スポーツ庁ビジネス便り

スポーツ庁ビジネス便り
由良英雄│文部科学省スポーツ庁参事官

4月になりました。新学期の到来とともに、大学の体育会にも新入生が入ってきたところでしょうか。一番伸びしろのある一年生のため上級生がより良い環境を作ってやるような、体育会系イノベーションが提唱されています。スポーツの世界を変えていこうという力強い動きがスポーツ界の内外で加速されるよう取組みを進めましょう。
直近のスポーツ庁の活動の中から、新しい政策の話題をご報告します。

部活動指導員

中学校、高等学校における部活動の指導に専門性のある指導人材を導入します。これにより、生徒が部活動に打ち込める環境の整備、多忙を極める先生の負担軽減、地域のスポーツ指導者等が活躍できる機会の充実などいずれの関係者にとってもプラスになる改革を実現できる可能性があります。
文部科学省では、学校教育法施行規則に「部活動
指導員」を制度として明確に位置付け、教員でない指導者であっても一定の任免手続きを経て部活動の指導・引率に単独で当たれるようにします。4月1日からの施行予定です。
部活動指導員には指導手当を支払う必要があり、その予算についても既存の予算枠組の中で順次充実を図ってきていますが、今後更に官民の多様な財源が活用できるよう試行的な取組を含め検討を進めます。 部活動の適正化については昨年来報道されているよ うに適切な練習時間や休養日の設定等も進めることとしています。そのための「運動部活動に関する総合的なガイドライン(仮称)」は平成29 年度中に策定することとしています。

日本版NCAA構想の推進

日本再興戦略2 016に掲げられた大学スポーツの活性化の取組として、スポーツ庁及び文部科学省高等教育局が共同で大学スポーツの振興に関する検討会議を進めてきました。
昨年夏の中間取りまとめにおいては、大学内に大学スポーツに関するマネジメントを担当する学長直結の部局を設置して取り組むべきことなどを提言したところです。今年は更に検討を進め、大学横断的かつ競技横断的統括組織(日本版NCAA)の在り方についてこの3月に報告書を取りまとめました。
報告書においては、日本版NCA Aに期待される役割として、学生アスリートの育成、学生スポーツ環境の充実、地域・社会・企業との連携などの項目を掲げました。
平成2 9 年度はこの報告書を受けて大学、及び種目別の学生競技連盟を中心とした産学官連携協議会を設置し、国内外の幅広い知見と協力を集めて日本版NCA Aの具体的な制度設計を進めることとしています。また、大学がスポーツ部局において進めようとする新たな取組の提案を募集し、先進的な事例の創出につなげることとしています。

アスリートキャリアコンソーシアム

アスリートのキャリア形成については、平成2 3 年に策定された現行のスポーツ基本計画において競技の面でのキャリアと人生を通したキャリアを並行して進める
「デュアルキャリア」の考え方を取り入れ、アスリート本人に主体的な取組を求めるとともにアスリートを取り巻く関係者がキャリア教育や個別アドバイスを提供していくこととしています。
本年2月には、このような取組をスポーツ団体だけでなく大学、産業界などと一体で進めていくため、アスリートキャリアコンソーシアムを立ち上げました。現在、NF、大学、企業又はその団体など幅広くメンバーの加入を呼びかけているところです。

本年2月2日開催のアスリート・キャリア・トークス・ジャパン2017においてコンソーシアムの設立調印式が行われた

女性スポーツ

女性の活躍はスポーツのみならず幅広い分野において重要な課題となっていますが、特にスポーツにおいては身体的な特徴や個人の趣味嗜好などスポーツに特有の事情も影響されることから、より丁寧な検討と積極的な取組が必要です。
スポーツ庁では昨年来内部で勉強会を行い、中学生女子の運動習慣の二極化(部活動に参加する生徒としない生徒の差が大きい)、2 0 代・3 0 代の女性のスポーツ参加率の低さ、スポーツ指導者やスポーツ団体役員における女性比率の低さなどの課題を特定してきました。また、英国を始めとする諸外国や国際的なスポーツに関する協議の場において、女性のスポーツ参加率を高める様々な取組が進められ、効果を上げてきていることも確認してきました。
こうしたことを踏まえ、後述の第二期スポーツ基本計画においては「スポーツを通じた女性の活躍促進」を柱の一つとして掲げたところであり、これを契機として、女性スポーツについて施策の具体化を図っていくこととしています。

英国では女性に日常のスポーツの楽しみを促すため、14歳〜40歳の女性を主な対象としてThis Girl Canのメッセージキャンペーンを実施

プレミアムフライデー

本年2月24日から、金曜日夕刻の時間の使い方を変えていこうという「プレミアムフライデー」と取組がスタートしました。政府の働き方改革の一環でもあり、企業も政府自治体も社員・職員に対してその時間を工夫して使ってみるよう促しています。
流通小売、旅行、サービスなど様々な分野の産業側からも消費需要を喚起するメニューが提案されています。スポーツ庁では、スポーツ用品小売、フィットネス、スポーツツーリズムなどスポーツに関連する企業に声掛けして、プレミアムフライデーのキャンペーンに沿ったイベント企画などの発信を行っていきます。

スタジアム・アリーナ改革における資金調達支援

スタジアム・アリーナの先進事例の創出のため、これまで公的資金に依存してきたスポーツ施設の整備運営に民間資金を導入するための資金調達手法・民間資金活用検討会を本年2月から3月に掛けて開催しました。検討会においては、PPP/PF I手法を用いたインフラ整備の事例などを参考に、公的資金と民間資金を組み合わせて施設の整備と運営を行うことができる可能性が示されたほか、国内で先行事例が限られている中で収支見通しを立てづらい新規案件について公共の予算、政策的な出融資、民間企業の協賛など複数の資金によりリスクを分散させることなどが提案されました。
今後は、この検討会の報告書の内容を始め様々な知見を関係者に展開し、個々の案件ごとに地域の関係者で構成する地域スタジアム・アリーナ推進協議会での協議を促すことなどにより先進事例の創出を図ります。

地域未来投資、地方創生

経済産業省では、地域経済を牽引する中核的な企業の取り組みなどを支援する地域未来投資法案を閣議決定し、国会に提出したところです。スポーツはこの仕組みの中で重要な分野と位置付けられており、地域における案件の提案が期待されています。
また、内閣府地方創生推進室が進めている地方創生推進交付金制度においても、スポーツを柱の一つとして取り組んでいくこととしており、地方自治体からの提案が期待されています。

スポーツ基本計画

スポーツ基本法に基づき平成29 年から平成33 年までの5 年間のスポーツ政策の基本方針を定めるスポーツ基本計画が、スポーツ審議会(山脇康会長)及びその下の基本計画部会(友添秀則部会長)における熱心な討議を経て策定されました。
平成28 年までの第一期基本計画には全く触れられていなかったスポーツビジネスやスポーツと企業との関係、コーチやスポーツ団体が自ら稼ぐといった考え方などが、「スポーツの成長産業化」という目標のもとに大きく位置付けられるとともに、計画全体に通じる重要な哲学の一つとして取り込まれました。
具体的な取組は、スポーツ庁設立からの1年強の間に着手が始まったものはもとより、今後提起される様々な切り口からの施策の具体化により強力に推し進めていく必要があります。

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