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スポーツビジネスジャパン2019 together with スタジアム&アリーナ2019《開催レポート》

満員御礼の中、行われたウェルカムスピーチの様子

2019年11月19~20日、さいたまスーパーアリーナを会場として「スポーツビジネスジャパン2019 together with スタジアム&アリーナ2019」(主催:日本スポーツ産業学会、株式会社コングレ、株式会社スペースメディアジャパン)が開催された。スポーツビジネスに特化した専門展示会&コンファレンスだ。2016年から形を変えながら本年で4回目、2年ぶりの首都圏開催となる今回は、充実したコンファレンス・展示会に加え、ICT技術の実証の場として、顔認証システムによる入退場管理やSDGs など新たな取り組みも実施。スポーツビジネスに携わる61企業・団体が最新の機器・サービスを展示し、29のコンファレンスには各界の第一人者約90名の登壇者を迎え、2日間で4,064名の来場となった。

ウェルカムスピーチには
鈴木大地スポーツ庁長官を迎え華々しく開幕

初日となる19日朝には、ウェルカムスピーチを開催。日本トップリーグ連携機構の川淵三郎会長やスポーツ庁の鈴木大地長官、埼玉県の大野元裕知事、日本スポーツ産業学会の尾山基会長が登壇した。
尾山基会長は、主催者として挨拶し、世界の潮流として “ゼロエミッション”や“SDGs”といった環境への配慮、地球の健康への注目が高まっていることを受け「健全な地球とともにスポーツにどのように取り組んでいくのか、本イベントでは考え方も提案していく場にしていきたい」と語った。
鈴木大地長官はスポーツ庁が掲げる3つの柱①スタジアム・アリーナ改革、②スポーツ団体の経営力強化、③スポーツと他産業との融合について触れ、スポーツ施設の持つ役割の重要性、スポーツ界とビジネス界の交流の深化や、経済界・学術界の持っている力との融合で、スポーツの魅力をさらに高めていく必要性を述べた。
埼玉県の大野知事は、日本のスポーツ産業の市場規模は5.5兆円でアメリカの10分の1であり、2020年を契機として2025年までに市場規模を3倍にする目標を立てていることから、「スポーツが作る活力ある埼玉」の実現に向け、埼玉県が全国に先駆けて取り組むスポーツ分野におけるオープンイノベーションや「イノベーションリーダーズ育成プログラム」をさらに進めると語った。
川淵会長は、かつてのハード(施設)を作ったらそのまま、という考えから、ハードを作ったら次にソフトを考え、そして、ランニングコストを加味しても収益が上がるような施設を作るべき、と意識が変化していることを指摘。来場者についても、「お金をもっているシニア層が来れば、孫も来る。シニア層を呼び込むソフトを考えるべきだ」と持論を展開した。 スポーツビジネスのトレンドや世界の潮流を紐解くコンファレンスでは熱い議論が交わされた 本年は、国内外から第一線で活躍するプロフェッショナル約90名を招き、29セッションが開催され、幅広いテーマで様々なディスカッションが繰り広げられた。特別講演の「日本のラグビーを変える!~新しいプロリーグとは~」では、日本ラグビーフットボール協会副会長の清宮克幸氏、Jリーグ・Bリーグの創設に尽力した川淵三郎氏、その右腕としてBリーグの制度設計を担い、現在はラグビーフットボール協会理事も務める境田正樹氏、そして元ラグビー日本代表主将であり、現在は解説などで各種メディアでも活躍する廣瀬俊朗氏が一堂に会し、大いに会場を沸かせた。
史上初のアジア開催となったワールドカップ、そして日本代表の活躍も記憶に新しい日本ラグビー界。清宮氏は「これまでのトップリーグは企業スポーツの壁があり、放映権やスポンサーがなかった。稼ぐ手段がない」と指摘。川淵氏は「(プロ化は)ホームスタジアムとホームタウンが一番重要」と語り、地域で応援する態勢の構築の必要性を訴えた。本セッションは多くのメディアにも取り上げられ、注目の高さがうかがわれた。

ラグビーの新しいプロリーグの構想が語られた

メルカリ、ジャパネットHDなどに代表される異業種企業のスポーツへの参入の動き、新たな経営人材のチーム・クラブ経営の手法も注目のテーマとなった。11月19日行われた「スポーツ×オープンイノベーションの可能性」では、スポーツ庁参事官(民間スポーツ担当)の川合現氏、メルカリ取締役会長であり鹿島アントラーズの代表取締役を務める小泉文明氏といった官民のキープレーヤーに、欧州を拠点とするTEAMマーケティングの岡部恭英氏が加わり、国内外のオープンイノベーションの取り組みやスポーツと周辺産業の新事業創出について議論が交わされた。
2日目となる20日(水)には、「若手経営者からみたプロクラブ経営の魅力」と題したセッションでは、ジャパネットホールディングス代表取締役社長 兼 CEOでV・ファーレン長崎の取締役を務める髙田旭人氏と、アトム代表取締役社長・富山グラウジーズ取締役の青井茂氏が登壇。先代からの事業承継後、プロスポーツに参画することとなった両者が、地域との共生、地方創生、そして本業である中核事業との両立などについて語り、多くの参加者が熱心に耳を傾けた。
そのほか、北海道ボールパークプロジェクトや、沖縄での美ら島スタジアム計画などスタジアム・アリーナを核とした街づくりの事例や、海外のトレンド・メソッドの紹介、テクノロジーの活用、スポーツを通した新たなコミュニケーション手法、オープンイノベーションや、地方創生の取り組みなども人気のテーマとなった。

世界のスポーツビジネスの最先端を展示

展示会エリアでは、スポーツ市場の規模拡大に向けて、真に稼げるビジネスへの変革と新たな機会創出を目指し、スポーツビジネス全般に関する最先端の技術とサービスを展示。本年も、ゼネコンや大手設計事務所から多数の出展を賜り、近年設計・建築された日本各地のスタジアム・アリーナの事例がまさに一堂に会した状況であった。建設の進む最新のスタジアム・アリーナの精巧な模型の数々は、なかなか目にすることのできないものであり、ひときわ来場者の目を引いていた。
その他、国内外のスポーツ施設・設備の最新の建築材料や、設備機器に関する多彩な展示(音響・照明・映像・シート・床材・冷暖房設備・芝 他)や、施設マネージメント手法、観戦体験に変革をもたらすような、ICT機器やサービス、エッジコンピューティングなどの技術を活用したサービス、映像送信システムなど最新の技術展示も、スポーツビジネスの新たな可能性や方向性を肌で感じられる機会を提供していた。

各社の取り組む目標のアイコンを掲示し視覚的に展開するブース

顔認証システムによる入退場管理を実証導入

スポーツ産業界の新な潮流、という点でいえば、テクノロジーの活用による、観戦体験の変革や、新たなコミュニケーション手法の創出は外せない。こうした流れを汲み、スポーツビジネスジャパン2019では入退場管理に、パナソニック社の顔認証システムを実証導入した。これは一般参加型の展示会としては国内初の試み※1で、来場者の入場時やコンファレンスの受付などで活用。ICT技術の実証の場として本イベントそのものを提供し、早期実装に貢献するとともに、 ICT活用による運営人員の削減と、正確でスピーディーな認証でイベントクオリティーの向上を目指した。来場者には、スポーツ界で日常的な活用が見込まれる顔認証システムを、いち早く体験いただく貴重な機会となっただろう。

SDGsやデモエリア等、新しい取組でスポーツの可能性を提案

その他、新たな取り組みとして、「スポーツの力でSDGsを加速させよう」を合言葉に、“スポーツ×SDGs”の各種企画を実施。イベント運営自体も環境に配慮した調達等を目指したほか、参加者、参加企業がSDGsに取り組むきっかけを提供すべく、“スポーツ×SDGs”スペシャルコンファレンスを2本開催。スポーツとSDGsを融合し、新規ビジネスモデルを開発する事例を紹介したほか、プロスポーツチームに長期病気療養児を入団させる社会貢献活動に取り組む団体を紹介。スポーツの持つ力を社会問題の解決に活かし、持続可能な社会の実現を目指すヒントを提案した。
展示会場内では、出展者ブースに持続可能な開発目標の17のゴールに向けた出展者の取り組みをアイコンで掲示したほか、会場内にはマイボトルの持参を推奨する無料給水スポットを設置。ペットボトルゴミを削減し、マイクロプラスチック問題の解決に貢献する意図だ。
さいたま市環境局と協働し、市の推進する食品ロスの取り組み「フードドライブ」を会場内で実施したことも興味深い。持続可能な社会の実現に向けてスポーツの力を活用することは、国連でも議論されており、今後この意識が定着すれば、スポーツビジネスにおける新たなステイクホルダーやビジネスモデルの創出、ひいてはビジネスチャンスに繋がるものと考える。開催都市との協力という点では、会場内で開催された、埼玉県の推進する「埼玉県イノベーションリーダーズ育成プログラム(SSS)」とのコラボレーション企画も好事例だ。今後も開催自治体と緊密な関係を保ち、さまざまな切り口で新たな形を提案していきたい。今回の新たな取り組みとしては、バスケットボールの新たな可能性を提案するデモンストレーションエリアも来場者を楽しませた。五輪競技としても注目の3×3、車いすバスケットボールなどのデモンストレーションや、来場者参加型のシュートチャレンジイベントも開催。バスケットボールのエンターテイメントとしての可能性を提案した。
一般社団法人日本トップリーグ連携機構主催の情報交換会(プレゼン会)の開催も出展者にご好評をいただいた新企画であった。日本トップリーグ連携機構の加盟リーグやチーム向けに、スポーツビジネスジャパン2019の出展者が、自社の製品やサービスを紹介し、プレゼンテーション終了後には、相互のコミュニケーションの時間を設けるなど、積極的なマッチングの機会が提供された。

▶さまざまなエキシビジョンが開催されたデモンストレーションエリア

スポーツビジネスの促進を目指すスポーツビジネスジャパン。
2020年はぴあアリーナMMで開催

2日間の展示会・コンファレンス・サイドイベントを通じて、スポーツ産業におけるイノベーション、異業種企業の新規参入、 ICT活用によるスポーツ体験の変革などのトレンドから、スタジアム・アリーナ改革、スポーツを核とした地方創生、人材育成などスポーツに関わる幅広い情報とサービスを広く紹介したスポーツビジネスジャパン2019。今年は、ぴあアリーナMMでの開催が決定している。
ぴあアリーナMMは、「ぴあ株式会社」が運営する1万人規模のアリーナ会場で、横浜みなとみらいエリアに、 2020年4月25日にオープン予定の会場だ。会期は、2020年10月6日(火)・7日(水)の予定。
10月4日(日)に開催予定の日本スポーツ産業学会創設30周年の総会と合わせた記念イベントとして開催される次回は、スポーツビジネスのさらなる活性化のため、多種多様な情報の発信を目指す。(公式WEB:http://www. sportsbusiness.jp/)  スポーツビジネスジャパン2020にもご期待ください。

▶︎※1:2019年10月15日現在㈱コングレ調べ/一般参加型の展示会とは企業主催のプライベート展示会を除く展示会を指す

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