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クレーンが立ち並び漸く工事の始まった国立競技場の視察

夏のオリンピックは世界中でおよそ4 0 億人が見る大イベントである。実際に競技場で観戦する人たちはロンドンやリオデジャネイロで延べ800万人ほどだから、99パーセント以上の人はテレビの画面を通じて競技の模様を見る計算だ。
大会を3年後に控えた東京で2020年オリンピックを中継する世界の放送局の第1回会議が開かれた。参加したのはアメリカのNBCなど放送権契約の終わった約30の放送機関の70名ほど。1日目は会場の視察、2日目は全体会議という日程だ。
中継放送の準備は複雑で多岐に渡るため、どのオリンピックでも遅くとも3年前から準備に取りかかる。それぞれの競技会場では中継車の駐車場所や非常用の発電機・電源の置き場などのスペース確保に始まり、手荷物検査場からの動線や放送席の位置、カメラや電源の大量のケーブルを通す経路、体育館なら会場内の照明の色や明るさ、場内アナウンスのスピーカーの配置に至るまで解決しなければならない事項は山のようにある。
また外国から持ち込まれる中継車が日本の車両法や道路交通法に違反しないか、ワイヤレスマイクの周波数帯が日本の電波法に適合しているか、高価な放送機材には関税の免税措置が適用されるのかなど、日本の法規制に関わる問題も多い。
外国で開催されるオリンピックを見るにはテレビのスイッチを入れれば済むのだが、自国で開催する大会では重大なものから些末なことまで、思いもよらない多くの問題を日本側の様々な関係者が解決しないと世界の人々は東京オリンピックを見ることができないのだ。こうして準備段階で大小の齟齬や軋轢を解決していくことにより開催国の国際標準化が進むのもオリンピックの遺産の一つであろう。 ▶藤原庸介

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