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今年も春がやってきた。日本で本格的にコロナウイルスの流行が始まり早くも一年が経ったのだと思うと、複雑な気持ちにもなる春だ。それでも、例年と変わらず美しく咲き誇る桜の花を見ると気分が晴れて前向きな気持ちになれる。
桜は、日本を代表する花としてよく取り扱われる。スポーツにおいても同様だ。日本ラグビーフットボール協会のエンブレム、ホッケー女子代表チームの愛称「さくらジャパン」、各競技の代表選手のユニフォームのデザイン。実にさまざまな競技において、日本を象徴的に表すデザインとして桜が選ばれてきた。
だがそもそも、日本には法定の国花は存在しないのだという。皇室の象徴である菊と、「皆が好きそう」な桜が、事実上の国花ということになっている。でははぜ、桜は日本の象徴というイメージが定着しているのだろうか。
桜が日本で好まれるようになったのは、平安時代ごろからと言われる。嵯峨天皇を始め公家の人々が愛でたことに始まり、日本独自の美意識が育った「国風文化」の時代でブームに火が付いたのではないかと考えられている。この時代を代表する歌集『古今和歌集』には桜が登場する句が複数あり、花=桜という表現が定着しているのが見て取れる(奈良時代の『万葉集』においては、花といえば中国由来の梅であった)。
その後も、平安時代末期に桜の句を好んで詠んだ西行法師や、安土桃山時代に盛大なお花見会を開催した豊臣秀吉など、数多の有名人がその美しさを愛でてきた。江戸時代に入ると社会が安定し庶民にも花見の文化が広がる。あまりの人気で町中の風紀が乱れるので、花見の無礼講を許す場が必要と考えた幕府がわざわざ植樹をして作ったのが、現在も残る桜の名所・飛鳥山だというのはなんとも興味深い。
時代や身分を問わず、長い間日本の人々を魅了してきた桜。明治以降は国際親善にも利用され海外の人々の心も掴み、日本=桜のイメージが自他国共に認めるものとなっていった。
現代では、スポーツで日本を代表する人々を桜が飾っている。2019年のラグビーW杯では日本代表「Brave Blossoms」が世界にその名を知らしめた。きっとこれからも、桜をまとった選手たちがスポーツの歴史に華やかな記録を刻んでいくのだろう。
▶伊勢采萌子