アメリカ大学スポーツにおけるエリジビリティ(競技参加資格)②

アスリートの教育とキャリア形成④
アメリカ大学スポーツにおけるエリジビリティ(競技参加資格)②
帝京大学医療技術学部 教授 束原文郎

連載「アスリートの教育とキャリア形成」、第5回は引き続きアメリカ大学スポーツ統括機関NCAAの定める競技参加資格(Eligibility:エリジビリティ)を考えていく。今回は学業要件のうち、在学中の単位取得要件と進級要件に関する規程についてディヴィジョンごとに整理していく。

ディビジョン間で異なる単位取得要件と進級要件

●Division I (D1)
 D1の進級要件は、学生アスリートの学業に支障を生じさせないよう厳格に管理することを目的としている。学生は、毎学期、フルタイムの学生として登録され(最低12単位)、毎年少なくとも24単位のコースワークを修了しなければならない。さらに、卒業に必要な単位の割合を段階的に達成する「40-60-80」ルールが適用される。これは、2年次終了時までに卒業単位の40%、3年次終了時までに60%、4年次終了時までに80%を修了することを義務付けるものである。
 また、累積GPAの最低要件も設定されており、2年次開始時に1.80、3年次開始時に1.90、4年次開始時以降に2.00を維持しなければならない。これらの詳細かつ定量化された要件は、学生アスリートが学業面で責任を果たすことを保証し、大学スポーツの正当性を維持するための制度的枠組みとして機能している1

●Division II (D2)
 D2の進級要件はD1に比べてシンプルで柔軟である。学生は年間24単位を修了する必要があるが、D1のような学年ごとの単位進捗率要件(40-60-80ルール)は課されない。また、学生は累積GPA・2.00以上を維持しなければならない。D1と同様に、3年次開始時までに専攻を宣言することが義務付けられている。
 2025-26年度以降の重要な変更として、従来あった「正規学期中に18セメスター単位(または27クオーター単位)以上の取得」という要件が廃止された2。この変更は、学生が学位取得に要する期間が長期化しているという現状に対応するための措置である3,4
 全体としてより簡潔なD2のルール体系は、大学が学生の学業をサポートするという前提を維持しつつ、D1に比べて管理上の負担を軽減していると考えることができる。
※セメスター制とクオーター制の授業時間数の差異に基づき、NCAAでは「1セメスター単位=1.5クオーター単位」として換算される。

●Division III (D3)
 D3は、進級要件についても各大学の裁量に全面的に委ねられている。D3全体で統一された年間単位要件や最低GPAは存在せず、学生は所属する大学が定める「順調な学業進度(satisfactory-progress)」をクリアする必要がある。ただし、競技に参加できる期間には制限があり、学生は最大で10セメスターまたは15クオーターまでしかフルタイムで在籍できない。
 このルールは、学生アスリートを「他の学生と同じように扱う」というD3の哲学を反映しており、競技のスケジュールが学業進度を妨げることがないよう、個別の学習体験を尊重しているといえる5。NCAAの中ではD3が、学生アスリートの自主性と学業への集中を最も重視しているのである。
 次回は転校のケースとアマチュア要件に関する規程について、ディヴィジョンごとに整理していく。


1.NCAA(2025)2025-2026 NCAA Division I Manual. https://ncaapublications.com/products/2025-2026-ncaa-division-i-manual 2.NCAA(2025)Division II approves automatic-qualification privileges for football. https://www.ncaa.org/news/2025/1/17/media-center-division-ii-approves-automatic-qualification-privileges-for-football.aspx 3.NCAA(2025)DII Executive Board advances proposal for 5 seasons of eligibility to Convention. https://www.ncaa.org/news/2025/8/7/media-center-dii-executive-board-advances-proposal-for-5-seasons-of-eligibility-to-convention.aspx 4.NCAA D-IIのデータによると、2022-23年度の卒業生のうち、4年以内に卒業できたものは63%にとどまり、4~5年にかかる者が30%に上る。Logan Steele(2025)DII Proposal – 5 Seasons, More Championships | NCAA Rules & Regulations. https://www.2adays.com/blog/dii-proposal-5-seasons-more-championships/ 5.NCAA(2025)2025-26 NCAA Division III Summary of Key Regulations For. https://ncaaorg.s3.amazonaws.com/compliance/d3/2025-26/2025-26D3Comp_SummaryofNCAARegulations.pdf

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