「磨いて」「伝える」長崎スタジアムシティ


岩下英樹
株式会社リージョナルクリエーション長崎 代表取締役社長

長崎スタジアムシティは2024年10月14日に開業しました。以降、スタジアムの民設・民営化を目指した視察は多いです。我々は、V・ファーレン長崎の株式を100%取得し、グループ会社化した時に覚悟を決め、スポーツを考え始めました。元々三菱重工の跡地があり、何か面白いことができるのでは? と構想がスタートしましたが、サッカースタジアムのみ作った場合、助成金を集めても採算が合わないことは明白で、なかなかにハードルが高いチャレンジでした。

25〜30年でいかにして投資を回収するかを考え、例えば、アリーナは計画にありませんでしたが、音楽イベントの開催も視野に複合的にビジネスを行うことを考えました。さらにそのアリーナをホームとするバスケットクラブも作りました。黒字化することに強く拘った結果、計画当初と随分と違う形で開業を迎えました。ハードとソフトの両面から価値を見出すという発想で次々と計画を改善していきました。

ジャパネットグループは現在でも通信販売部門が売上の大半を占めています。これはバイヤーが選びに選び抜いた製品を「見つけて・磨いて・伝える」を繰り返し続けることで世の中に伝わり「ジャパネットが勧めるなら間違いない」という現状を作れた結果だと考えています。

実はスポーツは、まだまだ「磨いて」「伝える」ことが弱く、世の中に十分に伝わっていない側面が多いように感じています。ビジネスとしては別のようにも見える通販とスポーツですが、通底しており、当グループの強みを発揮できるビジネスの一つだと思います。

約1,000億円の投資を黒字化することは当然ですが、究極的なKPI・KGIは長崎の人口増だと考えています。自分たちの町にこのスタジアムシティがあることが誇りや生きがいに繋がり、人口流出が抑えられ、また増えていく、そのプロセスの一部として、こ機能して欲しいと願っています。そのためにも、多くのスポーツ部門の戦略、運営に関わる人材の獲得も目指しており同部門も当グループの雇用条件に則った給与体制になっております。

スポーツなどエンタメはまだまだキャッシュに繋がるシーンが少ないですが、社会的な意義や経済効果は良い方向に回っている体感があります。日本スポーツ産業学会には、スポーツビジネスは価値がある活動なのだと言い切れるような尺度の開発やSROI(社会的投資収益率)のさらなる研究を期待しております。

プロフィール(いわした・ひでき)1981年長崎県生まれ。2006年ジャパネットたかたへ入社。インターネット部門、プロモーション戦略部門等の責任者を経て、2019年物流・設置部門のジャパネットロジスティクスサービス代表取締役社長に就任。2020年にはリージョナルクリエーション長崎の取締役、長崎ヴェルカ代表取締役社長、2022年にV・ファーレン長崎の代表取締役社長を務め、スポーツ・地域創生事業を担当。現在、ジャパネットホールディングス取締役、リージョナルクリエーション長崎および地域創生に取り組む3社の代表取締役社長を務める。

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