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TOKYO 2020大会を契機に変化を続ける東京湾岸エリア(青海・有明・築地) -スタジアム・アリーナ視察研究会レポート-

TOKYO 2020大会を契機に変化を続ける東京湾岸エリア(青海・有明・築地)
-スタジアム・アリーナ視察研究会レポート-
スタジアム・アリーナ視察研究会/摂南大学講師 林悠太

日本スポーツ産業学会は、2024年から新たな取り組みとして「スタジアム・アリーナ視察研究会」を開始した。本研究会は、国内外のスタジアム・アリーナの視察に基づいて、学術的知見の獲得と実践的提言を目的とするもので、第四弾として2025年10月に開業した「TOYOTA ARENA TOKYO」をはじめとする東京湾岸エリアに集積する複数のスポーツ施設を視察した。本稿では、2026年3月10日(火)〜12日(木)に32名の参加者により実施された模様を報告する。

多様なスポーツ施設が創出する新たな都市の価値

2000年代初頭、東京臨海副都心はショッピングモールやアミューズメント施設に象徴されるように、東京を代表する観光地として発展してきました。その後、2013年に2020年夏季オリンピックの開催都市が東京に決定したことを契機に、競技施設の整備や周辺地域の開発、インフラ整備など東京湾岸エリアは大きな変貌を遂げることとなります。
有明では大会レガシーを活用したアーバンスポーツ施設の開設、お台場ではパラスポーツ拠点が整備され、青海では多目的・複合型のアリーナが開業しました。また、築地では大規模集客施設(スタジアム)を含む複合型都市開発が現在進行しています。
これらの施設は、スポーツ施設としての機能のほかに、地域住民の交流拠点や経済活動の場というような多面的な機能を有していることが特徴です。今回の視察では、東京湾岸エリアの代表的なスポーツ施設を訪問し、それぞれの施設の理念・役割・今後の展望等について理解を深めました。今回視察したスポーツ施設の概要を次に示します(表1)。

表1 今回視察したスポーツ施設一覧

選択肢のある専用アリーナ

日本財団パラアリーナは、パラアスリートの練習環境整備・パラスポーツの普及を目的に日本財団パラスポーツサポートセンターが運営する専用アリーナです。
当初は東京2020大会後に取り壊される予定でしたが、パラアスリートの練習拠点の不足や競技団体からの継続利用の要望を受け、現在も運営が続けられています。 視察では、日本財団パラスポーツサポートセンターの信氏建人氏、豊田俊太氏、影山範子氏に施設をご案内いただき、概要や特徴についてご説明いただきました。
また、後半には参加者とのディスカッションの時間も設けられ、施設運営やパラスポーツの現状などについて活発な意見交換を行いました。 施設案内では、パラアスリートの視点に立ったアクセシビリティとユニバーサルデザインを重視した設計についてご説明いただきました。競技者用の車いすが通れる通路やドア幅の確保、ダイヤルキーと視覚に障害のあるアスリートのための物理キーを併用したロッカーなど、多様な利用者のニーズに配慮した工夫が随所に見られました(写真1)。これらの設備からは、アクセシビリティを単なるバリアフリーではなく、利用者が自身に合った方法を選択できる環境づくりとして捉える施設の考え方がうかがえました。

写真1:足元が空いているロッカー
写真提供:(公財)日本財団パラスポーツサポートセンター

本アリーナでは、ボッチャ、車いすバスケットボール、車いすラグビーなどを中心に利用されているそうです。利用については、競技団体に加盟する団体を優先的に受け入れており、豊田氏によると稼働日率100%に達しているとのことです。この高い利用率はパラスポーツの練習環境に対する需要の大きさを示しており、日本財団パラアリーナは競技力向上を支える重要な拠点であると同時に、今後の環境整備の重要性を示す施設でもありました。

アーバンスポーツと日常が同居する都市空間

livedoor URBAN SPORTS PARKは東京2020大会にて、BMXやスケートボードが実施されました。当初は仮設競技会場として建設され、大会後には撤去される予定でした。
しかし、日本人選手の活躍や地元住民から存続を求める声があがったことをうけ、東京都と東京建物株式会社を代表企業とした民間事業者がスポーツパークとして整備し(PFI事業)、2024年に開業しました。 今回の視察では、主に施設運営面を担っているTSP太陽株式会社の鈴木辰弥氏に現地をご案内いただき、施設の概要や運営の特徴、今後の展望などについて詳しくご説明いただきました。livedoor URBAN SPORTS PARKはスケートボードパーク、3×3バスケットボールコート、スポーツクライミングのボルダー棟などのアーバンスポーツ施設に加え、カフェやドッグサロン、BBQエリアなどの一般向け施設を有する複合型のスポーツレジャー施設です。なかでも特に印象的だったのは、東京2020大会で使用された競技施設をそのまま移設し、活用したスケートボードパークです。くぼ地状のコース「パーク」は高低差や傾斜に富み、間近で見ると競技レベルの高さを実感できる迫力のある施設でした(写真2)。鈴木氏によるとその本格的なコースを利用するために海外から訪問する旅行客も少なくないそうです。

起伏に富むパーク

 本施設は競技者だけでなく地域住民が日常的に利用できる公園としての機能も充実しています。鈴木氏によると、週末は犬の散歩やピックルボールを楽しむ人々が多く訪れるとのことです。都会にいながら自然を身近に感じ、スポーツを楽しめることも本施設の魅力の一つとなっています。また、運営面では、PFI事業者として東京都との連携を密に図りながら、地域・関係者との調整を進め、施設の円滑な運営に取り組んでいることがうかがえました。

観戦から「集う」場所へ

TOYOTA ARENA TOKYOはパレットタウンの跡地にトヨタグループが民設民営で整備した多目的アリーナで、2025年に開業しました。本アリーナは、Bリーグ・アルバルク東京のホームアリーナとしての利用に加え、音楽ライブや企業イベントなど、多様な用途で活用されています。
また、アリーナ施設として国内初となる国際的な環境性能認証制度「LEED GOLD認証」を取得するなど、持続可能性を重視した次世代型アリーナとして注目されています。
アリーナツアーでは、トヨタアルバルク東京株式会社の緑川真理氏、貴船創一氏に館内各所をご案内いただき、施設の特徴や運営面についてご説明いただきました。本アリーナの特徴の一つである充実したホスピタリティエリアとして、JAPAN AIRLINES テラススイートがあります。テラスと個室スペースが一体となった設計で、全6室が設けられており、それぞれ異なるテーマに基づいた特徴的な内装となっています。従来のVIPルームとは異なる特別な体験価値を提供するとともに、テラススイートをコートに近い2階に配置(コートまでの距離約18m)することで、快適性と臨場感を両立した観戦体験を創出しています(写真3)。また、ホスピタリティエリアには4種類のラウンジも設けられており、充実したホスピタリティ機能はTOYOTA ARENA TOKYOの付加価値を高める重要な要素となっています。 アリーナ内の観戦環境にも工夫が凝らされています。なかでも、センターハングビジョンは高さ約7.6m、幅約11.5m、奥行き約6mの大型ビジョンであり、座席位置にかかわらず高い視認性を確保できる形状となっています。このような設備は、会場全体の一体感の創出にも寄与しています。
実際に、視察当日の夜には参加者でBリーグ「アルバルク東京 vs アルティーリ千葉」の試合を観戦し、大型ビジョンを活用した演出や会場全体の盛り上がりを通じて、その効果を体感することができました(写真4)。
こうした、人々が集いスポーツを通じた多様な体験を生み出す施設の価値を、より大規模な都市開発に生かす取り組みも進められています。 次に、その一例として築地地区まちづくり事業の建設予定地を視察しました。本事業は、旧築地市場跡地を活用し、多機能型大規模集客施設(スタジアム)をはじめ、商業複合施設、MICE、ホテル、レジデンスなどを一体的に整備する大規模なまちづくり事業です。視察では、築地まちづくりの代表企業である三井不動産株式会社に本事業の概要についてご説明いただくとともに、参加者とのディスカッションの機会を設けていただきました。これから本格化するまちづくりのなかで、スポーツをはじめとする多様な機能が、都市にどのような新しい価値を生み出していくのか、今後の展開が期待されます。

ホスピタリティの再定義

2日目の午前中には参加メンバーによる特別勉強会を台場フロンティアビルの貸会議室にて開催しました。「スタジアム・アリーナの設計と収益−ホスピタリティエリアに注視して—」をテーマに建築、プロスポーツ、研究、金融など、各分野の専門家を交えて活発な議論が行われました。 勉強会の前半は上林功教授(日本女子体育大学)からスポーツ施設のホスピタリティについてご講義いただきました。古代ローマ時代に遡り、階級によって観戦位置が一律に決められていた時代から、現在ではスイートルームやラウンジ、ボックス席など、観戦者の多様なニーズに応じて観戦価値が細分化されていることが紹介されました。

後半では菅文彦教授(大阪成蹊大学)からホスピタリティエリアのマネタイズについて、スタジアム建設プロジェクトの事例をもとにご講義いただきました。
参加者の方からはホスピタリティエリアを特定の階層のための空間として捉えるのではなく、観戦者がさまざまな場所からスポーツを楽しめる環境として考えることが重要であるとの意見やリーグや競技の特性だけでなく、地域の人々にとって何が心地よいのかという視点から、ホスピタリティのあり方を考える必要があるとの意見も示されました。 これらの議論を通じて、ホスピタリティエリアは単に高付加価値な観戦席を設けて収益を確保するための空間ではなく、利用者の多様なニーズに応えながら、施設の収益性と地域への価値還元を両立させるための仕組みとして捉える必要があると感じました。施設を「つくること」を目的とするのではなく、周辺の都市機能や地域政策と結びつけることで、スポーツ施設が地域や都市全体にどのような価値を生み出し、地域の課題解決に貢献できるのかを考えることが重要だと感じました。
今回の視察では4つのスポーツ関連施設を訪問し、施設の特徴や運営について貴重なお話を伺う機会を得ました。ご多用のなか視察を快く受け入れていただき、丁寧にご案内・ご説明いただいた関係者の皆様に、心より御礼申し上げます。また、2日間にわたり本視察にご参加いただいた皆様にも、心より感謝申し上げます(写真5)。

センターハングビジョンと参加者の皆様

本視察を通じて得られた知見や気づきを今後の研究に生かすとともに、その成果を社会に発信していくことで、スタジアム・アリーナのさらなる発展に貢献していきたいと考えています。

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