視聴率の取れる「ひるおび」のスポーツ特集


恵俊彰
Toshiaki Megumi
タレント

—— 視聴率の取れる「ひるおび」のスポーツ特集
 テレビ局には歌番組やドラマを作る「制作局」、ニュースや報道特集を作る「報道局」、スポーツ中継やスポーツ番組を作る「スポーツ局」、そして、ワイドショーや情報番組を作る「情報制作局」という部門に分かれています。「ひるおび」はこの情報制作局で作られている情報番組の一つです。
 普通のニュース報道で伝えられないような、色々な背景情報を伝えるという役割が情報番組にはありますが、実は、ひるおびの中でスポーツを取り上げることが年々増えてきています。
 2010年から2022年までの3,335回放送のうち、862回スポーツを取り上げました。25%と考えても4日に1回、1週間に1回は必ずスポーツを伝えています。お昼の時間帯で、視聴率を獲得できているからこそ、スポーツを伝える数が増えていると言えます。これが2023年は11月20日時点で129回スポーツを取り上げています。割合にして54.5%にも上がります。

—— 視聴者がひるおびのスポーツ特集に求めるもの
 スポーツ番組がスポーツを伝えるのは当然ですが、情報番組がスポーツを伝えることは可能性の中の一つでしかありません。それが増えてきてるということは一体どういうことでしょうか。おそらく、まずは多くの方々がスポーツに興味があり、中でも、2023年は特に大谷翔平さんに興味があると考えられ、すでに大谷さんの話題を66回取り上げています。
 春にWBCで日本が優勝し、その後にコロナが5類になりました。さあ、大谷さんがその勢いのまま大活躍をしていくわけです。これが時代の転換点で、世の中の閉塞的だった空気が一変しました。大谷さんの活躍を通じて、夢や希望、喜びや誇りを大きく伝えることこそが、皆さんの受け取りたい情報の象徴になったのだと思います。
 政治や芸能人の話題は怒りや恐れがあるようなネガティブな情報やスキャンダルが視聴率を取れます。しかし、例えば、東京オリパラのネガティブな話などは視聴率が取れないんです。
 スポーツに関しては、悪いニュースよりも喜びや夢を与える、夢を持たせる、そういうポジティブな要素を持った情報をお茶の間は本当に期待しているんだと思いますし、そんな希望に満ちたスポーツ情報を今後も提供していきたいです。

付録:
恵俊彰氏が2023年3月に早稲田大学大学院スポーツ科学研究科(平田竹男ゼミ)を修了した際に執筆した修士論文『スポーツを伝える「情報番組」の役割』からインタビュー関連データを紹介する。

▶表1│情報番組「ひるおび」の放送回数とスポーツの放送回数・内容。オリンピックや男女サッカーW杯、各競技の世界選手権などの国際大会での好成績や松山英樹選手のマスターズ制覇や錦織圭選手全米2位、大谷翔平選手のMVP獲得といった歴史的偉業、さらには日馬富士暴行事件、大坂なおみ選手が人種差別撤廃を訴えるために被害者の名前入りのマスクを着けて望んだ全米オープンテニスなど事件性・社会性がある話題を伝えていた。

▶図1│13年間で、最も取り上げられたスポーツに関する話題は、オリンピックで175回(20.3%)、次いで、サッカーW杯127回(14.7%)だった。
競技別、選手別にみると、テニスが 87回(10.1%)、相撲71回(8.2%)、大谷翔平66回(7.7%)、陸上&マラソン66回(7.7%)、フィギュア54回(6.3%)となっていた。テニス87回では、錦織圭選手、大坂なおみ選手のグランドスラムでの活躍が情報番組でも取り上げられていた。大谷翔平選手は、日本でも二刀流で注目を集めていたが、2018年のメジャーデビューから情報番組では取り上げられるようになった。

▶図2│現在情報番組を制作しているスタッフは自分たちがつくる情報番組で何を伝えるべきなのかの検討材料として、情報番組がスポーツを通して伝えたいこと、伝えるべきことは何かについて聞いた。
全体の39.7%が人物・ドラマ(人柄)、続いて19.5%が大記録・歴史的偉業。10.3%が使える情報、ためになる情報。8.6%が独自であることの素晴らしさ・個性、8.0%が変化する世の中(影響)、4.9%が問題提起(変革)、日々の結果は3.3%であった。

 

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