30年間を振り返って
尾山 基
Motoi Oyama
日本スポーツ産業学会共同会長
株式会社アシックス代表取締役会長CEO
—— 30年間を振り返って
1990年に学会が発足してからの30年間で、日本のスポーツ界は大きく様変わりしました。1993年のJリーグ開幕は日本に新たなスポーツの変化をもたらしましたし、2007年に開催された東京マラソンを皮切りに一大ランニングムーブメントが巻き起こり、スポーツが人々の日常生活の中に入るとともに、そのイメージも「学校体育」から「健康やエンターテイメント」の方向に意識が向くようになりました。観戦スタイルも、デジタル技術の革新によって、地上波だけではなくDAZNやNetflix等で楽しむという方向に進化しています。
—— スポーツ産業の今
withコロナの新しい世界において、私たちは大きく変化することが求められています。企業も、お客様の動向や政府の規制が大きく変化したことを踏まえて、製品やサービス戦略、広報活動などステークホルダーとのリレーションシップを再考する必要があります。当社としても、物販の会社から、アプリケーションやサービスによる収入等、いわゆるプロダクト以外の売上比率を上げる、またECの売上比率を上げていきたいと考えています。在宅ワークアウトアプリ「ASICS Studio」や、フィットネス・トラッキング・アプリ「Runkeeper」、レース登録サイト「Race Roster」などの事業の拡大にも期待しています。
—— スポーツ産業界のこれから
昨年、世界スポーツ用品工業連盟会長を拝命いたしまして、今後3年間のストラテジーとして、環境問題を大変意識しています。製品についても、ゼロエミッション、脱プラスチックの方向にどんどん向かっていきます。また、人々のフィジカルアクティビティ、すなわち身体を動かしましょうということも今後来るべき3年間の大きな戦略になっています。COVID-19の影響でスポーツ環境は大きく変化しましたが、小さな子どもから高齢者まで身体を動かすということを含めて、多くの人々が充実し満足する生活ができる新しい世界を作っていくこと。これが、スポーツにかかわる産業が一丸となって推進していくべきなのだと思います。