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見学に来た留学生たちの目の前で繰り広げられる熱戦

今年で創部101年目を迎える早稲田大学相撲部が、7年前から継続して行っている早大生のための相撲大会「早稲田杯」に足を運んだ。
集まったのは未経験者を中心とした約20名の学生たち。最初は多くの選手の立合いに戸惑いが見えたが、回を重ねるごとに自分なりに修正点を見つけ相撲らしい取組みとなっていく。決勝戦ともなれば素人とは思えない土俵となり会場は大いに沸いた。終了後はマネージャーお手製のちゃんこが振舞われ、参加者たちは健闘を称え合いながら用意されていた100人分をあっという間に平らげた。
テレビで大相撲を観ることすらめったにないという参加者さえいたフレッシュな大会だったが、だからこそ生まれる面白さがあった。同部特別参与のやくみつるさんは、「相撲には、円があれば組みたくなり、組めば相手を投げたくなる。人間の本能ですかね」と言う。たしかに土俵から出たり、足裏以外が土俵についたら負けということさえ分かっていれば、難しいことを考えずとも誰でも楽しめる。それこそがこの伝統的スポーツの良さなのだ。大会を終えて帰っていく参加者たちの笑顔に、私は相撲が本来持つ力を実感した。
一方で、いま世間の人が抱いているのは不祥事が続く相撲界へのマイナス・イメージだ。これに対し同じく特別参与のデーモン閣下は「協会内部の意識改革は当然必要」としつつ、「相撲に対して知識がないのに無責任な発言をしている人も多い」と指摘する。そんな中で文字通り相撲を肌で感じに来てくれた早稲田杯の参加者たちは、今後は相撲の魅力を語れる存在となるだろう。このような小さなイベントでも、相撲ファンがわずかでも増えるのは現在の角界にとっては確かな光であるはずだ。
早大相撲部が開くこの大会は、「まずは相撲に親しみ、魅力を知ってもらいたい」という熱いメッセージに満ちていた。彼らのように相撲の魅力を知る若者やファンが積み重ねる一つ一つの貢献を、相撲協会は人気回復の力に変えられるか。真価は土俵の外で問われている。
文・写真│伊勢采萌子

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