スポーツ産業学研究第31巻第1号

【原著論文】


「集団凝集性及び集団効力感に影響を与える個人要因-大学サッカー部員のライフスキルと組織市民行動に着目した因果モデルによる検討-」
持田 和明(神戸大学大学教育推進機構) 他2名共著
JSTAGE


「スポーツ指導スキルシェアリングの潜在的利用者数の推計およびその特徴」
藤岡 成美(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科) 他3名共著
JSTAGE


「大学が運営する地域スポーツ教室の楽しさの検討-大学生の「ささえるスポーツ」の視点に着目して-」
元嶋 菜美香(長崎国際大学人間社会学部) 他4名共著
JSTAGE


【研究ノート】


「総合型地域スポーツクラブスタッフ研修における学びの検討 : 組織課題研修と自己課題研修の比較」
西原 康行(新潟医療福祉大学)
JSTAGE


「ランナーによるランニング関与の自己評価とイベント愛着の関連性-市民マラソンの参加者に着目して-」
岡安 功(広島経済大学)
JSTAGE


「高校時代の運動部経験によるスポーツに対するイメージの違い : 大学新入生を対象とする2つの調査より」
大橋 恵(東京未来大学) 他2名共著
JSTAGE


「フルマラソン完走経験者における日本陸連公認競技会の価値に対する認識」
畔蒜 洋平(日本陸上競技連盟) 他6名共著
JSTAGE


「エリートアスリートによる社会貢献活動の類型化 : 新聞記事の内容分析」
小木曽 湧(早稲田大学大学院スポーツ科学研究科) 他2名共
JSTAGE


「日本初の英語による国際的なスポーツマネジメント大学院プログラムの学生の満足度に影響する要因とキャリア形成における必要性に関する研究-つくば国際スポーツアカデミー (TIAS) の修了生調査を事例として-」
塚本 拓也(筑波大学) 他1共著
JSTAGE

 


【レイサマリー】


大学が運営する地域スポーツ教室の楽しさの検討
-大学生の「ささえるスポーツ」の視点に着目して-
九州産業大学 元嶋菜美香

子どもたちのスポーツ実施率の二極化の背景には、少子化にともなうスポーツ人口の減少、指導者不足、スポーツができる環境の減少などの子どもを取り巻く現代的課題があるといわれています。これらの課題に対応すべく、日本スポーツ協会は、スポーツ少年団、総合型地域スポーツクラブ、中学校運動部活動の三者がそれぞれの強みを生かした新たな地域スポーツ体制を検討しています。しかし、地域スポーツにおける課題として、世代交代および指導者確保・育成の必要性が挙げられ、若い世代の指導者不足が年々深刻化しています。

スポーツの継続には「楽しさ」が重要ですが、「ささえるスポーツ」であるスポーツ指導や運営といったボランティア活動を継続する上でも、「楽しさ」は重要な要因であると考えられています。例えば、スポーツボランティアを行う理由として、「スポーツの楽しさを伝えたい」「指導活動を通じて自分自身がスポーツを楽しみたい」といった動機が挙げられています。しかし、日本において「ささえるスポーツ」の普及・研究が遅れたこと、学校部活動などに比べ地域スポーツの振興・発展が遅れたことなどから、地域スポーツにおける「ささえるスポーツ」の楽しさについて調査した研究はほとんどみられません。

本研究は、指導をおこなった大学生の視点に着目し、大学で開催された子どもを対象とした地域スポーツ教室の「ささえるスポーツ」としての楽しさを明らかにすることを目的としました。身近な地域で指導者・運営者としての参画が期待される大学生が、地域スポーツのボランティア活動を通してどのような楽しさを実感しているかを明らかにすることで、指導者確保・育成の際に有益な知見が得られると考えました。
この研究では、大学が運営する地域スポーツ教室の指導をおこなった大学生に対して、各教室実施後に教室の楽しさについて自由記述で回答を求めました。得られた記述に対して、KJ法を用いたカテゴリー分析、KH Coderを用いた語の抽出および共起ネットワーク分析を行いました。

KJ法とは、記述を内容ごとに分類し、カテゴリーを作りラベリングをするという研究手法です。記述を分類した結果、対象とした大学が運営する地域スポーツ教室の「ささえるスポーツ」としての楽しさは、【プログラム】の実施により【かかわり】が生まれ、【リアクション】が起こることであると推測されました。【プログラム】カテゴリーは〈展開〉〈指導〉〈種目〉の3つのサブカテゴリー、【かかわり】カテゴリーは〈子ども〉〈大人〉の2つのサブカテゴリー、【リアクション】カテゴリーは〈参加者〉〈指導者〉の2つのサブカテゴリーから形成されていました。

KH Coderは、記述データを統計的に分析するためのフリーソフトウェアです。共起ネットワーク分析は、出現パターンの似た語を線で結んだ図を描くことができ、視覚的に記述内容を理解することができます。分析の結果、「指導」を中心に形成されたグループが「自分」「コミュニケーション」「向上」と結びついたこと、「専門」「種目」が「教える」「出来る」と結びついたことから、指導することで指導者自身がスキルアップできること、種目を指導することに楽しさを感じたことが示されました。次に、「子ども」を中心に形成されたグループが「楽しい」「触れ合う」「触れ合える」と結びついたこと、「小さい」「子」「遊べる」「教える」が結びついたことから、子どもとのスポーツを通した交流によって指導をおこなった大学生自身が楽しさを感じたことが示されました。最後に、「アーチェリー」「空手」などの実施種目が「知る」「一緒」と結びついたことからスポーツ指導を通してスポーツを普及させることに楽しさを感じたことが示されました。

本研究は、単一の地域スポーツ教室を対象としているため、一般化には至っていません。地域スポーツはさまざまな形態で開催されており、大学が実施するスポーツ教室も多様です。地域スポーツ教室における「ささえるスポーツ」の楽しさを反映した調査尺度を作成し、地域スポーツにボランティアとして活動している大学生を対象に測定を行うことで、地域スポーツの実施形態や参加者の属性による「ささえるスポーツ」の楽しさの違いを明らかにすることができると考えています。
これまで主に「するスポーツ」としてスポーツに関与していた方々に対して「ささえるスポーツ」の楽しさを明確に示すことは、スポーツとの多様な関わりとその魅力を提示することにつながり、地域スポーツの発展に寄与すると考えています。


スポーツマネジメント人材育成のための研修は,組織課題研修と自己課題研修でどのような違いがあるか?
西原康行

スポーツ庁は,2016年にスポーツ経営人材プラットフォーム協議会を設置して,スポーツ統括団体・チーム・クラブ等における経営人材の育成・活用や人材育成講座におけるカリキュラム構築の必要性などの議論を行なってきている.その議論の多くは,ガバナンス,資金調達,健全な収益の維持など,一般的な経営知識(スキル)の習得によって経営力を高めることに起因する.一方,スポーツは,遊び・公共性・コミュニティなどといった特徴を多分に含んでいるため,テキストで知識(スキル)を学ぶ形式知に拠らない自由度の高い経験による暗黙知(センス)を必要とする.そのため,スポーツマネジメント人材の育成については,形式知(スキル)の習得という公式学習として大学等のカリキュラムに加えて,自由度の高い経験による暗黙知(センス)の習得を前提とした教育手法の開発が必要である.また,国際団体ATC21s(Assessment and Teaching of 21st Century Skill)が提唱した21世紀型スキル白書では,ある目標を解決するために他者と共にさまざまな技術や資源を活用しながら,課題解決方法を生み出し続ける力量がこれからの社会に必要であるとされている.この力量の獲得には,従来行われてきた,学習目標を設定して一律に知識を習得して解釈できるような欠損知識を埋めることで学習目標に到達させることをゴールとした正解到達型のアプローチではなく,学習目標に対して対話活動による知識構築によって新しい目標となる問いや疑問を生じさせ,目標に到達させるような,学びが広がり続けさせることをゴールとした目標創出型の前向きアプローチが必要である.つまり,このアプローチは,知識から一定の解を求める形式知(スキル)にとどまらず,自ら目標を設定して経験や対話により,スポーツを介して地域を創造していくスポーツ経営人材に必要な力量(センス)に符合する.さらに,波多野は,このような目標創出型の前向きアプローチには,学習者の自発的な課題が生まれるように学びをデザインすることが必要であるとしている.そしてこの自発的な課題の生成は,ある一定の慣れ親しんだ型の問題を素早く説くことができる定型的熟達者よりも,新規の場面に遭遇した際に,もっている知識や技能を柔軟に組み替えて適応できる適応的熟達者に可能性を見出している.西原は,総合型クラブのマネジャーをこの適応的熟達者と設定して,経営に携わる中での出来事からどんな課題が設定されるのかを明らかにしたが,課題が生まれるように意図的に学びをデザインした対話型の研修において課題設定がなされるのかといったアプローチについては明らかにしていない.

このような意図的な課題設定を行なう示唆としてKammeyer & Wanberrgは,組織における成果を,組織と個人の課題に分類して,組織が課題としてとらえる組織風土や組織の意思決定とともに,個人が課題としてとらえる有能感や仕事の習熟,自己効力感の重要性を指摘している.この課題をとらえるという作業は,ショーンの,自らの行為や経験について振り返ることを通して目の前の場や対象に適する働きをする「反省的実践家」と同様に,様々な問題や課題を自身に還元することによって,新たな気づきや学び,目標の創出を行うことに符合している.以上のことから,本事例では総合型クラブの経営に関わる人材を取り上げて,力量形成のために組織の課題と個人の課題を考える研修といった意図的に学びをデザインしたスタッフ研修の事例を比較することで,研修の有効性の手掛かりを得ることを目的とした.

その結果,組織課題研修への参加は,自身の周囲の抽象的な事象に意識が向くと同時に,職業や仕事としてやらなければいけない義務として,自己と総合型クラブの関係性をとらえる意識が働き,その不安を克服する思考になる可能性が示された.一方,自己課題研修においては,自らの内省を通して,課題を解決するためにスタッフとしてどんな具体的課題を設定して,何を行なうべきか,そして自らがどのように成長していくのかという思考で自己と総合型クラブの関係をとらえる可能性が示された.職場学習としての研修では,「やりっぱなしの研修」にならず,研修内容の職場実践度合いを高めることが重要であり,自分の行動を見つめ直し,未来に何をしなければいけないのかの「行動につながる目標」を設定できることが現場実践の可能性を高める.本事例では,自己課題研修において自己の成長・目標認識という思考のカテゴリーが抽出されたことから,このカテゴリーが研修後の現場での実践につながる可能性が考えられる.


ランナーによるランニング関与の自己評価とイベント愛着の関連性-市民マラソンの参加者に着目して-
岡安 功

本研究は,ランナーのランニング関与とイベント愛着の関係を明らかにすることを目的にした.特に本研究では,専門志向化の視点からランニングへの関与の自己評価に着目した.
調査は,2016年5月に愛媛県西予市で開催された四国せいよ朝霧湖マラソンの参加者に対して質問紙調査を実施した.調査項目は,先行研究を参考にして設定した.ランナーの自己評価は,タイプ1(ファンランナー、健康・美ランナー、競技志向ランナー),タイプ2(初級ランナー、中級ランナー、上級ランナー)、タイプ3(熱心なランナー、活発ランナー、カジュアルなランナー)を設定し,それそれ自らに一番近い選択肢を選んでもらった.イベント愛着は,イベント依存性とイベント同一性に2要因であり,尺度は「大いに当てはまる」から「全く当てはまらない」の7段階尺度を採用した.分析は,一元配置の分析分析を行った.
結果は,タイプ1とタイプ2で分類したランナー間においてイベント愛着の2要因について,有意な差が認められなかった.一方で,タイプ3は,熱心なランナーが,それ以外の2つのランナーに比べてイベント愛着が有意に高いことが明らかになった.
本研究の結果からは,どの程度ランニングや市民マラソンへの参加にのめり込んでいるかということを示唆するものであった.特にタイプ3でイベント愛着に差が認められたことは,タイムなどで評価するのではなく,ランニングに対する社会心理的な部分が影響をしていると理解することができる.全国各地で市民マラソンが開催される中では,こうしたランナーの志向とイベント愛着の関係を明らかにすることで,イベントマネジメントやスポーツイベントを通じた地域活性化における基礎資料を提供するとなる.今後は,量的調査だけでなく,質的調査などを通じてさらにランナーの自己評価とイベント愛着の関連性をさらに検証することが求められる.


高校時代の運動部経験によるスポーツに対するイメージの違い:大学新入生を対象とする2つの調査より
大橋 恵・井梅由美子・藤後悦子

成人のスポーツ実地に関係すると考えられるスポーツのイメージに青少年期の課外スポーツ経験がどのように関連しているかを,「スポーツ進学」がなくかつスポーツとは関係がない学部に進学した大学新入生を対象に検討した。現在のスポーツのイメージについて,スポーツの良いところ・悪いところを挙げさせる方法と,スポーツから連想する言葉を挙げさせ望ましさを評価させる方法という,2種類を用いて測定した。
その結果,現役高校生を対象に調査した先行研究同様,大学1年生のスポーツに対するイメージは全体的に肯定的であり,内容としては,スポーツの直接的なメリットである身体的な健康や精神的健康に加え,社会的な機能(密な人間関係の持つ肯定的な面)がかなり意識されていることが示された。さらに,課外スポーツ経験者の方が身体的健康以外の派生的な良い所を多く挙げており,これは,課外スポーツの中でさまざまな経験をする中で実感した結果ではないかと考えられる。
また,本研究のオリジナリティとして,スポーツに対するイメージの形成に高校時代のスポーツ活動の頻度や活動を重視する程度なども影響するのかを検討した点が挙げられる。活動を重視する程度や部内の役割の有無の影響は認められなかったが,週当たり参加日数が少ないほど望ましい言葉を連想するという結果が得られた。先行研究同様に本研究においても全体的にスポーツについて望ましいイメージがあったことと併せると,密度の濃すぎるスポーツ活動によってスポーツの悪いところも経験せざるを得ないことや,強制による内的動機づけの低下などが原因として考えられよう。「強制」と表現したのは,週当たり参加日数の平均が運動部では5日を超えており,参加率も97%と大変高かったからである。かなり多くの時間を課外スポーツに費やしているために,スポーツが好き・楽しいという内的動機づけが下がってしまったと考えられる。また,本研究の回答者たちはスポーツ関係の学部や運動部が充実した大学を選ばなかった時点でスポーツの競技レベルがあまり高くなかったことも関係している可能性がある。これらの結果は部活動マネジメントの観点から考えることができよう。


エリートアスリートによる社会貢献活動の類型化: 新聞記事の内容分析
小木曽湧, 舟橋弘晃, & 間野義之.

アスリートの社会貢献活動とは、「アスリートが競技場面以外において、社会的な知名度や経験を活用して行う社会に対する支援活動」のことです。スポーツを通じた社会課題の解決に向けて機運が高まる中で、この現象には大きな期待が集まっています。一般的に、アスリートは知名度や影響力といった特殊な資源を持っていると考えられています。アスリートは、この資源をうまく活用し、社会課題の解決を促進するエージェントとして活躍することが期待されています。

アスリートの社会貢献活動は決して新しい現象ではないものの、学術分野では萌芽期にあり、科学的な手続きからこの現象を紐解く試みは多くありません。本研究はアスリートの社会貢献活動を紐解く第一歩として、アスリートがどのような活動を行っているのかを整理し、活動の全体像を明確にすることを目指しました。

分析のためのデータは、新聞記事から収集しました。2010年から2019年までに発行された新聞記事(498件)から733件の活動事例を抽出し、内容の分析を行いました。

分析から、アスリートの社会貢献活動は以下の9つの区分に分類されました。それぞれの定義や活動事例など、詳細については論文をご参照ください。

・ 物資提供
・ スポーツに関する環境整備
・ 経済的な支援・寄付
・ 慰問・交流・奉仕活動
・ イベントの開催・参画
・ 試合への招待
・ スポーツ指導
・ 講演会
・ 啓発活動

このように、アスリートの社会貢献活動という現象を整理すると、活動の方法やアプローチに多様性を見出すことができました。この知見は、活動の戦略策定や実施形態の選択といった場面で、アスリートの社会貢献活動を支援する資料となることが期待されます。


日本初の英語による国際的なスポーツマネジメント大学院プログラムの学生の満足度に影響する要因とキャリア形成における必要性に関する研究
-つくば国際スポーツアカデミー(TIAS)の修了生調査を事例として-
塚本拓也 仙台大学体育学部 准教授

本研究は、筆者が筑波大学に所属していた際に調査・執筆したものです。本研究が実施された背景は、スポーツ庁中心に日本政府が推進する「Sport for Tomorrow」プログラムの一環として開設された、筑波大学「つくば国際スポーツアカデミー:Tsukuba International Academy for Sport Studies(以下、TIAS)」における2014年度から2020年度まで7年にわたって実施した取り組みの集大成として、その成果と今後の展望についてまとめることにありました。

TIASでは、国際的な視野を持ったスポーツ人材の育成を目指して大学院プログラムを開設しましたが、出願者は年々増加し、5大陸すべての50か国以上の国から多数の応募をいただくまでに至りました。得られる修士号は「スポーツ・オリンピック学」で、42ヵ国から計95人が修了しました。また、国際オリンピック委員会(以下、IOC)が中心となって設立されたInternational Academy of Sports Science and Technology(以下、AISTS)との業務提携で、IOCや国際スポーツ競技連盟(以下、IF)の実務者による講義やインターシップ活動支援を受けたことから、修了生は現在国際パラリンピック委員会(以下、IPC)やIF、各国のオリンピック・パラリンピック委員会、競技連盟、スポーツ関連企業、政府機関、教育機関などで即戦力として現在も活躍しています。

以上のことから、本研究の目的は、日本初の英語による国際的なスポーツマネジメント大学院プログラムに対する学生の満足度に影響する要因及びキャリア形成における必要性を明らかにし、我が国における国際スポーツ界のリーダーとして活躍する人材を育成するために必要な大学院プログラムの在り方を検討することでした。

TIAS修了生調査の結果を通して、「総合満足度」と個々の項目の「満足度」、「総合キャリア必要度」と個々の項目の「キャリア必要度」に関連性があるかを確認するためそれぞれクロス集計し、カイ二乗検定を行いました。

その結果、まず満足度に影響を与える要因として、講義内容では、修了生の総合満足度の高群と非高群において、オリンピック・パラリンピック教育と共通分野の全ての授業科目の満足度に有意差がみられました。また、講義内容以外のサービスでは、「教員の質」である「教員との良好なコミュニケーションの機会」と「教員の学生に対する高い学術的支援」の項目にも総合満足度の高群と非高群に有意差がみられました。このことから、修了生の大学院プログラムの満足度という観点からは、教育に伴う運営や環境面というよりは、教育の本質である講義内容や教員の対応が学生の満足度に影響する要因であることが分かりました。

一方で、修了生のキャリア必要度という観点から、講義内容では、修了生の満足度とは違い、「スポーツマネジメント分野」の全ての講義が総合キャリア必要度の高群と非高群に有意差がみられました。また、講義内容以外のサービスでは、満足度で得られた結果とは違い、「外部連携の質」、「業界ネットワークの質」、「学生の質」、「事務局サービスの質」、「キャリア機会提供の質」にも総合キャリア必要度の高群と非高群に有意差がみられました。このことから、まず国際学生を対象とする場合は、学位を授与する大学院プログラムを提供することが重要であることが分かりました。さらに、「教育の質」の講義内容でも外部機関や外部のゲストスピーカーとの連携、スポーツ業界との地理的近接性とつながる講義の工夫が求められ、業界ネットワークの質、学生の質、教員や事務局のキャリア支援もキャリア形成の必要性においても重要な要因であることが考えられました。

以上のことから、今後国際的なスポーツマネジメント大学院プログラムを設計する上では、学生の満足度とキャリア必要度と両方の観点からプログラムを設計することが重要であると考えられます。関心のある方は、本論文を一読頂ければ幸いです。

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