジネス便り

スポーツ庁ビジネス便り
由良英雄│スポーツ庁参事官

昨年のリオオリンピック・パラリンピックでは、多くの日本人選手が活躍しました。これから、2 018ピョンチャン、20 20東京、20 22 北京とアジアでオリンピックが続きます。国内では、リオ大会の閉幕から時をおかず、バスケットボールのBリーグが開幕し、B1からB 3の45 チームによる熱戦が開始されました。
東京オリンピック・パラリンピックへ向けた新たなスタートを含め、スポーツ庁の旬の話題をご報告します。

スポーツの成長産業化プロジェクト

(1) スタジアム・アリーナ改革指針の策定
スタジアム・アリーナ改革については、昨年8月にスタジアム・アリーナ推進官民連携協議会を立ち上げ、協議会における取組の第一弾として、11月にはスタジアム・アリーナ改革指針を公表しました。同指針では、地方自治体などがスタジアム・アリーナの施設整備を行う場合に、それが街作りの核になっていくことを目指し、構想の策定から施設運営に至る一連のプロジェクトの上流段階から考慮すべき事項などを4つの分野、14の要件として整理しました。今年は更に、民間資金の活用、公民連携等について引き続き作業を進め、関連資料を取りまとめて、改革ガイドブックを作成することを目指すこととしています。。
(2) スポーツ経営人材プラットフォーム協議会
スポーツ産業の拡大を担う経営人材を育成供給するため、昨年10月にスポーツ経営人材プラットフォーム協議会を立ち上げ、スポーツマーケティングなどについて現場密着の知見を提供する仕組み作りやスポーツ分野外からのビジネス経験のある人材の参入促進などについて、取組を開始することとしました。先行する取組として、JリーグがJHC( Jリーグヒューマンキャピタル) 事業を行ってきましたが、これを発展的にスポーツ界共通の取組として推進するためスポーツ・ヒューマン・キャピタル(SHC)事業が昨年11月に公募を開始するなど取組が広がっていくところです。層の厚いスポーツ経営人材育成の取組となるよう大学、リーグ、企業、行政等の力を結集していきたいと思います。
(3) 平成29年度予算
平成29 年度予算として、スポーツの成長産業化を促進するため、スタジアム・アリーナの新設や改修を検討しているBリーグチームなどプロチームの地元地域において、官民で協議会を開催して構想具体化を進める

支援を行うための予算を政府予算案に盛り込みました。また、スポーツ経営人材の育成については各競技団体、大学などが連携して取り組む研修の充実や受講促進などのための予算を盛り込みました。更に、スポーツ産業と観光、食、ITなどの連携が期待される産業分野との結び付きを強めるための市場調査支援事業も予定しています。

大学スポーツの日本版NCAA創設に向けた検討会合

大学スポーツの振興については、大学スポーツの振興に関する検討会議において、大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版NCAA)の創設を課題として提起したところですが、昨年11月からその具体化を図るための実務者タスクフォースを開始しました。今春まで関係者のヒヤリングや討議を重ね、具体化に向けた道筋を描いていく予定です。

日立サンロッカーズは、青山学院大学のアリーナをホームとしています

総合型地域スポーツクラブの在り方に関する検討会議報告

スポーツ庁では、昨年7月から11月まで総合型地域スポーツクラブの在り方に関する検討会議を開催し、今後の総合型地域スポーツクラブの振興方策を検討しました。
ご存じのように、総合型地域スポーツクラブは地域において多世代、多種目の身近なスポーツの場を作ることを目的として文部科学省や地方自治体、日本体育協会等が設立運営を支援してきたもので、現在全国に約3 , 500のクラブが設置されています。総合型クラブは、その目的を実現していくために改革と充実が期待されており、今般の提言では、地域の課題解決に向けた取組の強化、クラブ間のネットワークや中間支援組織の充実、評価指標等を活用したPDCAサイクルの定着促進など広範な対策を講じる方針を打ち出しました。

世界体操連盟会長に就任が決まった渡邊守成氏(右)。国際化も次期スポーツ基本計画の大きな柱です

次期スポーツ基本計画の策定作業

スポーツ基本法に基づくスポーツ基本計画は、平成24年からの5年間に次ぐ平成29年からの5年間を主な対象とする第二期基本計画を策定中で、その原案となる中間報告を策定したところです。スポーツ庁にとっては、スポーツ庁設立の狙いや2 020東京大会のレガシーとなるべき諸施策を体系的に構築する重要な計画となります。スポーツ審議会(審議会長:山脇康JPC委員長)、同基本計画部会(部会長:友添秀則早稲田大学教授) において精力的に計画策定の議論が進められています。スポーツで「人生」が変わる、「社会」を変える、
「世界」とつながる、「未来」を創るといった明確で強力なメッセージと、それを実現するための骨太な施策を打ち出すことを目指しており、スポーツの成長産業化や官民連携などスポーツ産業に関わる施策もこの中のしっかり位置付けていきたいと思います。

東京大会及びその後へ向けた取組

(1)新たな強化戦略「鈴木プラン」
リオ大会が閉幕し、新たなスタートを切った日本のトップアスリート強化の基本方針として、スポーツ庁は「競技力強化のための今後の支援方針-2020 年以降を見通した強力で持続可能な支援体制の構築-」を昨年10月に発表しました。
このプランは、東京大会でだけでなく、持続可能な支援体制を構築・継承して、各競技団体(NF)が少なくとも二大会先を見通した中長期の強化戦略プランを策定実践するよう仕組みを構築しようとするものです。
このため、例えば、アスリートの各種データを一元管理するアスリート・データセンター(仮称)、諸外国の急成長中の隠れた選手の情報やメダル戦略等を収集分析するスポーツ・インテリジェンスセンター(仮称)など情報戦略面の強化を打ち出しました。
また、アスリート発掘の強化として、例えば甲子園の高校野球の大会終了を機に引退する選手、ベンチや応援に回った選手などを対象にトライアルを行って新たな種目でのチャレンジを促すなど、新機軸の取組を構築します。
(2)スポーツ・文化・ワールド・フォーラム
東京大会へ向けて国内外の関係者の取組を一体的に進めていくため、IOC バッハ会長をはじめ主要な国際機関の長や世界35か国のスポーツ大臣、世界の若手ビジネスリーダーなどが一同に会するスポーツ・文化・ワールド・フォーラムが昨年10月19日から22日に開催されました。
スポーツ大臣会合では松野文部科学大臣、鈴木スポーツ庁長官の進行のもと議長サマリーを取りまとめました。
また、官民ワークショップとして、2 6のセッションが行われ、「スポーツが育む“地元愛”」のセッションではJリーグ村井チェアマン、馳前文部科学大臣、NAC フィンドレー氏らの対談が行われました。サイバード前社長の堀ロバートさんのセッションでは、アスリートとそれを応援する個人が直接つながる新たなITプラットフォームという考え方が議論されました。

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