スポーツ産業学研究第36巻第4号
【原著論文】
大学サッカー選手における運動部活動経験がライフスキル獲得に及ぼす影響
博田広樹(法政大学大学院スポーツ健康学研究科)
田井楓(筑波大学大学院人間総合科学研究群)
小井土正亮(筑波大学体育系)
中山雅雄(筑波大学体育系)
島本好平(法政大学大学院スポーツ健康学研究科)
スポーツには、競技力の向上だけでなく、人としての成長を促す役割も期待されています。その中で注目されているのが、目標を立てる力や他者と意思疎通する力など、日常生活のさまざまな課題に対処するための「ライフスキル」です。しかし、スポーツに参加するだけで、こうしたスキルが自動的に身につくとは限りません。選手の成長を支えるためには、競技活動の中で、どのような経験をすることが重要なのかを明らかにする必要があります。
本研究では、大学サッカー部での経験とライフスキルとの関連を調べました。東北・関東・九州の3大学の男子サッカー部員を対象に質問紙調査を実施し、454名の回答を分析しました。その結果、「挑戦達成」の経験が「目標の可視化」と「目標の具体化」に、自分の考えを他者に伝える「自己開示」の経験が「目標の具体化」に正の影響を示しました。これらの結果は、選手が課題に挑戦してやり遂げることや、自分の考えを言葉にして周囲と共有することが、ライフスキルの育成につながる可能性を示しています。例えば、ミーティングで選手自身が目標や課題について話し、仲間や指導者と意見を交わす機会を設けることが考えられます。
本研究は一時点の質問紙調査であり、部活動での経験がライフスキルを高めたという因果関係までは明らかにできていません。今後は、選手を継続的に追跡する調査や、挑戦・自己開示の機会を取り入れたライフスキルプログラムの実践を通じて、その効果を検証する必要があります。スポーツを競技力の向上と人としての成長を支える場として充実させるために、選手の専門競技や置かれた状況に応じたライフスキル教育へとつなげていきたいと考えています。
夏季の暑熱がJリーグ入場者数に及ぼす急性および慢性効果の検証:3レベル階層線形モデルによる分析
佐野毅彦
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科
近年、夏季の暑さが激甚化しています。災害級ともいえる酷暑が常態化すると、夏場のスポーツ観戦を控える動きが広がりかねません。そうなると、スポーツ興行の主催者は「夏季の暑さは自然現象だから仕方ない」と静観するわけにはいかなくなります。
日本のプロスポーツ興行のうち、大半の試合が屋外施設で開催されるJリーグは、猛暑による負の影響を最も広く直接的に受けると考えられます。そこで本研究では、激甚化する夏季の暑さがJリーグの入場者数に及ぼす影響を、3レベル階層線形モデルを用いて、検証しました。
暑さの影響をどのように捉えるか。本研究では、試合日当日の影響(急性効果)と試合日までに蓄積される影響(慢性効果)があると仮定しました。また、暑さの影響は、日々の気象情報のアナウンスメント効果により生じると考えました。着目したのは、「猛暑日」(最高気温35℃以上の日)と「真夏日」(最高気温30℃以上の日)です。35℃を境に観戦需要は著しく減り、35℃以上が続くと需要の下押し圧力は高まり、35℃未満であっても30℃以上であればその圧力は維持され、30℃を下回ると緩むとみなしました。モデルには、急性効果の指標として「猛暑日」、慢性効果の指標として独自定義の「累積暑熱収支指数」を投入しました。
分析対象は2017~2019年および2023~2025年の計6シーズンにおけるJ1・J2の2,858試合です。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた期間に開催された試合、ホームスタジアム移転のあったチームの試合、ホームスタジアム以外で開催された試合は除外されています。
チーム間の集客力の差や同一チームのシーズンごとのベースラインの変動、天候、曜日、スタジアム形態などの影響を統制して検証した結果、統計的に急性効果は認められませんでしたが、慢性効果は認められました。
どういうことかというと、試合当日が「猛暑日」でも客足に変化がありませんでした。夏場の試合の多くが直射日光を避けたナイトゲームとして開催されていることや購入済チケットの払い戻しは原則として不可であるため、当日が猛暑日か否かを問わず、観客はスタジアムへ足を運んでいると考えられます。
しかし、暑さの蓄積はじわりと客足を鈍らせていました。入場者数は、暑さが本格化し始める頃は増えますが、その増え方は次第に緩やかになり、平均的な傾向として累積暑熱収支指数が23.9を超えると減り始めることが示唆されました。この背景として、夏ならではの開放感やバケーション気分が「試合を観に行こう」という意欲を高めるものの、猛暑日が続くと暑さへのうんざり感が募り、外出しようという気持ちが段々失われていくことが考えられます。暦の上では秋を迎えても厳しい残暑が続く地域で、スタジアム観戦を控える動きがはっきりと表れると考えられます。
この結果を踏まえた実務的な対策として、残暑が厳しい地域や時期に照準を合わせた来場促進施策の展開が有効だと考えられます。また、長期的な視点に立てば、天候や気温に左右されず快適に観戦できる全天候型スタジアムの整備が期待されます。
スポーツ観戦経験と市民活動参画意図の関係における地域愛着の媒介効果:
ファンレベルによる調整効果に着目した理論的検証
井澤悠樹(京都橘大学)
出口順子(東海学園大学)
長谷川健司(太成学院大学)
清川健一(株式会社ブレイザーズスポーツクラブ)
近年では、プロスポーツチームへ寄せられる期待はスポーツ振興のみではなく、まちづくりや地域活性化、地域コミュニティの再構築など、スポーツによる地方創生を促す触媒としての役割にも期待が寄せられています。一方で、こういったまちづくり等を促進させるためには、当事者の中で地域に対する愛着形成が不可欠とも指摘されています。以上を踏まえて井澤ら(2024)は、社会的アイデンティティ理論と先行研究での知見を基に、ファンレベル、観戦満足度、地域愛着の関係を検討しています。その結果、各概念間の有意な関係が確認され、この一連の関係に居住地の違いは認められないことを報告しています。しかし井澤ら(2024)の研究では、理論的背景に再検討の余地があることや地域愛着の結果要因について未検証であることが指摘できます。
そこで本研究では、チームの本拠地に居住しているファンを対象に井澤ら(2024)のモデルを基盤としつつ、態度理論、合理的行動理論、社会的アイデンティティ理論、そしてPsychological Continuum Modelを理論的背景として、観戦満足度と居住年数を説明変数、ファンレベルを調整変数、市民活動参画意図を目的変数、地域愛着を媒介変数とした、改変した拡張モデルについて理論的に検証することを目的としました。本研究は厳密な因果関係を説明するものではありませんが、スポーツ観戦経験が市民活動参画意図へと波及するプロセスにおける地域愛着の媒介的役割を概念化することによって、分野の知見拡張や実践的インプリケーションを提供することが期待できます。
2025年2月16日に、大同生命SVリーグレギュラーラウンド男子ホームゲーム観戦者を対象として、質問紙調査を実施しました。18歳以上でホームチームのファンであり本拠地に居住している者のみを分析の対象とした結果、有効標本数(率)は138部(16.1%)でした。
分析の結果、以下のことが明らかとなりました。
- 観戦満足度および居住年数は、地域愛着と有意な関係が確認されました。
- 観戦満足度と居住年数それぞれと地域愛着の関係強度には、統計的有意差は認められませんでした。
- 観戦満足度と地域愛着の関係をファンレベルが有意に調整し、特にファンレベル中水準以上では意な関係が確認されました。
- 地域愛着は、市民活動参画意図と有意な関係が確認されました。
- 観戦満足度を説明変数、地域愛着を媒介変数、市民活動参画意図を目的変数、ファンレベルを調整変数とした調整媒介効果の
検証では、ファンレベルが中水準以上において有意な間接関係が確認されました。以上の結果から、スポーツ観戦経験としての満足度は地域愛着との関係を説明するだけでなく、スポーツ観戦から離れた市民活動参画意図にまでその関係が連なるメカニズムを説明することができました。加えて、この一連のメカニズムを多理論の統合モデルによって説明できたことは、新たな学術的知見を提供するものであると考えます。さらには、この一連の関係をファンレベルが調整するという結果は、ファンづくり施策が地域振興の遠因となる可能性を示唆するものであり、貴重な実践的インプリケーションであると考えます。
東南アジアの大国・インドネシアにおける野球普及の現状について―ジャワ島の事例を中心に―
石原豊一(鹿屋体育大学スポーツ人文・応用社会科学系)
「野球」と聞くと、日本や米国、韓国、台湾などを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、世界を見渡すと、野球が国民的スポーツとなっている地域は決して多くない。その一方で、野球を職業とする選手の出身地は、現在では40以上の国・地域に広がっている。野球は「野球国」の外側へも、少しずつその活動領域を広げているのである。
本研究では、そのような「野球途上国国」の一つとして、約2億8千万人の人口を有する東南アジアの大国であるインドネシアに着目した。、近年の経済成長によって国際的な存在感を高めているこの国だが、現在のところ、野球の競技人口は限定的で、サッカーやバドミントン、それに伝統競技であるプンチャク・シラットなどと比べれば社会的な存在感は小さい。それにもかかわらず、近年、日本人による野球普及の動きが活発化している。
筆者は2024年12月に首都ジャカルタと第2の都市スラバヤを訪問し、野球大会や練習の観察、関係者へのインタビュー、野球施設の視察などを行った。
調査から見えてきたのは、インドネシアの野球が、一般の人々に広く普及した「大衆スポーツ」というよりも、現時点では外国人、富裕層、インターナショナルスクール、企業、日本人指導者などによって支えられる「セレブ・スポーツ」だという実態である。
たとえばジャカルタでは、米国人起業家によって野球アカデミーが設立されたが、主な顧客は日本人や米国人の駐在員の子どもたちだった。この事業自体は約1年で終了したものの、そこで指導していた日本人はその後もジャカルタに残り、個人インストラクターとして活動を続けている。また、米国系インターナショナルスクールには野球場が整備され、在留外国人、国内富裕層の子弟を中心としたチームが活動している。
一方、地方都市スラバヤでは、かつて野球普及のために建設された大規模な野球場がゴルフ練習場として利用されていた。これは、野球を地域に根付かせようとする試みが過去に存在したものの、十分な競技基盤を形成するまでには至らなかったことを示す興味深い事例である。ただし、現在も市街地の公園などでは、子どもたちが野球やソフトボールの練習を行っている。
調査の結果、大きな課題として明らかになったのが、中学世代から高校世代への育成システムの断絶である。インドネシアでは中学生段階までは、インターナショナルスクールや地域クラブなどで野球を続ける富裕層の子どもたちが一定数存在する。しかし、高校進学後は勉学を優先して野球をやめたり、海外留学によって国内の競技環境から離れたりするケースが多い。その結果、高校世代の競技人口と競技水準が十分に形成されていない。
また、国内の野球統括組織は財政的な制約を抱えており、ゆえに国際大会への参加も安定していない。その一方で、この国では、政府からの支援が得られる総合スポーツ大会「PON」が選手にとって重要な舞台となっている。そのため、国際大会よりも国内大会が優先される傾向があり、代表チームの強化を継続的に進めることが難しい。加えて、広大な島嶼国家であるインドネシアでは、野球が盛んな地域がジャカルタ都市圏などに集中しており、国内の地域格差も大きい。
こうした状況にもかかわらず、近年のインドネシアでは日本人起業家による高校生世代の大会開催など、新しい動きが生まれている。2024年からは、インドネシア出身選手を中心とするチームが日本の独立プロ野球リーグに参入するなど、両国を結ぶ新たな動きも始まっている。
この事例が示しているのは、スポーツのグローバル化が、必ずしも「その国の一般市民にスポーツが一気に普及する」という形だけで進むわけではないということである。むしろ現在のインドネシア野球は、外国人コミュニティ、富裕層、企業、指導者、学校、プロスポーツなど、国境を越えたさまざまな主体のネットワークによって支えられている。
野球の普及は、競技人口を増やすだけの問題ではない。そこには、指導者の雇用、スポーツ施設、スポンサー、国際大会、選手の海外留学や移動、さらには新たなスポーツ市場の形成といった、さまざまな経済活動が関わっている。インドネシアの野球はまだ小さな存在である。しかし、その小さなスポーツをめぐって、国境を越えた人や企業の動きが生まれている。
本研究は、インドネシアの野球が今後どこまで大衆的なスポーツとして定着するかを予測するものというよりも、現在進行している野球普及の過程を追うことで、グローバル化するスポーツが、新たな地域や市場にどのように入り込み、誰によって支えられ、どのような課題に直面するのかを明らかにするものである。インドネシアの野球は、世界のスポーツ産業が「野球国」の外側へと広がっていく現在の姿を考えるための、一つの興味深い事例と言えるだろう。
大学運動部活動部員における指導行動認知尺度の作成と妥当性の検討
村上弘通(新潟医療福祉大学健康科学部健康スポーツ学科)(九州大学大学院人間環境学府)
杉山佳生(九州大学大学院人間環境学研究院)大学の運動部活動では、学生が主体的に競技へ取り組み、充実した競技生活を送るために、指導者がどのように選手と関わり、その関わりを選手がどのように受け止めているかが重要です。
そこで本研究では、大学運動部活動に所属する学生が、指導者の行動をどのように認知しているかを把握するための「指導行動認知尺度」を作成し、その信頼性と妥当性を検討しました。
尺度の作成にあたっては、自己決定理論に基づく国内外の先行研究や既存尺度を参考にし、選手の意見に耳を傾ける、自主的な目標設定を支援する、取り組みを認めるといった「自律性支援行動」10項目と、一方的に指示を出す、指導方針に従わない場合に支援を控える、私生活に細かく指示を出すといった「統制的行動」10項目の計20項目を作成しました。
研究1では、大学運動部活動に所属する大学生285名を対象に調査を行いました。その結果、20項目は「自律性支援行動」と「統制的行動」の2つに分かれることが確認され、尺度を構成する項目には高い一貫性が示されました。また、約1か月後に再度調査を行った結果、一定の時間的安定性も確認されました。
続く研究2では、研究1とは異なる大学生210名を対象として検証を行い、同じ2因子構造が支持されました。さらに、自律性支援行動を高く認知している学生ほど、部活動への適応感、指導者との良好な関係性、スポーツ競技への充実感、スポーツ・コミットメントも高い傾向が示されました。
一方、統制的行動については、これらの適応的な指標と弱い正の関連がみられましたが、自律性支援行動の影響を考慮すると、多くの関連は認められなくなりました。このことから、大学運動部活動の指導場面では、支援的な関わりと統制的・条件付きの関わりが完全に分離して認知されるとは限らない可能性も示されました。
本研究で作成した尺度によって、大学運動部活動における指導者の関わりを、学生がどのように受け止めているのかを「支援的側面」と「統制的側面」の双方から把握できる可能性が示されました。今後、基本的心理欲求、動機づけ、ウェルビーイングなどとの関連をさらに検討することで、指導や選手支援を考えるための基礎的な指標となることが期待されます
九鬼靖太(大阪経済大学人間科学部)
原仲 碧(東日本国際大学健康福祉学部)
田島良輝(大阪経済大学人間科学部)会社経営者にとってランニングは「考える時間」
―健康維持を超えた4つの価値を明らかに―ランニングは、健康維持や体力向上のための運動として広く親しまれています。一方、会社経営者のなかには、日常的にランニングを取り入れ、仕事や経営にも役立てている人が少なくありません。しかし、経営者がランニングにどのような価値を見出し、それが実際の経営実践とどのように関わっているのかについては、これまで十分に検討されてきませんでした。
そこで本研究では、週1回以上のランニングを1年以上継続している会社経営者5名を対象として、約50分間の半構造化インタビューを実施しました。インタビューでは、ランニングを始めた理由や、ランニング中の思考、仕事上の悩みへの影響などを尋ね、得られた語りをテーマ分析によって検討しました。
その結果、経営者がランニングに見出す価値として、①思考の整理と創造的アイデアの喚起、②爽快感によるストレスのリセット、③ランニングを介したネットワーク形成とビジネス機会の創出、④自己管理としてのランニングと経営者への信頼獲得、という4つのテーマが明らかになりました。
なかでも特徴的だったのが、「考えるための時間」としてのランニングです。対象者のなかには、走りながら会社の方針を考え直したり、課題の解決策や新しい事業アイデアを思いついたりする人がいました。また、走行中に浮かんだ考えを逃さないよう、立ち止まってメモを取ったり、スマートフォンに音声を記録したりする例もみられました。
これらの結果は、ランニングが経営者にとって単なる健康行動ではなく、日常業務から一時的に距離を置き、思考を整理し、意思決定や内省を支える実践として位置づけられていることを示しています。さらに、ストレスへの対処、人とのつながり、自己管理や信頼形成など、複数の側面から経営活動と関係している可能性も示されました。
本研究は5名の経営者を対象とした探索的な質的研究であり、ランニングによって経営能力や創造性が直接向上することを示したものではありません。しかし、スポーツや身体活動がもつ価値を「健康」だけで捉えるのではなく、働く人の思考、仕事、人間関係といった側面から捉え直すための新たな知見を提示するものです。
中等度の強度の一過性有酸素運動前後における時間割引率の経時的変化
末盛巧(同志社大学スポーツ健康科学部), 庄子博人(同志社大学スポーツ健康科学部)
運動が健康に良いことは広く知られています。しかし、運動による健康増進などの効果は長期的に得られる一方で、疲労や時間的な負担は運動したその日に生じます。そのため、運動を継続するかどうかの判断には、目先の負担と将来の利益をどのように評価するかが関係していると考えられます。
行動経済学では、将来得られる利益を現在の利益よりも低く評価する傾向を「時間割引」と呼びます。この傾向が強い人ほど、将来の健康よりも目先の負担を重視し、運動を継続しにくくなる可能性があります。これまでの研究では、継続的な運動によって時間割引率が低下する可能性が報告されていますが、1回の運動でも同様の変化が生じるかは十分に明らかになっていません。
そこで本研究では、18~29歳の健康な若年成人29名を対象に、1回の中等度有酸素運動によって時間割引率がどのように変化するのかを検証しました。参加者には自転車エルゴメータを用いた20分間の中等度運動を実施してもらい、運動の7日前、運動5分後、さらに1週間後の計3時点で時間割引率を測定しました。測定には、今すぐ受け取れる少額の報酬と、将来受け取れる高額の報酬のどちらを選ぶかを尋ねる質問紙を用いました。
その結果、いずれの時点間においても、時間割引率に統計的に有意な変化は認められませんでした。この結果は、1回の中等度有酸素運動では、将来の金銭的な利益に対する評価が短期間で大きく変化しない可能性を示しています。
ただし、本研究では運動を行わない対照群を設けていないため、運動そのものの効果を断定することはできません。また、今回の結果は、運動が意思決定に影響を与えないことを意味するものではありません。今後は、運動を継続することによる変化や、実際の運動習慣との関係を検証することで、人々が運動を始め、継続するための心理的な仕組みの解明につなげていきたいと考えています。
バスケットボール審判の力量形成におけるVR機器使用の有効性:VR映像と固定カメラ映像の見え方の違いから
西原康行(新潟医療福祉大学)
伊藤篤司(株式会社デンソー)
内山渉(新潟総合学園)経済産業省では,VR技術を活用したビジネスモデルの開発が行なえる人材育成事業を2023年度より開始している。この事業には,VRによる教育の有効性に基づく企画提案のできる人材育成も含まれており、前提としてVRがどのような教育効果をもたらすのか,あるいは,その限界を明らかにすることが求められる.本事例では、バスケットボールの審判の力量形成にVRがどのような教育効果をもたらすのかについて着目して,ビジネスモデルの開発の一助を得ることを目的とした.バスケットボールの審判が試合の固定カメラ映像とVR映像(360度全方位カメラにて収録)をみながら語り,その語りの違いからそれぞれの映像のみえ方の特徴を明らかにした.その結果、みえ方は,「状況説明」「予測」「振り返り」「反則判断」「疑問」「委譲(他の審判の判断に委譲)」の6つに分類された.「状況説明」と「疑問」は,固定カメラ映像がVR映像よりも多く,「反則判断」は,VR映像が固定カメラ映像より多かった.地点別では,固定カメラ映像において「状況説明」と「予測」がコートサイド中間地点映像でゴール下映像に比べて多かった.一方,VR映像において「反則判断」がコートサイド中間地点映像に比してゴール下映像で多かった.以上のことから,バスケットボール審判の固定カメラ映像とVR映像による試合のみえ方には違いがあり,特にVR映像はゴール下の映像において審判として反則を判断するみえ方の特徴が強く出ていることから,審判の力量形成にVR映像が有効に機能することが示された.

