社会から理解され、納得される大会

八木 和広
愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会副事務総長

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会で大会運営に携わり、現在は2026年の愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会の準備を進めています。二つのメガスポーツイベントに関わる中で強く感じているのは、大会の成功を「開催期間中に問題なく運営できたか」だけで測る時代ではなくなったということです。地域や社会に何を残し、その後も価値を生み続けられるのか。持続可能性とレガシーは、今や大会運営の中心に置くべきテーマです。

振り返れば、1958年の東京アジア大会は1964年東京オリンピックの成功につながる重要な役割を果たしました。メガスポーツイベントは都市や社会を変える力を持っています。一方で、近年は建設費や運営費の増大、大会後の施設利用などが問われ、開催すること自体が価値になる時代ではありません。東京2020を経験したからこそ、社会から理解され、納得される大会でなければ持続しないと感じています。

愛知・名古屋2026では、過去の教訓を踏まえ、既存施設を最大限活用します。従来型の選手村を新設するのではなく、既存の宿泊施設に加え、クルーズ船や移動式宿泊施設も活用する計画です。これは単なるコスト削減ではありません。「大会のためだけに造り、大会後に負担を残す」という発想から転換し、必要なものを必要な期間使い、その後も別の用途で生かしていきます。
レガシーは建物だけではありません。大会運営で育つ人材やノウハウ、持続可能な調達の考え方、アクセシビリティの向上、ボランティアや地域の人々の経験も大切なレガシーです。特にアジアパラ競技大会を通じて、障がいの有無にかかわらず誰もが参加しやすい環境や意識が地域に残れば、それは大会後も続く社会的な価値になります。

愛知・名古屋2026が掲げるのは、「ソーシャルグッドな大会」です。スポーツイベントを一過性の祭典で終わらせず、社会課題の解決や地域の未来につなげていく。そのためには、大会そのものを大きくすることではなく、社会との接点を増やし、得られた仕組みや経験を次へ渡していくことが重要です。

2026年をゴールにするつもりはありません。この大会で得た知見を次の地域、次の大会、そしてアジアの未来へつなげる。愛知・名古屋から、これからのメガスポーツイベントの一つのモデルを示していきたいと考えています。

プロフィール(やぎ・かずひろ)
1994年、文部省採用(生涯学習局社会教育課)。文部科学省生涯学習政策局社会教育課長、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会 組織委員会スポーツ局次長などを歴任。2022年4月からスポーツ庁参事官(国際担当)、2024年4月から文部科学省大臣官房参事官、6月から公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会副事務総長として愛知県へ出向。現在に至る。

 

 

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