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スポーツを活用した新しい取り組み 「スポーツふるさと納税」の可能性を探る──後編

スポーツを活用した新しい取り組み
「スポーツふるさと納税」の可能性を探る──後編
赤嶺 健│ Sports Local Act 株式会社 代表取締役

前編では、スポーツを活用したふるさと納税の取り組みとして、プロスポーツチームや人気のマラソン・トライアスロン大会などを活用することに対する地域の考え方について見ていきました。また、市場としては、全体の18.0%が「スポーツふるさと納税」の返礼品を導入しており、その競技の内訳はゴルフの利用券が55.8%と最も多く、次いでマラソン大会の出場権(13.8%)、Jリーグチームの観戦チケットや応援グッズ(9.0%)という順でした。
そして、それらの競技は3つに分類することができ、既存の施設を利用するゴルフやスキー場の利用券の「利用型」、マラソンやトライアスロン大会への参加権の「参加型」、Jリーグチームなどの応援グッズや観戦チケットなどの「チーム応援型」の三つに分類されることがわかりました。その中ではふるさと納税が多く集まって成功している例もあれば、集まっていない例も存在していました。
後編では、その要因がなにかを検証し、今後のスポーツふるさと納税の活用の可能性についてお話させていただきます。

「スポーツふるさと納税」成功要因のデータ分析

「利用型」「参加型」「チーム応援型」の各々の類型別に、以下の7つの指標が寄附金の集まり方(1自治体あたり平均の寄附金額)に影響を及ぼしているかどうかを検証しました。
① 集まったふるさと納税の「使途」。それが直接的に施設や大会やチームに活用されているかどうか。
② 大会や施設の「人気」。
③「募集タイミング」。一般エントリーの前か後か同時かどうか。(参加型のみ)
④都市部からの「距離」。近いか離れているか。
⑤「金額設定」。返礼品を獲得するために必要な寄附金額。 ⑥リアルプロモーションを含む、施設・チーム・大会ホームページなどでの「PR活動」の有無。
⑦「複数人利用」が可能かどうか。(利用型のみ)
これらの指標が、各自治体が集めた寄付金総額に及ぼす影響について分析した結果を左図に示しました。  各類型別に見た、各指標と寄附金額の差異。有意な表だけを示した。

導入の際におさえるべき、「スポーツふるさと納税」成功要因三原則

「利用型」「参加型」「チーム応援型」それぞれの成功要因を以下の通りまとめます。(表)
(1)「利用型」
都市部からの距離や、人気の施設で、複数人利用できる返礼品のメニューがあることが成功要因であるということがわかりました。
(2)「参加型」
使途を大会に活用し、抽選や先着順でも募集期間より早く締め切りになるような人気の大会であることや、募集のタイミングを一般エントリーと同時か前にすることが成功要因であるということがわかりました。
(3)「チーム応援型」
使途をチームに活用し、チームホームページなどでPR活動を行い、複数人利用できる返礼品のメニューがあることが成功要因であるということがわかりました。

「スポーツふるさと納税」の主要な知見

現状のふるさと納税制度では、返礼品と使途は基本的には結びついておらず、寄附者はスポーツにまつわる返礼品を選んでもスポーツ振興とは関係無い使途を選ぶことが可能ですが、スポーツ分野においては特に、返礼品と使途を結びつけることが重要であると考えます。

「スポーツふるさと納税」活用の効果

スポーツチームや大会運営側にとって、ふるさと納税の返礼品の活用によって、新規ファンや出場者を獲得できる可能性があります。また、使い道をチームの活動や、大会の運営などに活用することができれば、より地域での活動や大会を魅力的にできる可能性があります。
自治体にとっては、歳入増加や、スポーツの体験型返礼品は交流人口増加につながる効果が期待できます。また、使い道をプロスポーツチームや大会を通して地域活性化の事業を行うことで、スポーツコンテンツを活用したPR効果や、スポーツを通して地域を応援できる仕組みができ、「関係人口」創出の可能性があります。  寄附者にとっては、「スポーツふるさと納税」で特別な体験ができ、その地域が自身の寄附(スポーツふるさと納税)によって、少しずつでも変わっていく姿を継続的にみることができれば、地域のファンになる可能性も高まります。また、スポーツを通した地域の事業は、通常のふるさと納税に比べ共感を得やすく、応援しやすい仕組みであると言えます。

「スポーツふるさと納税」のスポーツ振興による地域活性化の課題と可能性

スポーツの体験型返礼品はその土地に来てもらうきっかけになり、使途を大会などに活用することでスポーツコンテンツがより魅力的なものになる循環が生まれ、スポーツ振興による地域活性化が可能になると考えます。  しかし今現在、スポーツコンテンツは地域に存在するが、スポーツと地域が結びついていない状態が、多くの地域で存在しているように感じます。スポーツと地域が結びつき、「スポーツふるさと納税」を活用することで、様々な相乗効果が期待できるのではないかと考えます。  本調査の例を応用して導入する自治体が増えることで「スポーツふるさと納税」の拡大を期待します。

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