スポーツビジネスの最新トレンドについて


北谷賢司

Kenji Kitatani
金沢工業大学虎ノ門大学院教授 AEG アジア担当EVP 兼 日本代表

――スポーツビジネスの最新トレンドについて
従来、スポーツは地上波、衛星放送、ケーブルテレビによる中継放送の権利を守ることをを原則として、コンテンツの視聴者拡大と価値化が図られてきました。しかし、ブロードバンド、モバイル通信とSNSの普及と、コンテンツのデジタル化により、スポーツ・コンテンツも今や簡単にシェアされてしまいます。更に、その大半は著作権に係わらず無償配布されるので、マネタリゼーションの新たな手法が開拓されなければなりません。また、スポーツ・コンテンツのライブ視聴がSNSと連結した結果、新世代のスポーツファンの期待は「エンゲージング」な体験へと拡がり、スポーツ団体や球団が作成した公式サイトよりファンが自ら構築した「ファンサイトでの噂へ」と人気がシフトします。そのために、モバイル通信とWi-Fi機能が充実したスマートスタジアムやスマートアリーナの重要性が高まるのです。

――これからのスタジアム&アリーナのあり方について
エンタテイメント施設は、人里離れたところにぽつんと作られていても、商業的な成功を追求できません。娯楽施設を中核とした総合的な開発ビジネスモデルを目指すべきです。そうでなければ、周辺の飲食商業施設は試合開催時以外の集客は難しくテナント料も期待できません。中核施設以外に、イベントを興行しやすい中小規模の施設を併設し、そのエリアに行けば、いつでも何か観てみたいものが開催されている、東京ドーム・シティのような統合的開発を目指せば良いのです。駅へのアクセスが悪い工場街の中に立派な施設を建設し、その前にはファミレスが二つというような状態では、街の賑わいは構築できません。

――日本スポーツ産業学会に対する期待
学会には、研究者や学生に研究成果を競わせるという旧来の機能があります。それは尊重しながらも、スポーツに関する規模の大きな産学協同プロジェクトを展開、積極的に他領域から実務経験者と研究者を招き入れることで学会の基盤を拡大し、政府の諮問機関などにより積極的に委員を推挙、学会の存在意義を産学官界に認識させられれば良いと思います。その権威付けのためにも、覆面審査方式によるレベルの高い査読研究誌(レフリード・ジャーナル)の編集と発刊が必要ですが、グローバルな検索に認識されるよう、並行して英語サマリー版もWeb展開し、海外への発信力を持つよう成長を遂げられることを期待しています。

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