スポーツ産業学研究第36巻第3号

【原著論文】


小学校体育授業における運動有能感を高める授業づくりの検討-協働的な学びの場に着目したボール運動『ゴール型』の実践を通して-

木山 慶子
群馬大学共同教育学部
髙橋 宏太
群馬県館林市立第六小学校

本研究は、小学校高学年ボール運動「ゴール型」の授業において、協働的な学びの場を設定することによって、児童の運動有能感を高めることを目的とした。
6年生の2クラスを対象に、全8時間の単元「10マスバスケットボール」の授業を実践した。授業においては、➀コートの10マス化、②個人技能向上のためのドリルゲームの毎時間実施、➂作戦ボードを活用した話し合い活動、➃家庭学習「ホメコメ」の取組、の4つの手立てを行った。
調査内容として、単元前後の運動有能感調査、毎時間の児童のふり返り、単元後の4つの手立てに関する調査、およびパフォーマンス評価を実施した。
その結果、コートを10マスに区分し番号を付けることで、児童の動きの目的が具体的になり、動き方がわかりやすくなった。単元を通して同じ運動(ドリルゲーム)を行うことで、毎時の技能の向上が自覚でき、「統制感」の向上につながったと考えられる。また、作戦ボードを活用したことによって話し合い活動が活発化し、発言する時間を確保することで、普段は発言することが苦手な児童も意見を表出できるようになった。家庭学習「ホメコメ」への取組においては、動画を視聴し、気付いた互いのよさを伝え合うことで、仲間に認められる感覚を味わうことができたと推察される。以上のことから、これらの手立てが、児童の運動有能感の向上および維持に寄与したことが示唆された。


コンペア学習における短期的パフォーマンスと動作変容-自己調整的側面の示唆-

吉田 聡美
北翔大学大学院生涯スポーツ学専攻
竹田 唯史
北翔大学生涯スポーツ学部
山本 敬三
北翔大学生涯スポーツ学部
永谷 稔
北翔大学生涯スポーツ学部
渡部 峻
北翔大学生涯スポーツ学部
蓑内 豊
北星学園大学文学部

スポーツでは、同じ動作を繰り返し練習することが一般的です。しかし、スキルを効率よく習得するためには、繰り返すだけではなく、動作の違いに気づき、自分で調整していくことも重要ではないかと考えられます。
本研究では、この考え方に基づき、新たな練習方法としてコンペア学習(Comparative Practice:CP)を提案しました。コンペア学習とは、類似した課題を意図的に比較しながら練習する方法です。本研究では、大学バレーボール選手22名を対象に、ショートサーブのみを繰り返す従来のブロック学習(BP)と、ショートサーブとロングサーブを交互に比較しながら練習するコンペア学習を比較しました。
その結果、コンペア学習を行ったグループでは、短期間の練習後にサーブ成功率が有意に向上しました。一方、ブロック学習では有意な向上は認められませんでした。また、三次元モーション解析では、コンペア学習を行った選手の多くに、自身が改善したいと考えていた動きと一致する動作変容が認められました。さらに、練習後の振り返りでは、「ショートとロングの違いが分かった」「打点やタイミングを意識するようになった」など、比較を通して動きを見直す記述が多く見られました。
これらの結果は、異なる課題を比較することによって、自分自身で動きを調整しながら技能を習得する過程が促進された可能性を示しています。本研究は短期間の検討であり、長期的な効果については今後さらに検証する必要があります。しかし、本研究で提案したコンペア学習は、バレーボールだけでなく、さまざまなスポーツや技能習得の場面に応用できる可能性があります。今後は競技や年代を広げ、その有効性をさらに検証するとともに、スポーツ現場で活用できる新たな練習方法として発展させていきたいと考えています。


セントラル開催における観戦動機:観戦者の居住地と応援クラブに着目して

太田 明李
中京大学大学院スポーツ科学研究科
伊藤 央二
中京大学スポーツ科学部

近年、セントラル開催を活用した観戦型スポーツイベントが全国各地で注目を集めています。日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)が主催するWEリーグカップ決勝は、セントラル開催を活用した試合の1つであり、観戦者数が低迷するWEリーグでありながらも多くの観戦者数を記録しています。セントラル開催で行われる試合はイベント性が高く、開催地域内外からさまざまな観戦者が訪れるため、観戦者の観戦動機を理解することが新規ファンの獲得に繋がると考えられます。しかしながら、セントラル開催の観戦者行動に焦点を当てた研究はほとんど行われておらず、国内では女性スポーツの観戦動機に関する知見も限られています。そのため、本研究では2023/24 WEリーグカップ決勝の観戦者をホームタウンファン、開催地域ファン、開催地域非ファンの3グループに分類し、3グループ間でのセントラル開催における観戦動機について比較検証することを目的としました。2023/24 WEリーグカップ決勝に訪れた観戦者に対して質問紙調査を実施し、398部(ホームタウンファン117部、開催地域ファン166部、開催地域非ファン115部)の有効回答を得ました。確認的因子分析、一元配置分散分析および多重比較の結果から、「チームへの関心」「WEリーグへの関心」「健全な環境」「家族の絆」「興奮」「男子チーム」においてグループ間で有意差が認められました。一方、「サッカーへの関心」「ロールモデル」「女性スポーツへの支援」においてはグループ間で有意差が認められませんでした。本研究結果は、セントラル開催における観戦者のセグメントによって観戦動機が異なることを示すものであり、それぞれのセグメントの観戦動機に基づいたプロモーションの導入が重要であることを示唆しています。


Jリーグクラブに対するホームタウンの地方公共団体による支援に関する研究-「新しい公共」の観点から-

高橋 豪仁
奈良教育大学

本研究は、Jリーグクラブが地域に根づくために、ホームタウンの地方公共団体がどのような支援を行い、どのような協働事業を展開しているのかを明らかにしたものです。その背景には、「公共は行政だけが担うものではなく、行政・企業・市民が協力してつくるもの」という『新しい公共』の考え方があり、プロスポーツクラブが地域社会の一員として果たす役割に着目しています。
Jクラブのホームタウンとなっている全国168の地方公共団体への質問紙調査では、約3割の自治体がクラブに出資しており、金額は数十万円から1億円以上まで幅がありました。また、多くの自治体がスタジアムや練習場の優先使用、使用料の減免、施設改修などを通じてクラブを支援していました。さらに、子ども向けのスポーツ教室、成人向けの健康事業、ふるさと納税を活用したクラブ支援など、多様な協働事業が展開されていました。ふるさと納税では、年間2千万円を超える寄付が集まった自治体もあり、クラブのグッズやチケットが返礼品として活用されていました。
松本山雅FCの事例研究では、松本市による出資や練習場整備が違法であるとする住民訴訟が起こりましたが、裁判では違法性は認められませんでした。また、松本山雅FCは行政、企業、市民と幅広く連携し、『新しい公共』の担い手として機能していることが示されました。
これらの結果から、Jリーグクラブは営利企業でありながら、地域社会における協働の中心的存在となり、「共的セクター」としての性格を強めていることが示唆されます。行政によるクラブへの支援は、単なる企業支援ではなく、地域の公共性を創出し、地域課題の解決やまちづくりを推進する重要な取り組みとして位置づけられる可能性があります。


野球の投球におけるスピードガンとラプソードを用いたボールスピードおよび回転数の計測値の比較

森本 吉謙
仙台大学
吉村 広樹
仙台大学
小野寺 和也
仙台大学
坪井 俊樹
仙台大学

近年、野球における投手の投球パフォーマンスの評価は、ボールスピードのみならず、ボールの回転数、回転軸、変化量などを含めた、より多面的なものとなっています。ラプソードのようなトラッキングシステムの普及により、ボールスピードや回転数などの情報をリアルタイムで取得することが可能となりました。ただし、ラプソードは計測時に投手と捕手の間に設置する必要があるため、実際の試合などのプレー環境での使用には制約があります。
一方、これまでボールスピードの計測に広く用いられてきたドップラー効果を利用したスピードガンの中には、近年、ボールスピードのみならず回転数の計測機能を備えたものが市販されています。スピードガンは捕手の後方から計測可能であるため、ラプソードのような設置上の制約はなく、実戦的な場面においても活用が期待できます。
しかしながら、スピードガンとラプソードによる計測値がどの程度一致するのかについては、これまで十分に検討されていません。例えば実際の試合ではスピードガンを、日常的な投球練習ではラプソードを用いる場合、両機器で得られた計測値を同等に扱うことができるかは明らかではありません。そこで本研究では、大学硬式野球部に所属する投手27名を対象に、同一投球に対するボールスピードおよび回転数をスピードガンとラプソードにより同時計測し、両機器の計測値の一致度と誤差について検討しました。
その結果、ボールスピード、回転数のいずれについても、両機器の計測値には高い一致度が認められました。このことから、両機器によって得られる計測値は、投手のパフォーマンス評価において概ね同等に利用できる可能性が示されました。
しかし一方で、両機器の計測値の間には、ボールスピードと回転数のいずれにおいても、一定の方向へ値が偏る系統(加算)誤差が認められました。ラプソードの計測値は、スピードガンと比較してやや高い値を示す傾向にあり、その差はボールスピードでは最大で0.3m/s、回転数では62.2rpmに及ぶ可能性が明らかになりました。


【研究ノート】


運動部活動における大学生指導者の関わりが中学生のスポーツ成長感に及ぼす影響

工藤 慈士
びわこ成蹊スポーツ大学スポーツ学部
神窪 愛
びわこ成蹊スポーツ大学スポーツ学部
菅 文彦
大阪成蹊大学経営学部
黒澤 寛己
びわこ成蹊スポーツ大学スポーツ学部
中山 亮
びわこ成蹊スポーツ大学スポーツ統括課

指導者の関わり方が子どものスポーツへの好意度や参画度に影響を与え,運動部活動という観点からも教育的意義を有するスポーツ活動において,生徒自身の成長を促す支援も指導者には必要であると考えられる.本研究では,週末を限定に大学生指導者を外部指導者として派遣し,大学生指導者が生徒に対してどのような関わり方をすることが成長を促すことができるのかについて明らかにすることを目的とした.対象は,K市内に在住する中学生195名(男性121名,女性74名;平均年齢13.48±0.58歳)を対象とした.調査項目はスポーツ成長感,大学生との関わり経験尺度(受容経験,親密な関わり経験,承認経験),部活動適応感(活動への傾倒,不適応傾向,成員・組織への満足)を評価する項目を設定した.分析方法は,相関分析および階層的重回帰分析を実施した.その結果,中学生が大学生指導者から受容された経験を感じることでスポーツ成長感が促進されることが明らかになった.さらに,指導者との関わりに加え部活動に対する適応感を高く感じることでスポーツ成長感を高く評価することが示唆された.これらの結果から,大学生指導者は中学生を受け入れる行動を示すことが重要あるといえる.


大学野球選手のタッチアップにおけるローリングスタートの時間分析

小野寺 和也
仙台大学体育学部
吉村 広樹
仙台大学体育学部
森本 吉謙
仙台大学体育学部
波戸 謙太
筑波大学体育系

野球では、三塁走者が外野フライの捕球後に本塁を目指すタッチアップが、得点を左右する重要なプレーとなります。一般的には、左足が三塁ベースに触れた状態で外野手の捕球を確認し、捕球後にベースを離れて走り出します。しかし、この方法では静止した状態から加速するため、スタート直後の動き出しに時間がかかる可能性があります。
そこで本研究では、ソフトボールの盗塁技術の「ローリングスタート」に着目しました。ローリングスタートは、右足で三塁ベースに触れたまま、左足はベースよりもレフト方向に置き、捕球直前から身体を動かし始め、捕球を確認してから右足をベースから離して本塁へ向かう方法です。つまり、ベースへの触塁を保ちながら「静止した状態から走り出す」のではなく、「動いている状態から走り出す」ことを狙ったスタート方法です。
本研究では大学野球選手22名を対象に、一般的なスタートとローリングスタートで三塁から本塁までの走塁時間を計測しました。その結果、一般的なスタートは平均3.74秒、ローリングスタートは平均3.63秒で、ローリングスタートの方が平均0.11秒速くなりました。距離に換算すると約0.84メートルの差に相当します。また、22名中21名でローリングスタートの方が速い結果となりました。0.11秒という差は本塁でのクロスプレーの場面では、セーフとアウト、すなわち得点の有無を分ける可能性があります。
一方で、ローリングスタートを試合で活用するには注意も必要です。捕球前から身体が動くため、実際には捕球時に触塁していても、審判に早く離塁したと見られる可能性があります。また、飛球の滞空時間が短い場合には、構えをつくる時間が足りないことも考えられます。さらに、本研究は選手自身がスタートのタイミングを決められる条件で行っており、実際の試合のように外野手の捕球に正確に合わせる状況までは再現していません。
したがって、ローリングスタートはタッチアップの有効な選択肢となる可能性がありますが、実戦で用いるためには、構え方、助走のつけ方、捕球に合わせた離塁、そして場面に応じた判断を繰り返し練習する必要があります。本研究は、これまで十分に検討されてこなかったタッチアップのスタート技術に改善の可能性を示したものです。


日本人サッカー選手の欧州クラブ移籍における移籍金および関連収益の相対的低水準の要因に関する研究

松永 隆
広島経済大学経営学部スポーツ経営学科

近年、日本人サッカー選手がヨーロッパのクラブへ移籍する機会は急速に増えています。世界トップレベルの環境でプレーすることは選手の成長につながり、日本代表の強化という観点からも歓迎すべき流れです。一方で、選手を育成したJクラブが受け取る移籍金は、アメリカやポーランドなどFIFAランキングが近い国と比べても著しく低い水準にとどまっています。本研究は、その原因を明らかにし、Jクラブの経営改善につなげることを目的として実施しました。
まず、世界最大級の移籍データベースを用いて各国選手の移籍金を比較したところ、日本人選手の平均移籍金は米国やポーランドより大幅に低いことが確認されました。この結果だけを見ると、日本人選手の実力が低いようにも見えます。しかし現在、日本代表は世界ランキングでも20位以内に位置し、多くの日本人選手が欧州主要リーグで活躍しています。実力だけでは、この差を十分に説明できません。
そこで本研究では、ドイツ、ベルギー、アメリカ、日本のクラブで実際に移籍交渉を担当しているスポーツダイレクターや強化責任者にインタビューを行い、各国の交渉方法を比較しました。その結果、日本のクラブだけが選手代理人に移籍交渉を大きく依存しているという特徴が明らかになりました。
選手代理人は、本来、選手のキャリアや年俸を最大化することを使命としています。そのため、移籍元クラブの利益を最優先に考える立場ではありません。一方、欧米のクラブでは、クラブ同士が直接交渉を行うことが基本であり、必要に応じてクラブ側の利益を代表する代理人を活用しています。この違いにより、日本のクラブは交渉の主導権を握れず、結果として本来得られるはずの移籍金や将来の収益を十分に確保できていない可能性が高いことが示されました。
さらに重要なのは、「セル・オン条項」と呼ばれる契約条項です。これは、移籍した選手が将来さらに高額で別のクラブへ移籍した場合、その利益の一部を最初の所属クラブが受け取ることができる仕組みです。欧米では一般的に活用されていますが、日本では十分に導入されていないケースが多く見られました。近年、日本人選手が欧州で活躍し、さらにビッグクラブへ移籍する例が増えていることを考えると、この条項を活用できないことはJクラブにとって大きな機会損失となっています。
Jクラブの多くは厳しい財政状況に置かれており、育成への投資を継続するためにも海外移籍による収益拡大は重要な経営課題です。本研究では、①国際移籍交渉を専門に担う人材の育成、②クラブ同士による直接交渉体制への転換、③セル・オン条項を標準的に契約へ盛り込むこと、の三つを提言しました。
日本サッカーは30年以上にわたり育成力を高め、多くの優秀な選手を世界へ送り出すことに成功しています。今後は「選手を育てる力」だけでなく、「育てた価値を適正に収益へ結び付ける力」を高めることが、日本サッカー全体の持続的な発展につながると考えられます。
日本サッカーが『育成が上手な国』から『育成で持続的に稼げる国』へ進化し、できるだけ早い時期にワールドカップでベスト8以上に勝ち進めるかどうかは、今後の国際移籍交渉の改革にかかっていると思います。


スポーツ・ライフ・バランスを大切にする大学生アスリートは幸せか?

荒井 弘和
法政大学文学部
榎本 恭介
清和大学法学部
栗林 千聡
専修大学経済学部
深町 花子
公益財団法人日本スポーツ協会
宅 香菜子
オークランド大学心理学部

• 「スポーツ・ライフ・バランス」の価値を検証:ワーク・ライフ・バランスの概念をスポーツに適用し、大学生アスリートの主観的幸福度との関連を検討しました。
競技レベルによる「幸せの源泉」の違いが明確に:競技レベルの高いアスリートは「成果に関する価値へのコミットメント」が幸福度を説明する一方、競技レベルが比較的高くないアスリートにとっては「成果に関する価値へのコミットメント」と「スポーツ・ライフ・バランスに関する価値へのコミットメント」の双方が幸福度を説明する重要な要因であることがわかりました。
• 一律の「成果志向」からの脱却を提唱:すべての学生に一律の価値観を押しつけるのではなく、競技レベルや個人の価値観に応じた「包括的支援(デュアルキャリア支援)」の必要性を強く示唆する結果です。
【概要】
近年、日本のスポーツ界では、競技生活だけにエネルギーを注ぐのではなく、学業や私生活との調和を図る「スポーツ・ライフ・バランス」の重要性が叫ばれています。しかし、「スポーツ・ライフ・バランスを重視するアスリートは本当に幸せなのか?」という点については、学術的な検証が十分ではありませんでした。
そこで私たちは、日本の大学生アスリートを対象に、彼らが認識している自らの価値観(「勝つことが大事」や「文武両道」など)へのコミットメントが、主観的幸福度にどのような影響を与えているかを競技レベル別に検討しました。
【主な研究成果】
体育会運動部に所属する4年制大学の1―4年生215名に対する調査の結果、競技レベル(高群・低群)に関わらず、大学生アスリートが「スポーツ・ライフ・バランスに関する価値へのコミットメント」の程度には差が見られませんでした。しかし、「何が幸福度に結びつくか」というメカニズムには、競技レベルによって明確な差異が認められました。
競技レベルが高い選手たちにおいては、「スポーツ・ライフ・バランスに関する価値へのコミットメント」が直接的に幸福度を説明しませんでした。「成果に関する価値へのコミットメント」こそが、主観的幸福度に強く寄与していると解釈されました。
一方で、競技レベルが比較的高くない選手たちにおいては、「成果に関する価値へのコミットメント」と同等に「スポーツ・ライフ・バランスに関する価値へのコミットメント」が、主観的幸福度を説明することが明らかになりました。
本研究は、大学スポーツのマネジメントや指導現場に対して極めて重要な一石を投じています。この知見をどう現場に活かすべきか、3つの提言をまとめます。
(1)指導者は「評価のモノサシ」を複数持つべきである
競技現場では、どうしても「試合に勝つこと」や「成果を出すこと」が目標とされがちです。しかし、すべての学生がトップを極められるわけではありません。成果を出せない、あるいは競技成績のみを追い求めていない学生に対して、指導者が「成果」という単一のモノサシだけで評価し続けることは、選手の幸福度を低下させるリスクがあります。指導者は、選手がスポーツ・ライフ・バランスを適切に維持できている点(学業との両立など)にも着目し、その側面を肯定的に評価・支援する「バランス志向型のアプローチ」を取り入れることが期待されます。
(2)包括的な「デュアルキャリア支援体制」の構築
競技成績だけで学生を評価する旧態依然としたシステムは見直されるべき時期に来ています。競技成績向上に向けたサポートだけでなく、学業、日々の生活、将来のキャリア形成までを包括的にサポートするアントラージュ(指導者やサポートスタッフなどの関係者)の体制整備が急務です。
(3)大学スポーツの「持続可能なマネジメント」へ
大学スポーツ組織の評価指標としては、競技成績が最優先される傾向が強い。しかし、本研究が示したように、学生個人がどのような価値に基づいて競技生活を送っているのかという「アスリートファースト」の視点を取り入れることこそが、結果として部活動の不祥事防止や、大学スポーツそのものの持続的な発展につながる確実な道と言えます。

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