欧州28ヶ国の最新スポーツGDP
欧州28ヶ国の最新スポーツGDP
同志社大学スポーツ健康科学部准教授
庄子博人
2025年、欧州28ヶ国を対象としたスポーツ経済規模を計測した新しいレポートが公表されました。本レポートは、2018年に公表された欧州28ヶ国のスポーツGDPレポート以来、約7年ぶりの改訂版となります。2018年レポートでは推計対象年が2012年でしたが、今回の2025年レポートでは2019年を対象とした最新データが公表されています。
図は、2019年における欧州28ヶ国のスポーツGDPの規模を示したものであり、各国におけるスポーツ関連活動の経済規模を比較することを目的としています。ここでいうスポーツGDPは、スポーツに関連する財・サービスの生産によって生じた直接効果(スポーツ特徴財と関連財の合計)を指します。なお、本レポートでは、産業連関を通じて波及する間接効果を合計した値も公表されていますので、間接効果まで知りたい方は原典をご覧ください。また、各数値の括弧内には、当該国のGDPに占めるスポーツGDPの割合を示しており、スポーツ産業の経済構造上の位置づけを把握できます。
スポーツGDPの絶対額を見ると、経済規模の大きいドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペインなどの主要国が上位を占めています。これは国の人口規模、経済規模、スポーツ消費の厚みが反映された結果と言えるでしょう。一方で、GDP比で見ると必ずしも国の経済規模の順とはならず、例えばオーストリアのようにスポーツGDP比が4%を超える国も存在します。これは観光と結びついたスポーツ(特にウィンタースポーツ)など、特定の産業構造がスポーツ経済を強く押し上げていることを示しています。
なお、株式会社日本政策投資銀行による最新推計では、2019年の日本のスポーツGDPは9兆5,400億円、スポーツGDP/名目GDP比は1.71%と公表されています。絶対額について、2019年平均為替レートで換算した欧州各国の数値と比較すると、日本はドイツ(約9兆5,772億円)とイギリス(約7兆8,677億円)の間に位置し、28ヶ国中で2番目の規模となります。一方、GDP比で見ると、日本の1.71%は欧州28ヶ国と比較して12〜13番目程度であり、絶対額に比べると相対的な位置づけは低い結果となっています。
このように、スポーツGDPは単なる産業規模の指標にとどまらず、各国の産業構造、さらにはスポーツ政策の成果をも反映する複合的な指標といえます。本レポートでは各国の特徴についても考察がなされており、例えばオーストリアでは冬季スポーツが経済を牽引し、多くの外国人観光客の流入を通じて大きな波及効果を生み出しています。また、英国では多様なスポーツ関連活動を通じて高い雇用が創出されており、その背景には全国に広がるスポーツクラブのネットワークと、それを支える多数のボランティアの存在があるとされています。
このような国別特性の分析は、日本のスポーツ産業政策を検討する上で今後ますます重要になると考えられます。
引用文献 Eurostat, EU Sport Satellite Account:Research into estimating the economic value of sport in the EU 2025 edition, Themistoklis Kokolakakis (Sheffield Hallam University),Anna Kleissner (Econmove),statistical working papers,2025.


