各クラブの良い活動をリーグ全体で共有し見える化する
もともとはパタゴニアで20年ほど働いていて、環境課題と事業をどう両立するかをずっと考えてきました。そういう経験をJリーグでも生かしてほしい、ということで声をかけてもらったんです。最初は「シャレン!」を担当する理事のサポート役でしたが、その後、2023年から執行役員としてサステナビリティ領域を担当するようになりました。その時に、「社会連携」に“PLANET”、つまり地球環境の視点も加えて、「サステナビリティ部」に変えていこうという話をしました。
Jリーグは昔から「地域密着」を掲げていて、地域課題と向き合うこと自体は30年前から変わっていません。ただ、この数年で気候変動の問題が一気に現実的になってきました。猛暑で試合運営や観戦環境にも影響が出ていますし、「このままだとサッカーそのものができなくなるかもしれない」という危機感があります。だから今は、社会活動だけではなく、その土台になる地球環境にも向き合わなければいけなくなりました。そこが、「シャレン!」や気候アクションを強化している大きな背景にあります。
ただ、理念そのものは変わっていないと思っています。地域と一緒に、経済的にも社会的にも環境的にも成長していくことがJリーグの役割だと思っています。以前は、各クラブがそれぞれ良い活動をしていても、点で見えていました。それを今は、「障がい者支援」「高齢者支援」「環境対策」などテーマごとに整理して、リーグ全体で共有し、見える化する段階に入ってきています。SPL(Sport Positive Leagues)もその一つで、2040年カーボンニュートラルに向けて、どこを目指して何をすればいいのかが分かりやすくなりました。気候変動対策は、一人だけ頑張ればいい話ではなく、みんなで進めないと意味がありません。だから、クラブ同士で知見を共有していくことがすごく大事だと思っています。
10年後のJクラブは、「地域社会のハブ」のような存在になっていてほしいと思っています。行政、企業、金融機関、市民など、いろいろな人たちをつなぐ存在です。クラブが間に入ることで、「それなら一緒にやってみよう」と動き出せることがあります。サッカーが強いことももちろん大事ですが、「この街にはこのクラブが必要だよね」と思われ続けることが、長い目で見ると一番大きな価値なのではないかと思います。
スポーツ産業学会には、スポーツの社会的価値をもっと可視化してほしいと思っています。経済効果だけではなく、人が元気になるとか、地域とのつながりが生まれるとか、数字にしづらい価値がスポーツにはたくさんあります。スポーツは人生に彩りを与えるものだと思うので、その価値を学術的に後押ししてもらえると、とても心強いです。


