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スポーツ産業アカデミー(7月13日)「北米発: eスポーツを活用した教育活動と国際化人材の育成」


スポーツ産業アカデミー(7月13日)「北米発: eスポーツを活用した教育活動と国際化人材の育成」
日時 2021年7月13日(火)18:00~19:30
会場 zoomウエビナー
講師 松原 昭博(NASEF JAPAN 会長)

梁瀬 本日は、「北米発:eスポーツを活用した教育活動と国際化人材の育成」というタイトルで、北米教育スポーツ連盟日本本部、NASEF JAPAN(ナセフジャパン)の会長、松原昭博さんに登壇いただきます。

ご紹介いただきました、北米教育スポーツ連盟日本本部の松原でございます。

本日は、「北米発:eスポーツを活用した教育活動と国際化人材の育成」をテーマに、我々の活動内容をご紹介させていただきます。
まず、自己紹介をいたします。私は大阪出身で、学校を出てソニーに入社しました。ソニーのヨーロッパの子会社に赴任し、滞在した国がハンガリー、ドイツ、スイス、オランダ。以上の国々で11年間、業務を遂行し、帰国後、バイオコンピューターを手掛け、さらにまたベルギーにバイオの仕事で赴任しました。ソニー退社後は、老舗の製菓会社に入社。バンコクに駐在しました。2018年からGALLERIA(ガレリア)というゲーミングPCを製造販売し、また、コンピュータ―ショップ“ドスパラ”を全国展開するサードウェーブに入社しました。これだけお聞きいただきますと国際人のように思われがちですが、実は最初に海外赴任した時には、私は英語が全くできませんでした。まあ、そんな人を海外に出す会社もたいしたものだと思うのですが(笑)、今でも英語コンプレックスがありまして、現在、サードウェーブが設立したNASEF JAPANの会長に就任したのも、これからの人たちが、若いうちから海外に慣れ親しむ機会を設けること。そういうことに少しでも貢献できればと思っています。

いよいよ本題に入ります。まず日本のティーンエージャー、15歳から19歳までのどれぐらいの人がゲームに親しんでいるのかというと、ファミ通のゲーム白書から取ってきた数字では、世代の総人口が582万人。そのうちゲーム人口が429万人。これは約73%にあたります。ゲームはよくないとか、様々なご意見ある中で、現実として今のティーンエイジャーからゲームは切り離せない状態で、ライフスタイルの1部になっているという現実がございます。その中で、それを良くないものとして蓋をするのではなくて。むしろ、積極的に上手く活用して教育につなげていこうというのが、我々の活動です。
まずはカリフォルニアに本部を置く、北米NASEFのご紹介、その後に、日本での活動ということでNASEF JAPANのご紹介をさせていただきます。最後に、我々の活動の一環の中で、現場の高校の教員の方々と一緒に開発させて頂いているプログラムの中の一例で、国立阿南工業高等専門学校の例をご紹介いたします。
ではまず、北米NASEFの活動をご紹介させていただきます。
北米NASEF は、「eスポーツを学習や教育を促進するための効果的ツールとして活用する」ことを理念に掲げています。最初に、ゲームが若者のライフスタイルになっているという話をしましたが、日本だとどうしてもネガティブな面を見て保守的になりがちですが、オープンな発想でむしろ積極的に捉えていこうと言うのが、この団体の根っこにある考え方です。

正式には北米教育eスポーツ連盟と言い、設立されたのが2017年、今から4年前です。運営母体はサミュエリ財団という財団のNPOです。カリフォルニアのオレンジ州で、教育委員会が中心となり、まずeスポーツのリーグを発足。そこから教育プログラムの開発に発展しました。すべての生徒が社会におけるゲームチェンジャーになるための知識やスキルを身に付けるために取り組む非営利教育団体で、そのプラットフォームとしてゲームとかeスポーツを使っています。ちなみに、このサミュエリ財団の運営してるのが、写真にありますサミュエリファミリーです。このご主人は、あのBroadcomという巨大ITカンパニーを創業された方です。すでに事業から手を引かれて今は慈善事業に、完全に集中されているそうです。
北米NASEFの本部に、私自身が3年前に行きました。カリフォルニア州立大学のアーバンイン校の中に、eスポーツアリーナがあり、ここを拠点として活動をしているそうです。

今の活動の規模なんですけど、2021年4月現在、全米49州に1698クラブあります。さらに、29州に間接的なアフィリエイトの団体があります。あとは、カナダとメキシコで、北米はほぼ網羅した状態です。NASEFとしては、この活動を、さらにほかの北米以外の地域に拡げるために、国際パートナーとして、日本、フランス、イスラエル、メキシコなど14カ国。国際的な拡大に大きく舵を切りつつあります。
日本はNASEF JAPANが国内での活動を実行しており、活動に3本の柱を置いてます。1つはコミュニティ、もう1つは教育、もう1つは学校におけるクラブ活動です。これらの柱で教育者、生徒、学校関係者。保護者に対してこのeスポーツの教育的価値を提供しています。特に、現場にいらっしゃる学校の先生たちとのコラボレーションが非常に活発になっております。
ここからいくつかのNASEFとしての学術研究の中身をご紹介します。

まずeスポーツをやると勉強ができなくなるのではないか、生徒のためにならないのではないか、いろいろご意見がありますが、そういうことを科学的にNASEFは研究しております。これは先ほどのカリフォルニア州立大学等とも連携をとって共同研究しています。「ゲームと学習」ということで、ここに書かれている、「集中力と俯瞰力を向上させる」、「科学的推論を促進する」、「言語学習を加速する」、「デジタル及び印刷された単語・言語リテラシーを向上させる」、問題解決スキルを高める」、「よりレベルの高い数学・数式に関連する」、「テクノロジー技術適性に強く関連づける」。これらはすべてeスポーツとかゲームをやることにより、何らかの教育的効果があるということが証明され、それぞれ論文があります。様々な風評がありますが、これを科学的に、本当にいいものなのか、そうでないのかも含めて客観的に証明していこうといった研究を進めております。

一例として、eスポーツをやったときの学生の学力と、対人スキルに対する影響を調べたものをお見せします。多くの学生と指導者の皆さんに大規模アンケートを取ってまとめたものです。このカラフルな棒が高いほど良い効果であったと示しています。まず左から科学的調査と分析、続いて数学、英語と文法、社会的感情学習、対面行動変容。eスポーツは、ITの世界なので、どうしても数学や科学とか、そちらの方の能力って思いがちですが、実は、社会的感情学習というものが1番端的なポジティブな効果があった。これは一言で言うとソフトスキルです。オレンジ色のバーの左から、日本語で言うと、自己認識、これは内省的であるかどうか。その次は自己管理力。真ん中が、環境を理解する力、自分の置かれた環境を理解する力。それから対人能力、最後は責任ある決定をする力と言う、学校の机の上では教えられないようなソフトスキルが、eスポーツを通じて非常に高まったという研究成果が出ております。こういうことをどんどん証明して、eスポーツを使ってうまく教育に導くというような活動を行っています。
その1つは、カリキュラムです。
アメリカの高校は、日本と違い4年制です。年齢で言うと、日本の中3から高3までが高校生です。4年間で、eスポーツを通じて、例えば英語のカリキュラムですと、初年時はゲームとシミュレーション、2年目がアントレプレナーシップで3年目がマーケティング、4年目がホスピタリティツーリズムと言うことで、日本だと、なかなかそのまま持ち込むのは難しいのですが、アメリカは割と実ビジネスに近いものを高校でも取り上げる傾向があります。そのアメリカでも、やはり勉強ができなくなるんじゃないか?みたいな心配を保護者の皆さんが、お持ちという状況は日本と変わりません。

そこで、保護者へのサポートと言うことで、ペアレンツガイドが作られました。教育的効果を説明するとともに、common question and concernsということで、よくある質問と心配な事柄をまとめて、保護者の方に配布しています。例えばゲームをすると勉強しなくなるんじゃないかという質問に対する答えとか、運動部に入れないほど気弱で、リーダーシップをとれない子でもできるんだろうか・・といった心配に答えています。他にも、依存症はどうなんだ?みたいな話とか、なんでゲームをみんなでやらなきゃいけないんだ、意味がわからないみたいな。しっかり正面から捉えて答えていて、一緒に解決に行くという活動をしています。保護者からの感想も、自ら動くことの少なかった我が子が、eスポーツクラブを通じて物事に取り組むようになり、友達ができたとか、キャプテンになって、リーダーシップがとれるようになった、ビデオゲームを通じて外国人の友達ができたとか、多くの嬉しいご報告をいただいています。保護者の皆さんも初めての気づきがあるようなこともありまして、こういうのも活動の中でどんどん拡散しています。

あと1つ、大きな活動で「Beyond the GAMEチャレンジ」というのがあります。ここまでeスポーツを通じてっていう話をしてきましたが、ただただゲームをするだけではありません。実は最初から申し上げているのは、ゲームを1つのツールとして教育に導く、つまり、ゲームをするのが目的ではなく、何かを学ぶためのきっかけにゲームを使おうということです。どのようにゲームを使うかというと、具体的な活動というか実践が「Beyond the GAMEチャレンジ」です。これはゲームを超えた挑戦ということで、ゲームというよりeスポーツですが、eスポーツというのは皆さんご存知のように、ただその本人同士が戦うだけじゃなくて、それを配信する、それを解説する、あるいはそのゲーム大会のロゴを作るとか。様々な周辺の作業があるわけです。「Beyond the GAMEチャレンジ」は、みんなが大好きなeスポーツを核にしながらも、その周辺の活動をすることによって、子供達に様々なチャレンジをさせていくと言うのが趣旨です。チャレンジの例として、映像写真撮影、映像編集なんかもあります。他にも配信、イベントの企画の運営、インタビュー、デジタルアート、コスプレ作成、他にもクラブの資金調達とか。すべてアメリカでは実践されてます。日本でも同様のチャレンジがありまして、今後、日本にも取り入れていこうと考えております。
まとめますと、皆がやりたいゲームを教育ツールとして活用し、やりたいことをしているうちに、気が付いたら人間的にも成長できるみたいなようなことを実現したいという思いでNASEFを続けております。

体勢がこの5月から変わりまして、先ほどご紹介しましたように、NASEFはもともとサミュエリ財団がスポンサーとして発足しましたが、この5月から別のスポンサーでさらにネットワークを拡大しております。で、このスポンサーが、マイクロソフト、twitch(eスポーツ配信の大きな会社)amazon傘下です。スキルショットメディアというのは、これはアメリカにある会社で、ゲームのトーナメントプラットフォームなどをつくっている会社です。それから、ハイスクールesports league(HSEL)。これ実はNASEFと似たような団体で、教育というよりは、高校生のeスポーツリーグをずっとやってきた会社です。こことNASEFが連携しようというのが、この5月からの、大きな変化点です。実はNASEFは、加盟クラブ数が1731、加盟生徒数が13,778ですが、このハイスクールesports leagueは、加盟クラブが3600、加盟生徒数が14万。非常に大きいです。加盟生徒数で10倍の規模を持ってます。ただ、教育プログラムのようなものを全く持ってません。ですのでタッグを組んで、高校にNASEFの教育プログラムを導入してさらに発展をしていこうという体制がこの5月から発足いたしました。
ここまでがアメリカのお話で、ここから、日本のお話をさせていただきます。

まず現状、国内の高校教育現場のeスポーツがどうなってるのかなということで、少し現状をまとめました。2018年がeスポーツ元年と言われています。ちょうどこの年、サードウェーブと毎日新聞社が開催した全国高校eスポーツ選手権。まさにこの年が、教育現場のe sports元年ということ。高校生同士でeスポーツに取り組む機会が増えてきた。全国高校eスポーツ選手権に続き、翌2019年には、テレビ東京とコカコーラが、ステージ:0と言う、高校生のeスポーツ大会を開催。この2つが2大大会ということになってます。参加する高校生の数も、2018年は1000人もいませんでしたが、2019年が5629人、2020年が約7000人とどんどん参加人数も増えてきております。
先ほど申しましたように、高校生の7割がゲームをしています。自然な流れで、現在、多くの学校にeスポーツ部が増えてきており、こうした大会に出場するために日々、腕を磨いています。

ただそこには大きなハードルがありまして、まず機材の問題ですね。eスポーツで使用するパソコンは、普通のパソコンではありません。ゲーミングパソコンでハイスペックなパソコンを用意しなきゃいけないということと、インターネットハイスピードのものが必要になります。ですので、この2つの確保が非常に大変なんですが、株式会社サードウエーブが、「高校eスポーツ部支援プログラム」というのを実施していました。ゲーミングPC数台と高速インターネット回線をパッケージでレンタルみたいな形で提供して、高校にeスポーツ部を作る一助になっておりました。現在(2021年7月)、このプログラムを利用している学校が全国で285校ございます。全国に5000弱の高校があります。そのうちの、285校には間違いなく部活動があります。さらに、元々コンピューター部や、プログラミング部がある学校にも、支援プログラムを使ってなくてもeスポーツ部があったりします。おそらく今その日本におけるeスポーツ部みたいなもの、あるいは同好会みたいなものは、350とか400ぐらいなんじゃないかなと思ってます。しかしまだまだこれからだと思っており、だいたい2000校ぐらいにeスポーツ部ができればいいなと思っています。2000というと、だいたい柔道部ぐらいの規模です。そのくらいの数を目標としています。
ただ、そうは言っても、高校現場でeスポーツ部の顧問をやっていただいている先生には、いろいろお悩みがあると。
そもそもeスポーツって何?、
どうやって部活動を運営すればいいの?、
eスポーツなんか俺わかんないよ、
ゲームできないよ、
みたいなこともありますし、
周囲から遊びだって思われるが、教育に生かす方法は?
などが多く聞かれます。
特に一部の保護者の方や同僚の教員の方々から、
「ただのゲームでしょう、教育と関係あるの?」
みたいなことを言われたりですね。
NASEFとしてはこういう現場の先生方の悩みも掬い取って、我々が・・というよりは、みんなで、そういうものに向かって解決して行くと言うふうな、まあ1つの起爆剤というか、プラットフォームになればというふうに思っております。
NASEF JAPANの設立が2020年11月です。設立目的は基本的にアメリカのNASEFの本部と同じです。今は高校主体に活動していますが、あまり限定する気もなくて、中学や大学もいずれスコープに入れて行きたいと思っています。eスポーツを教育や、学習を促進するための公共効果的ツールとして活用し、次世代を担う生徒たちの地位の向上、さらには社会性や、情動性を育む社会的感情学習などをはじめとする教育を支援する。また、活動を通じて将来、社会で活躍する機会を創出する。いうことで活動しています。このNASEF JAPANの運営母体は株式会社サードウエーブです。2021年7月現在、全国で、124の学校がNASEF JAPANの加盟になっていただいてます。

メンバーシップ制をとってまして、加盟していただいた後、我々の教育プログラムや教育コンテンツにアクセスして頂ける他、さらに一緒に活動をする加盟校制度になっています。現在、全国に124校が加盟していますが、残念ながらまだ加盟校0の県がございます。東北、四国あたりがまだ空白になっておりまして、頑張っているところです。我々の活動はまだまだ知られていません。現在、一生懸命その広報活動を行っておりますが、なかなかeスポーツは、すっと行かないのが現状です。ぜひ今日ご視聴いただいている皆さんの中でも、機会があれば、こういう良い活動をしている団体あるよと言うことで、関連のあるような方がいらっしゃいましたら宣伝して頂けると幸いです。

我々の活動指針は、eスポーツ競技プログラミング、eスポーツ周辺活動、Beyond the GAMEチャレンジの、三つの軸で行こうと思っています。これらを通じて育みたいと思っていますのが、次世代人材育成国際化ICTスキルです。そもそもeスポーツというのは、ゲームという大きなくくりの中でも、対戦型です。人間と人間が戦うのが、eスポーツです。それに対して人間相手じゃなくて、コンピューター相手、機械と戦うものをゲームと呼んでいます。我々がeスポーツに価値を見出しているのは、そういった人と人というところがあります。それを通じて教育に結びつけると言うことをやりたいと思っています。よく勘違いされるのは、eスポーツを高校生に広めるのがNASEF JAPANの目的ですかみたいに聞かれるんですけど、それ全く違います。われわれは、eスポーツ普及のための団体ではありません。私どもはeスポーツを手段として利用します。我々が目的としているのは、「次世代人材育成」。これが目的です。この目的を達成するための手段として、eスポーツを利用しているだけで、eスポーツを高校で広めていこうとか、プロゲーマーを作ろうとか、そういう意図はございません。その辺はよくご認識いただければと思います。

我々の今年の活動の内容をご紹介します。まずオンラインセミナー、ウェビナーですね。今日のような、配信を利用した説明会などを実施しております。これは主に学校教員の皆様、学校関係者の皆様に対して定期的に行っております。内容としては、様々なカリキュラムの説明であったり、共同研究の中身であったり、いろいろとありますが、活動を止めないようにしています。
他には、教育サミットシンポジウム。これはちょっと大きな仕掛けなので、年2回ほど実施予定です。この3月に第一回を開催しました。これは、学術セミナーであったり、高校生活の活動発表であったり、有識者のスピーチであったりですね。そういうものをやっております。次回は10月頃に予定しております。
3番目が地方行政との連携。地方自治体と教育eスポーツで、地方創生につなげたい。すでに、京都府さん、徳島県さん、茨城県さん、群馬県さんとは具体的な連携がスタートしております。どちらの方々も非常に前向きです。教育と地方自治体とは非常に親和性がいいので、eスポーツと教育で地方自治体さんと組んで何かできないかというのは、非常にいろんなところからお声がけいただいています。
それから最後に競技大会。2つの大会をNASEF JAPANで組織しております。1つはNASEFメジャー大会、もう1つはそのエクストラ大会です。違いは大会規模と頻度です。やはり教育の真面目なことばっかりだと、生徒さんにつなげられないんで、これも先ほど申しましたように、生徒さんを、attractというか、やりたいことをやってもらって、そこから教育、そしてその先にある可能性に繋げるために、競技会は非常に重要な要素です。
セミナーに関しては、第2回を終えたばかりです。隔月ぐらいのペースで基本的にNASEF JAPANに加盟いただいている学校の教員の皆様を対象にやってます。今後のウェビナー予定のところにテーマがいろいろ書かれていますが、基本的にはその学校現場でのお困りごとを、一緒に解決して行きましょう。あるいはお助けしましょうみたいな。そういう趣旨でやっておりまして、いずれは教員のみなさんにもご登壇いただきたいと考えてます。会員加盟校の先生方のコミュニティスペースみたいな形になればいいなというふうに考えております。
それから教育サミットシンポジウム。こちらは3月に実施した際の写真です。多方面の有識者の方をお招きして、当方の説明だけでなく、勉強も含めて行いました。対象は学校教員の皆さん、それから、高校生の皆さん、教育関係者、自治体の方々。これはオンラインで実施しましたが、非常に多くの方々にご参加いただきました。この写真にありますように、オンラインで遠隔地の学校の先生とリモートで結んで討論会や、パネルディスカッションで、我々の活動の成果などの情報共有のために、6ヶ月毎に実施するものです。
これらの活動は、メディアでも多く取り上げていただいていまして、徐々にではありますが、われわれの活動が少しずつ広がっているとい言うことです。

地方自治体との連携のところですが、これは群馬県の例です。群馬県の山本知事は、非常にeスポーツに対して前向きで教育の価値も非常に良くご理解いただいてます。これは6月30日に山本知事とNASEF JAPAN、そして北米NASEFの方と繋いでリモートでパネルディスカッションした風景です。同時通訳を入れて行いました。実はこれビデオで収録を行いました。まだ公開されていません。非常に中身の濃いお話をされたと言う風に聞いてまして、群馬県さんはU19イベントとか、ティーンエージャーのeスポーツに対しては前向きです。同時に、上毛新聞さんではNASEFのガイドラインなどを取り上げていただいて、依存症対策を正しくやればeスポーツは絶対悪い物ではないというところを、非常によく告知していただいています。このようなことが、今現在の、群馬県さんとの我々の取り組みです。

もう1つ京都府。前回の本セミナーに登壇された尾方さんがご紹介された京都のe sports文化祭です。こちらが今着々と進行しております。この主催は京都eスポーツ振興協議会という団体で、我々もこの協議会の1メンバーです。京都の高校生、そして京都の皆さんと一緒に文化祭を作り上げようということで、eスポーツ大会も行います。それと並行して、様々な人材育成とか、地域創生のプログラムを同時に走らせるということで、例えば、eスポーツを使って英会話の勉強をするといった、そういう英会話セミナーとかですね。先ほども申しましたが、eスポーツの大会をこの文化祭で行いますが、プレイするだけじゃなくて、その現場の配信をやるとか。実況とか、様々な運営等に高校生の皆さんに参加していただくというようなことで、普段の高校の勉強とは違う活動を経験させたいですね。それこそ「Beyond the GAMEチャレンジ」なんですが、これを京都で実践していこうという活動です。
続いて、競技大会のお話をさせていただきます。先ほど申しましたように、我々は、2つの競技団体競技を持っています。ひとつはNASEF JAPANメジャートーナメント、もう1つはNASEF JAPANエクストラ大会。
NASEF JAPANメジャーは、メジャーの名の通り大きな大会でして、地方ブロック予選を勝ち抜いてきた学校が決勝に参加して、チャンピオンを決めます。それなりに、大きな仕掛けなので、年に2回ないし3回できればいいかなと言う風に思っています。
それに対してエクストラは、地方ブロックの予選はなく全国一斉で行います。ゲームタイトルの選定も、ある程度の人気タイトルを入れて、あまり固くしないように、コミュニティ大会カジュアルトーナメントという形で、2ヶ月に一回以上やるという事で、常に高校生の皆さんが、eスポーツに接する場、健全に競技する場を提供するというのが趣旨です。
なぜやるかというと、先ほども述べましたが、我々は、eスポーツプレイヤーを作ろうとは思っていませんので、高校でeスポーツがどこでもやれる環境づくりを目的としているわけではなくて、eスポーツを通じた人材育成ということであります。よって、トーナメントとか大会を行い、生徒さんたちにすごく興味を持って入っていただいて、その中で教育プログラムをうまく絡めて教育へ誘導して教育の価値を提供する。正に、Beyond The GAMEチャレンジみたいなところで、なかなか言うは易し行うは難しですけども、これを全国規模でやって行きたいというふうに考えております。

今、高校生の大会は、全国高校eスポーツ選手権と、stage ZEROの二つが代表格です。それぞれ年一回ある大きな大会ですが、その下に我々のメジャー、それから1番下にエクストラということで、裾野をどんどん拡大するのがNASEF JAPANの仕事です。先の二つは公式で文科省の後援をとっています。そういう公式度合いが高いのがこの頂点にあるこの2つの大会です。我々はそこの下ですね。草の根的にどんどん広げていこうというふうに思っております。
第一回のNASEFメジャー。実は6月に終わったばかりです。この決勝戦の模様はYoutubeチャンネルで配信しました。今でもアーカイブにあがっていますので、ご覧頂けます。参加チーム数が100チームで決勝進出が42チームということで、今一番高校生に人気があると言われている、フォートナイトというタイトルで開催いたしました。
第二回のメジャートーナメントは、昨日から参加チームの募集が始まりました。タイトルはロケットリーグです。決勝が9月18日で、今回の目玉は、優勝したチームは、オーストラリアの高校生とリアルタイム対戦ができます。国際親善試合ということで、英語でちょっとコミュニケーションを取ったりしていただきたいですね。海外との交流戦は、技術的にも大変ですけれども、テストを繰り返してできるようになりました。こういうこともNASEF JAPANならではのアレンジということで進めております。

今後の全体スケジュールです。ビジーですけれども、要はこれぐらいの頻度でどんどんどんどんやっていて、とにかく活動を続けて、高校生を巻き込んで行こうという意図です。それから、プログラミングのところは、マインクラフトというソフトがございます。これを使ってコンテストをやろうと。この取り組みは、NASEFのアメリカの方でも既にやっています。NASEF JAPANの方でもやろうと思っております。あとは、顧問の先生向けのHow toもののコンテンツを用意しようと企画をしております。今コロナで、緊急事態宣言が東京で出ていますけれども、冬ぐらいにもしこの環境が落ち着いたら、冬休みの時期にキャンププログラムみたいなこともやれないかな。これもアメリカではよくやられています。ちょっと集まって、実際に、高校生と我々が一緒になって、教育的な様々な活動を進めていけたらと考えております。

最後に、実際に高校の教育現場で実践されている例がございます。これをご紹介します。国立阿南高専、徳島県の工業高等専門学校です。ここにeスポーツ研究会があります。非常に熱意ある教員の方がいらっしゃいまして、この方がリードを取って2018年6月に構内大会の運営や、eスポーツの研究、eスポーツを通じて人間力育成を目的として発足しましたということで、アスリート部門、これはゲームを頑張る子どもたちですね。もう1つは、さっきのBeyond the GAMEチャレンジのようなマネジメント部門というのを作り、活動をされています。
高専なので、クラブ活動だけでなく、実際に授業に取り入れているということです。高専ですから技術があるのは当然として、それのみならず、大会を運営して行くとか、お金を集める、校内だけで通用する仮想通貨みたいなものまでも用意されているとのことです。そういうものまで用意して、会社を運営するといった疑似体験をされているそうです。
こういったことで、技術のみならず、社会人基礎力、コミュニケーション力をつけるという活動をされています。

実施後、社会人基礎力が向上したかどうかというアンケートしたところ、9割以上のかたが向上したと。電気通信技術の向上も、8割以上の方があったということです。この学校においては非常にこのeスポーツを通じた活動が、効果があるものとして、研究されて活動もされているということでございます。

学生の声もいろいろ書いてあります。「eスポーツに関わっていなければ、社会性の乏しいただのゲーマーだったかもしれない」。「自分に自信が持てるようになった」。これらの言葉は、高校のeスポーツをやられてる高校関係者の方々から、同様のコメントを非常によく聞くんですね。ですので、eスポーツは、きちんとルールを守ってうまく活用すれば、決して悪いもんじゃない。むしろポジティブな面の方が多いというふうに我々は信じております。
最後のスライドになりますが、お知らせです。
全国高校eスポーツ選手権、第4回が昨日発表になりました。今年の12月に決勝を予定しています。出場校数はもちろん、一校から複数のチームが参加し、出場チーム数がどんどん増えてきております。第3回では194校が参加しました。ロケットリーグが178チーム、league of legendsというゲームで168チームで、年々増えています。
第4回は、今年の12月に決勝を行います。今回はタイトルが増えました。今までロケットリーグとリーグオブレジェンドだけでしたが、第四回からはフォートナイト、高校生に1番人気があるというタイトルを追加しまして、さらに参加校を増やしたいと思っております。主催は一般社団法人全国高校eスポーツ連盟と毎日新聞社。特別協賛がサードウェーブです。後援に、文部科学省と、オンラインゲームeスポーツ議員連盟いうことで、これはNASEF JAPANの活動ではございませんが、高校eスポーツの1つの頂点のイベントということで、ご紹介させていただきました。12月に開催される予定です。
本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。少しでも私共の活動をご理解頂いてければと思います。ご清聴ありがとうございました。

梁瀬 松原さん、ありがとうございました。いくつかの質問入っていますが、最初中村先生に振らせていただきます。

中村 「eスポーツは手段」というふうにおっしゃられまして、で何の手段かというと、「次世代人材育成」ということですが、具体的に、この「次世代人材」というのは、どういうような人材をイメージされているんでしょうか?

松原 はい。2つの、側面があると思ってまして、1つはICTですね。デジタルリテラシーの部分。ここがやはりこれからの世の中デジタルというのは様々な物事の中心になろうかと思うんですよ。もう1つは国際性ですね。私の若い頃の苦労の話も最初にしましたが、やはり世界に打って出る。特に日本は島国なので、普通にしますと海外との接触もそんなに多くない中で、eスポーツというのは本当にリアルタイムで世界中、日本と繋がります。そういうものは他にそんなにはないので、それを通じて、英語もですが、国際性を高めていただいて、次世代に貢献する人材を育てたいという、そういう思いでございます。

梁瀬 「なぜ新聞などというold媒体と組んだのでしょうか?将来を見据えているのでしょうか?」というご質問です。

松原 誤解があるかもしれませんが、NASEF JAPAN自体は新聞社さんとはと組んでおりません。全国高校eスポーツ選手権を主催しているのが一般社団法人であるジェセフと、毎日新聞記者さんです。この選手権を毎日新聞さんと最初に主催したのが、コンピューターショップ ドスパラを運営するサードウェーブで、NASEF JAPANはサードウェーブが推進母体です。NASEF JAPAN自体は特に、新聞媒体あるいはほかのメディア媒体とも、今のところ連携はございません。

梁瀬 「教育に対する効果はどのようなデータが得られているのでしょうか。また、先ほど主に、高校生という表記がありましたが、高校生と比較して中学生のe sportsの相性というのはどうなんでしょうか?」というご質問です。

松原 高校e sportsの教育効果に関しては、日本でのデータはこれから収集していくという状況です。NASEFの本国では、もうすでに大学と連携していろんな研究が進んでいます。研究論文等はもうたくさんございまして、この研究論文を日本語化してどんどん公開していく予定です。さらに、脳外科のお医者様と連携し、eスポーツや、スポーツ医学を含め、アメリカの研究結果と、日本の研究結果がそれぞれ見比べられるような環境を作ればいいなと思っております。
もう1つの質問、中学生との相性についても、よくお話いただきます。中学生ももちろんですが、順番から言うと、高校生からという順番にならざるを得ないんです。中学生にも広げていきたとは考えてます。ただ、ゲームのタイトルによって、年齢制限が入ってくるもの、できないものもありますので、その辺を注意しながら行わないといけないと考えています。

梁瀬 ありがとうございます。「アメリカではeスポーツに対する保護者の理解は、日本と比べてどうなんでしょうか?」

松原 私が3年前にNASEFの米国本部に行った時に向こうの人に最初に聞いた質問です。その時思ってたのは、アメリカeスポーツ大国でもありますし、もともとアメリカで作られたタイトルは世界中を席巻しているような事情もありましたので、その辺の理解はもうすごく進んでいるんだろうと思って聞いたんです。そうしましたら、「いやいや、もう日本と同じだよ」みたいなことを言われまして。やはり親御さんは心配する。子供がゲームをしているということに対してポジティブに思っている親御さんは、それはもう数少ないと言われました。しかし彼らは言っていました。「だからやりがいがあるんだ」と。要は、大人がなかなか理解できないものを我々が好感度を上げて、ちゃんと理解して導けばいいと。ゲーム依存症が起こらないように、我々がちゃんとガバナンスをとることが大事だということで、事情は程度の差は多少ありますが、日本もアメリカもそれほど変わらないという感じですね。

梁瀬 なるほど。あと、もう1つ。「英語教育というのは具体的にどのようなものなのでしょうか?」

松原 プレイ中、ボイスチャットで会話します。ゲーム内の用語は英語で、世界共通みたいなところがあります。そういうところから入っていき、海外の人たちと対戦する中で、英語を身に付けていく。実はサードウェーブの社内にいる元プロゲーマーなどは、かなりの確率で彼ら英語ができます。ちゃんとした英語教育を受けてきたかというと、学校以外で誰かに習ったことはないとのことですが、なぜかできるんですね。eスポーツがだんだん強くなっていくと、日本だけじゃなく海外の人たちと戦いたくなるそうです。そこでコミュニケーションが生まれて、いつの間にか話せるようになったという話をよく聞きます。それはあまりにも野放しなので、NASEF JAPANとしては、筋道を作ろうと考えています。英会話とeスポーツを絡めるようなプログラムを作られている会社があります。そういう会社ともいろいろお話をしながら、プログラム化を進めていこうかなと考えております。

梁瀬 ありがとうございます。以上はチャットとQ&Aの質問でしたが、私から1つ。プレゼンの最後の方に阿南高専の話が出てたと思うんですけど、なぜ阿南高専で上手く行かれてるのでしょうか。阿南高専の中にとても積極的な先生がいらっしゃるっていう話をされてましたけども、ある意味属人的な部分があって、そこが要(スタートのトリガー)になるのでしょうか?

松原 小松教授とおっしゃる方がいらっしゃいまして、この先生がものすごいリーダーシップを発揮され、活動を論文化されて、様々な場で発表までされているんです。他にも各地に熱量の高い先生がいらっしゃって、そういう方々がリードを取ってらっしゃるのが現状なんです。今までは、良い取り組みであっても世間に周知される機会がほぼありませんでした。阿南高専をはじめ、各地の先生方の活動を我々はそれをもっと広めていこうと思っています。NASEF JAPANには、フェローシップ制度がございまして、小松先生のように先進的な取り組みをされている先生方をフェローとして、アサインさせていただいています。我々は、そういう取組みを世の中には伝播して行くみたいな活動して行きたいと、そういうふうに考えております。

梁瀬 ありがとうございます。
中村 先ほど、アメリカの保護者への説明の中で「ガバナンス」とおっしゃっていましたが、「勝手にやらせてたら依存症になっちゃうからこちらでコントロールしなきゃいけない」ということでしょうか?

松原 1つはやはり時間をある程度コントロールしないと、やりすぎちゃう。他にもeスポーツのcode of conduct、いわゆる行動規範を作っています。よくあるのはeスポーツでエキサイトしてくると暴言吐いてしまうことがありますが、絶対ダメですね。それを行動規範の中にバシッと明記されており、eスポーツ、ゲームの中でそういう乱暴な発言などは練習も含めてやってはいけませんといった指導をしています。いわゆるeスポーツを正しい形で学生たちがプレイする指導がなされています。我々も日本において同じようなことを行いたいと考えています。

中村 ありがとうございます。スポーツ科学の分野に「スポーツ教育」という言葉があります。スポーツによる人格形成とか、スポーツマンシップとかですね。スポーツをやることで人間教育が果たせるとか、人格が整っていくとか。まあ、スポーツをやることは良いことだ。こういう効果効用があるというような事が色々と言われています。だけど、よく考えてみたら、スポーツ科学という考え方は、例えば、早稲田で言うと、スポーツ科学科という呼称で、「スポーツ科学」を前面に出した大学教育のプログラムを作ったのが30年ぐらい前です。それ以降、「スポーツ科学」という言葉が当たり前のように広まったんですが、実は、早稲田大学が2003年にスポーツ科学部を作った時に、「スポーツ科学部に行きたい」という生徒の親から「なんだその学校は」と言われたという話がありました。まあ、かくいう私も東京大学で教育学部体育学専修(体育学科)に進学する際に、私の父親から「なんだそれ。東大に行って体育に行くとは何事だ。」というふうな反応があったので、40年前は「体育」というのは、高校中学のカリキュラムの中でも、学業と関係の無い教育プログラムだというように思われてた時期があった。体育学会の中でも、体育・スポーツには大きな価値があるのだということを研究しなきゃいけないような、そういう研究対象だというふうに思える時期がありました。未だに「子供は運動すると頭が良くなる」とかというような仮説を検証しようとする人がいるぐらいです。今は、子供の頃からスポーツをやることが人格形成につながるというふうに考えてくださる親御さんが多くなってきたと思うのです。そういう観点で言うと、eスポーツっていうのは、なんか30年前、40年前の体育・スポーツみたいな。つまり、運動部活に明け暮れる子供に「ちょっとは勉強しろよ」とか「運動部もいいけど、勉強もしっかりしろよ」みたいな事を言うような親の気持ちがあった。その「ゲーム版」だみたいに思うのですがどうですか?

松原 いや、全くそうだと思います。例えば、ダンスですね。ストリートダンスなどは、数年前まではもう不良のやるもんだみたいな(笑)。今はもう高校でダンス部ってできてますし、そんな不良のやるもんだみたいなこと誰も思ってない。やっぱり必ず時代が追いかけてくると思ってまして、スポーツの例もそうですけども、結局みんな好きでやっているもので、そんなに悪いものって実は無いんじゃないかなと思っています。ただ、そのやり方をうまくやらないと、リアルスポーツでも何でもそうですが、やり過ぎると体を壊すし、体もメンタルもダメージを受ける。よくeスポーツだけがそういう対象とされますが、そんなことはありません。みんながまだよく知らない、プラスの面もたくさんありますので、先程のダンスの例と同じで、プラスの面を如何にハイライトして、そういう風になるように、時代を持って行くのが正しい道だと思っています。NASEF JAPANは、まだ全然小さな団体ですが、今の若い世代や世間を、少しずつでもそういう方向に導くことができればいいなと考えています。

中村 ありがとうございます。もう1つよろしいですか。やりすぎると良くないというのはよく分かるんです。でも、「勉強しすぎる」ということについて、あまり否定的な目線を感じる方っていらっしゃらないですよね。ところが勉強しすぎて私は目が悪くなったんですよね。つまりそういう人はものすごくたくさんいるんですよ。ただただ勉強。勉強の依存症というのがあるとして、黙ってコリコリ勉強してたとしても、別に親は何にも思わないし、頑張ってるねというふうに言うわけですよ。どうして、勉強はいくらやっても良いのにゲームはやり過ぎちゃいけないのかなという風に思うと、実は勉強そのものも、100年前、150年前の日本、義務教育が浸透してない時代には、「学校行って何なんだ」と言う風に思われた時代もあるんですよね。つまり、学校だけが人格教育の場じゃなかった。200年前はおそらく世界中でそうだったんじゃないか。1部の人だけが家庭教師をつけて大人に教えてもらうことはあったけれど、という時代においては、勉強する学問をするというのは、今のeスポーツみたいなものなのではなかったのか。必ずしもすべての人が肯定的に思ってたわけではないという側面もあるのではないかという気もするんです。そうすると、先ほど「次世代人材育成」、「次世代人材」とおっしゃっていましたが、何か「今の常識にとらわれない人材」を育成するっていう観点において、もしかしたらeスポーツって、その育成手段としてとても活用の価値がある。そういう時代がくるのではないかという気がするのですが、いかがでしょうか?

松原 リアルスポーツとの比較で言うと、別にリアルスポーツと対抗するものがeスポーツだと思っていませんが、eスポーツとか、ゲームを含めて、今までのそういうスポーツと決定的に違うのは、ジェンダーフリー、エイジフリー。それからリージョンフリー。今まで様々な制約があったものが全部とっぱらえるものがeスポーツなんですね。例えば、地球の裏側の人とeスポーツで対戦出来ます。それが日常的に凄い仕掛けをしないとできないということではなくて、本当にソフトを立ちあげるだけでできてしまう。また、相手が男性なのか女性なのか分からなくてめちゃくちゃ強いんだけども、実は高齢者だった。こんな世界はeスポーツしかないので、これはやはり本質だと思います。これが。本当に世の中の人に良く理解されて、そういう側面が包括されると、今の時代の流れの中で、最もヒットしたものではないかなというふうに考えます。

中村 ありがとうございます。「eスポーツとは何か」とか、「eスポーツはリアルスポーツとどう違う」とか、「eスポーツはスポーツなのか」、といった議論が2年前ぐらいにこの学会でもあったのですが、そういう問題ってすごく小さく思えてきました。eスポーツは、人格形成の観点からも、もっと大きく発展する可能性があるような気もします。
ところで、高橋義雄先生からコメントがありましたが、お願いします。

高橋 中村先生の議論を聞いて非常に面白いと思いました。やはりeスポーツは通常のスポーツと違って、夜できるというのが非常に大きな違いだと思います。しかも国際的に。夜中にロシアの人と対戦したり、ヨーロッパの人と対戦したりということで、基本的に昼夜逆転の可能性が高い。スポーツは、夜中の2時、3時に東京ドームを借りてやる高校生はいないと思うんですよね。その点が実は昼間中心に行われている学校教育とeスポーツとが相反する可能性がありまして、中卒になっちゃうとか、高校も行けなくなっちゃう。まあ一般の人が言うと不登校っていう言葉になっちゃうのかもしれませんけど、彼らは別に不登校したくてしてるわけではない。eスポーツしたいから身体が順応しなくなったというだけの話で。そういう意味で言うと、学歴という点で親が心配する。今、性別だとか、年齢で就労を制限すること、例えば女性はダメとか、何歳以上はダメというのは、就労の差別となるのですけど、学歴だけは唯一残ってるんですよね。要は大卒以上とか。僕自身は、それは差別だと思ってますけれど、そういったことに引っかかる可能性が高い活動だという風に、eスポーツは思われてるんじゃないか。そういう意味で言うと、code of conductだとか、アメリカの学校でeスポーツを扱う人たちが、学歴だとかの点については非常にサポートしてるんじゃないかなっていうふうに思いました。eスポーツをする人たちの教育を考えるということは大事なんだろうなというふうに、今日の発表を聞いて感じました。ちょっと外れているかもしれませんがいかがですか?

松原 仰るとおりですね。先ほど、脳外科の先生と連携しているっていうお話したんですけども、実はその先生はゲーマーだったんですね。バリバリのゲーマーなのに、医大を出て脳外科の先生になられた。医師になってからもゲーム続けてたみたいなことをおっしゃってまして、そういうこともあるので、うまくやればやれるし、code of conduct、行動規範を活用し、今後、懸念されているようなことが起こらないよう、我々としてはそういうところもよく注意しながら、進めていこうというふうに考えています。

高橋 おそらく、通信制の高校だとか、高卒認定の試験を受ければ、中卒であろうと小卒であろうと、大学受験が可能です。松原さんがおっしゃったとうり、eスポーツをしていようがしていまいが、藤井君が将棋打ってるのと一緒でできるんですよ。もっと言うと本当にeスポーツができるような人は、そのところができるので、その分集中できるってことですから、他の事を集中しようと思えばできるわけで。まわりがうまく制御して、ゲームの社会、ゲームを取り込んだ社会。eスポーツを取り込んだ社会というか、eスポーツが重要だろうという社会に変わって行くと、自然に、eスポーツは普通の活動になるんじゃないかと感じているところです。

梁瀬 ありがとうございます。皆さん、どうもありがとうございました。

 

 

 

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