スペシャルイベントを通じた球団価値の向上:鷹の祭典を中心に

スペシャルイベントを通じた球団価値の向上:鷹の祭典を中心に

【演者】 白川 隆志氏(福岡ソフトバンクホークス株式会社 執行役員|事業統括本部マーケティング部長)
【司会】 西崎 信男(九州産業大学 教授)  福田 拓哉(九州産業大学 准教授)

【趣旨】
1989 年。ホークスが大阪から福岡に移転した。2004年には親会社がダイエーからソフトバンクに変わり、現在では名実ともに日本を代表する球団に成長。白川隆志氏は、ダイエーホークス時代から一貫したキャリアを球団で歩み、主にチケッティングをはじめとする「資金創出」面で活躍。福岡移転後の 32 年間に球団は独自の経営努力で財務的自立と成長を遂げているが、白川氏はその過程の大部分を経験。ここでは、PayPayドームにて開催されるスペシャルイベント「鷹の祭典」を中心に、ホークス成長の軌跡と資金創出の仕組みについて解説頂きます。

福岡ソフトバンクホークスについて

白川 福岡ソフトバンクホークスの前身はダイエー、そのまた前身の1938年に生まれた南海ホークスは、1989年に福岡に移転してダイエーホークスとなり、2005年にソフトバンクになって、現在に至ります。2019年が九州に来て30周年で、昨年2020年が福岡ソフトバンクホークスとなって15周年となります。もともとは、事業側の福岡ソフトバンクホークスマーケティング㈱という会社と球団運営の福岡ソフトバンクホークスという会社は、法人としては別でしたが、2014年に一緒になって、今は福岡ソフトバンクホークス株式会社という形になっております。成績の方は、今は4位なんですけども、昨年までの10年間にリーグ優勝が6回、日本一が7回(昨年までは日本シリーズ4連覇)という成績です。2019年のオープン戦からレギュラーシーズンを合わせた観客動員数は約300万人(オープン戦で40万人、公式戦で260万人)。ファンクラブの会員数が15万3160人(2019年)。どちらもパリーグとしてはナンバーワンという状況です。
会員数の経年の推移ですが、有料のファンクラブ会員は、2010年に67,000人ぐらいだったところから、毎年右肩上がりで伸びていて、現状153,000人。2017年からスタートしたタカポイントサービス(無料会員登録)を合わると現状40万人を超える会員数の情報をいただいています。ファンクラブ会員の性別と年代をみると、男性が55%、女性が45%ぐらい。男性の方がちょっと多いんですけども、実際に来場いただいている方のデータで見ますと、ほぼ半々で、女性の方もたくさん見に来ていただいています。年代は、これは野球界全般に言えるところかもしれませんけれども、40代、50代ぐらいが多いとはいえ、幅広い年代層に支持をいただいているという状況です。
2005年からの売上高は、基本的には右肩上がりで、2017年に目標にしておりました300億円を突破いたしました。昨年は事業的にも影響を受けまして、220億円になりました。
ホークスが福岡にあるということで、経済波及効果(福岡フィナンシャルグループのビジネスコンサルティングさんの調査統計)は、レギュラーシーズンと日本一になった場合と言うところを合算しますと800億円強ぐらいの経済波及効果があるという風に言っていただいております。まあ、ホークスとしては、野球のみならず箱(球場)も持っていますので、こちらを使って全てのお客様に楽しさと感動を提供するエンターテイメントビジネスをやっている会社と言うふうに思って頂ければなと思います。球団スローガンは「目指せ世界一」でございます。

ドーム改修と最近の取り組み

ドームは1993年に建ったんですけれども、25年後の2018年のオフシーズンに大規模な改修をいたしました。その際、やっぱりドーム球場ならではというところで、非日常感みたいなところをより追求した空間にしたいというコンセプトのもとに、ビジョンを大きくしました。ホークスビジョンが大きくなったことで、いろんな映像だったりとか、画像も含めて大迫力の形で、非日常感ないし、エンターテイメント性が高い空間に出来ているのかなと思っております。

五面のビジョンを連結させると約190m。ジャンボジェット機三機分の長さがあり、外野がほとんどビジョンで埋まっている。この五面を連動させた場合もありますし、それぞれ分けて選手の情報や広告など、いろんなことを出して、お客様の観戦を楽しんでいただけるようにしています。

もう1つ。少しこだわったところがコンコースです。直接的なプレーが観れないコンコースの空間も、より非日常感を出したいというところで、色合いとかもちょっと変わってますが、黒をベースに白のラインを入れたような空間にしています。合わせて徹底的にLEDとかLCDとかモニターもつけて、非日常空間を出す効果だとか、広告の面積を増やすとか、可変性が高くできる。例えば今日は《鷹の祭典》で、今年のカラーは赤でやらせていただいておりますので、全モニター数の587面を使って赤色で表現して、球場内を真っ赤に染めたり、そういうようなことがすぐできると言う「可変性」が非常に重要かなと思っています。
タカガールデーという女性に喜んでいただけることに特化したようなイベントの際には、ピンクのカラーにしたりとか、いつもと違う空間を楽しんでいただくという意味でも、オープンサイネージの空間をたくさん作ったというところは非常に大きかったかなと言うふうに思っております。
年間来場していただいた回数だったりとか、年間のチケットやグッズを買っていただいた金額だったりに応じて、ファンクラブの会員を5段階のステージに分けさせて頂いておりまして、予約制ではあるんですけれども、上位ステージの方だけが利用頂けるような空間・会員専用ラウンジも、用意いたしております。
トイレもこのタイミングで改修致しました。こだわったのは、トイレをきれいにしたいというところと、とにかく数を増やしたいというところ。普通トイレは「ゆったり広く」というところもあるんですけれども、ドーム球場というところの特性上、一気にたくさんのお客様が来られて約3時間の試合が終わったら一気に帰られる。また、男性トイレと女性トイレの数も、野球のときは5対5ぐらいの割合ですけども、人気アイドルのコンサートなどで女性が9割とかになった時に女性トイレだけが混雑する。そこで、男性トイレと女性トイレの区切りを動かし、大便器の数を変更できるようにして、そういったアーティストのイベントの時とかは女性トイレの数を増やしたりできるようになっています。
座席シートも、昔はスタンド席は、ほぼ同じ席が全部にぐるっと占めていると言うような状況だったんですけども、今は、ペイペイドームの座席の種類は30種類ぐらいです。毎年毎年少しずつ追加したりして、話題の喚起も含めて、新しい楽しみ方を定期的に追加しています。


タカガールシートという女性限定の特別シートもやらせていただいておりますし、外野のバックスクリーンの横のところに「やまや めんたいこBOX」という、ネーミングライツのシートがあります。福岡の明太子の企業であるやまやさんに、お話をしまして、福岡のシンボルとなるようなシートを作りたいと明太子のモニュメントを作るからご協賛いただきたいということで、まず出来る前にやまやさんに話しに行って、やまやさんにご理解頂いて、ご協力頂けるということで誕生したのがこちらのシートになります。この3mぐらいある明太子が、球場どこからでも見れるような感じになっています。あとは、今どこの球場でも多いですけれども、選手と同じフィールドで選手と触れ合えるようなコカ・コーラシートだったりとか、ホームランが飛んでくる可能性もあるような臨場感が楽しめて大人気のホームランテラス。バックネット裏は、ゆったりとした<みずほ>プレミアムシートもご用意させていただいております。


近年人気があるシートとしては、ボックス席。半個室のような状態のボックス席も、最近とても人気になっています。ここでは、ipadで注文していただければ、お料理やビールをお届けできるようなサービスも実施しております。
今年から誕生したシートで、ホークスラグジュアリーシートと言う、少し縦の空間もゆったりとした席も作っています。あと、毎年販売率が非常に高いシートがビクトリーウィング。食事とソフトドリンクは飲み放題・食べ放題(アルコールは別料金)のシートもとても人気です。このビクトリーウイングというところは、5階や6階の端っこの方になりますので、観戦としてはグランドまでの距離が少し離れた空間にはなるんですけれども、ビュッフェ付きで、後ろで子供が遊ぶスペースがあったり、畳のスペースがあったり、ゆったりくつろげたり、といった特徴を出すことによって、非常に人気の空間になっているかなというふうに思います。

あとこれはダイエーの時からやってる取り組みではあるのですが、野球を通じた社会貢献活動としてスポンサー様にご理解、ご協力いただいて、観戦チケットを買っていただいて、そのチケットを我々が仲介をしまして、少年野球のチームだったりとか養護施設や介護施設の皆様に野球観戦として招待をさせていただくと言う「メセナシート」の取り組みも長年実施させて頂いておりまして、来場したお客様は当然喜んで頂けるし、スポンサーの方も感謝の声みたいなお手紙とかが届きますので、そういったものをスポンサー様にお届けすると言うような取り組みもさせていただいております。

最近の話で行きますとダイナミックプライシングっていうところもご説明させていただきます。価格変動型のチケッティングを昨年からほぼ全面的にやっております。一日一回価格が変わるみたいな形。Jリーグさんとかも最近始められたりとか、アメリカでも一般的だと思うんですけども、ホークスの場合はもう一歩踏み込んでまして、4万席が一席ごとに価格が異なる。どうしても通路側が人気があったりとか、15席がつながっていると、真ん中のあたりの席が人気が無かったりとか、そういうような席の場所によるニーズにも応えて、個席の単位、そして価格の変動も一日に一回ではなくて15分ごとに価格変動のエンジンを回していまして、人気が急激に伸びたという席は急激に上がったり、逆に全然売れなくなったら下がっていったりと言うような取り組みも昨年から実施しております。
ダイナミックプライシングには販売数の理想曲線(予定曲線)があって、それよりも売れてなければ価格が下がるし、それよりも売れていれば価格が上がるようなエンジンの仕様になっておりまして、チケットが基本的には緩やかな右肩上がりになるような価格が理想です。どのチケットも発売日が1番高くて試合日は1番安いみたいな右肩下がりのような価格変動のエンジンになってしまうと、お客様がチケットを買うのを待ってしまう。こうなってしまってはいけませんので、その辺りは今試行錯誤をしながら、基本的に8割型は早めに買った方がお得になるような考え方で取り組みをしています。データがたくさん溜まって行けば、その精度も上がっていく。AIの性能向上によって、さらなる最適化を実現して行きたいと思っております。
あとはイベントや演出ですね。ここも私が担当するマーケティング本部の領域でございますので、ここも簡単に説明させていただきます。

試合自体は、プロの選手の本当の真剣勝負のところで御座いますので、我々が出来るのはそのプレーの合間だったりとか、試合の前後、イニングの間、こういったところに野球を仮に知らない人がいても、なんか楽しめるような空間っていうか、野球からちょっと離れたものも含めてお客様がとにかく楽しめてエンターテイメントって感じられるような取組みをしたいということで、頑張っているところでございます。ホークファミリーというキャラクターだったりとか、ハニーズと呼ばれるパフォーマンスチームだったりとか、スタジアムDJ、体操のお兄さんとか、まあこの辺りもみんな一緒にお客様を盛り上げるために。と言うことで頑張ってくれています。



あとは試合状況に応じてビジョンも連動させて変更して行く。チャンスになるとこのような形で、大きなチャンスであればビックチャンスと言うような映像を瞬間的に出したりとか。ホームランが入ると、ビジョンを五面全部使ってホームランの映像を右から左まで動くような映像も含めてやっていたりしています。あとはやっぱりビジョンが大きいということで、選手の顔の写真とか、大きな形で表示できるということと、いろんな基礎数値データ。この辺りもひと目でわかるようなことが実現できるようになっています。あとは選手ひとりひとり登場曲というのは自分で選んでできるので、その曲に合わせて手拍子のタイミングを太鼓の達人のような形でタイミングをビジョンで表示して、ファンの方が初めて来た人でも参加できるような、盛り上がるような演出をやりたいと言うことで取り組んでいたりします。


イニング間は、ジェット風船とかは今はコロナでやめておりますけれども、名物のプロ野球の形かなというふうに思っています。あとはホークスとしては、長年ずっと続けている勝利の花火の演出。球場を真っ暗にして光の演出を行うというところが、勝利の喜びをより倍増させるような、非日常空間を出したいと言うことで取り組んでいるところでございます。

ご存知だと思うんですけども、PayPay ドームって屋根が開きます(3枚型の屋根になっている)ので、勝った時にはルーフオープンを、雨が降ってたりしない限りは行っております。実際、屋根を開けて試合するっていうのが今は基本的にはやっていません、やはり海沿いにある球場ということもありまして、風がかなり舞ってしまう。ドーム球場にもお客様も慣れてしまっていて、開けてると暑いというクレームがあったりしますので、基本的には開けていないんですけど、年に3試合とかですかね。5月とかすごしやすいタイミングで、ルーフオープンシリーズというのをやっていたりしまして、その3試合だけは屋根を開けて試合をするっていうようなこともやらせていただいております。
ファンの皆さんに、もっと楽しんでもらうために、シーズン通していろんなイベントをしております。
これ2018年の時の年間スケジュールで、まあ3月から10月まで。まあ、いろんな試合やりますけども、大小含めてですね。いろんなイベントを展開して、それぞれのイベントに目的がありまして、今すでに既存のファンのみなさんに喜んでもらうようなイベントだったりとか、今はたぶんホークスのファンじゃないけれども、こんなところとコラボすると来場するきっかけになるのではないかな?というようなイベントだったりとか。基本的にこのあたりのイベントっていうのは、その日のチケットが売れるため、要は集客施策のためにやることが多いんですけれども、例えば夏休みの子供のキッズキャップの配布とかっていうのは、その日の売上というよりかは、とにかく子供の方が子供の時に試合に来て頂いて、野球観戦が楽しいって思ってもらうことが、何年後かにまたその体験経験が野球観戦に来ようというものに繋がると信じて、そういうような将来的な投資も含めた取組っていう形でやらせていただいております。

鷹の祭典

山笠、どんたく、放生会。これが福岡の3大祭りと言われていますけれども、これに並ぶような福岡の文化にしたいというところが、鷹の祭典への思いでございます。

毎年テーマをつけてそれぞれの楽しみ方をやって行くと言うところで、今年2021年は《鷹く!レッド》で、今日私が着ているユニフォームになりますけれども、この色でやっております。

ユニフォーム配布の狙いは、ホークスとファンの皆さんとの絆を深めるということ。ファン同士の仲間意識を向上。球場のわくわく感、一体感を醸成。目的としては、まず既存の普段から球場に来ていただいているファンの皆様に、もう一回盛り上がりの山を作ろうという意味でのファン満足度向上と、やっぱりこのイベントをやっているということで、鷹の祭典だったらちょっと行ってみようかなとか、鷹の祭典面白いから来てみなよって誘っていただけるようなきっかけで、結局は新規のファンの獲得にもなると思う。このあたりが狙いとしてやっております。

2019年は、水色のような青い形で展開しておりましたので、球場全体をその年の色に合った形で徹底的にこだわってやって行くと言う取り組みでございます。福岡の至るところで、7月になると、福岡の空港だったりとか、JRの改札の皆さんだったりとか、銀行の窓口の皆さんだったりとか、そういったような皆さんが鷹の祭典のユニフォームを着てお仕事をしていただけるというところで、より地元球団としてご賛同いただけることは本当にありがたいと思っております。


街中も鷹の祭典期間中は広告なんかも出さしていただいて、うちわを街中で10万以上配ったりとか、そういったような取り組みもやらせていただいております。
もともと、なんで鷹の祭典を始めたのか。1番最初はダイエーの時でした。2003年にダイエーホークスが優勝しまして、日本シリーズの対戦相手が阪神タイガースでした。この時は内弁慶シリーズと言われて、ホークスはドームで4勝して甲子園3敗して日本一になった年なんですけれども、その時甲子園球場に行って強烈に思ったことは、阪神ファンの皆さんはユニフォームをたくさん来て応援しているのに、まだ2003年当時のホークスファンは、たくさん球場には来ていただいたんですけども、ユニホームを着て応援するっていうことが少なかった。ファンの皆さんがユニフォーム着てたら、どんな光景になるんだろうっていうのを実現したいというところから実は始まりました。最初は、ユニフォームを配布するとユニフォームが売れなくなるじゃないかとか、その配布する日のチケットの売り上げは上がるかもしれないけれども、その反動でほかの日が売れなくなるんじゃないかと。そもそもユニホームのお金(経費)どこから出てくるんだとか。営業が協賛スポンサーをなんとか取ってきてくれるといったもので、まずじゃあ一回やってみようというところから、始まったところでした。2004年、ダイエーのホームのユニフォームを着てやったのが鷹の祭典の始まりでございます。その後、徐々に現在の鷹の祭典という形になって来ました。あれだけ売れなくなるって言われていたグッズ。ユニフォームもちょっと品質が良いハイグレードのユニフォームであったりとか、その色に連動したタオル、キャップという横展開が無限にあって、グッズチームも今は「鷹の祭典はなくてはならない」と言うような状況になっていますし、飲食チームも同じような形で、すべての部門が連動してメリットがあるイベントになっています。

スペシャルイベントがもたらす効果

最初は、収益ありきというよりは、まずはファンの皆さんにユニフォームを着てもらって、その光景を我々が見たい、ファンの皆さんにも感動してもらいたいという思いから、スタートをさせて頂いたんですけれども、それが実現できると人気が上がって満員になる。満員になると、チケットの売上、協賛グッズの売上、飲食の売上すべてが上がってくる。じゃあ来年はもっとたくさんしようとか、もっと大々的にやろうという好循環がずっと回って行くと言うところが、スペシャルイベントがもたらす効果かなと思っております。いつでも誰でも買えるみたいな試合ばっかりだったら、チケットの価値は下がると思いますので、本当は全試合満員でどの試合も完売ってできればいいのですが、そんな中でも完売できる試合を年々増やして行きたいという思いの中で、こういったイベントをやらせていただいております。

鷹の祭典で特徴的な話としては、毎年開催しているのが基本的には7月でございます。当時は3月の終わりぐらいに開幕をして、9月から10月頭ぐらいまでやっているんですけれども、チケットの販売に苦戦するのは、開幕直後の4月、それから夏休み前の7月が苦しむ。そして最後はチームの順位次第なんですけど、Bクラスになっちゃうと9月は消化試合感になって苦しむ。3つの苦しむタイミングがあるうちの7月が鷹の祭典で定着しましたので、この辺り非常に大きかったっていうのが鷹の祭典の特徴的なものかなというふうに思います。もう1点は毎年同じタイミングで毎年必ずこのイベントをやるっていうことが固定できましたので、スポンサーさんへの協賛営業に行くときに、基本的には年間を通じて、例えば年末の12月だったり、年明けて1月だったりというようなタイミングで予算をとっていただくことが多いですので、毎年このタイミングで、ホークスのユニフォームを使ったキャンペーン7月やりましょうよと言うようなところを、1月くらいから営業ができるっていうのも、長年ずっと継続してやっていくイベントの効果。チケットも鷹の祭典のチケットがついたその日の試合だけではなくて、複数試合をセットにしたようなチケット販売とかの効果も生まれますので、継続してやっていく。っていうことも非常に大事かなと思ってます。

あと数字のところで、鷹の祭典の効果の説明をさせていただきます。
まず観客動員数。2019年の通常の平均34,000人ぐらいのところだったりする所は、鷹の祭典をやるとほぼ満員になると言うようなところがベースとしてございます。これ一般チケットの平日の試合の売上を100とすると、鷹の祭典をすると4.1倍になる。平日だとダイナミックプライシングにしろフレックスプライスにしろ、平日と土日の価格ってもともと格差があるんですけれども、そんな中でも平日でも鷹の祭典ぐらいのイベントをやると土日よりもさらに超えて4.1倍ぐらいの売り上げが作れると言うような効果が今は得られています。グッズの売り上げも、通常の鷹の祭典をしなかった平日の売上を仮に100とするならば225と言うことで、グッズの売り上げも2.2倍ぐらいになっている。
協賛も冠協賛という形ではなくて、鷹の祭典協賛っていう展開で、毎年このタイミングで鷹の祭典をやっているということで、スポンサー様にも鷹の祭典のユニフォームと鷹の祭典のチケット、この2つを使ってキャンペーンお願いしますと言うことで、1番小さいものは10万円から、何千万円まで、いろんなメニューを取り揃えて営業しています。こういう鷹の祭典とかタカガールデー等のイベントの時はそのキャンペーンをやるための協賛みたいなイベント協賛をしていただいておりますけれども、このスポンサーの獲得というのも非常に大きいですし、スポンサー様もきっと喜んでいただいているだろうと言う展開が出来ていると思います。
これが鷹の祭典で、ホークスを象徴するようなイベントかなというふうに思います。今は、結構どの球団様もユニフォーム配布って、たぶん全部やってるんじゃないかなと思いますが、2004年、最初に配布したときには、他球団の皆さんからもなんでこんなことやってるんですか?グッズ売れなくなるじゃないですか?とか、チケットほかの日に偏って売れなくなるんじゃないですか?とか、結構色々言われたんですけども、何とか続けることができて、価値も高まってきて。今では他球団の皆さんもやっていただいて非常に良いんじゃないかなと言うふうに思っているところでございます。



タカガールデーは、毎年5月の母の日ぐらいにやっていまして、初めのコンセプトとしては世界一女性が集まるイベントにしたいと言うところでスタートしております。もともとは、2006年に女子高生デーというのからスタートしていまして、それを13年間継続して、それをタカガールデーとして、女子現役女子高生だけじゃなくて、元女子高生も全部いいよと言う形で女性全員に配りだしたというところが、この数年と思っています。この日は、球場内球場外をピンク一色にして、いろんな展開をしております。飲食物も、このタイミングではいつもピンクで展開をして、女性ファンの皆さんが喜ぶようなグッズ、アイテムとかの品揃えをたくさん展開しています。

あとピンクリボン運動ですね。乳がん早期発見のための啓発活動をされているところと連動をしまして、同じタイミングで乳がん検診の取り組みもやらせていただいております。毎年、例えば選手がピンクユニフォームを着たもののオークションの売り上げをこのピンクリボン運動をしているハッピーマンマさんというところに寄付をさせて頂いて、その寄付があるから翌年のこの乳がん検診が、例えば普段4000円かかるところが500円で受けられるとか、そういった取り組みが今は出来ていまして、この時は2日間で400名の方が乳がん検診の受診していただいたと言うような取り組みをやらせていただいております。
あとは、一昨年になりますけども、ホークスが九州へ来て30周年ということで、福岡が本拠地ではあるんですけれども、やっぱり九州の球団のホークスということで、福岡のみならず九州の皆様にいろいろ感謝しつつやった取り組みでございます。試合も普段はPayPay ドームだけなんですけども、鹿児島、熊本、長崎といったようなところで一軍の興行をしたり、2軍の試合についても、いろんな地方都市やらせて頂きました。この30周年のユニフォームを使って、九州各地で一体感を醸成していきたいというような取り組みでございました。今年に関しては「ファイト!九州」というテーマでやらせて頂いております。この「ファイト!九州」というのは、もともときっかけは、2016年の4月の熊本・大分の地震ですね。地震の災害復興支援プロジェクトとして立ち上がってずっと取り組ませていただいていたのでですが、ちょうど5年経過したところもあって。今コロナ禍の閉塞感っていうところだったり、明るい話題がないという社会のなかで、ホークスとして何をすべきかと言うところで、この「ファイト!九州」の取組みを考えました。ホークスが九州をなんとか元気にできるような活動できないかと言うようなコンセプトとして、今年からそのようなコンセプトに変えて取り組んでいるところでございます。
いろんな取り組みをやっているのですが、子供たちの「あなたの夢を叶えますプロジェクト」として、野球に限らず、いろんな夢がたくさん来てるんですけども、夢の応募があって、できるだけそれを叶えていこうと言う企画で、60歳の誕生日におじいちゃんとどうしてもPayPayドームでバッテリーを組みたいとか、球場のアナウンスをしたいとか、そういった夢が実現しています。これは一年通した取り組みになっていますので、この後も続々と叶えていきたいなと思っているプロジェクトでございます。
あとは「笑顔の花を咲かせましょうプロジェクト」として、九州各地の小学校のひまわりの種をプレゼントしたりしています。あとは「ファイト!九州」のテーマソングとして、熊本県出身のロックバンドWANIMAとコラボしまして、楽曲制作のところからご相談をさせていただいて、この「ファイト!九州」のテーマとして楽曲を提供していただいた。「旅立ちの前に」は実際に球場に来ていただいて、演奏していただきました。

コロナ禍での取り組み

正直やっぱり大変です。いかにこれまで集客、お客様がたくさん来てくれることに頼ったビジネス展開であるというのを改めて痛感した。コロナ禍で今入場制限をかけて入れられないと言う中で、どうやってお客様に満足していただけるか、どうやって少しでも事業収益を上げていくかというところは、本当にこの一年二年ずっと考えているところです。声が出せない風船が飛ばせないみたいなところで、いろんなアイディアを出しながら、球場では手拍子とかをうまく使いながら盛り上げを続けるっていうことだったりとか、風船に代わる新アイテムとして、ホークスキャノンという、クラッカーみたいなものを飛ばすような商品を開発したりとか、あとはオンラインイベントとかもたくさんやっています。
テレビとかでご覧になった方もいらっしゃると思うんですけども、ソフトバンクグループとしても、色んなロボット展開もしておりますので、象徴的な「Pepper100台のロボット大応援団」の取り組みをずっとやっていたり。リモート使ったファンとの交流も積極的に展開していると言うようなのが今の現状かなと思います。
あとは、グッズのECですね。コロナ禍で通信販売の成長が急激に加速しました。もちろん球場に来たくても来れないからECで買うっていう人もいらっしゃると思うんですけれども、そこを見据えてそこを意識した商品展開。お家で使えるグッズの展開だったりとかいったようなものを拡大したりましてECの売上については、前年を100とするならば、185%の売上ということで加速できたかなと言うふうに思っております。

ちょっと駆け足でのご説明になって聞き取りにくかったところがあるかもしれませんけれども、スペシャルイベントを通した球団価値の向上として、わたくしの話の方は一旦こちらで終了となります。ご清聴ありがとうございました。

福田 2019年度のホークスの年間売り上げが約325億円。これが昨年度コロナの影響を受けて229億円まで下がった。やはり約100億円も下がるというのは、かなり大きいダメージだったと思うんですね。これが今も続いているというところなんですが、実際にこういう中でお仕事されている立場からすれば、今の状況ってどういう風にとらえられていらっしゃるのでしょうか?

白川 正直やっぱり昨年と今年は業績が非常に厳しい。ソフトバンクグループ株式会社、親会社の協力もいただきながら、なんとかこの危機を乗り越えていかないといけないと思うことと同時に、やっぱりこの機会だから、新たなビジネスのチャンスっていう観点もあると思いますので、先ほど通信販売に触れましたが、いろんな新しい事業を展開する機会になっている部分もありますので、そういったところはしっかりやって行きたいと思っています。事業が苦しいからといって、お客さんをたくさん入れて良いタイミングでは決してないので、我慢するところはしっかり我慢して、感染対策をしっかりしながら、コロナが明けた時に、いかにしっかりとお客様に球場に来ていただけるかというところを主眼に置くのと、今のお客様のロイヤリティーが何とか離れていかないように、いろんな取り組みを今も引き続き考えています。

福田 今、親会社のソフトバンクグループさんの名前が出てきましたけれども、親会社の資金といいますか、売上における関係性っていうのは、平時の2019年のところまででよろしいんですけれども、どういった関係になっていらっしゃるでしょうか?

白川 基本的には、ソフトバンクグループという親会社といえども、ユニフォームに名前も付いていますし、そもそも球団名が付いている。まあ、大きなネーミングライツという意味での広告価値が非常に高いと思いますので、それに見合うぐらいの部分を広告収入の売上として計上させていただいています。

西崎 今のお話のファイナンスとしての背景を補足させていただきますと、プロ野球の球団の中で、貸借対照表だけじゃなくて、損益計算書まで出してるのは、ソフトバンクホークスさんだけなんですよね。もちろんホークスさんがすごく企業経営の内容開示に積極的だという部分もあるんですけども、会社法の規定(「大会社」)によるものです。ソフトバンクさんがドーム球場をお持ちで、その時の借入金があるので、200億円以上の負債があると、貸借対照表だけではなくて損益計算書も出すことになる。従って、今、阪神タイガースさんでも120億ぐらいなんですが、阪神タイガースは出てこない。ほかの球団も出てこない。ホークスさんは、球団経営の規模が非常に大きいのと、負債が大きいので、その部分で両方出さなきゃいけないということで出しておられます。白川様をはじめとしてコロナ禍で大変なご苦労されたのではないでしょうか。去年まではすばらしい経営成績で着実に毎年5億円ずつぐらい、税引き後の利益が出てたんですけれども、コロナ禍の経営に及ぼす影響はすごいですね。一転赤字を計上することになりました。それでも利益剰余金を残してやってらっしゃるのは素晴らしいことだなと私は感嘆しております。他のプロ野球の球団は開示して無いので分からないですけど、サッカーJリーグクラブでも、赤字計上のみならずそれを利益剰余金でもカバーできず(資本の欠損)、債務超過というところもいくつもありますので、その点はやっぱりホークスさんは素晴らしいと私は思っています。

福田 フロアの方からの質問です。「鷹の祭典期間のチームの競技としてのパフォーマンスに影響は出ますでしょうか?チームパフォーマンスが落ちていても、イベントが経営的に支えているということでしょうか?」、鷹の祭典が選手に与える影響ですね。

白川 鷹の祭典の期間は、基本的にはいつもより勝率がいい。やっぱりファンと一体になっている象徴としての取り組みだと、選手たちも言ってくれています。一方、ちょっとプレッシャーにもなるという選手もいるみたいなので一概には言えませんけど、基本的にはやっぱり多くのファンが応援しているっていうのが、わかりやすく選手にも伝わるタイミングではありますので。基本的には喜んで頂いてありがたいって選手も言ってくれています。

福田 「プレゼントするレプリカユニフォームにかかる費用はスポンサーからの費用で賄うのでしょうか?」というご質問です。いかがでしょうか?

白川 大量に作りますので、単価がある程度抑えられていまして、このイベントのユニフォームの制作費だけでもおそらく2億円ぐらいだとは思うのですが、スポンサー様にもご共感をいただいてそれを十分ペイできるぐらいの協賛がございます。これに加えチケット増収効果、グッズ増収効果、飲食増収効果があるというふうにご理解頂ければと思います。

福田 「ダイナミックプライシングは、鷹の祭典でも適用されているのでしょうか?」というご質問です。

白川 今年に関しては、残念ながら一般販売できてないんですよ。動員の上限がまん延防止措置で基本的には5000人以内に収めて欲しいって言う中で、年間シートで販売している分だけでもうすでに7000枚とかあって、残念ながら一般チケット販売ができていなかったんですよね。なので、去年のクライマックスシリーズとか、その辺りはダイナミックプライシングでやりましたし、今年のタカガールデーとかはダイナミックプライシングで取り組みました。鷹の祭典もどのぐらいになるかなと思って楽しみにしていたのですが、残念ながらできなくなっています。

福田 そもそもチケットは、安い価格帯のものから売れる傾向ですか。それとも逆に、高い価格帯のものからなくなる傾向が強いでしょうか?

白川 両方なんですよね。安くもなく、高くもない、真ん中あたりのチケットが1番残るといったことが多いかもしれません。1番特徴がないような席が売れ残る傾向にはあります。

福田 昔からですかね?

白川 いや、今まではなんとなくこうだろうみたいなことと、まあ終わった結果を受けて販売率とかを見ながら価格を決めていたんですけれども、今はダイナミックプライシングで席種毎にも需要がオンタイムでわかってきますので、それによって価格も変えられる仕組みなので、売れていなければそこの人気のない席種は下がっていきますし、安いと言われていた席であっても、売れて行けば高くなっていくと言うのがダイナミックプライシングになります。そういったような感覚でやってたものが、AIでそのまま変わっていくっていう感じですかね。ただ、気をつけているのは、だからといって、今ダイナミックプライシングの2年目なので、1万円で売り出したものを需要があるからといって、一気に2万円とかで売るかとかっていうことはしないように、ある程度制限をかけながらやらせていただいています。あんまり変なことやっているとファンの皆さんに離反されますので、そこら辺は実験的な要素も含めながら、ある程度ブレーキをかけながら。気をつけながらやっているっていうところがあります。

福田 それこそそのチケットの価格帯がAIで変わっていくっていうのと、もう1つはそのファンクラブの皆さん、15万人ぐらいのデータをお持ちだと思うんですけど。やろうと思えば、この紐づけを頻繁にやって、さらに売れる確率を高めていこうとすることもできるとは思うんですが。

白川 もちろん、会員様の全部のデータはわかるようにはなっています。また、全部のデータがつながっていますし、CRMの取り組みもやらせていただいていますので、例えば去年鷹の祭典を買っていたりとか、去年年間10回来てたのに、今年まだ一回も来てないとか。2ヶ月前に来たけれども。しばらく来ていなければ、自動的に来場促進メールがオートメーションで送られるとか、そういったようなCRMの取り組みも4年ぐらい前から積極的にやっています。ダイナミックプライシングだけで売れてる訳では全然なくて、このCRMの取り組みをやりだしたというところは非常に効果が大きかったと思っています。これも、そういうタイミングでメールを送れば効果ありそうだねとかと言うのは簡単なんですけど、それを人の手でやると回らないんですよね。ポイントは、こういうタイミングにはこういうことをしたい、こういうメッセージを出したい、メールを送りたい、お客様のマイページ画面にこういうのを表示させたい、みたいなものを、いかにオートメーションで自動的に動かすように取り組むということに尽きる。それが、まだ完璧とは言いませんけれども、少しずつでき始めてきているっていうのがこの数年かなと思ってます。

福田 ファンクラブだけじゃなくてチケットとかECのデータベースというのは連動がしっかり出来ていて、データに基づいた売上とかマーケティングの判断があり、ある程度、自動的なオファーを出すような。

白川 もともとチケットはチケットで通販は通販で実は同じ人なのに、IDが別だったりとか、データが繋がってなかったので、全部ホークスに関わる物を一元管理しましょうと。結構なお金しましたけど、そこでプラットフォームは全部整備してやりました。非常に効果ありましたので、そこにかかったコストはもう回収できていると評価しています。

福田 ありがとうございます。これは今のチケットの話だったんですが、フロアから「鷹の祭典期間中で、視聴率や放映権料に変化はあるのでしょうか?」というご質問ですが、いかがでしょうか?

白川 鷹の祭典だから著しく伸びるっていうのが残念ながらそこまでないと思っています。やっぱりその時のチーム状況、その日の試合の状況。昨日みたいな試合だと、まだ視聴率までチェックできてないですけど、多分悪いと思います。放映権料も、鷹の祭典だから福岡だけじゃなくて九州ネットとかですね、そういうような獲得はできていますので、そういうようなことができた部分は、放映権料が上がるっていうのは当然あるかなと。まあ、地上波の各テレビ局さんについても、鷹の祭典で盛り上がっている光景というのはやっぱり撮りたい傾向にはあると思いますので。

西崎 別途質問を頂いているんですけど、「鷹の祭典のこれまでの成功と失敗例についてお聞かせください」という質問はいかがでしょうか?

白川 今お話させていただいたことがほぼ成功例になっているんですけども、まあ失敗例と言われるかどうか分かんないですけど、基本的に勝率がいいわけですよ。鷹の祭典の時って。その時はいいんですけど。何年か前に勝率5割だった年があって、4勝4敗とか。そうするとなんか縁起悪いから着たくないやめとこうみたいな。この色は今後避けようとか。そういうのが現場としては結構つらいですね。ですので、今年もちょっとヒヤヒヤしながら、チームの勝率を見てるんですけれども。選手たちも勝負師なので縁起は担ぎますし、ファンの皆さんもそういうのは結構敏感に反応されたりはしますので。

西崎 「球団価値の向上ということは、祭典だけをどのように採点するのでしょうか?祭典は球団経営の指標にどういう影響を及ぼすんでしょうか」というご質問ですけど。

白川 ごめんなさい。ご質問の意図が理解できてないかもしれませんけれども、こういったものすごく人気のイベントを作り上げることによって、いろんな側面で価値が上がっていくので、そのチケットにしろグッズにしろ。球団としての価値が上がっていく要素もたくさんあると思いますので、結果的にそのサイクルで収益の改善に繋がるっていうところは確実にあると思っています。なので「来年鷹の祭典やりません」ってもしやったら、ホークスの収益は数億円下がるのは間違いないんじゃないかなと思います。

福田 このイベントをフックにして資金を創出していくっていう観点で今日お話をいただいたんですけれども、もう1個、大きいホークスの経営を見た時に、やっぱりドームを買い戻したっていうのはすごく大きいニュースだったと思うんですね。ファイナンスの面から見てもかなり高キャッシュフローが良くなったんじゃないかなというふうに思うんですが、白川さんはどちらかというと、その資金創出マーケティングであるとか、お金を独自に稼いでいくっていうお仕事をされていると思うんですけど、ドームを買収したことによって、マーケティング面であるとか、営業面がこう良くなったよ、変わったよっていうそういった影響って出たんでしょうか?

白川 買収したから急にマーケティングが変わるってことはないと思っていますけれども、やっぱり自分のものになりますので、先ほどいろんなシートだったり、大規模改修だったりというのも、自分のものだからスピーディーに決断してできるので、そういった面は間違いなくあるかなというふうに思います。あとは、毎年の返済が少し減ったというのは、間違いなくメリットとしてあると思うんですけども、事業側のメリットとしては、自分のものだからこそスピーディーにジャッジして投資ができるっていうところはあるかなと思います。

福田 今回の改修みたいなトイレだとかまたビジョンを変えるってのもやっぱり自分のものになったからこそっていうところはあると言うところでしょうか。

白川 できないわけではなかったのですが、やっぱり今まで時間がかかったんですよね。お伺いを立てて承認をもらってからやるっていうようなことと、その理由の説明とかで、交渉が半年間ぐらい続いてたりとか。そういったようなのがなくなりましたね。スピード感が増した。
福田 鷹の祭典にまたちょっと話が戻ってしまうんですけども、「毎年やってることでマンネリ化してしまうっていうところ、心配が出てくると思うんですけど、これをどう防ぐのか」という質問を頂いております。

白川 おっしゃるとおり。そこのところは永遠の課題でして、鷹の祭典に限らず、会社の風土としても、「去年成功しました。だから去年と同じようなことをやります」って全く同じことしたら、絶対に去年よりも満足度が下がるので。やっぱり去年の成功した事例というのはうまくそれを理解して、それをよりさらに良くするようにいかに進化させるか。新しい要素、何をくわえて如何に追加するかっていうところがやっぱりポイントで、会社のマインドとして、そういうところはあって、数字だけの話だけじゃなくて。「今年新しいことは何するの?去年と違うところは何?」みたいなところは、毎年悩んでる中で、チャレンジとして必ず取り入れているところではございます。そういう意味で言うと今年は、ランタンの取り組みとかをたくさん入れていたりとかですね。ランタンを使って光の演出、装飾みたいなものをたくさんやってたりっていうのは特徴かなと思います。

福田 毎年何か新しいものをということですね。

白川 マンネリは必ずあるので。

福田 最後ですが、「プロスポーツチームとして、日本においては、売上ナンバー1の地位は不動の存在になりましたが、ここから更に売り上げを伸ばして、ヤンキースの700億円超、レアルマドリードの1000億円超に追いつき、追い越し、世界一になるために、どんなことをお考えでしょうか。」伸びしろは、ネットを含む放送ということになると思いますが、チケット、グッズ、飲食、スポンサーなども含めて、どうでしょ?

白川 よくこういうような事業は箱物産業とか言いますけども、PayPayドーム。先ほど来場者300万人というお話もしましたけれども,試合数は決まっている。現在の収容率は93%ぐらいなんですよね。だから伸びしろの人の数だけで行くと7%ぐらいしかないビジネスになってしまいます。もちろん単価アップっていうところもあるのですが、そこも同時にやりながら満足度を高めることと、同時に球場外の収益ですね。だから、プロ野球の70試合の試合興行だけでの収益ではない部分。それはビジターの試合かもしれないですし、ドームを使って野球以外のイベントかもしれないですし、「E・ZO FUKUOKA」というエンターテイメント施設ビルもホークスが建てたんですけれども。こういうような取り組みとか、野球以外の新規ビジネスを増やすこと。もう1つは、やっぱり福岡のファン、九州の方に支えられるというのはベースにあるんですけれども。日本全国、そして将来的にはやっぱり世界にファンがいるような形を作っていかないと。700億円という数値はやっぱり難しい部分があると思いますので、その2点かなというふうに思います。

福田 ありがとうございます。本来ならば、皆さんが福岡にいらっしゃって、白川さんのお話を伺った後に鷹の祭典を見せてもらって、「E・ZO」なんかを体験できれば、よく理解できたと思うんですけれども、それが残念でした。お詫び申し上げます。

本稿は、2021年7月10日(土)に開催された、第30回日本スポーツ産業学会大会の同名シンポジウムの内容をまとめたものである。

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