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ライブ配信技術と動画マーケティングで、地域・ローカルスポーツの価値を上げる取り組みとは ── 「ファンづくりのプロデュース」を行うrtv社の事例より

ライブ配信技術と動画マーケティングで、地域・ローカルスポーツの価値を上げる取り組みとは ──
「ファンづくりのプロデュース」を行うrtv社の事例より
須澤壮太│株式会社rtv 代表取締役

スポーツ競技団体やチーム、企業、自治体などでは、自ら動画配信を行うOTTサービスの展開など、代理店や放送局などメディアに頼らずコンテンツホルダー自身によるプロパティ管理・映像プロデュースの展開が増えてきている。アメリカンフットボール連盟や日本ラクロス協会、大学サッカークラブ、放送局、自治体などとの協業の事例を中心に「ファンづくりのプロデュース」の実際を聞く。

図1 rtv社の事業内容

協業をベースにお客様やスポーツの「ファン作り」をプロデュース

ライブ配信技術と動画マーケティングで地域ローカルスポーツの価値を上げる取り組みということで、弊社の事例をお話しさせて頂きます。立命館の映像学部を卒業し、3年生のときにこのrtvという会社を当時は学生ベンチャーみたいな形で立ち上げました。2011年頃、ユーチューブはまだ違法サイト状態で、どちらかというと、ユーストリームとかニコニコ動画とかがはやっていた時期でした。ユーストリームを使って配信するということが少しずつ増えてきた時代で、仕事として配信をやるっていう会社はまだまだ全然なかったです。ソフトバンクさんが、少し事業としてスタジオ展開されていました。
立ち上げたのは、大学アメリカフットボールのプレーオフの試合が行われる時に、テレビの中継が全くない時代で、チームからライブ配信やってほしい、という依頼をいただいて始めたのがきっかけです。当時はボランティアのような形で、関西学生アメリカンフットボール連盟さんと配信を始めました。配信で事業をやろうというよりも、配信を通して、自分たちの大学の魅力を多くの方に知ってもらうようなことができればなという思いでした。
実況アナウンサー、ディレクターなど、オール学生スタッフで中継を始めた組織で、現在は株式会社化し、大阪は読売テレビさんの本社の中、東京は朝日新聞本社の中に事務所があります。
取引先としては放送局さんやメディア関係、競技団体さんです。基本的にライブ配信のプロデュース業務が中心になっています。今回、スポーツのテーマですけれども、弊社の場合は、スポーツの事業はだいたい三割ぐらいで、七割ぐらいは企業さん案件です。ライブ配信ならではのスポーツ中継を行なってきました。
テレビ局さんが中継するようなクオリティに近いスポーツ中継を目指しつつも、配信でしかできないような、事業の体制に合わせた50万円以下でもできるスポーツ中継など、いろんなパターンのスポーツ中継に対応しています。
また、OTT動画メディアの運営や、パート人材育成輩出プロジェクトみたいなことをしています。インターンシップが35名ぐらいおり、配信業界において新しい人材であるとか、スポーツ界にとって必要な人材であるとか、業界を良くして行きたいという思いがあります。インターンを通して学んでもらって、いろんなところに出て行ってもらえればと、積極的に大学とも連携しながら取り組んでいます。
弊社の場合、基本的に、お客さんとの協業プロジェクトという形でご一緒させてもらうことが多いです。事例で紹介させていただきますと、アメフト専門のメディアや、ラクロス専門のメディア、放送局さんと組んだり、記事媒体のメディアも運営しています。スポーツ競技団体さんや放送局さんのメディア配信の製作や、コンテンツの連携みたいなこともご一緒しています。
会社のミッションは、配信を通してファン作りのプロデュースを、パートナーの方々と一緒に進めていくということを掲げています。お客さんのファンを作る取り組みを創りだすということや、弊社自身のファンであるとか、社員自体が、ファンを作れる人材であるかどうか、そういうところも、すべて一貫してプロデュースしていくことが、会社の中心としてあります。
今回のテーマ「ライブ配信技術、動画マーケティングで地域動画、スポーツの価値を上げる取り組み」ということですが、そもそも番組をプロデュースする上でスポーツ競技団体さん、チームさんと一緒にどういったスポーツビジネスを作っていくかというところ。目指しているのはここで、スポーツにおいてのエコシステム化を目指しています。ライブ配信をやることで、財政的なところを圧迫してもいけないし、スポーツにとって一番良い機能、ライブ配信や、OTTサービスやメディアマーケティングを展開できるところを一緒に探っていくことが重要だと思っています。
ある意味、事業として回らない配信ビジネスはやる意味ないかなと思っていますので、技術体制をミニマムにして、ゼロから作っていきながら、ちゃんと回るような仕組みをつくっていくっていうことが必要だと思っています。
配信の技術的なところにとらわれず、スポーツの価値を上げていく、配信を通してコンテンツの価値も上がって、スポーツの価値も上がるようなメディアとの相互関係も作っていかなきゃいけないと思っています。
スポーツと共に長期的な事業化を目指し、持続可能で勝ち残るものであろう事業をご紹介させていただきます。

タッチポイントを増やし、手厚いハイタッチポイントを作っていく

図2 rtv社のコンテンツ展開

配信の手段は現在いろいろあります。SNSマーケティングをこうやりましょうとか、ユーチューブ発信やりましょうとか、アイカメラ使って取りましょうとか、有料のオンデマンド配信しましょうとか、地元のケーブルテレビさんとの連携とかも重要ですよねとか、いっぱいあります。全部やったら良いかなとも思っていますが、競技団体さん側としてはどういう機能が必要だろう?というところを見極めていくことがとても重要だと思っています。また、試合コンテンツを想定したバリューチェーンで考えると、ファンのアップグレードをして行かないと意味がないと思います。
視聴の次に来場につなげるためにはどういうものが機能するのかとか、有料配信サービスをいきなりやっても、会場に来るのに、お金を払うのを躊躇している人が、有料オンデマンド登録しないですよね、とか、いろいろ見極めながらご一緒に進めていっています。やっぱり目指すところは熱心なファンになってもらう。熱心なファンになったら、また新しい課題が出てくると思うので、課題に対して新しい解決手段を提供できるというところをいろんな手段を使ってやることが重要です。
もう一つの考え方の軸としてはタッチポイントをどう増やすかっていうこともあると思います。競技団体さんによっては、配信することによって、例えば「会場の観客が減って収入が減るからバランスが難しい」と相談される事がありますが、これに対して、タッチポイント増やさないと、ハイタッチの部分が減ってしまうと伝えます。それは、無料でユーチューブの配信することと、観客が減るということとは違うからです。ユーチューブが機能するべきところを見極めたうえで展開し、ハイタッチの部分に対して手厚いサービスが存在していれば良いです。タッチポイントを増やしつつも、ハイタッチの部分、いわゆる手厚いサービスも作っていくことが重要なので、いろいろ展開しています。

エコシステム化の事例

【事例1 アメリカンフットボールとの取り組み】
ハイタッチの一つとしてはアメフトライブというのをやっています。アメフトプレイヤーは日本の場合5万人くらいです。競技人口は逆ピラミッドで、大学が一番多くて、中学校、小学校になっています。そこをなんとかしようという取り組みに加え、かっこよく見せようと言うことで、2010年ぐらいから関西学生アメリカンフットボール連盟さんと協業で取り組んでおります。甲子園ボウルや高校の試合とかも一部配信しているサービスです。
最近はプラクティス系の動画や、過去アーカイブもOTTサービスとして放送局さんに分配するような仕組みで、コンテンツ提供いただきながら展開しています。
このミッションも日本のアメリカンフットボールのエコシステム化の一機能として成り立つことを目的にしております。最終的にはここで得た利益を海外NLFに挑戦する選手のサポートなど、小さいですがエコシステムを作っています。
この事業のビジネスモデルとしては、月1200円といったやり方ですが、実は映像の権利は基本的にもらっていません。それは、競技団体さんに映像の権利が属していた方が、確実に様々な展開ができるからです。基本的にパートナーシップを組んでいますが、権利を買っているわけではなく、あくまでプラットフォームを使っていただいているというような立場でやっています。弊社では、基本的権利は持ちません。OTTサービスをされているところには権利を持つ会社もありますが、一番どういう形がスポーツにとって良いかというところを考えながらやっています。コンテンツごとに競技団体に分配される仕組みで、毎年120%ぐらいずつ、少しずつではありますが順調に成長しています。会員は6割が経験者で基本的には経験者の人たちが支えているという仕組みになっています。競技団体とも、単純にこの配信を通して連携するだけでなく、降格チームへのスカウティング映像の展開など放送局の素材提供のようなこともしています。
他にも、関西学生アメリカンフットボール連盟のコンテンツを、各放送局やインターネットメディアに向け販売したり、地上波での露出のために、その映像配信の映像を使って番組を作って納品したりというところまで、パートナーシップを組ませていただいています。
一方で、放送局からも費用をいただきながら中継を成り立たせているという側面もあります。コンテンツに関しては、ブルーレイや、ブックムービーの記念品なども有料で作り、収益化もしています。このような利益は、NFLに挑戦中の選手に契約社員のような形で還元し、その選手の人生に添う形で、セカンドキャリアも含めてサポートさせてもらっています。また、フットボールのスポンサースクールのようなものの運営もしています。その他にも、社会貢献として、難病の子どもたちへの寄付もしています。
アメリカンフットボールライブのOTTサービスを、アメフト界の中で機能するような形にしていきたいと思い、2010年から取り組み、アメフトにとって無くてはならない物にしたい。つまり、エコシステム化を作っていく中で、なくてはならないものになるような機能を果たさないと、やる意義がないのではないかと思い進めていました。

【事例2 日本ラクロス協会との取り組み】
アメフトライブと同様にラクロスライブというものをシンボル的にやっています。プラットフォームを運営することが目的ではなく、ラクロスにとってHOMEのようなものを作っていくという目的があります。日本ラクロス協会さんと共同で運営しているこのメディアも、コンテンツを囲い込んでいません。こちらもほかのプラットフォームやコンテンツプロバイダーに対して、素材提供し露出を促すなど、いろいろな連携を目的としています。番組の素材を販売したり、戦略的にハイライト映像への加工も無償で行い、取り上げてもらいやすくしたりするなど戦略的に提供しています。逆に、各放送局で過去に放送していただいたコンテンツをマネタイズするなど、協業の形で、収益の分配も目指しています。
また、ラクロス協会に所属しているスタッフの方々に、ライブ配信のやり方の講座をzoomで開いたり、配信当日にオンラインでトラブルがないかなどのチェックサポートをしたり、配信のノウハウをご提供させて頂いたりという連携もしています。学生さんに配信のやり方など、技術的なことを身につけていただいて、自分たちの大学やチームの配信に生かしてもらうなど、そういう形の支援もできると思います。ただラクロスライブを配信すれば良いというのではなく、それをシンボル的な形とし、ラクロス協会さんとの協業によって生まれる新しい手段を、ラクロスに係る方々にご提供しながら進めています。

【事例3 学生サッカー連盟との取り組み】
こちらは新しいメディアをやっているというわけではなく、今制作段階ですが、どちらかというと、メディア協議会のようなものを作り、連盟さんのコンテンツの価値とブランディングを高めることを目的とし、読売テレビのグループ会社や、関西の外国人サッカーチームと一緒に始めています。例えば放送局さんから映像の要求があった場合、連盟やチームが自らコンテンツの管理をしながら、弊社と協業で一緒に内容を精査しています。その中で、ライブ配信の撮影勉強会やセミナーも実施しています。
ビジネスモデル的には、配信やコンテンツ販売の中で、先方にも費用が戻るような収益分配のような形にしています。
ミニマムで低予算でやりながら、少しずつ進められるように長期的に5年フェーズでのインターンシッププロジェクトも取り組んでいます。ここでは学生サッカー協会やサッカー業界にとってもプラスになるよう、メディアプロデューサーを育成しています。それが逆にメディア業界にとっても一番良いだろうという思いもあります。
学生サッカーのフィールドを使わせてもらいながら、スポーツ業界とか配信業界のこれからを担うメディアプロデューサーを育成し、参加してくれた学生や、協業で入ってくださっている放送局のディレクターの方、スポーツのチームのマーケティング担当の方のセミナーなどを受けながら、一緒にサッカー業界を考えてゆくパートナーのような位置づけで取り組んでいます。

【事例4 読売テレビとの協働】
放送局との連携では、「あすリートチャンネル」というメディアを読売テレビと協業で2016〜17年ぐらいからやっています。
テレビ局においての課題は、スポーツの放送で利益が見込めなくなったことと、多様な外資系メディアの進出とOTTサービスの台頭を受けて、地上波での露出がかなり減っているということです。
テレビで出せる価値よりも、インターネットでライブの方がより価値があるという方向にシフトし、地上波からスポーツの中継が消えていきつつあるのですが、その中でも、スポーツに対してアップデートできるような、より良い形にできるような取り組みができないかということで、立ち上げました。
ライブ配信や動画ニュース配信を基本的にやっています。ここでライブ配信した映像の素材を地上波の深夜のハイライト番組や地上波の「もいやアスリート」という番組に使うという展開をしています。バーティカルのメディアでなくて、ローカル、スポーツ、アマチュアスポーツに特化した形で展開しており、基本的には広告や、配信の受託でマネタイズして運営しているメディアです。

【事例5  FC大阪との協働】
また、協業という位置づけで「スカイブループロダクション」という会社を作っています。これは完全に地域特化型の映像制作コンテンツプロパティ会社で、地域とスポーツを見せるというミッションです。
これはFC大阪というJリーグ入りを目指しているチームと100%地域特化型スポーツ映像制作会社です。ここでFC大阪のライブ配信もやっていますが、スポーツチームのあり方というところで、サッカーだけではなくて、地域貢献や自治体との連携や、スタジアムの活用など、チームの行う政策っていろいろありますが、そこに対して映像制作とか配信とか、メディアマーケティングの力を使って競技団体のフィールドを良くしていこうということで、こういった会社を作りました。色々と配信を受諾するっていうところも、もちろん事業展開の中でもありますが、一番の目的は、チームが地域側に寄り添うことによって、できることや変わることがあるんじゃないかと協業のパートナーシップもこういう形でやっております。

【事例6  スポーツの裏方にフォーカスしたGROWS】
他にもメディア展開で「GROWS」というスポーツの当事者ではなくて、完全に裏側の人たちにフォーカスを当てたメディアもやっています。陸上とパートナーシップを組ませて頂いて記事の配信や、関東私学六大学の中継もさせてもらっています。陸上のファンの方々は箱根駅伝をはじめに沢山いらっしゃるので、高校生や大学生になりたての方々の映像を通して陸上界のタッチポイントを増やしつつ、長期的に陸上界のファンであっていただく取り組みをしています。
映像から離れますが男子バレーボールチームの堺ブレイザーズさんともチームと地域とスポンサーの関係性のところを一緒に新しい在り方を考えていこうと、先ほどのGROWSというメディアの取り組みのなかでご一緒させていただいています。官民連携の部分や、スポンサーさんとのコラボの部分、どういう思いで始めたのかとか、どういう目的を持ってやっているのかとか、そういうところを表現させて頂いて、新しいスポーツの価値を考えていく取り組みもさせていただいています。

【事例7  ラジオ体操を通じたつながり】
弊社の社員でラジオ体操のインストラクターをやっている者が、誰でもできるラジオ体操を通して、人とのつながりや、地域と企業、スポーツへの活性につなげるという取り組みをしています。社員の運動不足やコミュニケーション不足、社員の高齢化に向け、健康促進としてのアプローチを行っており、最終的にSDGsの目標にもつながります。企業と連携してやっている中で、弊社のメディアの取り組みの範囲で、ラジオ体操を一緒にさせて頂いていく企業を取材して、健康経営に対しての考えや活動を表に表現しながら、ローカルスポーツアマチュアスポーツの当事者ではなくて、支える人たちを出させてもらうような取り組みです。弊社で中継するアメリカンフットボールの試合の会場で、試合前にラジオ体操を観客の人たちに向けてやっており、せっかくだから会場に来て健康になろうっていう取り組みをしたり、自治体さんと健康促進としてご一緒させていただくことも増えてきています。これは収益化というよりも、弊社のスポーツに対する取り組みを考えていく中で、スポーツをご一緒することや配信やメディアを通して、最終的にその企業の紹介や、スポーツチームの紹介にもなり、健康に最終的につながったということが生まれれば、すべてのエコシステムの中では一番良いかと思ってます。

図3 rtv社が描くバリューチェーン

【事例8  大阪府との取り組み】
大阪府と一緒に取り組んだ事業では、子供の成長支援としてオンラインで参加できるイベントを行い、ギネス記録達成をしたのですが、その中で配信技術のサポートや演出をご一緒にさせていただいていました。これは、同時におにぎりを何人が握れるかという挑戦でしたが、このようなスポーツだけが軸ではない取り組みから、子どもたちが大阪を中心とした文化や、食の文化などを理解できることにも繋がり、地域の貢献にも繋がります。

【事例9  毎日放送とのeスポーツ中継】
技術的な話になりますが、毎日放送と取り組んだ、完全オンラインのeスポーツの大会中継を、コロナ禍になった一昨年ごろからすぐに始め、一緒にオンライン配信を行いました。他にも、放送業との連携という意味では、テレビ・ラジオ局のKBS京都と一緒に駅伝中継し、ラジオの音声を生かした形で中継するといった取り組みをしました。中継車などを使わずに、機材だけでコストパフォーマンスを突き詰めて行いました。合間にスマートフォンの映像なども挟み込みながら臨場感を出しつつ、最低限の情報で、最後はインタビューで終わるという中継でした。

【事例10  西宮ストークスとの取り組み】
パートナーシップを組ませていただいている西宮ストークスというBリーグのバスケットボールチームの、ファン向けの試合の振り返り番組もご一緒にさせていただいています。これは、「バーチャルストークス」という名前で、バーチャルセットを完全に組んだ状態で、ファン向けの配信をやっています。こちらの中身も凝っていて、コアなファン向けでもあり、試合が終わったあと、試合に出場した選手が自分たちで分析する番組を配信しています。ややコアな内容すぎて、一般の方々が見てくれないという課題はありますが、ファンエンゲージメントの高い配信もおこなっています。
より特化型で専門性の高いものにしていくということによって、エコシステムの面での機能が生まれる弊社の配信のプロデュースの考え方ですが、10年前のスポーツの配信のほとんどない時代と比較して、2022年の今は時代の後押しもあり、配信業者もいろいろ増え、映像配信するコンテンツは当たり前に見られるようになりました。
YouTubeで検索して見られない競技が珍しいほど、当たり前に見られる時代となり、その中で、配信プロデュースの考え方として、必要とする方にとっての最高となるものを作らねば継続もしませんし、競技団体にとって価値も生まれず、映像配信することによって、競技団体の財政や収益を圧迫しては全く意味がありません。
スポンサーに頼ればいいということでもなく、また、金銭次第で配信を行なう形式だと、継続しづらく、企業と伴われの関係になってしまいます。スポーツの事業の中ではエコシステムも存在し、ミニマムでも回り、番組を買って頂けるところがなくなったとしてもカメラ一台でも続けられ、ファンを逃さずに続けられるプラットフォームがあることが重要です。
今はYouTubeも簡単にできると思いますが、やはりそのコアなファンや一般のファンに対して最高の価値となるものを提供しつつも、そこを継続させることが一番重要かと思います。それを作っていくことが弊社の一番の目的で、メディアは手段でもあり、技術も手段であるだけで、高価なカメラを使えば、視聴数が多くなるというわけでもなく、カメラ一台で撮った映像の方が価値がある場合もあるので、技術にも固執することなく、配信メディアに固執することもなく提供しています。
一番大切なのは、最後の価値となるものが何なのかということであり、競技団体や企業と一緒に考えていくことが必要と思っています。その中でのポイントとして、タッチポイントを広く持つために、マス的な考え方をしてしまうと、コアなファン化させにくくなってしまうということがあると思います。より特化型で専門性の高いものにしていくということによって、エコシステムという面での機能がちゃんと生まれるのではないかと思っています。あとは当事者としての意識を持てる環境になるか。弊社の場合、パートナーシップを組ませていただいて、単純な受託ではなくて協業で収益分配することがほとんどです。利益をすぐ求めすぎると当事者意識を失なってしまいます。もちろん人件費も捻出できないところに関しては、投資みたいなことも一応しますが、先ほどインターンシップの学生の教育の場とさせていただいたり違う目的にシフトさせて展開しています。あくまで当事者としての意識を持ちながら、一緒に競技やチームを、アップデートしていける環境を持てるかというのがポイントだと思います。
全てのステークホルダーに、そもそもその競技を良くしたいという思いや愛情があるかということがポイントで、何のためにやるかというところ失わず、基本的にはパートナーシップを組ませていただいている方々、企業やスポーツ競技団体チーム含め、やはり何かしら愛情を持ってやられている方とご一緒して、協業という形でさせていただいているといった展開になっています。

▶本稿は2022年4月12日(火)に開催されたスポーツ産業アカデミー(ウエビナー)の講演内容をまとめたものである。

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