日本スポーツ産業学会間野新運営委員長あいさつ


間野義之
日本スポーツ産業学会運営委員長/びわこ成蹊スポーツ大学学長/早稲田大学名誉教授

現在、座長を務める「第二期スポーツ未来開拓会議」の最終報告の調整に入っています。第一期では、2025年までにスポーツ産業の規模を5.5兆円(2015年時点)から15兆円にするという目標を掲げていました。2019年のラグビーワールドカップから2020年の東京オリンピック・パラリンピックという連続した国際的ビッグイベントを通じてスポーツ産業を発展させるよう、政府の最上位計画である「日本再興戦略2016」のなかにもスポーツの成長産業化が盛り込まれ、産官学民が一丸となって取り組んできました。

残念ながらパンデミックの影響でこれらの恩恵を十分に受けることはできず下方修正せざるを得ませんが、スポーツ場面へのデジタル技術の活用促進、OTTを始めとする新しいスポーツ観戦の展開、クラスターを避ける感染症予防対策など着実に進歩した分野もあります。また、2024年パリオリンピックでは団体球技の全7競技で日本代表が出場できていることや、スポーツ・ガバナンスコードの徹底やスタジアムアリーナのスマート・ベニュー化など、スポーツ産業の規模拡大に向けて、今後に高くジャンプする前の沈み込みの状態と捉えることもできます。

身近な話題としては、これまで無償で提供されていた中学校の運動部活動が、地域移行により将来的には民営化・有償化されることになります。全国に約1万校ある中学校の大改革は、今後のスポーツ産業の発展に大きく寄与するとも考えています。

さらに、北海道のニセコに代表されるようなスポーツツーリズムでは、日本の文化や食の魅力とスポーツが合わさることで、スポーツビジネスの牽引役となる可能性も高いと思われます。

日本スポーツ産業学会は学術団体として、これまで通りスポーツ産業の成功要因や阻害要因を理論的に明らかにし、未来に向けて社会に提案していくことに加え、これまでの常識に捕らわれないような、視点を高くかつ裾野を広げたユニークな研究を期待しています。そのような研究がスムーズに実現できるよう、運営委員会には新たな分科会も設け、全体で7つの分科会チームで様々な施策・事業を実行していきます。

最後に、私が学長を務めるびわこ成蹊スポーツ大学で2025年7月に学会大会が開催されます。キャンパスは標高1,000m級の比良山系と、20キロメートル続く真っ白な浜辺に挟まれた美しい場所です。湖上でのアクティビティも計画中です。中央棟4階には「日本で一番景色がキレイな学食」もありますので、皆さん楽しみにしていて下さい。

プロフィール(まの・よしゆき)博士(スポーツ科学)。横浜国立大学教育学部卒業後、同大学院教育学研究科修士課程修了。東京大学大学院教育学研究科修士課程修了。
1991年、株式会社三菱総合研究所に入社。2002年、早稲田大学人間科学部助教授。2009年、早稲田大学スポーツ科学学術院教授。2024年、びわこ成蹊スポーツ大学副学長、7月に第6代びわこ成蹊スポーツ大学学長に就任。
スポーツ庁・経済産業省「スポーツ未来開拓会議」座長/経済産業省「地域×スポーツクラブ産業研究会」座長/日本政策投資銀行「スマート・べニュー研究会」委員長/三菱総合研究所「レガシー共創協議会」会長/公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会参与などを歴任。

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