スポーツ産業を測る─㉘ COVID-19のロックダウンが 英国スポーツGDPに与えた影響

スポーツ産業を測る─㉘
COVID-19のロックダウンが英国スポーツGDPに与えた影響
庄子博人│同志社大学スポーツ健康科学部准教授

2020年の英国では、新型コロナウイルス(COVID-19)の拡大を抑制するための対策として、ロックダウン(都市封鎖)が実施されました。このロックダウンは、国内外で感染が広がるのを防ぐために、人々の移動や社会活動を制限する措置でした。これらの措置は、感染拡大を抑制するために緊急に実施され、経済や社会活動、そしてスポーツ活動にも大きな影響を与えたと考えられます。
本稿では、このロックダウンに関する英国の研究を紹介したいと思います。この研究は、シェフィールドハラム大学スポーツ産業リサーチセンターによって、スポーツサテライトアカウント(SSA)のアプローチを用いて、2020年のロックダウン(都市封鎖)が英国のスポーツ産業のGDPにどのような影響をもたらしたかを試算しています。この研究のリサーチクエスチョンとしては、COVID-19によるスポーツGDPの減少は、経済全体のGDPに比較して大きいのか、そして、パンデミックの影響を受けたスポーツ産業は何か、ということに焦点をあてています。
その結果の表を示しました。1列目は産業を示し、2列目には、ロックダウン期間中のスポーツGDP減少割合を示しています。「スポーツクラブ、レジャーセンター」が80%というのは、80%のGDPが失われたということを示しています。100%、つまりGDPが完全に失われた(生まれなかった)産業は、「宿泊—スポーツツーリズム」「食品サービス」「スポーツベッティング」「旅行代理店」であり、これらはプロスポーツ観戦や人々の移動に関連する産業であると考えられます。全体では、ロックダウン期間中に66%のGDPが失われています。
また、3列目に年間スポーツGDPのコロナがなかった場合の予測、4列目に、ロックダウンや移行期間の影響を加味した2020年の年間スポーツGDPの金額、5列目は、年間スポーツGDPのロックダウンによる減少割合を記しています。年間スポーツGDPは、コロナがない場合で39,622m£(当時のレート1£=145円換算で約5兆7451億円)、ロックダウンの影響による2020年は、30,597m£とされ、23%のスポーツGDPが年間で失われたことを明らかにしています。年間9,025m£、日本円で約1兆3千億円が失われたことになります。
2020年のスポーツGDPの減少率は23%ですが、英国経済全体の減少率は10%でした。この論文では、スポーツ産業へのマイナスの影響は、経済全体への影響よりも大きかったと結論づけています。考察として、GDPの減少は民間企業の利益率を圧迫する可能性が極めて高いため、パンデミック状況化でのスポーツ産業の持続可能性の問題を指摘しています。

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