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「埼玉西武ライオンズのファンマーケティング戦略~ICT環境の変革に伴うファンマーケティング戦略の変化と展望~」(2)

「埼玉西武ライオンズのファンマーケティング戦略~ICT環境の変革に伴うファンマーケティング戦略の変化と展望~」(2)
吉田 康治(株式会社西武ライオンズ事業部部長)

Ⅱ.2020年以降の新型コロナの影響

2つ目のアジェンダの20年以降の新型コロナの影響についてお話します。
コロナの影響を、我々を主語にして言いますと、大きくこの2つです。
1つ目は多くのことを、ファンの皆様に提供できなくなりました。
例えば大声での応援や、ハイタッチ、居酒屋感覚でわいわいする、などが提供できなくなりました。
2つ目はビジネス面のマイナスインパクトが08年以降で一番大きかったです。
年間の観客動員数が減少し、来場ファンUUが大きく減り、複数の収益の柱が影響を受け、BtoC領域に関しては、収益が激減しました。
さらに感染防止対策のコストが、数千万円かかりました。


19年の観客席の映像ですが、皆さんぎゅうぎゅう詰めに座られて、大きな声を出して応援するスタイルがあり、大声で応援することや一体感、得点があったときには抱き合ったり、ハイタッチをしたり。そういう光景は無くなって、提供できなくなった、我々から禁止をしないといけなくなりました。
21年の写真が極端ですが、1席空けて着席し、マスクをしてじっと野球を見るスタイルが、スタンダードになりました。

このグラフは年間観客動員数の推移で19年、20年、21年を示しております。
19年182万人で20年が30万人まで減りました。減少率84%。21年は少し回復したとはいえ、62万人でした。対比では19年に100だったものが20年には16と、1/6ぐらいに一気に減ってしまいました。回復したとはいえ、19年に比べると21年でも1/3ぐらいしかお客様が呼べないようになってしまったのが非常に大きなインパクトになっています。

続いて2008年から重要な指標としていた来場ファンUUの推移が、2019年には8.5万人いましたが、20年に4.2万人と一回以上来たファンクラブ会員が半分ぐらいに減りました。21年は少し回復しましたが、それでも5.6万人ぐらいです。19年を100とした場合には、20年に半分に減って、21年には2/3にはなりましたが、1/3はまだ戻ってきてないです。

3つ目が収益の柱で、2008年と比較して2019年は大きく伸びていましたが、2021年はBtoC領域のチケットおよび物販に関して、大きく減少しました。
一方で、放映権およびスポンサーに関しては、売上を維持しております。
その他は、貸会場でイベントがそもそも開催できない状況で大きく減少しました。
収益の五本の柱に関しては、BtoC領域のチケット物販が大きく減少しました。

4つ目が試合開催する上で、お客様の安全安心というのは非常に大切ですので、販売したすべての席を、開場する前に消毒していました。
2枚目の写真は場内の循環消毒と清掃ですが、試合中、試合前にスタッフが念入りに行いました。
最後は来場された方全員に、お願いをしている内容ですが、入場時に検温と消毒をお願いするという、準備した備品もそうですが、人件費が非常にかかってくるということで、数千万円が、年間で追加費用として必要となりました。
すこし感情的な話ですが、実際にマイナスインパクトが最も大きいのはここではないかなと思っている部分が、ファンの方々の球場で野球観戦するという気持ちが、薄れたり離れたりしてないかということです。それを、非常に心配しております。この影響度合いは、すぐにわからなくて、何年か経ってみないとわからないと思っていますが、大きいのではないかと思っております。

Ⅲ.WithコロナのICT戦略(短期的)

3つ目のアジェンダ2021年からのウィズコロナのICT戦略は、大きく2つでご説明させていただきます。
まず1つ目は短期的な戦略ということで、基本的には、お客様のストレスをなくして満足度をアップしようというのが共通の内容になっています。
2つ目が長期的な戦略ということで、ウィズコロナというのが、そんなに短くはないだろうというのも含めて、長期的に、特に外的な環境要因を踏まえたことを検討しています。

まず短期的な1つ目は、お客様に来ていただくためには、ストレスをなくすという方針で、いかにライオンズがコロナに対して「しっかりと対策をしております」ということを説明しています。ウェブや、来場される方へのメールでのご案内を徹底しております。野球を楽しむ前のベースのところですので、来場する方に情報を届けるということを全社挙げて取り組んでいます。

2つ目がいろんな飲食店もやられていると思いますが、場内の密閉されている店舗についてはCO2の測定器を置いて、球団のアプリやウェブからリアルタイムに見られる状態にしました。

3つ目が同じくリアルタイムの混雑の見える化ですが、お客様が見てお客様に判断してもらうということになります。球場内の十数箇所、混雑が予想されるエリアからYouTubeライブの配信で、お客様自身に自分で行きたい場所を先に観ていただいて行動を起こすかどうかの判断をしていただいています。

4つ目が同じく混雑の可視化です。特に女性の方はトイレが混雑する事が多いので、個室がどのぐらい空いているか?というのをリアルタイムで球団アプリやウェブから確認できます。これによって、空いているタイミングで行っていただけると考えております。

5つ目が西武鉄道と協力して、入場ゲートの混雑傾向や、鉄道の降車人数の傾向をWebなどでお伝えしております。分散して来場いただくのは難しいことですが、明らかに混んでいる時間を示すようにして、お客様に考えていただくようにしております。

6つ目で、観戦時に発生したストレスをその場で解消してもらうという通報システムを導入しました。こちらも球団アプリからできるものです。コロナ禍の野球観戦では、例えば「あそこの人が、マスクをせずに大声で叫んでいる」というような指摘が、ある程度の頻度で発生しておりました。来場時の指摘ではなく、帰宅後に家からエスカレーションメールを送られたり、翌日コールセンターにご連絡をくださったりしておりましたが、なるべくその場で解消した方が良いという考えから、この通報システムを作りました。
お客様向けには、観戦応援ルール連絡フォームという形で導入しています。通報したいと思った人がボタンを押すとメーラーが立ち上がります。当然、匿名で対応しますが、どういう場所でどういうような違反をしている人がいますっていうことを送ってもらいます。それが球場の警備本部にリアルタイムで送られてきて、至急対応するべき必要があれば、警備員がすぐに現地に行きます。緊急性が高くないものに関しては、対象エリアのカメラでロックして、監視しております。これまでは指摘できなかったような方々が、その場で指摘できるような仕組みを作ることで、翌日以降にエスカレーションが上がって来るまで気づかなかったような不満に関して、その場で適切な対応ができるようになりました。

次に、こういうシナリオを作って、マーケティングオートメーションで、実際にお客様に提供しています。チケットを購入していただいてから、来場した翌日までというのを一つの設定にしています。
例えば一か月前ぐらい前にチケットを購入いただくと、「購入ありがとうございます。来場を楽しみにお待ちしております」、続いて、試合の前日に「明日の来場をお待ちしています」と「コロナ対策は明日のイベントではこんな感じでやりますよ」というメールを配信しております。また、当日は、入場時に会員証を読み取る作業がトリガーになっておりまして、「来場ありがとうございます」と配信され、ファンクラブの方には来場ポイントが付いた報告や選手情報などが、入場ゲートを通って5分後に配信されるような設定でやっています。
試合が終わって15分後位に「来場してくれてありがとうございました」と改めて感謝と、こういう試合でしたねという試合情報を送信する、という仕組みになっております。最後の配信は時間や内容が固定でないため、手動で行っています。最後は、サービス等の改善のために、試合の翌日にはアンケートを送ることも自動でやっていいます。4番以外はチケットを購入するところを起点にして、全て自動です。
効果についてはまだ検証ができていませんが、少なくとも運用側の手間は相当減っています。お客様のアンケートを見る限り、それなりの評価をいただいているのかなと思います。
定量的な説明ができなくて恐縮ですが、一定量の成果が出ているかなと思っており、今後改善しながらも継続していこうと思っています。

最後に、評価方法のご説明をさせていただきます。
効果測定は顧客のアンケートからの満足度及びNPSで測定、評価をしています。先ほどのマーケティングオートメーションのシナリオの通り、来場の翌日にはアンケートを自動で配信しています。推奨度というのは、来場をお友達と家族におススメできますか?と聞いており、これがNPSになっています。
NPSと満足度の測定を重視しており、NPSに影響がある項目を抽出して、その満足度を上げるとNPSが上がる、満足度が下がるとNPSが下がる、そういうことを評価しています。影響度が大きい項目が出た場合には、それはすぐに改善可能かどうか、もしくはシーズン中に改善可能かどうか、コストがかかるかどうかなどをいろいろ含めた上で意思決定しています。
そこで実施する、しないを決めて、実施すると判断した項目に関しては、シーズン中でも速やかに改善を行っております。シナリオを通して、お客様から上がってきたアンケートの結果をもとに、そのイベントの満足度であったり、来場時の不満や満足、そういったものを踏まえて、それを総合指標としてNPSを活用して、改善しております。ストレスレスで満足度アップと言ったんですけど、それを支えているのが、こういう評価指標であると思っています。

WithコロナのICT戦略(長期的)

続いて長期的な戦略のほうですが、外的環境要因はどうすることもできない情報も含めて3点あります。
1つ目が20年、21年にコロナの原因で離れた来場ファンが再来場してくれることは非常に大きいと思っています。この表は21年と19年のギャップを入れています。一番上の有料会員数は2年間で減ったとはいえ、11%ぐらいしか減っていないです。一方で、来場ファンUUというのは先ほどご紹介の通り、1/3ぐらいが来なくなってしまっています。平均来場回数は、実は一回以上来ている方の平均を取ると、同じく一回ぐらいしか減っておらず、13%ぐらいしか減っていないので、来場ファンの総来場回数の27.5万の減少のうちの7割ぐらいは1回も来なくなった人が、大量に出てしまったことが原因だと思っています。ここをストレートに攻めないといけないと思っていますので、まずインハウスでメルマガとかアプリとか、SNSとかは徹底してその方々向けにやっていく。これも1to1を活用していこうと思っています。その他としては、ターゲティングのウェブ広告とか、アプリのGPSを使ったウェブ広告とかをやっていこうと思っています。

2つ目が既存ファンの高齢化からの将来の見通しです。横軸が年齢で縦軸が年齢ごとのファンクラブの有料会員の数字です。ボリュームゾーンの1つ目が小学生で、これに関しては割愛させてもらいます。2つ目のボリュームゾーンが40代後半です。明確に証明ができておりませんが、43年までに福岡から所沢にライオンズが移転して、その時に小学生ぐらいだった方が該当していると想定しております。
2010年から10年間シフトしているだけで、この方々が変わらずボリュームゾーンです。なぜ、この状況がよくないのかと言いますと、顧客の高齢化を懸念しているためです。我々のデータで言うと、だいたい60台前半で急激に入会数が減少します。このボリュームゾーンがあと十数年で60代前半を迎えるっていうことで、高齢化によるファンクラブの退会というのが今後増加するだろうなと見込んでおり、これを考慮した戦略を今後立てようと検討しています。

3つ目がより一層の環境要因の話です。日本の少子高齢化や離れたファンが戻らない可能性から、来場ファンUUの減少は止められないかもしれないということに加え、別の視点では、そもそも外出機会が減っている方が増えているんじゃないかという仮説もあります。また、コロナとは関係なく、趣味が多様化してきているという現実もあります。来場ファンの平均来場回数も減少するのではないかという懸念があります。
それに対応するため、西武ファンの方々の集団を拡大することを検討しています。今までのお客様のイメージは、例えば、西武線沿線に住んでいては、小学生とか30代から50代の男性で野球が好き、お酒が好きという方々をイメージしていましたが、それ以外の方々を増やすという視点です。この方々の比率を上げていくために、どこにお金と時間をかけるかという具体的な戦略を検討しています。

「埼玉西武ライオンズのファンマーケティング戦略~ICT環境の変革に伴うファンマーケティング戦略の変化と展望~」(1)https://sportsbusiness.online/2022/03/09/lionz-2/
本稿は、2022年1月11日(火)に開催されたスポーツ産業アカデミーでの講演内容を編集したものである。

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