スポーツ庁ビジネス便り

スポーツ庁ビジネス便り
由良英雄│文部科学省スポーツ庁参事官

未来投資戦略2017が閣議決定されました。スポーツを核とした地域活性化を図る「スポーツ未来開拓プラン」を推進し、スポーツの価値の最大化を具体的に展開します。
政府全体で取り組む新たな戦略や国会での立法の進展など、最新の政策の話題をご報告します。

スポーツ団体の女性役員を30%へ

女性のスポーツ実施率の向上と女性の活躍拡大のため、5月2 9日、決起集会としてスポーツ分野の統括団体や競技別全国団体が一同に会する会合を開催し、12 0 名の参加者とともに、今後の取組方針を確認しました。
スポーツ団体の役員については、理事の中での女性の比率が現状は9.4%にとどまっていますが、男女共同参画基本計画で社会のあらゆる分野において2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30% 程度になるよう要請されていることから、スポーツ界が一致協力してこの目標のもとに工程表を作成して取組を進めることとしました。
女性のスポーツ実施率向上のため、イギリスでロンドンオリンピック開催を契機に行われた「This Girl Can」を参考に、国民及び幅広い関係者に対してメッセージを発信する「女性スポーツキャンペーン」を行うことも検討しています。女性がスポーツを実施しにくい物理的、心理的要因をしっかり把握して阻害要因を取り除く取組を推進します。

ビジネス世代のスポーツ実施を後押し

働く世代はスポーツをする時間を確保しづらいこともあり、スポーツ実施率は平均の40%よりもかなり低めです。働き方改革が強く求められる中、スポーツの側からも時間の使い方を変える取組を加速します。
5月には、プレミアム・スポーツ・フライデーを開始し、週末の時間の使い方のバリエーションを広げていくことになりました。鈴木大地長官は大手町で職場対抗の駅伝大会に出場しました。8月には、社員にスポーツの取組を推奨している企業を顕彰する全国スポーツ推進企業認定制度(仮称)を開始します。
今後さらに、ビジネス世代が日常生活の中で時間をうまく活用してスポーツや運動に取り組める環境作りのための取組を展開します。

トップアスリートのキャリアを支援する仕組みの構築

トップアスリートが競技に専念できる環境の整備と引退後のキャリア構築のため、アスリートの引退前後における学び直しや就業のマッチングを資金面から支援する仕組みを検討しています。
アスリートが引退後の人生を切り開いていくためには、スポーツを通して得た人間力に加えて職業人としての専門性を高めていく必要があります。このため、社会人向けの大学院での学び直しや専門性を高めるための転職を目指す元アスリートに対して、機会の提供とともに資金面での支援を行いたいと考えています。アスリートを支援したいという企業からの協賛金や個人からの篤志、本人の収入の一部を引退後のために蓄えておくことなども含めて仕組みを検討中です。

スポーツ庁では、スポーツ振興センターや大学体育連合を始めとする関係団体とともにアスリートキャリアを支援するコンソーシアムを立 ち上げた。http://www.jpnsport.go.jp/Portals/0/sport-career/ consortium.html

ドーピング防止推進法

昨年は、リオオリンピックに向けてドーピングの問題が大きく取り上げられ、2020東京大会に向けてより厳しくドーピング違反を取り締まることが求められることになりました。東京大会に参加する選手の検査体制を確保するためには、施設、検査官、インテリジェンス情報など広範囲にわたる体制を速やかに準備していく必要があります。
このため、前文部科学大臣の馳浩衆議院議員が大臣時代からの検討を具体化したアンチドーピング法が議員立法として法案化されたところです。
今後、この法制に基づいてスポーツ庁を中心に政府予算を確保するとともに関係団体と連携して検査官の育成などの取組を加速します。

地方創生交付金

内閣官房まち・ひと・しごと創生本部では、地方創生の新展開に向けたまち・ひと・しごと創生基本方針2017 を策定しました。スポーツは、地方創生を推進するいわゆるローカル・アベノミクスの重要な柱と位置付けられました。スポーツを核にエリア一体的な投資を促してまちづくりを推進し、地域のしごとの高度化を図ります。地方創生交付金は、新たに先駆的事業、横展開促進 型事業、隘路打開事業などにはより大きな金額で地方自治体の取組を加速することになりました。スポーツ分野の取組も、優良事例としてこうした支援を受けた取組が拡大していくことが期待されています。

部活動指導員に民間参入

4月1日に部活動指導員が文部科学省令に明確に規定されたことを受けて、学校と地域の企業・スポーツ団体等が協働して部活動指導員の活動を支える新たな体制の構築を進めます。この一環として、現場の実態に即した部活動の改善を図るため、運動部活動の在り方に関する総合的なガイドラインを作成する検討会議の第一回会合を5月29日に開催しました。

アジアをターゲットとした国際戦略

中韓台湾や東南アジアの国々においても、サッカー、水泳、卓球、柔道などスポーツ熱は大いに高まっています。日本独自のスポーツコンテンツである学校体育・部活動、運動会、スポーツ少年団や町道場などの充実が日本のスポーツの振興を支えてきたように、今後は、日本の指導者や指導方法の海外展開を進めることにより、官民連携により日本型のスポーツ文化がアジアをリードしていくことができると考えています。
また、スポーツについてはライブ中継こそがコンテンツとして最も強みを持つことを活かして、日本の野球、サッカーを始めとするプロスポーツリーグの放映権ビジネスや観戦インバウンドのニーズ拡大を図ります。
スポーツ庁がこれまで展開してきたスポーツ・フォー・トゥモロー事業や、経済産業省・JETROが進めているサービス業の海外展開促進事業とも連携して戦略を立案推進します。

未来投資戦略2017
スタジアム・アリーナ20カ所の整備を目標

6月9日に、未来投資戦略2 017が閣議決定されました。
今年の戦略の策定過程では、3月2 4日の未来投資会議において佐原光一豊橋市長と大河正明Bリーグチェアマンが安倍晋三内閣総理大臣出席のもとアリーナ新設構想についてプレゼンテーションを行い、松野博一文部科学大臣が、都市公園法改正(国土交通省)、地域未来投資法制定(経済産業省)、部活動指導員の制度化(文部科学省)などを一体的に進める「スポーツ未来開拓プラン」を提唱しました。
これを受けて、未来投資戦略2017では、2025年までに20カ所のスタジアム・アリーナを整備することを具体的な数値目標として掲げました。

スタジアム・アリーナの資金調達手法を明示

スポーツ庁が6月15日に公表したガイドブックの中心をなすのは、「スタジアム・アリーナ整備に係る資金調達手法・民間資金活用プロセスガイド」です。また、顧客価値の最大化を後押しするIT技術の活用や複合施設化の取組事例集などを幅広くまとめました。
具体的な先進事例の形成のため、地域において官民
連携協議会を編成して構想の具体化を図る取組を支援しています。昨年度に具体的な構想策定に取り組んだ豊橋市、今治市などに加え、今年度も複数のプロジェクトを支援します。

 

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