スポーツ産業を測る㊲ ヨーロッパのスポーツ産業の特徴

スポーツ産業を測る㊲ ヨーロッパのスポーツ産業の特徴
同志社大学スポーツ健康科学部准教授
庄子博人

本稿では、2025年に公表されたEU Sport Satellite Account: Research into estimating the economic value of sport in the EU – 2025 editionをもとに、欧州のスポーツ産業の特徴に基づいた国別の類型化を試みます。この類型化は、レポートの中で公式に明示されているのではなく、レポートに記載されている国別データと記述をもとに、筆者自身で便宜的に整理したものです。分類にあたっては、主に三つの点を見ています。第一に、スポーツ関連の直接GVA(粗付加価値)が、スポーツ施設、クラブ、教育、スポーツ行政などのスポーツそのものを提供する部門から多く生じているのか、それとも製造、建設、流通、観光、交通、メディアなどの周辺の関連産業から多く生じているのかを確認しました。第二に、各国のFactsheetに掲載されているスポーツ関連GVAの上位10部門を確認し、どの産業がその国のスポーツ経済を特徴づけているのかを見ました。第三に、レポート本文の国別記述も補助的に用いています。その結果、表に示すように、28カ国の中で特徴的な19カ国を分類し、類型名をつけました。

スポーツ観光型

スポーツ観光型は、スポーツと観光が結び付き、宿泊、飲食、交通などの産業の寄与が大きい点が特徴です。代表的なオーストリアでは、スポーツ関連直接GVAが国内GVAの4.82%と高く、最大部門は宿泊・飲食です。レポートも冬季スポーツと外国人観光客の流入を特徴として挙げています。クロアチアでも宿泊・飲食の寄与が大きく、海岸、気候、ウォータースポーツとの結び付きが示されています。

スポーツサービス・教育型

スポーツサービス・教育型は、スポーツ施設、クラブ、教育、スポーツ行政などの公共部門など、スポーツそのものを提供する部門の比重が大きくなっています。フランスでは、こうした部門が直接スポーツGVAの約76%を占め、GVA上位も公共行政、教育、スポーツサービスです。フィンランド、スウェーデン、ポルトガル、デンマークでも、スポーツサービスと教育が主要部門となっています。

製造業・サプライチェーン型

スポーツ関連GVAが、製造、建設、機械、輸送機器、繊維など幅広い産業に分布しています。ドイツでは、製造業の高い寄与を明示されており、ポーランドでは建設、チェコでは自動車関連がスポーツ関連GVAの上位に位置します。イタリアでも機械、輸送機器、繊維などが大きく、スポーツを支える生産基盤の厚さが特徴です。

クラブ・商業サービス/雇用型

クラブやスポーツサービスを核として、小売、宿泊・飲食、メディアなどの市場が広がり、とくに雇用への寄与が大きいことが特徴です。英国では直接GVA比2.35%に対して直接雇用比は3.45%で、レポートはスポーツクラブ、ボランティア、ゴルフ、プロサッカーを特徴として挙げています。アイルランドもGVA比に比べて雇用比が高く、ゴルフとゲーリック競技が特徴的です。

複合・バランス型

複合・バランス型は、1つの産業に偏らない構造をしているのが特徴です。スポーツサービスや教育と、流通、宿泊・飲食、交通、娯楽などの周辺産業の双方が一定の規模を持っています。オランダでは、スポーツサービス・教育などの中核部門と、それ以外の関連部門の直接GVAがほぼ半々です。ベルギーやギリシャもこれに近い構成です。スペインでもスポーツサービスと教育が大きい一方、娯楽、交通、宿泊・飲食、小売なども上位に入り、特定の一産業に大きく偏らない構造となっています。

 

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