アーバンスポーツとeスポーツの魅力と可能性

アーバンスポーツとeスポーツの魅力と可能性
針谷和昌│日本アーバンスポーツ支援協議会専務理事
古澤明仁│RIZeST代表取締役
羽染貴秀│日本eスポーツ連合ディレクター
モデレーター 澤井和彦│明治大学准教授

アーバンスポーツは、いわゆるエクストリームスポーツ(スケートボード・スノーボード、BMXなど)の中で、都市の空間を用いて行われるもので、スケートボード、BMX、クライミング、3×3バスケットボールの4種目が、本年の東京オリンピックの追加種目として行われるということで、非常に注目を集めてきています。
一方、eスポーツは、エレクトロニック・スポーツの略で、コンピューターや家庭用ゲーム機、モバイルを使ったゲームを競技化したものというふうに言われています。これが近年、非常に注目を集めてきていて、2022年のアジア大会では正式種目になります。すでに昨年のインドネシア大会でも参考種目として取り上げられており、2028年に行われるロサンゼルスオリンピックでは正式種目になる可能性もあると言われています。
本シンポジウムでは、新しいアーバンスポーツとeスポーツの競技としての魅力、いままでのスポーツとの違い、そして産業としての可能性について、まさに現場の最前線で活躍されている皆様にお話をうかがってまいります。
───モデレーター : 澤井和彦

アーバンスポーツの魅力と可能性

FISE(Festival International des Extremes)©FISE Hiroshima 2019

針谷 アーバンスポーツを集めたFISE(Festival Inter-national des Extremes)という国際大会を2018年から広島で開催しています。今年(2019年)の4月には2回目を行いました。本場のフランス・モンペリエのFISE大会は、5日間で60万人以上のお客さんが来る一大イベントですが、同じシリーズとして広島でFISEワールドシリーズとして開催しています。そのFISEを主催するため、それから東京オリンピックに向けてアーバンスポーツを盛り上げていくために2017年12月にJUSC(一般社団法人日本アーバンスポーツ支援協議会)を設立いたしました。
名誉顧問に森喜朗さんを戴き、日本の各スポーツ団体、スポーツ競技団体の皆さんに役員として加わっていただいています。この団体の会長は国際体操連盟の会長でもある渡邊守成氏で、日本で唯一のIOC委員でもあります。その会長の言葉と今日のシンポジウムのテーマがリンクすると思いますが、「21世紀の産業革命はスポーツ界から」ということで、しかもその鍵はアーバンスポーツが握っているということで、この支援協議会の最終的な目標も、一つはその“産業革命”をアーバンスポーツから起こしていきたいという狙いがあります。FISEという実際の大会の場所ではスポーツと企業のコラボレーション、新しい企業の革新的な技術なりを介していく場でもありたいということです。
アーバンスポーツとは、簡単に言うと若者に人気のある都市型スポーツであると我々は定義しています。IOCが東京オリンピックでアーバンスポーツを集めてイベントをやろうということを2017年に提案し、そこからアーバンスポーツという言葉が一人歩きしはじめたという背景があります。アーバンスポーツ自体は世界中の若者層を対象とした新しいスポーツエンターテイメントコンテンツであるというふうに我々は認識しています。アーバンスポーツ自体、アート、音楽、フード、ICT、ファッションとかなり密接に関係していて、特にアーバンスポーツの競技団体をやっている人たちと話していて不可欠なものとクローズアップされたのはファッションと音楽。これが例えば、その競技をやっているときに音楽がガンガン流れていてもおかしくないのがアーバンスポーツであり、それがないとアーバンスポーツにはならないのではないかというような話も現場からあがってきています。
それから、アーバンスポーツの可能性としては新しい都市、新しいまちづくりに寄与するのではないかということがあります。今は町の中でいろいろな禁止事項があって、アーバンスポーツでも例えばスケボーでは歩道のレールを使ってはいけないとか、BMXの自転車はブレーキがついていないので町中を走ってはいけないとかいろいろあるのですが、その辺はこれから町や公園を自治体が活性化していくうえで、ルールの改正も含めて都市とまちづくりの可能性があるのではないかと思います。すでに渋谷とか天王洲アイル、横浜、藤沢の鵠沼海岸、鳴門などにアーバンスポーツ施設がオープンしたり、構想が出てきたりしています。
もう一つの可能性としてはオリンピック。2020年東京オリンピック、2024年パリオリンピック、2028年ロサンゼルスオリンピックと続きますが、パリもロサンゼルスもアーバンスポーツが盛んな場所ですので、そういった意味でオリンピックを中心にアーバンスポーツがどんどんメジャー化していくというようなことが予想できます。
BMXやスケートボード、ボルタリングは2020年東京オリンピックから採用されていますが、ブレイクダンスは今後採用されそうな方向になっていますし、パルクールも実はフランス生まれで、パリオリンピックでの採用の可能性があります。
もう一つの可能性としては、先ほど産業革命という言葉を出しましたが、アーバンスポーツの可能性としては企業ブランドとミレニアル世代のマッチングということがあげられると思います。ブランドのイメージづくりにおいてアーバンスポーツはかなりの企業から注目されているところです。
先ほど触れましたが、FISEワールドシリーズ広島2019のもう少し詳しい紹介をさせていただきます。FISEはフェスティバル・インターナショナル・デ・スポーツ・エクストリームということで、フェスティバルという言葉が最初に来るように本当にアーバンスポーツのお祭り、フェスティバル的なものです。
このFISEシリーズが他と違うのは、それぞれの競技の国際競技団体(IF)のオフィシャル大会(ワールドカップやワールドシリーズ)になっていて、IFと一緒になって大会をつくっているところが一つの特徴です。今年は39カ国から528名のアスリートが参加しました。2020のメダル候補である選手も出ています。
来場者数は3日間で10万人を目標にしていたのですが、 10万3,000人に来ていただきました。広島県内が82%、県外が18%、去年は男女がほぼ半々でしたが今年は若干男性が多くなっています。これはeスポーツを一緒にやった影響もあると思います。eスポーツはどちらかというと10代男性が多いので、今回の来場者の3割が10代という状況になっています。
それからテレビや新聞にもたくさん取り上げていただき、露出は金額にすると17億8300万円(去年は13億円)ということで、去年も今年も広島カープの元本拠地、昔の広島市民球場の跡地で開催しているのですが、今年から同じ会場内の一部にコーナーをつくって、近くのビルの中のホールをメイン会場にしてeスポーツのエキシビション大会を行いました。5,000人弱の来場者でした。
来場者のオンラインシステムとして、アプリをダウンロードしてもらって入退場管理をしようということで、これによって先ほどの来場者の属性がかなり細かいところまで把握できました。それから顔パス、顔認証優先入場ゲートも設けました。

eスポーツの現状と課題

日本eスポーツ連合(JeSU)の創設 写真提供:JeSU

羽染 eスポーツの認知はかなり進んでいますが、改めてeスポーツの現状を日本と海外とで比較しながら、今後の展望をお伝えしたいと思います。
eスポーツは先ほども紹介がありましたが、テレビゲーム、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称となっています。まずeスポーツが、なぜ今こんなに注目されているのか。そこには、 3つの可能性が秘められています。1つ目はエイジレス、続いてジェンダーレス、そしてハンディキャップレスということで、年齢、性、障害差を超えて楽しむことができます。
eスポーツはフィジカルスポーツに比べて必要とされる体力差がないので、小さいお子さんからお年を召した方でも大会、対戦ができるというところで、新たな可能性が期待されます。ジェンダーレスということでも、男性と女性が同じフィールドに立って戦うことができる、試合ができるという意味で新しいと言われています。そして何よりハンディキャップレス。一般的に障害があれば普通のスポーツは健常者と一緒にできませんが、eスポーツは障害を超えて同じフィールドで対戦できる。そういう3つの可能性を秘めていると言われています。
また、eスポーツではインターネット対戦ができるので、場所や時間を問わずに対戦することができて、練習もすることができます。そう考えると、人口が少ないところ、思わぬところからスター選手が生まれるというような可能性を秘めており、いま非常に注目を集めているのではないかと思います。
次に、私が普段働いている日本eスポーツ連合の紹介を簡単にさせていただきます。私たちはeスポーツの振興を通じて国民の競技力を向上させながら競技団体、そして何より青少年の健全育成に寄与していきたいということで、選手団体としてしっかり選手たちを育成していきたいと考えています。
日本eスポーツ連合ができたのは1年半前ですが、それ以前からeスポーツという単語はありましたし、eスポーツを推進している3つの団体があったのですが、アジア大会やオリンピックといった中では1つの団体にまとまったほうがいいということで、ゲームメーカーをつないでいるCESAとJOGAのサポートの下、eスポーツの競技団体とゲームメーカーが手を結んだ団体として今は活動しています。実は世界でもまだ珍しい形で、eスポーツ選手だけの団体が多い中ゲームメーカーと手を結ぶことはいろいろなイベントや大会が開きやすくなる、といった可能性が高いと感じています。
eスポーツについては地方に行くとまだ知らない方が多く、支部を設けながら様々な場所でeスポーツを広める活動をしています。そのような中、昨年、インドネシアで開かれた第18回アジア競技大会でeスポーツがエキジビションマッチとして採用されたこともあり、日本eスポーツ連合より日本代表選手を派遣しました。ウィニングイレブンでは相原選手と杉村選手が活躍してくれたこともあって金メダルを獲得したのですが、今回、私は選手より3~4日早くインドネシアに行って様々な準備をしました。
例えばタイムスケジュールの管理はもちろんですが、アンチドーピングの話がありました。選手村以外で食事をとってはいけないとか、口を開けた飲み物をその辺に置いてはいけないとか。それは、他の選手から薬を盛られる可能性があるからといった話があって、そういうこともこれからeスポーツがオリンピックなどに参加していくうえで非常に重要な知識になるのではないかと思いました。そのあたりはeスポーツの選手としてはまだ実感がないところだと思いますが、今後必要になっていくと思います。
アジア競技大会では、選手は日本代表のユニフォームを着て試合を行ったのですが、eスポーツというのはまだ個人の種目というかチームとして戦うことが多くて、国際戦という感覚はまだ少ないんです。日本eスポーツ連合としては国際戦を多く開催したり、選手を派遣していきたいと考えています。
世界全体のeスポーツの視聴者数は、2022年には6億4,000万人に達すると言われています。バスケの人口は4億5,000万人、サッカーの人口は2億5,000万人と言われていますので、視聴者という意味では非常に多い数字ではないかと思っています。生まれたときからデジタルコンテンツに囲まれているミレニアル世代やZ世代がどんどん増えてきた中で、視聴者もどんどん増えていると言われています。
日本ではeスポーツの視聴者数は380万人と言われています。大会の参加者は男性のほうが多いかなというところです。認知については今年の1月で認知度が48%となっていますが、流行語大賞や日経ビジネスのヒット商品番付に載ったこともあって、eスポーツに対する認知は高まってきているのではないかと思っています。
日本におけるeスポーツの市場規模は2018年に48.3億円と言われていますが、eスポーツに特化した状態で48.3億円ということですので、これがもう少し広がっていくとかなり大きな市場になっていくのではないかと思っています。
そして最後にeスポーツの新たな可能性ということで、先ほどのハンディキャップレスについて詳しく説明したいと思います。北海道にある八雲病院というところで、筋ジストロフィーでもコントローラーを動かせるようにと、作業療法士の田中先生がコントローラーなどを改造してeスポーツを楽しめるようにしました。モニターの下に視線入力のできるデバイスを用意したり、下くちびるを動かしてボタンを操作するといった形で、特殊なコントローラーを使って小さな入力でゲームでき、健常者と同じようにeスポーツを楽しめる環境をつくっています。

八雲病院での筋ジストロフィー患者と健常者のeスポーツ対戦 写真提供:JeSU

患者さんの話では、小さいころからサッカーや陸上などを普通のフィールドで対戦したいという思いがあったけれど、なかなか同じフィールドには立てない。しかしeスポーツでは健常者と対戦できて、一緒にゲームを楽しむことができるし、コミュニティに参加できる。本当にそういう体験ができるのはeスポーツしかないと言っていました。ハンディキャップがある方でもeスポーツであれば同じフィールドで対戦できますし、eスポーツは本当にいろいろな可能性を秘めているので、オリンピックやアジア大会という大きな花火もたくさん上がってはいますが、足元ではこういった流れがあることを皆さんに理解していただければと思います。

eスポーツという職業~RIZeSTの挑戦

古澤 私は、ずっとIT業界に身を置いていて、その後eスポーツ専門の会社を立ち上げました。今日は、eスポーツ専門の会社の取り組みについて一部抜粋してお話ししたいと思っています。
ゲーム会社というのはサッカーや野球で言うところの「競技」を作っている会社で、我々RIZeSTの役割はIPホルダーが主催する、もしくは他の団体や企業が行う(IPホルダーから許諾を受けたゲームタイトルを用いた)eスポーツイベント、大会、リーグなどの制作をお手伝いする、受託することを生業にしている会社です。
そのほか、eスポーツはデジタル上でいつでもどこでも誰とでも参加し、気軽に視聴できるというところが若年層を魅了している一つの理由なのですが、eスポーツにはeスポーツに特化した視聴・配信のプラットフォームが存在しています。日本のeスポーツにおける我々のような事業会社の収益の多くは、ゲーム会社が販促目的でeスポーツの大会を行い、それを受託することで売上を立てています。また、その大会に若年層がたくさん集まるので、うちの商品・ブランドは30代・40代には強いけれどZ世代にPRしたい、広告を打ちたい。でもその世代はテレビ離れが進んでいて、彼らと接点が広い、エンゲージメント率が高いeスポーツにお金を入れて彼らにリーチしたいと。そういうナショナルブランドから協賛としてスポンサー費用をいただいて大会を運営して収益をあげる。というケースも増えてきました。
我々にも事業の柱はいろいろあるのですが、まずは大会をつくるというところ。大会形式も様々。ネットカフェでのゲーム大会からアマチュアトーナメント、そしてプロリーグまでバラエティに富んでいます。2つ目に大会の運営ですが、ルール設計という仕事があります。どんなスポーツ競技でも公平なルールのもと大会(試合)が行われなければ選手も情熱を傾けることができないですし、ファンも熱狂することはできません。ゲームソフトのパッケージを開けると、説明書が出てきます。ですが、eスポーツ大会におけるルールの記載はありませんよね。ペナルティや罰則規定も説明書には記載がないのです。そこでゲームメーカーと一緒にスポーツならではのルールを設計したり、その延長線でスポーツには必要不可欠な審判業務も行っています。これも公平に、安全な大会を担保するためです。またインターネットによる放送と非常に親和性が高いので、放送のチームを持ったり。また最近では、eスポーツに関心を持っていただくさまざまな企業や団体、地方自治体からのお問合せも非常に多いです。地方創生の文脈で、他県から人を集めたいのでeスポーツの大きなフェスや大会をやってくれないか?とか、まだわずかな需要ですが、そういうことのコンサルト業務を行ったりしています。

秋葉原にあるeスポーツ専用施設(e-sports SQUARE)

これらの事業以外に秋葉原でeスポーツ専用施設の運用を行っています。一般的にはネットカフェは個室で1時間いくらという料金パッケージで、かつプライベートな空間=個室ですが、eスポーツの施設は基本的にオープンスペースで、みんなでワイワイやる。フットサルコート、バスケットコートにいる感覚で仲間と盛り上がってハイタッチしながらゲームを楽しむという場です。その場を国内初でオープンさせたのが弊社で、ゲームの聖地でもある秋葉原に根を下ろして、これを一つの事業の柱として運営しています。パソコンのゲームもあれば、家庭用ゲーム機、モバイルのゲームもありますがいろいろなゲーマーに来ていただいて、コミュニティーにご利用いただいて、時にはゲーム会社にこの箱を使ってもらって新商品のプロモーションをやったり、こういった熱気のある、情報発信する基地のような役割として施設運営を行っています。

ゲーム内カメラマン ©Hisashi “Yossy” Yoshimura

弊社内で働く人材の話に変わりますが、どんなポスト・役割があるか?ですが、テレビ局を想像していただくとわかりやすいかもしれません。全体統括するプロデューサーがいて、それを制作進行するディレクターがいて、会場や放送など様々な技術回りをやるディレクターがいたり、ルールを設計して、審判業務までこなす大会運営。社内では「バトルプランナー」と呼んでいるのですが。基本、どの業務、ポストもゲームを愛しているメンバーで構成されています。
アルバイトも含めるとだいたい30人くらいいるのですが、平均年齢は26歳くらいです。僕は30代なのですが最年長で、eスポーツは最近の調査でも小学生がなりたい職業として、YouTuberに次ぐ人気でランクインしていますし、これからの日本の産業を支える若者世代に最も興味を持たれているジャンルがeスポーツであると言えます。「どうせゲームでしょう」などと言っていたら、日本は再び取り残されてしまいます。
eスポーツをスポーツの産業として大きな文脈でいえばクールジャパンとか、それこそスポーツ産業自体を15兆円以上にしようということでさまざまな骨太の政策が組まれていると思いますが、「ゲーマーでしょう」などと言っていられないですよね。そういうところでも単なるゲームではなくて、我々の取組みとしてはちょっと流行っているものだけでなく、これを文化にして社会的なものにして、さらには職業としてプロゲーマー以外にも裏方で仕事をつくっていることを誇れるような空気感にしていかなければ、産業として根を張っていかないのではないかと。そういったことに我々は一所懸命、毎日取り組んでいます。
ゲームでご飯を食べられる世界があるとは知りませんでした。そういった愛が強いアルバイトの子たちがつくりだす場みたいな魅力的なものというのは、本当に吸収がすごく早いし、その好きだということを強みに変えて給料をもらっているという。やっぱり雇用を創出することというのはすごく重要なんじゃないかなと僕は思っています。例えば検定とか国家試験とか、ゲームが持つ能力は何も世の中から認められる力になっていないのですが、本当に彼らが持っている能力ってすごいんですよ。なかなかそれが社会的には認められていない現状ではあるのですが、彼ら自身が持っている能力を引き上げて、eスポーツの文化啓蒙、経済的な発展、そしてこれを社会的なものにしていく。ゲーム大国ニッポンにする。
たかだか50万人とか60万人とか、経済圏としても50億円くらいしか去年のeスポーツ産業はなかったのですが、国内のゲーム産業は1.5兆円を超えるような規模があって、日本は世界で3番目の市場です。国内には5,000万人のゲーマーがいるのです。これをオリンピックの文脈とかeスポーツの国際化ということで、いまは先生方だったり我々のような会社、知見を持った人たちが本当に一枚岩になって育てていかなければ、またちょっとした流行りで終わってしまうという危機感を持って僕は毎日事業を推進しています。
我々のスタッフには物理的にカメラを担ぐカメラマンだけでなく、ゲームの中のカメラマンがいます。これも職業です。彼らが捉えた映像をディレクターが判断して、3秒前に何が起こった、3秒後に何が起こったというようなことを判断しながら映像を切り取ります。それを当たり前のように視聴者が楽しむというのが、eスポーツ番組をつくるうえでの裏側の仕事になっています。
それだけでなく、先ほどの羽染さんの解説にもあったように、予期しないことが起きると解説や実況が入ります。それもインカムで常に入ってきます。ですから単純に映像だけを追っているわけではなくて、生で入ってくる音声も聞きながら、実況解説のリズムに合わせて映像を切り替えていかなければいけないし、カメラマンはデジタル上でカメラを動かします。ドローンのカメラを操作しているようなイメージです。
こういう若い人たちが働ける、雇用を創出するということは、きっと日本のゲーム産業にも効いてくるだろうということで、僕らが持っているノウハウを一人でも多くの方に。企業や自治体の方から毎日のように、eスポーツについて教えてくれ、話してくれ、場合によっては来てくれということがあって、我々も体は1つ、会社は1つなので、僕らが持っている能力を一人でも多くの方に伝搬することがたぶん全国でのeスポーツの啓蒙につながると思っていて、最近はこういった裏側で働く人材を育成するためのアカデミーというものを事業として立ち上げました。ちょっと駆け足になってしまいましたが、こういったことをなりわいにしている会社です。

既存のスポーツを超えた可能性

澤井 いまお三方に大変興味深いお話をいただきまして、我々が知っていたトラディショナルスポーツとは違ういろいろな特徴を持っているということが垣間見えたと思うのですが、近年特に盛り上がってきているアーバンスポーツとeスポーツについて、その魅力。最初にコンテンツとしての魅力についてお三方にうかがいたい。その魅力と、特にトラディショナルスポーツと比べたときに際立つ特徴についてお話をいただければと思います。針谷さんからお願いいたします。
針谷 私は実は、一般社団法人の役割を持ちながら自分の会社では20競技くらいのアーバンスポーツをサポートすることを仕事にしています。ですので、いままで携わってきた野球、サッカー、ラグビーなどの競技と比べてアーバンスポーツにはどんな特徴があるかということでは、東京オリンピックでは金メダル30個みたいな目標がいま出ていますが、従来のスポーツというのはそういうふうに勝つこと、世界で1番になることを最大の目標にしています。これはそれまでのスポーツの流れから言えば当然ですが、アーバンスポーツをやっている人たちはあまり勝ちとか負けとかメダルとかは関係ないのです。
何が一番重要かというと、人がやらないこと。自分が今までできなかったことをみんなの前でできるというのが最も価値のある重要なことで、その結果、例えば順位がついてきたり記録がついてきたりということはいいのですが、一番はエクストリームなパフォーマンスを実際にチャレンジしてやるというところに価値がある。
例えば、FISEで、これで技を決めないと次の段階、例えば準々決勝から準決勝に進めないというようなときに、ある選手がある技にチャレンジしたのですが、失敗しました。普通のスポーツであればそれで終わりで、次に成功しても順位が上がるわけではないし得点にも関係ないし敗退は決まっているのですが、その選手はその技にもう1回チャレンジして、できたときに、その選手が喜ぶのと同時に周りで見ている国内外の選手たちもそれをすごく喜ぶ。一緒になって喜んでくれる。「よくやったね」というシーンがいろいろなところで見られました。
パルクールを見ていても思うのですが、普通なら競技をやって、誰かが失敗すれば自分の順位が上がるのですが、そうではなくてライバルが成功することを一緒に応援している。それぞれのトップアスリートたちが一緒になってそれができるように心から応援しているみたいなところがすごくあって、我々が忘れていたスポーツの本質みたいなところがそこで一つ見えるかなという気がします。 あとは、選手が競技をやめて観客スペースに行くと、誰が選手で誰が観客かわからない。ユニフォームなどはまったくなくて、普段若い人たちが着ているようなウェアなので、本当に普通の感じで、いかにも競技という格好をしていません。それがファッションと融合しているということでもあるのですが、選手がどこにいるか本当にわからなくなってしまうのです。そういうところが大きな違いだと思います。
羽染 先ほど紹介したようにエイジレス、ジェンダーレス、ハンディキャップレスというところがeスポーツの既存スポーツとの一番の違いだと思います。それからもう一つ紹介した場所を問わない、オンライン上でできるというところも非常に魅力のポイントだと思っていて、eスポーツをやっている人は簡単にスマホでゲームをしながらそのまま配信ができたり、先ほどFIFAでエキシビションをやりましたが、プレイステーションでボタンを押せばネット配信ができてしまうのです。
そうなると距離感はないのです。プロの選手と見ている人、あるいはプレイをしたことのない人でも切磋琢磨しているプレイヤーが同じ動画をその場で見ることがすぐにできます。そう考えると、eスポーツはオンラインのコミュニティの形成が非常にしやすいのかなと思っています。選手が近いということは、既存のスポーツではどうしてもプロ野球選手にはなかなか会えないと思いますが、配信やSNSを通して選手と観客の距離が近くて、ファンとの距離が近いことはマーケティングの対象にもしやすいというふうに言い換えることができるのかなと思っています。
FISEに近いところがありますが、サッカーであれば選手はピッチに立っている遠い存在ですが、本当に世界大会でも目の前にあるくらいの距離感で、終わった瞬間になだれ込むことができるくらいの距離でやっています。選手もeスポーツをもっと盛んにしたいと思っている人が多いので、eスポーツを盛り上げるためならファンサービスでも何でもするという中で、ファンとのコミュニケーションも非常に活発にやっています。それが簡単に実現している理由の一つに、オンライン上での配信ができているということがあるのかなと思っています。そこが既存のスポーツとの一番の違いになるのかなと考えています。
針谷 オンラインとの親和性はアーバンスポーツも同じで、アーバンスポーツには監督とかコーチはいないのです。彼らはオンラインで見る世界各国のトップの人たちがどんなことをやっているかということを一つの参考にして、それを目指してやったり、あるいは自分でそれに勝る新しい技を考えだしてみんなに伝えるとかいうことがあって、そこはすごく似ていると思います。
羽染 実際、先日のFISEの大会ではスケボーで小学生の女の子が優勝したりということをニュースで見ましたが、それもオンラインで動画を見られる、そしてミレニアル世代やネット世代が増えてきたことによる新しいスポーツの形というのがアーバンスポーツとeスポーツなのではないかと思います。
澤井 eスポーツには監督がいましたよね。
羽染 そうですね。eスポーツには監督やコーチ、あるいは世界ではメンタルとかフィジカルコーチという人もついていて、これまでは主に1対1だったのですが、5対5でやるタイトルや6対6でやるタイトルになると普段からのコミュニケーションが重要になる。いろいろなことを知っていると話し方なども変わってくると思うので、多くのチームは共同生活をしながら練習しているのですが、それをやるためには常に監督がいて、こういうトレーニングをしましょう、とか。
eスポーツはどうしても椅子に座ってやるので、6時間座って練習とかをしていると肩や腰が痛くなったりするので、そういうことのケアをするためにメディカルコーチなどがいるチームも多いです。
澤井 ありがとうございます。先ほど距離感が近いというお話がありましたが、プロの選手であってもたぶんその辺にいたらまったく気づかないというか、身近な魅力。でも試合が始まるとすごいという、そのギャップでしょうか。羽染 プロというのはどのスポーツでも同じだと思いますが、すごいところを見せてくれるというのがプロで、そのギャップがいいのでしょうね。
澤井 ありがとうございます。古澤さん、お願いします。古澤 違いについてはお二方からお話があったので、仕事のところでいくと、需要と供給のバランスが悪いのでいっぱい採用したいです。こんなに求められていて、仕事のオファーが多すぎてさばけないくらい来ています。これは僕らがイベントをつくっているからという特性もあるかもしれませんが、それ以外にも、日本はまだeスポーツ先進国に比べると事業が広がっていないところがあります。
ゲームの中で行われている競技というのはデータのかたまり、ワーキングリソースのかたまりだと思うのです。だから、これを活かした何か新しい広告ビジネスの開発とか。先進国ではベッティングの会社もあります。スポーツのベッティングというと日本ではTOTOくらいですが、海外では八百長などの問題はありながらも、実は気軽にスマートフォンでAチームとBチームはどちらが勝つか。本当に100円レベルから賭けられるようなものがあります。
ガイドラインなどと一緒につくっていくことが必要ではありますが、その収益を次のサイクルに回していく、どういうふうに経済を回していくかということでいくと、日本はまだいろいろなeスポーツを囲む法律などが。僕らが施設運営をしていると、ほかにも風営法とかいろいろな関係が出てきて、それは逆にいうと機会でもあると思っていて、ゲーム業界だけでなくむしろ周りにいる人たち、それこそ学術も含めていろいろなところに大きなチャンスがあるなあと肌で感じています。

スポンサーの特徴

澤井 ありがとうございます。アーバンスポーツとeスポーツについて、既存のスポーツにないような特徴と可能性みたいなお話をいただいたのですが、そういった特徴からどういうビジネス。例えばそういった特徴に対してどういったスポンサーが注目しているのかとか、その辺のお話についてはいかがでしょうか。
羽染 eスポーツは5年くらい前にはPCメーカーとか半導体とかマウスとかゲームに関連するようなスポンサーが多くついていました。最近ではそれを超えて、何でもという言い方は変ですが多種多様なスポンサーがついていて、日本eスポーツ連合という私の所属している団体もスポンサーとしてはKDDI、au。これはeスポーツではネット配信のために回線の速度や太さが重要なのでということがあります。  また、eスポーツの大会は朝から晩までなので飲み物や食べ物が大事なのですが、サントリーがスポンサーになって選手飲料をサポートしてくださったり。最近では、わかさ生活がスポンサーについてくださいました。eスポーツはパソコンなどを見る時間が長くなるので視力が落ちる、眼精疲労などにもつながるので、それをケアする意味でサプリメントという形でそういう企業もスポンサーになっています。SCARZというチームにはリクシルがついたり、選手たちはいろいろなところに行くということでJTBがついたり、本当に多種多様な企業がスポンサーになっています。澤井 古澤さんは先ほどすごく仕事が来ているということでしたが、どういう方面の引き合いが多いですか。
古澤 金額面というか太いところではゲーム会社が相変わらず多くて、eスポーツは10代20代が多くて、7:3で女性もいる。そういう層にリーチしたいということで衣食住に関わるメーカーは本当に多いですし、地方自治体の中でも地方の観光局でインバウンド施策として使いたいとか。
秋葉原でなくても観光客が来る、特にアジア圏から来るとなったときに、eスポーツにおける親和性や知名度はアジアのほうが高くて、例えば5泊6日の旅行で関西を回っているという中で、夜に行ける施設としてeスポーツ施設とか、トラベルのパッケージの中に観戦ツアーを入れたいとか。観光とからめると助成金なども出たりするので、そういう意味では我々の行っている活動にもいよいよ追い風が吹いているという気がしています。  衣類では、我々はジャージなどをつくっていますが、そこにあまりこだわる必要はないのかなと思っていて、アーバンスポーツのようによりスタイリッシュに着こなしながら普段使いできるような。別に芸能人が着ているからということではなくて、いまはユーチューバーが人気になっているように、芸能人より身近にいる人への関心に特にZ世代ではシフトしているので、そういった人たちのファストファッション的なメーカーの問い合わせも多くて、すごく注目されていると感じています。
澤井 eスポーツはオンラインが一つの特徴というお話がありましたが、実際に観光につながるところもあるということですね。
古澤 会場に行くというところですね。それは結局、どれだけデジタルの世界が発展しても、ハイタッチできるとか、生が一番感動できるということはあると思っていて、僕らがつくっている放送も生の熱気とか熱狂、感動みたいなものにどれだけ近づけるか、体験をどういうふうに届けるかということでやっているので、その両方ですね。
会場の中では物販施策もやったり、デジタル上の施策としては放送の中でスポンサー企業のCMを流したりキャンペーンを売ったり。それはテレビでやっている広告やプロモーション戦略よりすごく小回りが利くというか、特にeスポーツに関してはクオリティよりも脱線度のほうが世の中に求められるので。ユーチューブの楽しさというのもたぶんそこだと思うのです。テレビ番組で見るクオリティというより、サクサクと10分20分くらいで消費できるようなコンテンツがいまの世代には求められているので、そういったところでも親和性が高いということがあります。
澤井 なるほど。針谷さん、アーバンスポーツのスポンサーはどんな感じですか。
針谷 競技の採点とか入退場も含めてIT系との親和性が高いということが一つあります。それから、さっきも出ていましたがアーバンスポーツのファッション性。例えばオフィシャルTシャツはビームスがつくっています。
澤井 レッドブルはけっこう。ドリンクを消費する世代とのマッチングということがあると思いますが、企業のイメージとしても先端的なものを求めるようなところもあると思うのですが。
針谷 そうですね。次の国際大会をどうするかということで、いまアーバンスポーツリーグ構想というものをつくっています。いろいろな地方自治体でアーバンスポーツを、うちの町はこの競技という形で県全体でアーバンスポーツになるというような形で、自治体のまちづくりみたいな意味では、大きな意味では自治体も一つのスポンサー、大きなスポンサーではあると思います。  それから、僕は慶応大学の大学院で研究員をやっていてフローとゾーンの研究をしているのですが、エクストリームスポーツは非常にリスクが伴うので、ゾーンに入るよりフローに入る確率が相当に高いのです。そういう意味で、さっき話に出たレッドブルなどはずっとフローの研究を会社自体でしていますので、そういうところでの親和性ということもあるのではないかと思います。 アーバンスポーツとeスポーツの課題 澤井 ありがとうございます。アーバンスポーツとeスポーツの特徴と可能性みたいな話をしてきたのですが、一方でいろいろな課題もあろうかと思います。それぞれの種目、競技について。eスポーツでよく言われるのは、IOCも言っていますがゲームの暴力性。これはタイトルを変えれば変わってくるわけですが、WHOが勧告を出しているような中毒性の問題もあります。この辺はどう克服するか。  それから、アーバンスポーツは公共空間でやられるものが多いのですが、一方では公園や公道から排除されることもあったりして、その辺は簡単ではないと思うのですが、その辺について皆さんのほうではどのようなことを考えていますか。どのような対策というか対応を考えているかということをお聞かせいただけますか。
羽染 日本eスポーツ連合としてはしっかりeスポーツの国内環境を整えて、JOCに加盟して選手が派遣できるような状況をつくっていくことが非常に重要かなと思っています。  そのときに種目がどうなるかというのはIOCの裁量次第ではあるのですが、ゲーム産業が盛んな日本なので、日本のタイトルが1つでもオリンピックに採用されるように日本のeスポーツの基盤をしっかりつくって、選手を育ててメダルが取れるような環境をつくっておかなければいけないと感じています。
中毒性に関しては、eスポーツの選手は常にトレーニングしているということであって依存しているわけではないと考えていますが、その辺に関しては私たちの団体と、合併に支援をいただいた業界団体(CESA、JOGA、MCF)とともに調査などをしていますので、そちらについてはまた報告が出てくると思います。
針谷 来年の東京オリンピックは、FISEもやっているわけですが、アーバンスポーツが世の中に知れ渡るというか。そこからだと思います。東京オリンピック後にアーバンスポーツがどれだけ発展していくかというところだと思いますが、そこに向けて一つは、例えばパルクールなどもビルからビルに飛び移ったり、橋の欄干の上でバック転したり、危ないというイメージが映像を見るとあると思いますが、元々はフランスの軍隊で、どう身体を使って危機を乗り越えるかというようなところから生まれていますので、身体の安全な使い方ということが競技のベースになっていて、例えば子供たちに教えるときにも一番簡単なものから、あるいはそれを失敗したときにどういう身体の使い方をするかといったところから始めます。
ということは、ちゃんとやっていると、高齢化社会の中で身体の使い方とか安全な運動の仕方みたいなところにもつながると思うし、アーバンスポーツがちゃんと浸透しつつ、その辺のアピールもしていきながら、いま規制がかかっているものもだんだん緩和していくことができればというふうに思っています。
古澤 2点あったと思います。まずは暴力性。メディアなどでも銃を撃ち合うようなゲームは教育上よくないのではないかと。2つの見方があるかなと思っていて、確かにそうだよなと。残り半分は、ゲームをプレイすることによるポジティブな側面にふたがされているような気がしていて、特に日本ではそういうところが強いなと。僕自身も、ゲームをやっていて親に怒られた経験のほうが多いかなと思っているし、周りからも、家にいてゲームをやっているということに対してネガティブに思われる。  これは単純にゲームが悪いということではなく、ゲームの周りにあるスポーツの認知というのが正しく浸透していないから生み出されるネガティブな、スケープゴート的な要素としてゲームが使われているということもあって、海外に出てみると、eスポーツをオンラインでやると、人とのコミュニケーションの7割以上は表情じゃないですか。オンラインで顔が見えないところでどういうふうに戦略を立ててどういうふうに勝っていくかということでは、コミュニケーション能力が本当に要求されるのはeスポーツのほうだったり。
そういう学術的な論文とか、こんなにプラスがあるよという要素がもっと世の中に必要なのではないかと。一方で、ハリウッド映画なんてすごいじゃないですか。ミサイルは跳ぶし、銃は撃つし。何がよくて何が悪いかというのは、偏見が入ってステレオタイプ的なところがあるので、白か黒かというような問題ではないように感じています。
もう1つのゲーム依存症ですが、これも私見ですが何でも程度の問題ではないですか。アルコールをたくさん飲みすぎればアルコール依存症。程度だと思うのです。それも暴力性と同じだと思うのですが、「ゲームだから」という理由で足を引っ張られている要素があると思っていて、ポジティブな要素をゲーム業界の外側から、特に学術的な数字で示せるようなもので世の中に啓蒙できれば。 その典型的なものは昔、任天堂のゲームで脳トレというのがありました。頭がよくなるのでどんどんゲームをやりなさいと。そういうわりと単純なものだったりするので、もう少しそういうポジティブなニュースがあると、この辺も変わってくるのではないかという気がしています。
澤井 ありがとうございます。暴力性の問題については海外でけっこう論文が出ていて、ゲームをやっている人のほうが暴力性がないという報告もあるようです。こういう論文がこれからもっと出てくるといいのかなとも感じています。依存症の問題については僕もまったく同感で、トラディショナルスポーツのほうが依存症を問題にしなければいけないのではないかと思うこともありますので、もう少し全体的にゲームに対するイメージを変えるような活動が必要なのかなと感じるのですが、いかがですか。
羽染 そうですね。eスポーツもゲームの楽しみ方の一つである対戦するというところから発生しているものではありますが、どうしてもゲームについてはまだ悪い側面がフィーチャーされがちなので、それを少しずつeスポーツという楽しみ方があって、正しい遊び方をすればこういう世界があるよ、職業にもつながっていくよ、ということにつながることでゲームの見方が変われば、きっとeスポーツもしっかり認知されていくのではないかなと思います。
澤井 何か犯罪があったときに犯人の家を捜索したらゲームが出てきたとかマンガが出てきたといったことがニュースに出てくるのですが、あれは偏見ですよね。ゲームやマンガが家にあるというのは普通のことですから、そのイメージは変えていく必要があると思います。今日いらっしゃった方の中で実際に配信を見たことのある方は2~3割ということでしたが、ぜひ見ていただきたいと思います。僕も大会を見に行って、ずいぶんイメージが変わりました。いらしている方は基本、普通の方ばかりです。当たり前のことですが。
大会が終わるとみんなで椅子を片づけたり、本当に雰囲気もいいですし。またeスポーツのプレイヤーたちが普段トレーニングしている姿などを見ると、ゲームをしているのは依存ではなくトレーニングであるという認識がもっと広まると、かなりイメージが変わるような気がします。

▶︎本稿は、2019年7月28日(日)に、日本体育大学で行われた日本スポーツ産業学会第28回大会における同名シンポジウムの内容をまとめたものである。

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