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アジア初開催のラグビーW杯が興奮の渦の中幕を閉じ早2か月あまりが過ぎた。前回大会からの勢いそのままに大躍進を遂げた日本代表の勇姿に魅了され、今までラグビーに親しみがなかった国民までもがファンとなり熱狂した今大会。日本代表が掲げたスローガン「ワンチーム」や「ジャッカル」などのラグビー用語が流行語となり、今月から始まる国内最高峰リーグ・トップリーグのチケットも飛ぶように売れている。
この大会が残した最大のレガシーは、ラグビーを通じた外国人と日本人との温かい交流の数々だ。台風の影響で試合が中止となったカナダとナミビアの選手たちが災害支援を行う様子や、各国代表をエスコートする日本の子供たちが大きな声でその国の国歌を歌う姿は、私達の心に深く刻まれた。

中でもニュージーランドは大会前から期間中を通じて「ホスト国日本との関わりを大事にしたい」という姿勢を国を挙げて表現してきた(写真)。大会が進むにつれ各国代表に広まった試合後の一礼は、ニュージーランド代表・オールブラックスが行ったのが始まりだ。政府観光局は日本への感謝を表すイベントを各地で開催。アーダーン首相や、試合翌日で体に痛みの残る選手たちまでもが訪れて来場者と交流するなど、グラウンド外でも全力で日本へのリスペクトを示してくれた。
W杯決勝戦の翌々日に東京・中野で行われた北海道のアイヌ民族と沖縄・琉球の伝統文化を紹介する祭りには、ニュージーランド先住民・マオリ族のパフォーマンスグループが初めて招かれた。オールブラックスが試合前に披露することで話題になった「ハカ」をはじめとしたいくつかの伝統的な歌と舞が披露されると、つめかけた観衆はその日一番の盛大な拍手で彼らに敬意を表した。祭りの終盤ではアイヌの伝統舞踊にマオリのパフォーマーや観客らが参加し、会場は一体感に包まれた(写真下)。国や民族を越えて互いを認め合うラグビー文化は、競技を離れた場所にも確かに根付き始めている。
今大会で、日本はラグビーを通じて様々な国の人々からの友情を受け取り、ノーサイドの精神を肌で感じる体験をした。私達一人ひとりがこの経験を永く記憶に留め糧にすることができれば、日本社会は今より一歩成熟したものになりそうだ。そして、来年の東京

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